VRゴーグルを使用する際に、VR酔いで折角のVR体験が上手くできないという方はいらっしゃいませんか?

ゲームのようなエンタメ分野から、製造、教育、医療など幅広い分野で活用されているVR技術ですが、人によってはVR酔いしやすく、期待している体験ができないという方もいらっしゃるかと思います。

今回は、VR酔いについての基本的な知識から、対策までをご紹介します。
VR体験をより楽しむために、ぜひ最後までご覧ください。

VR(仮想現実)とは?体験できる仕組みやARとの違いについて解説
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|VR酔いとは?

まず、そもそもVR酔いとはどういうものなのか説明します。

VR酔いとは、VRゴーグルを装着した状態でVR映像を体験している時に、めまいや吐き気、不快感などの症状が起こる状態を指します。

車や電車に乗っているときに起こる「乗り物酔い」に近い症状になります。

|VR酔いの原因

「VR酔い」が起こる原因には、私たちの体がもつ空間知覚のメカニズムが大きく関わっています。
私たちの体の位置や動きは、以下3つの器官から送られてくる情報から感知されています。

・視覚:目から入る、周囲の風景の動きや変化の情報
・前庭感覚:平衡感覚を司る耳(内耳)からの加速や減速、身体の傾きの情報
・体性感覚:筋肉や関節から伝わる、身体の揺れや振動の情報

通常は、これらの感覚で感知された情報が脳でまとめられ、自分の動きや位置を認識できているのです。

例えば、ジェットコースターのVR映像でVR酔いをしてしまう場合で考えてみましょう。
視覚からは「ジェットコースターに乗っている」「高速で移動している」といった激しい動きの情報が脳に送られます。

しかし、実際の身体は椅子に座っているだけなので、前庭感覚や体性感覚からは「動いていない」という情報が送られます。

このように、身体が「動いている」という視覚情報と、「動いていない」という身体感覚の間に生じる矛盾が、脳を混乱させ、VR酔いを引き起こすのです。

|VR酔いになりやすい人

以下に当てはまる人が必ずしもVR酔いになるというわけではありませんが、VR酔いしやすい人の特徴をご紹介します。

乗り物酔いしやすい人

VR酔いが起こるメカニズムは乗り物酔いと同様に、先ほどご紹介した感覚のズレが原因です。
その為、日常的に乗り物酔いをしやすい人は、VR酔いもしやすいと考えられます。

年齢が低い子供

一般的な乗り物酔いの場合、三半規管の感受性や平衡感覚を司る前庭小脳が発達し始める4歳くらいから始まり、9歳でピークに達します。

その後20歳前後になると、前庭小脳の老化が始まり、刺激への反応が鈍くなるので、大人は比較的乗り物酔いしにくいというデータがあります。

性別(女性)

一部の研究では、明確な原因が断定されていないものの、男性よりも女性の方が乗り物酔いしやすい傾向があると示唆されています。

体調に問題がある人

体調もVR酔いの発生に影響しやすいポイントです。
睡眠不足や疲労、気分が優れない場合などは、特にVR酔いを引き起こしやすいと言われています。

しかし、「VR酔い」は乗り物酔いと違い、今まで経験したことのない新たな刺激パターンで起きるため、大人の方でもVR酔いになる可能性は十分に考えられます。

|VR酔いしやすいコンテンツ

では、VR酔いしやすいコンテンツはどういったものが挙げられるでしょうか。
VR酔いしやすいコンテンツの特徴は、以下となります。

激しい移動や加速・減速があるもの

ジェットコースターやフライトシミュレーター、レースゲームなど、VR内で乗り物に乗り、高速かつ激しく移動するコンテンツは、視覚と身体感覚のズレが大きくなり、VR酔いを引き起こしやすいです。

強制的な視点移動(カメラワーク)があるもの

ユーザーの意志に関係なく、カメラが自動的に動いたり回転したりするコンテンツは、特に脳が身体の動きと映像の動きの矛盾を強く感じてしまうため、酔いやすい傾向があります。

一人称視点(FPS)のゲーム

一人称視点のアクションゲーム(FPS)は、ユーザーの操作に応じて視点が素早く動き回るため、VR酔いしやすいジャンルの一つです。
キャラクターの動きと自分の身体の動きが一致しないことが、脳の感覚のズレを感じやすくなってしまいます。

低フレームレートのコンテンツ

VR映像のフレームレートが低く、映像の再生中にカクついたり遅延したりすると、頭の動きと映像の更新タイミングにズレが生じます。
このわずかな遅延が、脳にとってより不自然な感覚となり、VR酔いを誘発します。

