これまで、メタバースは主にゲーム分野で活用されていました。

しかし、2020年頃に世界的に起こった新型コロナウイルスの感染拡大によって、仕事やプライベートでの行動が制限されたため、ゲーム以外の分野でも注目され始めました。

そして現在では、ゲーム・イベントやライブ・不動産などのビジネス・教育など幅広い分野にメタバースが導入され始めています。

今回はその中でも、メタバースで行う職業体験について取り上げ、個人や企業の視点から考えられるメリットや活用事例を紹介していきたいと思います。

|メタバースとは

メタバースとは、コンピューターグラフィックス(CG)によって生み出される仮想現実の世界を指します。

そもそもこのワードは、「超越した」や「高次の」という意味の「メタ(meta)」と「宇宙」を表す「ユニバース(universe)」を掛け合わせた造語です。

メタバースでは、ユーザーは「アバター」と名付けられたデジタル上の分身を通して世界を探索します。

そして、アバターを通じて、他者と遊んだり、対話を行ったり、買い物をしたりといった様々な行動を、事実上では現実と変わらないような環境で堪能します。

メタバースは「現実世界との境界線を曖昧にする」ことをコンセプトに近年注目を集め、進化し続けています。

メタバースに関する基本的な知識については、以下の記事でも取り上げていますので、ぜひ併せてご覧ください。

【わかりやすく解説】メタバースとは?注目される理由やビジネス活用例を紹介
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メタバースなんて意味ないって本当?普及しない理由と将来の可能性
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|【個人】メタバースで職業体験を行うメリット

まずは個人の視点から、メタバースで職業体験を行うメリットについて考えていきます。

今回ご紹介するメリットは次の4つです。

  • 場所の制約がない
  • ゲームのような感覚で学べる
  • 普段できない職業も体験できる
  • 失敗を恐れず学ぶことができる

場所の制約がない

1つ目にして最大のメリットとして、場所に制限がないことが挙げられます。

極端な例ですが、酪農や漁業を体験したいと思っても、街中や内陸に住んでいると難しいですよね。

メタバースであれば、そういった今自分のいる場所に縛られることなく、端末とインターネットに接続できる環境があればどこからでも職業体験を行うことができます。

気になった職業はどんどん体験してみる、ということができるので、現実よりも幅広くたくさんの職業を知ることができます。

ゲームのような感覚で学べる

2つ目のメリットは、ゲーム感覚で学ぶことができる点です。

どうしても職業体験と聞くと堅苦しくて大変そう…というイメージが強いですが、メタバースで行うことで気楽に遊び感覚で体験することができます。

裁判所や税務署のような厳格な職種でも、気軽に疑似体験ができるでしょう。

また、話を聞くだけの受動的なものではなく、実際にアバターを操作して能動的に行動することで、より深い学びに繋がると考えられます。

普段体験できない職業も体験できる

メタバースであれば、パイロットや建築家、ファッションデザイナー、イベントプランナーなど、珍しい職業を体験することも可能です。

危険が伴ったり、すぐに用意することが難しかったりする職業はなかなか体験の機会がありませんが、そういった職種でも体験できるのです。

現実並みにリアルな空間で、飛行機を操縦したり、月面探索を行ったり、唯一無二の家や服を創造したり…メタバースではなんでもお手のものです。

失敗を恐れず学ぶことができる

最後に、失敗を恐れることなく学べる点もメタバースでの職業体験ならではです。

現実だとどうしても、失敗することが恥ずかしくて行動できなかったり、そもそも失敗が許される状況でなかったり(だから体験できない)といったケースが考えられます。

しかし、メタバースは現実に限りなく近づけた「仮想空間」であり、失敗しても大ごとになることはありません。

そのため、体験者は思い切って体験することができ失敗を繰り返す中で学んでいくことができます。

|【企業】メタバースで職業体験を行うメリット

個人目線からのメリットを紹介したところで、続いては企業の側面から考えていきたいと思います。

今回取り上げるメリットは以下の3つです。

  • 新たな企業PRやブランディングに繋がる
  • 普段できない体験を提供できる
  • 人件費を削減できる

新たな企業PRやブランディングに繋がる

企業目線のメリット1つ目として、新しい形での企業PRやブランディングに繋がることが挙げられます。

メタバースは冒頭でも述べたように近年注目を集め続けており、Meta(旧Facebook)の社名変更やソニーやLINEの新規部署設立など、有名企業が参入したことでさらに話題となりました。

