「VR元年」と呼ばれた2016年から今年2024年で8年目です。

しかし、日常的にVRを利用している方は非常に少ないのが現状になります。そのため、

「VRは結局いつになったら流行る?」

「VR技術の将来性は?」

といった疑問を抱かれる方も多いでしょう。

そこで本記事では、VR(Virtual Reality)の2024年時点での現状の市場規模と将来予測に関するデータをまとめ、VRの将来性を具体的に予測していきます。

2024年に入り日経平均株価も過去最高を更新するなど、光明が少しずつ見えてきた日本経済。

個人による投資も活発になってきている中で、VRは投資領域としても非常に注目されています。

本記事を参考に、ぜひVR技術の現状を把握して投資判断の一助としてください。

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|そもそもVR(Virtual Reality)とは?

VR(Virtual Reality、バーチャル・リアリティ)は、日本語で「仮想現実」とも呼ばれ、現実とは異なる環境をデジタルで作り出し、それをリアルな体験として感じられる技術です。

専用のヘッドセットやゴーグルを使用して、360度の仮想空間に没入し、そこで視覚や聴覚などの感覚を通じて仮想世界を体験します。

主に、視聴型(単に映像を見る)と参加型(映像内での交互作用が可能)の2つの形態があります。

VRはエンターテインメント、教育、医療など多岐にわたる分野で応用されている注目の技術です。

例えば、アトラクションでリアルな体験を提供する、教室での授業や遠隔医療の支援、企業のトレーニングや不動産業界での物件案内など、実用的な利用が拡がっています。

2016年にOculus社(現在はMeta社に買収)からOculus Riftが発売されたことで認知度が上がり、2016年は「VR元年」とも呼ばれました。

現在ではさらに多くのVRゴーグル(ヘッドセット)が各社から販売されており、今後私たちの生活に浸透することが期待されています。

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AR(Augmented Reality)との違い

出典:https://pokemongolive.com/ja/

VRとよく似た技術にAR(Augmented Reality、オーグメンテッド・リアリティ)があります。日本語では「拡張現実」と訳されるのが一般的です。

両者はよく同じもののように扱われますが、厳密には全く異なる技術です。

まずARとは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。

例えば、スマホやタブレット、専用のメガネを通して見ると、実際の景色にバーチャルのオブジェクトや情報が表示されるというものです。

「ポケモンGO」や「ドラクエウォーク」をプレイしたことがある方なら理解しやすいかもしれません。

対してVRとは、完全に仮想の環境にユーザーを没入させる技術です。

ユーザーはVRゴーグル(ヘッドセット)を装着することで、現実の世界から隔離された360度のデジタル空間に入り込みます。

この空間では視覚的にも聴覚的にも、全く新しい環境を体験することができます。

つまり、ARは現実世界をベースにデジタル情報を加えて拡張するのに対し、VRはユーザーを完全に異なる仮想環境に引き込むことが大きな違いです。

ARは現実との融合を促すのに対して、VRは現実からの脱却を促します。

それぞれの技術が提供する体験の違いは、その使用目的と応用範囲に大きく影響を与えるので間違えないように注意しましょう。

VRに将来性はある?現状の市場規模から今後の展望を予測!
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メタバースとの違い

2022年は「メタバース元年」とも呼ばれ、新語・流行語大賞にメタバースが選出されるなど、まさにメタバースが広く認知される年となりました。

メタバースは日本語で「仮想空間」と訳されますが、VRは「仮想現実」と訳されるので、多くの人がメタバースとVRは同じものだと考えています。

しかし、メタバースとVRは似ているようで全く違う概念です。

まず、メタバース(Metaverse)とは「超越」を意味する英語の「Meta」と「宇宙や空間」を意味する「verse」を組み合わせた造語です。

メタバースは、インターネット上に存在する広範囲かつインタラクティブ(双方向的)な仮想空間を指し、その中でユーザーはアバターを通じて交流や活動ができます。

ここでの体験は、単にゲームや特定のシミュレーションだけでなく、社会、経済活動、教育など日常生活の多面的な側面を含むことが特徴です。

対してVRは、特定のハードウェア(例えばVRヘッドセット)を用いて、ユーザーを完全に仮想環境に没入させる技術です。

これは主に視覚と聴覚を刺激して、ユーザーが仮想世界に「いる」感覚を得られるように設計されています。

したがって、VRはメタバースを実現するための一つの技術に過ぎません。

メタバースの実現にはVRの他にも拡張現実(AR)、人工知能(AI)、ブロックチェーンなどの技術が組み合わされています。

メタバースは技術の集合体であり、その中の一部としてVRが存在すると考えるのが適切です。

このように、メタバースとVRは異なるが、互いに補完し合う関係にあると言えます。

メタバースとVRの違いは何?活用事例・代表サービスをもとにわかりやすく解説!
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|【2024年最新】VR市場の現状と将来予測まとめ

