昨今、ゲーム業界やIT企業だけにとどまらず、世界で注目を集める「メタバース」ですが、参入を検討している企業も多いのではないでしょうか。

最近ではメタバース空間内の土地を購入する企業が増えています。

なぜ企業は現実世界ではなく、実際には存在しないデジタル空間の土地を買うのでしょうか?

また、購入した土地をどのように活用しているのでしょうか?

本記事では、メタバース上の土地の購入動機や利用方法に関する具体例を挙げつつ、詳しく説明していきます。

仮想空間の土地の特徴やメリット、最新の土地相場の情報やおすすめのメタバースプラットフォームの情報もお伝えします。

これからメタバースを活用したビジネス展開を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

|メタバースとは

メタバース(metaverse)とは、英語のmeta(超越した)とuniverse(宇宙・世界)を合成した造語で、オンライン上に構築されたもう一つの世界のことです。

現代では、テクノロジーの発達により生み出された仮想空間のことを指す言葉として用いられます。

ユーザーはアバターと呼ばれる自分の分身を操作し、メタバース空間内を自由に動き回れます。

また、メタバース空間ではアバターを通じてユーザー同士で交流が可能。

さらに、買い物や音楽フェスなどの娯楽や、ビジネス展示会やオフィスなどあらゆるコンテンツが存在しており、現実世界とほとんど変わらない活動ができます。

メタバースについての詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。

【わかりやすく解説】メタバースとは?注目される理由やビジネス活用例を紹介
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|メタバースの土地購入の意義とメリット

バーチャル空間における土地の取得に、一体どのような意義があるのでしょうか?

