現実世界とデジタル世界をシームレスに融合させる技術「MR(Mixed Reality)」。
その最先端を体現するデバイスが、マイクロソフトが開発した「HoloLens(ホロレンズ)」です。
HoloLensは近年、産業界からエンターテインメント業界まで幅広い分野で活用されています。
本記事では、その特徴や企業での具体的な活用例をご紹介。
HoloLensが切り開く、未来の働き方や生活様式を体感してみましょう!
目次
|HoloLens(ホロレンズ)とは
HoloLensは、マイクロソフトによって開発されたWindows 10搭載の自己完結型ホログラフィックコンピューターです。
HoloLensを通じて、リアル空間にホログラムを配置し、その中でデジタルコンテンツを操作することが可能です。
このデバイスを頭に装着することで、周囲の環境とデジタル世界を融合させます。
例えば、製造業では設計や作業手順の視覚化、建設業では建物の設計や施工プロセスの改善、教育分野では臨場感ある学習体験、医療分野では手術シミュレーションや医療訓練など、様々なビジネスシーンでの活用が可能です。
これにより、生産性の向上や新たな創造性の追求が促進され、HoloLensの普及がますます加速しています。
|HoloLensの特徴
視界がそのままディスプレイになり、まるで魔法のように情報やコンテンツを操作できるHoloLens。
ここでは、HoloLensの具体的な特徴を3つ紹介します。
ホログラフィックの共有が可能
HoloLensは、他のHoloLensユーザーとの間でホログラフィック映像を共有することができます。
この機能を活用することで、ビジネスにおけるコラボレーションやリモート作業が大きく向上します。
例えば、複数の人々や遠隔地の人々と視界と音声を共有しながら、3Dホログラフィックを介した打ち合わせなどの共同作業が可能です。
また、マイクロソフトのクラウドサービスである「Dynamics 365 Remote Assist」「Dynamics 365 Remote Guides」と組み合わせることで、遠隔地にいる他の人とリアルタイムで作業を共有し、効率的に指示を受けることができます。
コントローラーが不要
HoloLensには内蔵カメラやセンサーが搭載されており、周囲の現実空間をスキャンし、ディスプレイに表示されるCGなどのデジタル情報と統合します。
このデジタル情報は、手や目の動き、音声、ジェスチャーによる直感的な操作が可能であり、拡大縮小や移動などを自由に行えます。
一般的なパソコンで使用されるマウスやキーボードに代わり、手の動きや声でデバイスを制御できるため、専用のコントローラー等の準備は必要ありません。(Bluetooth接続によるキーボードでも操作可能)
例えば、手のひらを上に向けて握り、パッと開くと、スタートメニューが開きます。
このような操作性の高さは、リアルとデジタルをシームレスに繋いでいると言えるでしょう。
多様なアプリケーションに対応可能
HoloLensは、マイクロソフトのWindows 10を搭載しており、それによって多様なアプリケーションに対応しています。
例えば、一般的なインターネットサービスやYouTube、Skypeなどのコミュニケーションアプリから、製造業や建設業、物流業、医療現場向けのビジネスアプリケーションまで、幅広い用途に利用できます。
特に企業向けのアプリとの組み合わせにより、業務効率化が図れるため、様々な業界での活用が進んでいます。
製造業では設計や生産プロセスの可視化、建設業では建物の設計や現場作業の効率化、医療現場では手術シミュレーションや患者の治療支援など、多岐にわたる業務においてHoloLensが活躍しています。
|HoloLens2
2019年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2019(MWC2019)」で、次世代のHoloLensとして「HoloLens 2」が発表されました。
HoloLens 2にはSnapdragon 850 CPUが搭載され、ジャイロスコープや磁気センサーなどが動きを検知します。
バッテリーは約2〜3時間持続し、Type-C USBで充電できます。
アプリはMicrosoftストアからインストール可能で、ビジネスやプライベートで役立つソフトウェアを利用できます。
HoloLens 2は、産業現場での使用を重視した最先端のMRデバイスで、業務を効率化するための革新的な製品です。
HoloLensとHoloLens2の違い
HoloLens2は、初代と比べて快適性が向上しています。
頭部を前後2箇所で支え、後頭部にパットを備えることで装着時の安定性を確保し、不快感を軽減しました。
眼球からの重心を移動させることで装着感を改善し、長時間の使用にも対応します。
視野は前モデルの2倍に広がり、視線カーソルの代わりにeye-tracking機能(視線追跡)が搭載されました。