先述したように、2022年は「メタバース元年」とも呼ばれ、それ以降メタバースの注目度は右肩上がりで向上し続けています。

しかし、「具体的にどれくらい注目されているの?」と気になる方も多いでしょう。

ここでは、2024年時点でメタバースがどれほど注目されている技術なのか、具体的なデータをもとに現状と将来性について紐解いていきましょう。

世界のVR/ARヘッドセットの販売台数は前年度比+46.4%と急回復

出典:IDC

IDCが2023年12月に公表したレポートによると、世界のVR/ARヘッドセット市場は、2024年に前年度比で46.4%の大幅な回復を遂げ、810万台から1186万台へと急増しました。

この急回復は、新しいモデルの発売や既存製品の好調な売れ行きが背景にあります。

特にMetaのQuest 3やソニーのPlayStation VRが引き続き強い需要を示していることが大きな要因です。

2023年はマクロ経済の逆風と、それに伴う家庭消費の抑制、企業支出の鈍化が市場を圧迫しましたが、2024年に入るとこれらの影響が緩和されて消費者の信頼が回復しました。

また、新技術への適応とコンテンツの拡充が進むことで、VR/AR技術はさらに日常生活に根ざし始めています。

特に注目されているのが、Appleの「Vision Pro」の市場への登場です。

Vision Proは発売されると即座に高い注目を集めましたが、その高価格が初期の販売台数を抑える要因となる見込みです。

しかし、このデバイスが市場に新たな潮流を生み出し、長期的な影響を与える可能性が高いとIDCは分析しています。

AR市場は2023年に50万台の出荷を記録し、2027年には680万台に達すると予測されており、このセグメントでは年平均成長率が96.5%に達すると見込まれています。

VR市場も、2023年の減少から立ち直り、2027年には2190万台の出荷が予測されています。

このように、AR/VR技術は今後も強力な成長を続け、多様な産業や日常生活での利用拡大が期待されています。

国内のVR/ARヘッドセットの販売台数は前年度比+67.4%と好調

出典:2023年通年 国内AR/VRヘッドセット市場規模|IDC Japan

IDC Japan 株式会社が2024年4月に公表したレポートによると、2023年の国内のAR/VRヘッドセットの出荷台数は前年比で驚異的な67.4%の増加を見せ、総数で56.6万台に達しました。

この顕著な成長は、主にソニーが新しく発売したPSVR2の影響が大きいです。

VR市場では、PSVR2以外にもMetaのQuest 3が対前年比で大幅な増加を達成し、市場全体の拡大を促しています。

ARヘッドセットについても、32.3%の成長率を記録し、特にXREALやRokidといった比較的低価格で消費者向けのデバイスが市場を牽引しました。

一方、コマーシャル用デバイスはマイクロソフトの市場撤退後、適切な代替品がまだ現れておらず、Magic Leapのような予定されていた製品が期待に応えるには至っていません。

こうした市場の動向から、VR技術は特にゲーム分野での用途が確立されており、安定した成長が見込まれる一方で、ARは新しい用途の開発が進んでいるものの、まだ確固たる市場を築いているとは言い難い状況です。

VRの認知度は約6割で過去最高だが利用率は伸び悩む

ネットリサーチ会社「アイブリッジ株式会社」が実施したアンケートによると、日本国内でのVRの認知度は約6割と過去最高を記録していますが、利用率は伸び悩んでいることが明らかになりました。

認知度は63.32%に達し、多くの人々がVR技術の存在を知っていますが、実際にVRを利用したことがある人は全体の約17.22%にとどまっています。

VR認知者のうち現在利用者が9.78%、過去利用者が7.44%となっており、「使ったことがない」と回答した人が82.78%と圧倒的に多いです。

ただし、現在の利用者の中で「これからも使っていく」と答えた人が約9割(88.00%)と非常に高い継続利用意向を示しており、既存ユーザーの間では高い満足度があり、ポテンシャルの高さをうかがわせます。

(参考:アイブリッジ株式会社)