おそらく多くの人が抱く素朴な疑問ではないでしょうか。

ここでは、メタバースの土地を買うことの意味合いや、その仕組み、そして利点などについてご説明いたします。

そもそも土地になぜ価値がつくのか

現実であろうとバーチャル空間であろうと、土地に価値がつくのは、その「希少性」にあります。

現実の土地は、一見無限にあるように感じてしまいますが、その広さには限りがあります。

同様に、メタバースの土地も、デジタルの世界とはいえ、無限に存在するわけではないのです。

たとえば、メタバースプラットフォーム「The Sandbox」では、土地の区画数の上限が166,464個と定められています。

このように、どちらの世界の土地も「有限」であるという特性を持ち、その希少性によって、土地の価値が生み出されるのです。

メタバースの土地と現実の土地との相違点

土地の価値を生み出す希少性という点では共通していますが、メタバースの土地と現実の土地では、所有権の管理方法に違いがみられます。

現実世界の土地は、不動産登記システムによって所有権や権利関係が管理されています。

一方、メタバースの土地は、「NFT(非代替性トークン)」という独自の技術で所有権が記録され、管理されています。

NFTとは、ブロックチェーンを活用してデジタルデータに唯一無二の証明を付与する技術です。

このNFTの機能により、デジタルデータの唯一性を証明する技術が確立したことで、メタバースの土地も現実世界と同様に価値を持つようになりました。

つまり、メタバースの土地と物理的な土地は、希少性により価値が生まれる点では同じですが、所有権の管理方法には相違点があるのです。

メタバースの土地を購入するには

バーチャル空間の土地を取得するということは、実際には土地を表すNFTを買うということです。

現実世界で土地を購入する際は不動産業者に行きますが、メタバースの土地のNFTを手にするには、NFTマーケットプレイスで購入します。

NFTマーケットプレイスとは、NFTの購入・売却ができるオンライン上のプラットフォームのことで、誰でも気軽にNFTの取引が可能です。

NFTマーケットプレイスはたくさん存在しますが、代表的なところでは、世界最大級のNFTマーケットプレイスの「OpenSea」が有名です。

国内では、仮想通貨取引所のコインチェックが運営する「Coincheck NFT」などがあります。

土地NFTの購入方法や必要な準備については、記事の後半で詳しく説明しているのでそちらをご覧ください。

メタバースの土地を購入するメリット

プラットフォームによっても変わりますが、メタバースの土地を取得すれば、建物を建てたり、店舗を出店したり、イベントを開催するなど、さまざまな権利が得られます。

これにより、メタバース内で収益化できたりもします。

また、プラットフォームが人気になれば、土地NFTの価格上昇も期待できます。

早い段階で土地を購入しておくことで、大きな収益を得られるかもしれません。

このように、メタバースの土地を購入することは、ビジネス活用、資産価値の向上、コミュニティへの参加など、様々な面でメリットがあります。

メタバースの土地利用の方法は、次のセクションで詳しく解説します。

|メタバースの土地活用方法

メタバースの土地は、さまざまな方法で活用することができます。

ここでは、代表的な活用方法を4つ紹介します。

デジタル不動産として運用

メタバースの土地は、デジタル不動産として運用することが可能です。

土地を購入し、他のユーザーに賃貸したり、転売したりすることで、収益を得ることが可能です。

実際に、メタバースプラットフォーム「The Sandbox」の土地は、「LAND」と呼ばれるNFTで取引されています。

2021年10月にフェイスブックがメタバースに参入すると発表して以来、LANDの価格は数ヶ月で500%も高騰しました。

このように、メタバースの土地は、デジタル不動産として運用することで、収益を生み出す資産となり得ます。

店舗出店

メタバースの土地を購入すると、バーチャル空間内に店舗を出店できます。

現実世界のブランドでメタバース内に店舗を構えたり、メタバース発のブランドを出店するなど、様々な形態が考えられます。

バーチャルな店舗体験を提供することで、新たな顧客獲得やブランド認知度の向上が期待できます。

また、リアルな店舗出店に比べると、圧倒的低コストで出店できます。

その上、従来のオンラインショッピングにはなかった新たなショッピング体験を提供できるのも大きな魅力です。

イベント開催

メタバースの土地を利用して、仮想空間内で特別なイベントを開催できます。

コンサートや展示会、講演会など、様々なイベントが開催可能です。

イベントを通じて、ユーザー同士の交流を促進したり、ブランドのプロモーションもできます。

現実世界では考えられない仮想空間ならではの演出をすることで、高いプロモーション効果を発揮するでしょう。

また、地理的な制約がないため、世界中から集客できるのも強みです。

メタバース広告

メタバースの土地は、新しい広告メディアとしても活用できます。

メタバース内の広告は、ユーザーに対してこれまでにない没入感のある広告体験を提供できます。

現実世界の平面的な広告とは異なり、ユーザーが広告の中に入り込んで、より印象に残る体験ができるのがメタバース広告の特徴です。

さらに広告主は、ユーザー属性を考慮したターゲティング広告を実施することで、より高い広告効果を期待できるでしょう。

|メタバースに土地購入した企業とその活用事例

メタバースへの注目が高まる中、すでにたくさんの有名企業がメタバースの土地を購入し、様々な活用方法を模索しています。

ここでは、メタバースの土地を購入した代表的な企業とその活用事例を紹介します。

エイベックス

出典:https://avex-technologies.com/news/pressrelease/358/

エイベックスは、2022年1月、「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」のLANDを購入し、メタバース事業に参入しました。

エイベックスは、サンドボックスの土地を活用して、バーチャルライブ会場「エイベックスランド」を開発すると発表。

このバーチャル会場では、同社所属のアーティストのライブを開催したり、NFTグッズを販売したり、ファンとの交流の場とする構想です。

ファンは、アバターを通じてライブ会場に参加し、臨場感のあるライブ体験やファン同士との交流を楽しめます。

メタバースを通じて、アーティストとファンの新しい接点を創出するエイベックスの取り組みは、エンターテインメント業界におけるメタバース活用の先行事例として注目されています。

GUCCI

出典:https://youtu.be/zLRBq4lDasI?si=9vGQjO7VCgwpf8T7

イタリアのラグジュアリーブランドGUCCIは、2022年2月に「The Sandbox」のEstate(6×6サイズ)を購入したと発表しました。

2023年11月、GUCCIはこの土地を活用して、ブランドの世界観を伝えるメタバースコンテンツ「Gucci Cosmos Land」を公開しました。

メタバースを活用することで、ファッションとデジタルコンテンツが融合した革新的な体験を提供しています。

Gucciは新しい顧客層へのアプローチ、ブランド認知の拡大、エンゲージメントの獲得を期待しています。

Gucci Cosmos Landは、アパレルブランドにおけるメタバース活用の可能性を示す注目の事例です。

adidas

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000809.000003301.html

ドイツのスポーツ用品メーカーadidasは、「The Sandbox」の土地Estate(12×12サイズ)を購入しました。

adidasは、サンドボックスの土地を活用して、ブランドの世界観を表現するバーチャル空間を構築し、ユーザーにユニークな体験を提供することを目指しています。

また、土地の取得と並行して、NFTコレクションのリリースやバーチャルアイテムの販売なども行っており、メタバースにおける総合的なブランド戦略を展開しています。

adidasのメタバース土地購入は、スポーツブランドがデジタル領域で新たな価値創造の可能性を示しています。

Ubisoft

出典:https://youtu.be/jP73-jcMNwU?si=9EIxmR1r16-EbCmG

フランスに本社を置く大手ゲームメーカーのUbisoftは、「The Sandbox」の土地Estate(24×24サイズ)を購入しています。

UbisoftのIPである「Rabbids」に登場するブロック状のうさぎのキャラクターを使ったメタバース体験を提供する予定となっています。

UbisoftのシニアマネージャーであるGuillaume Mammi氏は、「The Sandboxは、Rabbidsの世界に新たな楽しい遊び場を追加するものであり、Ubisoftにとっては、自社ブランドでメタバース体験を実験する絶好の機会となる」とコメントしています。