|VR酔いの対策

では、VR酔いにならないために、どのような対策があるのでしょうか。
以下では、VR酔いを防ぐ方法についてご紹介していきます。

自分に合ったIPD(瞳孔間距離)を知る

IPD(瞳孔間距離)とは、両目の「黒目」同士の距離のことを指します。

自分のIPD(瞳孔間距離)と、VRヘッドセットのレンズの距離を合わせることで、”見にくさ”を軽減し、VR酔いの軽減に繋がります。

IPD(瞳孔間距離)が異なった調整のまま装着すると、ピントが上手く合わないまま映像を体験してしまうため、視覚へ負担がかかってしまい、VR酔いになってしまいます。

このIPD(瞳孔間距離)はアプリなどでも測ることができるため、ぜひ試してみてください。

頭を激しく動かさない

「頭を激しく動かさない」ことも、VR酔いを抑える上で有効であると言われています。

頭を急激に動かすと、画面の変化と頭の動きとの間にタイムラグが生じ、このタイムラグがVR酔いの原因となってしまう為です。

また、頭を激しく動かさないことに加え、初めのうちは「映像の動きが激しいコンテンツを避ける」というのも、VR酔いを抑えるには有効です。

映像が激しく動けば動くほど、脳の認識と体の認識もズレやすくなり、VR酔いに繋がります。

VR初心者のうちは動きが緩やかなコンテンツや視点移動が少ないコンテンツから、徐々に体を慣らしていくのが良いでしょう。

体調を管理する

体調がすぐれない時は乗り物酔いしやすいように、VR体験をする際でも、体調がすぐれないとVR酔いしやすくなることが知られています。

睡眠不足や不規則な生活、疲労など、当てはまる人はまず休息をとり、回復してからVRを使用することをオススメします。

また、VR体験中に不調を感じた際は、無理をせずにこまめに休憩をとるようにしましょう。

酔い止めを飲む

VR酔いが乗り物酔いと似たメカニズムであることから、酔い止め薬の服用も即効性が高く有効とされています。

勿論、酔い止め薬の服用によってVR酔いが起こらないというわけではありませんが、VR酔いの症状が酷くなったり、何時間も症状が続いたり、といった不快な状態は防ぐことができます。

|VR酔いの治し方

ここまでは、VR酔いを防ぐ対策について説明してきましたが、ここからはVR酔いになってしまった場合の対処法を紹介します。

VR酔いになってしまった場合、まずはすぐにゲームを中断しましょう。

VR酔いが起きる時は、交感神経が優位な状態になっているので、ゆっくり規則正しく深呼吸をして副交感神経を優位にしましょう。

また、横になれる場所があれば横になって目を閉じ、頭を動かさないようにするのも有効です。

脳の混乱によって引き起こされるVR酔いには吐き気止めは効果を発揮しないため、服用は控えましょう。

|VR酔いを軽減する技術

ここまでVR酔いにならないために、VR酔いの予防方法や、なってしまった時の治し方など、ユーザー側でできることについてご紹介してきましたが、ユーザー側の対策だけでは100%VR酔いを防止できるということではありません。

ここからは、VRデバイスやコンテンツの開発者側のVR酔い軽減への取り組みについてご紹介していきたいと思います。

VRゴーグル

VR体験がより良いものになるよう、VRゴーグルも日々進化しています。

特にVRゴーグルの改良に力を入れているのがHTCやOculusをはじめとする有名VRゴーグルのメーカーです。

VR酔いのないVRゴーグルの実現のために、

・高解像度
・広い視野角
・高いリフレッシュレート

など自然に近い見え方になるような技術開発に取り組んでいます。

例えば、OculusQuestと次世代機OculusQuest2とを比較すると、視野角はともに110度ですが、解像度は1,600×1,440から1832×1920に、リフレッシュレートは72Hzから90Hzとグラフィック性能が大きく進化しています。

VRコンテンツ

VRゴーグルメーカーと並んで、VRコンテンツの開発者もVR酔い軽減に注力しています。

VRコンテンツプラットフォームを運営するOculusやSIEは、VRコンテンツ開発者向けにVR酔い予防のためのコンテンツ開発ガイドラインを発表しています。

両者ともに強調しているのが脳と身体の認識のタイムラグの原因となる描画遅延です。
描画遅延を避けるために90Hz以上のフレームレートを維持することなどが求められています。

また、コンテンツ内に視覚以外の情報も感知できるように、振動などのアクションも取り入れることで、VR酔いを軽減する工夫も入れられたりしています。

コントローラー・チェアなどの周辺機器

そのほかにもVR酔いを軽減するために、周辺機器の開発が進められています。

例として挙げられるのが、以下の周辺機器です。

・Omni社:「Virtuix Omni」
・KATVR社:「KATWALK C」
・Yaw社:「Yaw2」

「Virtuix Omni」と「KATWALK C」は、プレートやルームランナーの上での移動とVR空間での移動を連動させるコントローラーとなっています。

実際に移動している感覚を得ることで、身体と脳の移動の認識のズレを最小限にすることにより、VR酔いの予防につなげることが可能です。

Yaw社の「Yaw2」は、VR空間での動きに合わせて椅子が傾くVR体験専用チェアです。

この「Yaw2」も、VR空間での体の傾きを再現することでVR酔いのリスクを軽減することが可能です。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、VR酔いをしてしまうという方やVR酔いの原因や解決法が気になる方に向けて、VR酔いの原因と対策方法やVR酔いを軽減する技術についてご紹介させていただきました。

近年のVRコンテンツは、エンタメ的なものから、ビジネス的なものまで、没入度の高いコンテンツが数多く開発されてきています。
これらのコンテンツを十分に楽しめるように、この記事が皆さんのVR酔いへの対策のお役に立てば幸いです。

弊社では、VRをはじめとする様々なXRコンテンツの受託開発を行っております。
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