世界のメタバース市場は約124兆円規模へ成長

出典:令和5年版 情報通信白書|総務省

総務省が発表している令和5年版「情報通信白書」によると、2022年には約8兆6144億円だった世界のメタバース市場は、2030年までには約123兆9738億円にまで拡大すると予測されています。

このデータから世界のメタバース市場の年平均成長率(CAGR)を算出すると、世界のメタバース市場は2030年までに「約39.6%」もの驚異的な速度で成長することになります。

世界市場においては、以下の企業が主に市場を牽引していくことになるでしょう。

企業名取り組み
Meta Platforms(旧Facebook)Meta QuestやHorizon Worldsなどの仮想環境開発に注力
MicrosoftMicrosoft MeshやHoloLensを含む、企業向けAR/VRソリューション提供
AppleAR/VR技術の研究開発を進行中、空間コンピューティングデバイスVision Proをリリース
GoogleARコア技術の提供、メタバース関連イノベーション推進の潜在力
NvidiaGPU技術による計算能力提供、仮想現実環境作成とAI推進に貢献
Epic GamesUnreal Engine提供者としての3Dコンテンツ開発でゲーム・エンターテイメント市場をリード

国内のメタバース市場は約5000億円規模へ成長見込み

出典:令和5年版 情報通信白書|総務省

総務省が発表している令和5年版「情報通信白書」から分かるように、日本のメタバース市場も大きな成長を遂げています。

2022年度の市場規模は1,825億円となり、前年度比で145.3%の増加を記録しました。この成長は、国内でのメタバースへの関心と投資の増加によるものです。

また、2026年度にはさらに拡大して1兆42億円に達すると予測されており、これはメタバースが日本国内でも重要な技術として定着しつつあることを示しています。

このデータをもとに日本国内のメタバース市場の年平均成長率(CAGR)を算出すると、国内のメタバース市場は2026年までに「約53.2%」もの驚異的な速度で成長していくことになります。

したがって、短期的には世界のメタバース市場よりも日本国内の成長速度の方が一回り早いのです。

日本はアニメ・マンガ大国ということもあり、メタバースとの親和性が非常に高く、AIの研究開発においても日本の潜在性が高く評価されているのも要因の一つといえます。

|VRによって成長が期待できる業種と注目国内企業

ここまで、さまざまなデータをもとにVR市場の将来性を紹介してきました。

では、具体的にVRによって成長が期待できる業種(セグメント)や企業はあるのでしょうか?

ここでは、成長見込みの業種に分けて、その業種での注目国内企業をご紹介します。

【ゲーム・エンターテイメント】没入体験を活かした技術の進展が鍵

ゲームやエンターテインメントはVR技術と最も相性の良い業種です。

これは、VRが提供する没入型体験が、ゲームプレイやエンターテインメントのリアリティと臨場感を格段に向上させるためです。

プレイヤーはVRヘッドセットを通じて、実際にその場にいるかのような感覚を得ることができ、これが大きな魅力となっています。

VRは単なるビデオゲームの進化形としてだけでなく、コンサート、スポーツイベント、映画など、さまざまなエンターテインメントの形態で利用されています。

例えば、バーチャルコンサートではファンが世界中どこからでも参加でき、アーティストとの新たなつながりを感じることができます。

また、VR映画は視聴者を物語の世界に直接引き込むことで、従来の映画体験を超えた感動を提供します。

この業種における注目企業は以下の通りです。

VRへの取り組み
ソニーPlayStation VR (PS VR) – PlayStation 4および5用のVRヘッドセット。
任天堂Nintendo Labo VR Kit – Switch用のDIY VR体験キット。
クラスター株式会社Cluster – バーチャルイベント参加用のVRプラットフォーム。
HIKKYVirtual Market – VR内での大規模展示会・マーケットプレイス。
株式会社360Channel360Channel – 360度ビデオコンテンツの制作・配信プラットフォーム。
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【建築・不動産】デジタルツインの活用が進む

建築・不動産業では、主にデジタルツインを活用したVRソリューションが活発化しています。

デジタルツインとは、実世界の建物や施設をデジタル情報として詳細に再現したモデルのことを指します。

これにより、建築家やエンジニア、不動産開発者は、実際の建設や改修を行う前に、仮想環境内で建物や施設の見た目や機能を詳細に検証・調整することが可能です。

VRとデジタルツイン技術の組み合わせは、建築と不動産業界においてプロジェクトの可視化、評価、プロモーションの方法を根本から変えており、今後もその活用範囲と影響力は拡大していくことが予想されます。