Warner Music Group

出典:https://twitter.com/thesandboxjp/status/1486799811030384643

世界3大レーベルのひとつとされている米国のレコード会社Warner Music Groupは、「The Sandbox」のLand(24×24)を購入しています。

仮想空間内では、音楽をテーマとした「Warner Music Group LAND」が創設されており、トップアーティストによる音楽コンサート体験ができる予定となっています。

スクウェア・エニックス

出典:https://youtu.be/-QEOTkxyQ-o?si=c6fl815REBc8oQ-N

日本の大手ゲーム会社であるスクウェア・エニックスは、The Sandboxとのパートナーシップを通じて、メタバース空間での事業展開を進めています。

同社は、The Sandbox内に「ダンジョン シージLAND」と呼ばれる仮想空間を構築しました。

ここでは、同社の人気RPG「ダンジョン シージ」のインタラクティブな体験を提供します。

スクウェア・エニックスは、メタバースの土地を活用することで、ゲームIPの新しい展開方法を模索しています。

メタバース空間での「ダンジョン シージ」は、プレイヤーに新鮮な体験を提供し、ゲームの可能性を広げる取り組みと言えるでしょう。

同社のメタバース戦略は、ゲーム業界におけるメタバース活用の可能性を示す先行事例として注目されています。

|メタバースの土地購入可能なおすすめプラットフォーム5選

メタバース内の土地を取得するには、バーチャル空間のサービスを提供するプラットフォームを活用する必要があります。

ここでは、土地購入で人気の高い5つのメタバースプラットフォームを紹介します。

それぞれの特徴や利用方法を理解することで、自分に合ったプラットフォームを選ぶことができるでしょう。

The Sandbox(ザ・サンドボックス)

The Sandboxは、メタバース業界でも特に有名なプラットフォームの一つです。

登録ユーザー数は200万人を超えており、前のセクションで紹介した企業事例は、ほぼすべてThe Sandboxを活用したものです。

先ほど紹介したように、個人だけにとどまらず、世界的大手企業がSandboxの土地を購入しています。

The Sandboxの最大の特徴は、ゲーム制作ツール「Game Maker」と3Dモデリングツール「VoxEdit」を提供している点です。

これらのツールを使うことで、プログラミングの知識がなくても、誰でも簡単にオリジナルゲームやアセットを制作できます。

制作したゲームは、メタバース上で公開でき、アイテム売買などを通じて収益化も可能です。

The Sandboxは、ゲーム制作とメタバースを融合させた新しいタイプのプラットフォームとして注目を集めています。

以下の記事で詳しく解説しています。

【初心者向け】The Sandbox(ザ・サンドボックス)とは?始め方や遊び方、魅力を紹介!
【初心者向け】The Sandbox(ザ・サンドボックス)とは?始め方や遊び方、魅力を紹介!

Decentraland(ディセントラランド)

Decentralandは、ブロックチェーン上に構築された分散型のメタバースプラットフォームです。

サンドボックスとよく似た特徴を持っています。

ユーザーは、プラットフォーム内の土地を購入し、コンテンツを制作・公開が可能。

土地やアイテムはNFTとして売買可能で、ゲーム内通貨には「MANA」が使用されます。

Decentralandの特徴は、DAOと呼ばれる分散型自律組織による運営形態です。

ユーザーの投票によってプラットフォームの開発や運営の方向性が決定されるため、ユーザーの意見が直接反映される仕組みになっています。

この民主主義的なアプローチは、他のメタバースプラットフォームにはない、Decentralandならではの特徴です。

単なるゲームプラットフォームとしてだけでなく、ユーザー主導の仮想社会の実験の場としても注目されています。

以下の記事で詳しく解説しています。

【初心者向け】Decentraland(ディセントラランド)とは?始め方や遊び方を解説
【初心者向け】Decentraland(ディセントラランド)とは?始め方や遊び方を解説

Voxels(ボクセルズ)

