韓国が世界で初めて導入する「メタバース振興法」。

この試みは、韓国政府がメタバース産業を国家戦略として育成していくことを明確に示したものであり、デジタルの未来を切り拓く大きな一歩として注目を浴びています。

本記事では、メタバース振興法が制定された背景と、その内容について詳しく解説していきます。

韓国におけるメタバース産業の動向に注目したい方、そしてメタバースの未来を探求したい方にとって、必見の内容となっていますので、ぜひご一読くださいね。

メタバースについての基礎知識は、こちらを参考にしてください。

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|世界初となるメタバース振興法とは

韓国が世界で初めて導入する「仮想融合産業振興法」は、2024年2月20日に国務会議で議決されました。

この法律はメタバース振興法として称され、仮想融合空間(メタバース)の成長を促進し、経済、社会、文化の活動を促進することを目的としています。

具体的には、メタバース関連の産業やサービスの育成、技術や投資促進、規制の改善などを行い、メタバース分野の発展に向けた包括的な法的基盤を整備する役割を担います。

これにより、韓国政府はメタバース産業の成長を後押しし、グローバル競争力を強化することを目指しています。

公布後6ヶ月の経過期間を経て、2024年8月末から正式に施行される予定です。

|背景:韓国でのメタバース事情

メタバース産業において、世界をリードする立場を築くことが期待される韓国。

なぜ韓国政府はメタバースを推進するのでしょうか?

以下で、その背景に迫ります。

韓国でのメタバース事情については、以下の記事も併せてご覧ください。

メタバースは今韓国が熱い!注目されている理由や活用シーン、主要企業を紹介
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行政で積極的に活用されている

韓国では、メタバースが行政サービスに積極的に活用されています。

ソウル市が展開した「メタバースソウル」プロジェクトでは、仮想空間内に市内の観光名所や行政機能を構築し、市民や企業とのコミュニケーションを強化。

さらに、フィンテック企業の広報ブースや企業支援センターなどのコンテンツも用意され、企業活動をサポートしています。

また、選挙への市民参加促進にも活用されています。

韓国の主要放送局が制作した仮想空間を通じて、市民は選挙を身近に感じることができる仕組みを実現。

民主党も不動産アプリ「ジクバン」のデジタルプラットフォーム「メトロポリス」を活用し、予備選挙討論会を開催しています。

このように韓国では、メタバースが市民とのデジタルコミュニケーション強化に役立っているのです。

ユーザー4億人以上「ZEPETO」の利用拡大

「ZEPETO」は、韓国のインターネットサービス企業Naverが提供する世界的に人気のメタバースプラットフォームです。

2018年8月のリリース以来、急速にユーザー数を増やし、2024年1月現在では世界中で4億6千万人以上の登録ユーザーを誇っています。

主にアジア圏からの支持を受けてきましたが、最近では欧米諸国でも人気が高まっています。

魅力としては、以下の点が挙げられます。

  • スマートフォンで手軽に楽しめる
  • 簡単に自分に似たアバターを作成できる
  • 豊富なアバター用ファッション
  • 有名ブランドとのコラボ
  • 収入を得られる
  • SNSでのシェアが容易である
  • 現実世界を離れてコミュニケーションを楽しめる

ZEPETOについては、以下の記事も併せてご覧ください。

【ユーザー4億超】メタバース「ZEPETO」とは?人気の秘密を解説
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大手通信キャリアの参入