この業種における注目企業は以下の通りです。

VRへの取り組み
住友不動産メタバースショッピングモール「メタパ」上に住宅販売拠点「メタマンションギャラリー」を開設。新築分譲マンションの販売を行い、メタバースでの内見を可能にしている。
ラストマイルワークスソーシャルVRサービス「comony homes」を提供。3D空間の制作とシミュレーションサービスを行っており、バーチャル空間での家具配置や部屋の構成が可能。
積木製作「VROX」というVRシステムを開発。タブレット端末を使用して間取り図を3Dで表示することができる。
大成建設VR技術を用いて重機を遠隔地から操縦するシステムを開発。作業員がVRゴーグルを装着し、実際に重機に乗っているかのような感覚で操作が可能。
NECソリューションイノベータ建設現場をVRで再現し、仮想空間での研修を提供。また、3次元モデルを使っての問題点の早期解決も行っています。
株式会社大林組VR教育システムを活用して建設現場における鉄筋配置の不具合防止などの研修を行う。BIMデータを活用して様々な教育ツールを制作。
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【医療】リモート手術やリハビリへの活用に期待

医療界では主にリモート手術やリハビリなどの分野でVR技術の活用が進んでいます。

医療業界では今まで、手術や診断、リハビリテーションのプロセスで物理的な制約や地理的な制限が大きな課題とされていました。

特に遠隔地に住む患者への高品質な医療提供が困難であり、また医療従事者の教育訓練にも限界がありました。

しかし、VR技術を利用することで医師はリアルタイムで遠隔地の手術に参加できるようになり、手術技術の精度を高めるシミュレーションが可能になります。

また、リハビリテーションでは患者自身がVRを通じて仮想環境で体験することにより、より効果的でモチベーションの高いトレーニングが実現します。

このように、VR技術は医療の質を向上させるだけでなく、医療アクセスの平等性をもたらす技術として、今後ますますその重要性が高まることになるでしょう。

この業種における注目企業は以下の通りです。

VRへの取り組み
日本VR医学会手術支援訓練システムや医学教育にVRを応用し、メタバース技術とAIやロボット技術の統合を推進。
株式会社mediVR歩行や上肢機能のリハビリテーションにVR技術を応用。
株式会社クライン脳神経外科や整形外科の手術計画およびシミュレーションソフトウェアの開発にVR技術を活用。
株式会社モダンデータ医療訓練プログラムや病院の設計・配置の可視化ツールを提供。
株式会社カネカ心臓病の手術手順の教育や訓練にVRトレーニングシステムを開発。
「XR」医療現場での活用法、医療の課題を解決できるソリューションを紹介
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【教育・トレーニング】VRキャンパスやシミュレーションの精度向上

教育・トレーニングの分野では、主にVRを利用したバーチャルキャンパスや各種シミュレーションの精度の向上にVRが利用されています。

例えば、医療分野では、未来の医師や看護師が手術や緊急処置のシミュレーションを行うためにVRが使用されています。

これにより、実際の医療現場で遭遇する可能性のある複雑なシナリオを、リスクなしに体験し、対処法を学ぶことが可能です。

また、工業分野では、VRを使って安全な環境下での重機操作や危険物取扱いのトレーニングが行われています。

これにより、操作ミスによる事故や怪我のリスクを減少させることが可能です。

これらの例からも見て取れるように、VRは教育とトレーニングの場において、実際の環境を模倣したり、実際には不可能または非常に高価な体験を提供することで、学習体験を豊かにし、効果を高めるための強力なツールになっています。

この業種における注目企業は以下の通りです。

VRへの取り組み
株式会社大林組建設現場の安全教育用にVRトレーニングを共同開発し、作業員間での施工手順の共有や危険箇所の確認、コミュニケーションを学ぶための研修システムを提供。
株式会社松屋フーズ飲食店での接客トレーニング用にVRを導入し、仮想空間での実践を通じて接客スキルを体得できる研修コンテンツを開発。
株式会社ヒューマンライフケア介護スタッフ向けにVRを利用した教育研修を提供し、介護の現場で起こり得る問題をリアルな環境下で体験。
東京大学「バーチャル東大」というプロジェクトを通じて、キャンパスの様々な場所を仮想空間で探索する教育用VRコンテンツを開発。
JOLLYGOOD+医療および福祉分野に特化したVRプラットフォームを提供し、特に看護教育においてVRコンテンツを用いて教育効果を高めている。
学校教育におけるメタバース活用のメリット・デメリットを詳しく解説!
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【観光業】バーチャル旅行で世界中の顧客層をターゲットに