続いて紹介するのは、Voxelsです。

Voxelsは、ブロックチェーン上に構築されたしたメタバース内を自由に探索するゲームで、サンドボックスやディセントラランドと同じような特徴があります。

Voxelsの土地は全てNFTとして販売されており、売買するためにはイーサリアムが必要です。

Voxels内の土地を購入すれば、広告やNFTアートを販売することができます。

上手く集客ができれば、売上を作ることもできるかもしれません。

Otherdeed for Otherside(アザーディード・フォー・アザーサイド)

Otherdeed for Othersideは、2022年4月にローンチされた新しいメタバースプラットフォームです。

ローンチ時には、土地の販売が即日完売し、売上が410億円を超えるなど、大きな注目を集めました。

Otherdeed for Othersideの土地は、以下の5つのカテゴリーに分類されます。

・Infinite Expanse

・Cosmic Dream

・Rainbow Atmos

・Chemical Goo

・Biogenic Swamp

これらのカテゴリーは、土地の希少性や特徴を表しており、それぞれ異なる価値を持っています。

中でも「Biogenic Swamp」は、最も希少性が高く、価値のある土地とされています。

Otherdeed for Othersideは、Yuga Labsという企業が開発したメタバースで、同社が手がけた有名なNFTコレクション「BAYC」とも関連しています。

このつながりが、初期の成功につながったと考えられます。

ローンチから日が浅いプラットフォームではありますが、独自の世界観と経済システムを持ち、今後の発展が期待されるメタバースです。

Somnium Space(ソムニウムスペース)

Somnium Spaceは、VR(仮想現実)技術を活用した没入感の高いメタバースプラットフォームです。

ユーザーは、3Dアバターになりきって仮想空間を冒険し、他のユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを楽しめます。

土地は、NFTとして販売されており、所有者は自由にコンテンツを制作・公開が可能です。

また、VR機器との親和性が高く、よりリアルな体験を提供しています。

Somnium Spaceは、VRとブロックチェーン技術を組み合わせた、次世代のメタバースプラットフォームとして注目を集めています。

|メタバースの土地購入の相場

具体的な価格の話の前に、まず理解しておくべき点は、メタバースの土地は価格変動が非常に激しいということです。

また、プラットフォームの将来性や規制の変更などによる価値の暴落など、不確定要素も存在します。

メタバースの土地購入に際しては、十分な情報収集と慎重な判断が必要不可欠です。

その上で、2024年3月末現在の土地NFTのおおよその価格を以下に示します。

プラットフォーム名最安値 (円) *2024年3月末現在
Voxels(ボクセルズ)約3万円
The Sandbox(ザ・サンドボックス)約10万円
Otherdeed for Otherside(アザーディード・フォー・アザーサイド)約10万円
Somnium Space(ソムニウムスペース)約10万円
Decentraland(ディセントラランド)約100万円

この表は最安値を示したものであり、人気エリアや希少性の高い土地はさらに高額で取引されています。

|メタバースの土地購入に必要なもの

メタバースの土地を購入するには、基本的に以下の3つが必要です。

・暗号資産取引所の口座

・メタバースで使用される仮想通貨

・メタマスク(仮想通貨ウォレット)

まず、日本円を仮想通貨に交換するために暗号資産取引所の口座開設が必要です。

国内でも数十か所の取引所がありますが、開設だけなら基本無料でできます。

開設ができたら入金して仮想通貨に交換しましょう。

メタバースの土地を買うための仮想通貨は、プラットフォーム毎に異なるものの、多くの場合「イーサリアム(ETH)」で取引されるケースが多いです。

交換前に確認しておきましょう。

次に、仮想通貨のウォレット(仮想通貨のお財布)のアカウントを作成します。

仮想通貨ウォレットも様々な種類がありますが、メタマスクやファントムウォレットが有名です。

購入準備の大まかな流れは以上です。

詳しくは以下の記事をご参考ください。

メタバースの土地の購入方法は?流れやおすすめのプラットフォームを紹介
メタバースの土地の購入方法は?流れやおすすめのプラットフォームを紹介

|まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事では、メタバースの土地について解説し、土地購入のメリットや人気のプラットフォーム、購入に必要な準備など、詳しくご紹介しました。

メタバースの土地は、新しいビジネスチャンスとして注目を集めていますが、同時に価格変動リスクがあることも理解しておきましょう。

購入に際しては、土地購入の目的や予算に合ったプラットフォームをお選びください。

メタバースの土地は、新たなビジネスプロモーションやコミュニティ活動など、様々な可能性を秘めています。

本記事が、メタバースの土地購入に関心を持つ方の一助となれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。