さらに、加速度センサーや角速度センサーなどのセンサーが装備され、手の動きを検出し、細かい操作が可能です。
また、ワイヤーや外付けパックの制約がないため、自由に動き回れます。
総じてHoloLens2は、視野角や解像度、操作性が大幅に向上し、より没入感のある体験が可能になりました。
|HoloLensの活用例
以下で、実際にHoloLensを導入している企業の例をご紹介します。
その活用方法を目の当たりにすることで、よりHoloLensへの理解が深まるでしょう。
東急建設
東急建設株式会社は、Microsoft Azure Remote Renderingを導入し、リアルタイムでHoloLens上に3Dモデルが表示できるサービスが活用されています。
これにより、建築の完成形を共通のイメージとして全ての関係者が共有できるようになることで、設計や施工の齟齬をなくし、施工現場の品質や生産性の向上が期待されています。
HoloLens2を装着することで、建物の全体像や各種計測値などの詳細データをリアルタイムに確認できるほか、顧客にも立体像をイメージしやすくなります。
さらに、現場での検査作業も効率化され、設計や施工品質の向上につながると期待されています。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、全国56の販売店でHololens2を導入し、車両整備の研修や作業をサポートしています。
従来の作業では2D図面などが参考にされていましたが、立体的な作業には不十分でした。そこで、Hololens2を活用することで、車両の各所に合わせて表示されるデジタルオブジェクトを参考にして作業を行うことができ、作業中の問題点を迅速かつ正確に解決できるようになりました。
さらに、Hololens2の導入により、遠隔地と現場の円滑なコミュニケーションが可能になり、専門家が遠隔地の現場に対して作業指示を出すなどの連携がスムーズに行われています。
メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツは、自社のトレーニングセンターに100台以上のHololensを導入し、従業員の研修プロセスに活用しています。
例えば、複雑な車両の内部構造や機能など、従来の図面やテキストだけでは理解が難しかった内容をリアルな立体表示3Dで視覚化し、修理作業員が修理する際の手順やプロセスを学ぶのに役立っています。
また、販売員は、新しい車両の特徴やオプションをHololensを通じてリアルな体験で学ぶことで、顧客により詳細な情報を提供しています。
これにより、メルセデス・ベンツは従業員の研修プロセスを効率化し、学習効果を向上させると同時に、研修コストを削減することができました。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは、製造工程の複雑さや新人の大量採用といった課題に対処するため、HoloLens2を導入。
これにより、生産性向上と従業員研修の効率化を図りました。
具体的には、製造工程のチェックリストをHoloLens2上で3D表示し、習得が困難な技術も直感的に理解できるようにしました。
200段階にもわたる3D手順書を活用し、従業員はサポートを受けることなく手順を進めることに成功。
この取り組みにより、全従業員のタスク習得時間を最大70%短縮する可能性が示されました。
サントリーホールディングスは今後もHoloLensの活用を進め、生産性や従業員のスキル向上に貢献していきます。
PARCO
パルコグループは、ファッションやカルチャーを通じて50年以上にわたり、都市エンターテインメントを提供してきました。
特に、2019年にグランドオープンした「渋谷PARCO」では、XR技術を駆使した施策で注目を浴びました。
XR技術を活用した取り組みにより、開業1カ月で約2万5000人を動員。
その後もHoloLensを使ったバーチャルショップなど、パルコはXR技術の採用を進めています。
新型コロナウイルスの影響でリアルな場所でのXR体験は減少しましたが、パルコはデジタルやXRの強みを生かした施策を展開し続けています。
2020年には、名古屋PARCOにおいて、ARを活用したクリスマスイベントを成功させました。
|まとめ
HoloLensは、現実世界とバーチャル世界を融合させたMR体験、直感的な操作、スタンドアロン型の利便性を兼ね備えた革新的なデバイスです。
医療、教育、製造、エンターテイメントなど、様々な分野で活用が進んでおり、私たちの生活や働き方を変える可能性を秘めています。
本記事で紹介した活用例はほんの一例に過ぎません。
今後、HoloLensはさらに進化し、私たちの想像を超えるような新しい使い方も登場することでしょう。
未来を創造するMRデバイス、HoloLensの動向にこれからも目が離せません。