日本の林業は、高齢化や担い手不足といった課題に直面しています。

そんな中、林業業界初のメタバース「Woodeum(ウッディム)」が誕生しました。

Woodeumは、バーチャル空間での林業体験や交流などを可能にするプラットフォームです。

本記事では、Woodeum開発の背景や特徴、そして林業業界に与える影響について詳しく紹介します。

林業の未来を担うメタバースの誕生に、ぜひご注目ください!

|メタバースとは

メタバースは、仮想空間や仮想世界を指す言葉であり、この概念はギリシャ語の「メタ(meta)」(超越)と「ユニバース(universe)」(宇宙)を組み合わせて生まれました。

1992年にニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて紹介された後、テクノロジーの進化と共に注目を集めています。

メタバース内では、アバターと呼ばれる仮想空間上の自分の分身を通じて、他のユーザーと交流したり、さまざまな活動を楽しんだりすることができます。

また、世界中のユーザーが同時に参加可能な永続的な空間で、現実世界と区別がつかないほどのリアルな体験を提供することを目指しています。

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|Woodeumとは

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000138669.html

SHINING株式会社は、日本の林業界に革命をもたらす新たな試みとして、「Woodeum(ウッディム)」を開発しました。

これは、業界初となるメタバースを活用した全国の林業情報ポータルサイトとして注目を集めています。

初の展開として、いせしま森林組合(三重県度会郡)において「Woodeum(いせしま森林組合)メタバースversion」の運用が開始されました。

これにより、地域の林業者や関連業者は、メタバースを通じてより効率的な情報共有やコミュニケーションが可能となり、林業の持続可能性と発展に向けた新たな可能性が広がっています。

Woodeumは、現代の技術を駆使して林業の未来を切り開く先駆けとして、今後の動向が注目されています。

|Woodeum開発の背景

現代の日本の林業は、高齢化が進行し、次世代のリーダーシップと継続的な担い手の確保が急務となっています。

多くの林業事業体が個別に情報発信を行っている一方で、これらの事業体を統合し、連携させる中核的なポータルサイトが不足していました。

この課題を解決すべく、開発されたWoodeumは、全国の林業関係者を結びつけることを主な目的として設計され、一般向けの「Woodeum」と、専門家向けの「Woodeum Pro」の2つのバージョンを展開しています。

この「Woodeum」開発プロジェクトは、その画期的な取り組みと革新性が評価され、事業再構築補助金(中小企業庁)の採択を受けました。

現在、全国の林業事業体からの参画を積極的に募集しています。

|林業が抱える課題をメタバースは解決できるか

森林は生命の多様性と相互依存性を持ち、私たちの生活にも多大な恩恵を提供します。

しかし、現代人(とりわけ子ども)には、森林との直接的な接触や体験を制限されている現状があります。

そこでメタバースを活用することで、安全に動植物や環境に触れることができ、実際の森林での行動や判断をシミュレートすることができます。

また、木の成長過程や伐採の仕組み、森林保護の重要性などの基礎的な知識や理解を深めながら、自然のサイクルを体感することで、感性や洞察力を養うことができます。

したがって、メタバースは林業の課題を解決するための新しい教育手段として、持続可能な林業の推進や次世代の担い手育成に貢献する可能性を秘めていると言えるでしょう。

|Woodeumを使ってみた

2024年2月15日に運用が開始されたばかりのWoodeumメタバースは、無料で気軽に体験できる仮想空間となっています。

専用アプリのダウンロードは不要で、webブラウザ(https://door.ntt/44JbXex/free-angelic-universe)から入室します。

まずは、ニックネームとアバター(デフォルトorアップロードしたVRMも使用可)を決めます。

ステージは林に囲まれた森の中の一角で、ユーザー同士で画面を共有したり、チャットでコミュニケーションを取ることが可能です。

また、アイテムを森林の中に置いて好みの雰囲気にレイアウトして楽しめます。

今後は、このステージを活かして、森林体験をよりリアルに感じられるようなイベント開催などに期待が膨らみます。

|バ―チャル×林業の取り組み

メタバースは、これまで主に林業教育での使用が中心でしたが、今後はその応用が拡がる可能性があります。

森林管理や資源利用の最適化、新たな林業ビジネスの展開などが期待されているのです。

以下で、「バーチャル×林業」の取り組みを3つご紹介します。

森林空間を活用した幼児教育メタバース

これは、現実の森林環境を再現した仮想空間を用いた教育プログラムを指し、園児が自然体験を通じてレジリエンスを育むことを目的としています。

具体的な内容としては、①体験学習を通じて園児が主体的かつ能動的に学ぶこと、②ドローンを使用した樹木や地形の解析により、森林の作業や管理の効率化を図ることが挙げられます。

さらに、家具など日常生活で使用される木材との関わりを通じて、環境保護への意識や技術、思考力を育むことを強調。

また、森林に潜む危険を学び、事前に対処する能力や、生活全般での忍耐力や未来志向性を育むことも重要な目的とされています。

このような取り組みは、持続可能な森林環境を守っていくための新しい教育手法として注目されています。

メタバースで行こう森の学校

「メタバースで行こう森の学校」は、仮想空間内での森林体験を通じて自然とのつながりを深めるメタバース空間です。

現実の森への訪問を促すきっかけを提供することを目的とし、参加者は、仮想森林内で昆虫の生態を学びながらクイズを楽しんだり、竹林を散策しながら竹の特性や利用方法について学ぶことができます。

さらに、鉄道を利用して自然豊かな奥大井地域を旅する体験や、奥大井の美しい景色や話題のスポットを仮想で訪れることも可能です。

フリースペースでは、アバターとして仮想空間内で自由にコミュニケーションをとることができ、友人や知人との交流を楽しみながら森林についての体験や感想を共有することができます。

林業安全教育360VR

株式会社アルファコードは、労働災害の発生率削減を目指す全国森林組合連合会と農林中央金庫の依頼を受け、高解像度の実写VR技術を活用した「林業安全教育360VR」を開発しました。

これは、特に林業における高い労働災害率(全産業平均の約10倍)を改善するための取り組みとして注目されています。

このVRコンテンツは、使用者がVRゴーグルを装着すると、まるで現実の森林が目の前に広がるような没入感ある映像が展開されます。

360度の高解像度映像により、危険な状況下での作業のリスクを体感的に学ぶことが可能です。

時間や場所を選ばず、一人での研修が可能であり、作業中の指導者の負担を減らしつつ、研修の質を一定に保つことが期待されています。

|まとめ

Woodeumは、林業業界が抱える課題を解決し、持続可能な林業を実現するために誕生しました。

バーチャル空間上でリアルな森林体験を可能にするWoodeumは、林業への理解を深め、次世代の担い手を育成するための重要なツールとして期待されています。

メタバース技術を活用することで、林業はより安全で効率化され、多くの人々が林業に関わるきっかけとなるでしょう。

林業業界の未来を拓く重要なプラットフォームとして、今後の展開が非常に期待されます。