長年にわたり、韓国の主要通信事業者であるKT、SK Telecom、LGU+はVR・ARコンテンツの開発に取り組んできました。

現在、これらの通信キャリアは激しい競争の中でメタバース市場に参入しています。

KTはテレフォンショッピング向けに「ARショールーム」や「VR語学研修」などを提供。

SK Telecomは「メタバースゴルフ生中継」や「クレイジーワールドVR」などのプラットフォームを展開しています。

一方、LGU+は、遠隔会議システムに3Dアバターを導入するなど、新たなデジタル体験の可能性を追求しています。

これらの通信キャリアの参入により、韓国のメタバース市場はますます活気づいているのです。

|メタバース振興法(仮想融合産業振興法)の内容

世界で初めてのメタバース発展を目的とした仮想融合産業振興法には、具体的にどのような内容が盛り込まれているのでしょうか。

主要となる4つの内容について、以下で深掘りしていきましょう。

メタバース産業の振興推進

メタバース振興法は、メタバース分野の発展を推し進めるための重要な枠組みを提供しています。

この法律により、科学技術情報通信相は関係省庁や自治体の意見を収集し、3年ごとの基本計画を策定・施行することが可能です。

基本計画には、政策方向と目標、人材や設備の整備、研究開発の支援や成果の拡散・事業化、法制度の改善などが含まれます。

さらに、政府は専門人材の養成、技術開発の促進、研究開発の基盤整備や標準化支援などの基盤を整備します。

また、租税の減免や金融支援などの支援措置も提供し、メタバース分野の発展を積極的に支援しています。

メタバース技術やサービスの開発支援

メタバース振興法は、メタバース分野の技術開発や発展を支援するための様々な施策を提供しています。

具体的には、仮想融合技術の開発、事業化、装備・施設の共同使用、既存サービスの仮想融合への転換支援などに対して、行政的・財政的支援が行われます。

また、モデル事業の実施や、国際協力活性化や海外市場進出の促進など、産業振興のための推進根拠が整備されています。

さらに、民間メタバース市場の活性化を図るため、行政がメタバース事業を推進する際には、民間市場への影響を分析する評価制度が導入されます。

これにより、メタバース産業の持続的な発展を支援し、その成長を促進する環境が整備される仕組みとなっています。

自立規制

自立規制は、メタバース振興法において重要な枠組みの一つです。

この規定により、科学技術情報通信相は特定の条件を満たした団体をメタバース自立規制団体として指定。

その団体がメタバース・サービスの運営準則を定め、自主的な規制活動を行います。

メタバース事業者は科学技術情報通信部の認可を受けて協会を設立し、自らの行動綱領を明確化して運営することになります。

また、規制団体や協会はユーザーの保護や安全性確保に焦点を当て、信頼性の高いメタバース技術やサービスの提供を目指します。

この仕組みによって、産業内での健全な成長とユーザーの利益保護が促進され、メタバースの発展に寄与することが期待されます。

セキュリティや安全への配慮

メタバース振興法では、利用者の権益保護のため、メタバースサービス提供者に情報提供や教育、児童・青少年保護の推進を義務付けています。

差別的なコンテンツの製作や拡散を防ぐよう努める義務を明文化し、メタバース貨幣の発行・流通に関しても、セキュリティや安全への配慮が規定されています。

サービス提供者は、大統領令によって定められる発行最高限度や制限を遵守し、両替システムの構築やギャンブル等の射幸行為の防止、未成年者保護の安全装置の構築などの義務を負います。

これらの規定によって、利用者の安全とセキュリティが確保され、健全なメタバース産業の発展が促進されるのです。

|日本でもメタバース振興法は制定される?

韓国が国を挙げてメタバース振興に注力する一方で、我が国日本での取り組みはどうでしょうか?

韓国のように新たな法律が制定される予定はないものの、メタバース推進を本格化する動きは日本でも活性化しています。

日本国内での市場規模は拡大している

日本国内のメタバース市場は急速に成長しています。

総務省が取りまとめた令和5年版情報通信白書によると、日本のメタバース市場は2022年度には1,825億円となり、2026年度には1兆42億円に達する見通しです。

この成長は、新型コロナ禍の継続によるオンライン需要の増加や、VRやAR向けデバイスの普及によるものと考えられます。

特に、コロナ禍の影響で、メタバースを活用したイベントや教育・トレーニング、ショッピング体験など、様々な用途での需要が高まりました。

さらに、VRやAR向けのデバイスの普及も市場の成長を後押ししています。

これらの要因から、日本国内のメタバース市場は着実に成長しており、今後もその拡大が期待されています。

行政や自治体、大手企業でも活用が進む

地方創生や大手企業の取り組みにおいても、メタバース活用が進んでいます。

行政や自治体は、観光地などをメタバース上で再現し、地域の魅力を広く発信することにより、地域経済の活性化や観光産業の振興を推進。

さらに、特産品やNFTなどの販売を通じて、地域のブランド価値向上や地域住民の経済的な支援が期待されます。

一方、大手企業でも、メタバース技術の進化やコロナ禍でのオンラインコミュニケーションの普及により、オンライン空間でのビジネス展開や顧客との接点が拡大しています。

さらに、若年層のメタバース利用の増加やNFT、Web3への関心の高まりも大きな要因となり、今後も企業によるメタバース市場への参入は加速するでしょう。

|まとめ

世界初となるメタバース振興法は、韓国のメタバース分野の発展に大きな弾みを与えるだけでなく、世界全体に影響を与える可能性を秘めています。

教育、医療、観光など様々な分野へのメタバース技術の導入も促進されるでしょう。

一方で、メタバース空間における倫理問題や法的な課題など、克服すべき課題も存在します。

韓国政府は、メタバース振興法と合わせて安全ガイドラインなども策定し、これらの課題に取り組んでいく予定です。

今後の韓国のメタバース市場の成長に期待が高まります。