観光業では、主にメタバースを活用したPR活動により、潜在顧客層へのアプローチにVRが利用されています。

VR技術は、観光地を仮想空間で再現することにより、実際にその場に訪れることなく360度のビデオやインタラクティブな体験を通じてリアルな観光体験を実現します。

これにより、ユーザーは自宅にいながらにして世界各地の名所や文化財を探索することが可能です。

また、VRは観光プロモーションにおいても大きなメリットをもたらします。

特に、距離的、時間的な制約を超えて、広範囲なターゲットに対して効果的にリーチすることが可能です。

実際の観光シーズンや天候に左右されずに、いつでも観光地の魅力を伝えることができるため、観光促進の効率が大きく向上します。

これらの利点により、多くの観光関連企業や自治体がVR技術を導入しています。

この業種における注目企業や事例は以下の通りです。

VRへの取り組み
クロスデバイス「idoga VR」を通じて、浜松市の観光誘致支援を行い、360度動画で大河ドラマの舞台を再現。
VR観光コンソーシアム日本全国の観光地をカバーするVR旅行ポータルサイトTOWNWARPを運営し、観光映像の制作やプロモーションを行う。
360Channelトラベルジャンルで日本の観光名所や絶景の映像を提供する動画配信サービスを展開。
TRAVEL HUB MIX外国人向けの観光促進のために360度動画を活用し、日本の文化や生活を紹介。
VRscope熊本城の観光が可能なアプリを提供し、熊本城築城時の様子を360°のバーチャル空間で体験できる。
メタバース観光の魅力とは?メリット・デメリットや活用事例を詳しく解説
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|VRはいつ流行る?今後についての予測

「VR元年」と呼ばれた2016年から今年で8年目ですが、VRデバイスを日常的に利用している方はまだまだ少ないです。

巷では「VRは必ず流行る!」「VRをビジネスに導入しなければ時代遅れ」のような論調のメディアも多く見かけますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?

ここでは、VRが本格的に流行り始めるのがいつなのかを予測するために、いくつかの事実を紹介し、いつ頃に本格的に普及し始めるのか考察していきます。

VRは2021年に「幻滅期」に分類されている

出典:ガートナージャパン

ガートナージャパンの「日本におけるユーザー・エクスペリエンスのハイプ・サイクル:2021年」によると、VR/AR技術は「幻滅期」に入ったことが報告されています。

「幻滅期」とは、ガートナーのハイプサイクルにおいて、新技術に対する初期の期待が過度に盛り上がった後、実際の利用で予想された効果が得られないことから生じる失望感が広がる時期を指します。

この段階では、メディアの注目が減少し、一部の投資が引き上げられることもありますが、同時に、実際に価値を提供できる適切な使い方やビジネスモデルが見直され、再び成熟に向かうための重要な過渡期です。

ガートナージャパンは、それ以降のVRの位置付けを発表してはいませんが、2024年時点では恐らく「啓発期」の境目に分類されているというのが多くの専門家の見解です。

ガートナー・ハイプサイクルとは?

出典:ガートナー社

ガートナーハイプサイクルとは、アメリカの大手コンサル系企業のガートナー社が提唱したモデルです。

市場に新技術が登場した時に、その技術がどの程度市場に浸透しているのかを明確化する際によく使われる指標で、主に以下の5つのフェーズに分類されます。

  1. 黎明期(Technology Trigger)

新しい技術が登場し、初期の概念実証が行われ、メディアによる注目が集まりますが、実用製品はまだ存在しません。

  1. 過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)

多くの成功例が報じられ、一部の先進的な実装が行われますが、多くの失敗も伴います。

  1. 幻滅期(Trough of Disillusionment)

初期の試みが失敗に終わることで興味が失われ、投資が減少します。しかし、生き残った提供者は製品を改善し続けます。

  1. 啓発期(Slope of Enlightenment)

第二世代、第三世代の製品が市場に出始め、具体的な事例が増えることで理解と実装が進みます。

  1. 生産性の安定期(Plateau of Productivity)