このように、今ではメタバースを導入しているかどうかは先進性を示す指標となっています。

体験者はもちろん、外部の人間からの認知度やイメージ向上に繋がり、ひいては人材確保にも繋がると考えられます。

普段できない体験を提供できる

2つ目に、現実での職業体験では提供することが難しい体験を参加者にしてもらうことができます。

どうしてもリアル開催となると、企業秘密や安全面のリスクなどが原因で体験できるコンテンツが制限されてしまいます。

しかし、メタバース開催であればすべて作り物であるため、そういったリスクなしに、でも実際と近いものを体験してもらうことができます。

人件費を削減できる

最後のメリットは、人件費を削減できることです。

リアル開催となると会場設営や運営、見学対応に相応の人員と時間を割く必要が出てきます。

しかし、メタバース開催であれば企業側の人間もいつでもどこからでも参加ができるため、柔軟に体制を組むことができます。

そのため日程調整が行いやすく、人件費を大幅にカットできます。

|メタバースで職業体験を行った事例3選

個人と企業側の両側面からメリットを紹介したところで、最後に職業体験を行った事例を3つご紹介します。

今回ご紹介するのは以下の3つです。

  • 渋谷未来デザイン×大日本印刷
  • NTTコノキュー×三菱UFJ銀行
  • 九州電力×paralreal

渋谷未来デザイン×大日本印刷

出典:https://www.dnp.co.jp/news/detail/20169402_1587.html

1つ目にご紹介するのは、一般社団渋谷未来デザインと大日本印刷株式会社(DNP)が子ども第三の居場所「みらいの図書室」において実施したワークショップです。

「みらいの図書室」は子どもが安心して過ごせる、学校でも家でもない居場所を提供する地域支援事業であり、様々な体験学習プログラムを行っています。

2023年5月10日〜11日の2日間にわたって実施されたワークショップでは、子どもたちは様々なお店の店員を体験しました。

子どもの自由な発想によって考えられた商品を陳列する、という現実ではなかなかできない体験をできる時間となりました。

NTTコノキュー×三菱UFJ銀行

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000079050.html

2023年8月31日、NTTグループのXR事業を担う株式会社NTT QONOQ(NTTコノキュー)と株式会社三菱UFJ銀行は協業を開始すると発表しました。

そのユースケースアイデアの一例として挙げられているのが職業体験です。

学生や社会人が自分の将来を考え、気楽に職業体験をできる場としてメタバース空間を提供すると公表しており、その体験が社会貢献に繋がることを目指しています。

九州電力×paralreal

出典:https://www.kyuden.co.jp/press_h220810-1.html

九州電力株式会社は、paralreal株式会社が運営するパラレアルラボと連携し、2022年8月24日に「夏休み!親子でメタバース職業体験」を開催しました。

このイベントでは、スマートフォンやタブレットで自分のアバターを作成し、ゲーム感覚で仕事体験ができるようになっていました。

小中学生やその保護者を対象に行われた本イベントは、親御さんより子どもの方が操作に慣れるのが早く楽しんでいる様子だったようです。

|まとめ

今回はメタバースで職業体験を行うメリットを個人と企業の両視点から紹介し、その活用事例を取り上げました。

メタバースは技術の進化に伴ってどんどん発展していくに違いないので、ぜひ今からでも導入を検討してみてくださいね。

また、難しそうで手を付けていないという方は、簡単に試せるプラットフォームも数多く出ているので、まずは気楽に体験してみてください。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。