技術が主流に受け入れられ、市場での実用性とビジネス価値が確立します。

このモデルを使用することで、企業は最新技術のリアルな可能性を評価し、適切な投資時期を判断できるようになります。

現状では企業での利用が中心

VRは確かに画期的な技術ではありますが、現状の利用者はほとんどが企業中心です。

この現象の背後には、VR技術の高い初期コストと専門的な知識を要する設定と運用の複雑さがあります。

多くの企業はVRをトレーニング、設計、リモート作業などの特定の業務用途で活用しています。

例えば、製造業での複雑なアセンブリラインの訓練や、建築業での3Dモデリングの可視化などです。

一方で、一般消費者市場においては、VR技術は主にゲームやエンターテイメント分野での採用が見られますが、広範な普及には至っていません。

これを改善するためには、ハードウェアのコスト削減が必要です。

より手頃な価格のVRデバイスが市場に出れば、消費者層へのアクセスは飛躍的に向上するでしょう。

代表的なVRヘッドセットの価格一覧

参考までに、代表的なVRヘッドセット(ゴーグル)の製品価格は以下の通りです。

製品名価格(税込)
Meta Quest 239,600円〜
Meta Quest 374,800円〜
PSVR2(PlayStation VR)74,980円〜
PICO449,000円〜
VIVE Pro 2103,400円
VALVE INDEX VRキット165,980円

(※値段は2024年4月時点のものです)

なお、上記に紹介している製品は一般消費者向けの製品です。企業やクリエイター向けの製品になると、その価格は跳ね上がります。

例えば、2024年にApple社が発表したクリエイター向けの空間コンピューティングデバイス「Vision Pro」の価格は約50〜60万円です。

【2024年11月更新】VRゴーグルのおすすめ23選!選び方までわかりやすく解説
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「フルダイブ」の実現には程遠い

恐らく、VR(バーチャルリアリティ)と聞いて多くの人がイメージするのが「フルダイブ型」のバーチャルリアリティです。

フルダイブ型VRは、ユーザーが物理的な動きをせずに完全に仮想環境に没入し、五感すべてを通じてリアルタイムでインタラクションが可能なシステムを指します。

しかし、現在のVR技術はこのレベルにはまだ達していません。

現状のVR技術は主に視覚と聴覚に焦点を当てていますが、フルダイブを実現するには以下のような技術的進歩が必要です。

  1. 感覚フィードバックの向上

現在の技術ではタクタイル(触覚)フィードバックが限定的です。

  1. ニューロインターフェースの発展

脳とコンピュータを直接接続するニューロインターフェースの開発が進み、ユーザーの思考や意図を直接読み取り、仮想環境内でのアクションに変換することが可能になる。

  1. AIとの統合

高度なAIの統合により、ユーザーの行動や好みに基づいて動的に環境を調整する能力。

  1. より高度なシミュレーション技術

物理法則や生物学的プロセスをリアルタイムで正確にシミュレートする能力が必要。

これらの技術的進歩が実現されれば、フルダイブ型VRが可能になり、教育、医療、エンターテインメントなど多岐にわたる分野での応用が期待されます。

【結論】2030年までには本格的に流行り始める

2024年時点ではVR技術はまだ完全に流行っているとはお世辞にもいえない状況です。

では、具体的にどれくらいに流行り始めるのでしょうか?

もちろん、100%の保証を根拠づけるようなデータはありませんが、先述したガートナーハイプサイクルモデルを基に考えてみましょう。

VR技術は2021年に「幻滅期」に入り、2024年時点では恐らく「啓発期」の入り口もしくは既に啓発期に突入しているかもしれません。

市場に完全に浸透するにはVR技術が「生産性の安定期」を迎える必要があります。

これはあくまでも一般論ですが、基本的に啓発期から生産性の安定期を迎えるまでには5年から10年とされています。

このモデルに基づき、VR技術が2021年に幻滅期に入ったとすると、早ければ2026年から2028年頃には啓発期を経て生産性の安定期に移行し始めることが予想されます。

そのため、VR技術が本格的に市場に浸透し、広く流行り始めるのは2030年頃と考えられます。

|まとめ:VRの時代は近づきつつある

本記事では、VR(バーチャルリアリティ)の現状と将来性について掘り下げてきました。

2024年時点でVR技術は「啓発期」に入りつつあるものの、一般消費者への普及はまだ途上にあります。

さまざまな業界でのVRの応用が進み、特にゲーム、建築、医療、教育、観光など、多岐にわたる分野でその利用が拡大しています。

しかし、VR技術が市場に完全に浸透し、広く受け入れられるにはまだいくつかのハードルが存在します。

そのため、今後のVR関連のニュースには常に目を光らせておきましょう。

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それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!