今から10年後、あなたの生活はどのように変わっていると思いますか?

今から14年前の2008年、日本にiPhoneが上陸するまでスマホがここまで普及すると想像できた日本人はそこまで多くないかもしれません。

メタバースの成長が著しい2020年から現在に至るまでの期間は、メタバース黎明期と呼ばれています。そして約10年後の2030年にメタバースは成熟すると言われています。

本記事では、メタバースがこの10年でどれほど成長するのかあらゆる方面から予測し、解説いたします。

|メタバースとは

「メタバース(metaverse)」とは、インターネット上に作られた仮想空間のことです。

英語の「超越(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語であり、1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」に登場する架空の仮想空間サービスの名称を語源としています。

メタバースの利用者は3DCG空間で自分の姿をアバターの姿に変え、他のユーザーと交流したりコンテンツを楽しんだり、商品売買などの経済活動を行うことができます。

詳しくは、「メタバースって何? 意味やメリット・デメリットから分かりやすく解説!」の記事もチェックしてみてください。

|10年後のメタバース

現在、メタバースの市場予測は世界の様々な機関によって調査・分析され行われています。

ここからは、10年後のメタバースが及ぼす経済規模予測について推計主体ごとに解説していきます。

|予想されるメタバースの市場

予想されるメタバース市場規模は、推計主体により大きく変わり、2030年頃のグローバル市場規模では次の3つに分類できます。

①Citiに代表される金融系機関が予想している10兆ドル規模の市場予測。

②一部の市場調査機関による1~2兆ドル規模の市場予測。

③多くの市場調査機関や投資機関による1兆ドル未満の市場予測

これらの予測に差があるのは「メタバース」のとらえ方・認識の仕方が異なるためと思われ

ます。

10兆ドル規模

Citiに代表される金融系機関はメタバースをポストインターネット(Web3.0として言及されるコンセプト)の中核的な場として位置づけている模様です。

例えばCitiの場合、メタバースへのアクセスも、スマホ、タブレット、PCを含むマルチデバイス対応のいわゆる「視聴型」かつ没入感を重視しないものを中心に考えており、アクセス人口がグローバルで数10億人規模となることを想定しています。

1~2兆ドル規模

多くの市場調査機関や投資機関が予測した市場規模です。

メタバースはXRデバイスを中心にアクセスするものと考えられておりますが、WEB3.0の中核技術であるとされるブロックチェーン技術を活用したオープンメタバースや、クリエイターエコノミーなどへの期待が強調されています。

1兆ドル未満

XRの予測される市場規模とほぼ類似した数字をメタバース市場規模として公表しています。

XRとは、現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術であるVR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)等の技術の総称です。

|メタバースの経済効果

経済コンサルティング会社Analysis Groupは「The Potential Global Economic Impact of the Metaverse(メタバースがもたらす世界経済への影響)」というレポートを公開しました。

このレポートの中で、メタバースが世界のGDPに対し3兆ドル(約390兆円)の規模で寄与する可能性があると述べています。

ここからは、そのレポートの内容を解説していきます。

メタバースはモバイルテクノロジーのみならず、さまざまな分野が成長を見込まれるとされています。教育、医療、製造業、職業訓練、通信、娯楽、小売業等に今後メタバースに活用されると予想されます。

経済分析に関する根拠

この分析は、モバイルテクノロジーの開発や導入に関する公開データを参考にし、主なデータソースを世界銀行の世界開発指標データベース (WDI) としています。

WDIは「公認編集された国際的な情報源」および「利用可能な最新かつ正確な世界開発データ」としての重要開発指標データベースです。

WDIには1960年から2019 年までの期間内、最大266の国と地域をカバーするパネルデータが含まれています。

データは1,400を超える利用可能指標から選択され、地理的地域、国際経済、金融機関、国の社会経済グループとして集約することができます。

そしてWDIからのデータを世界銀行データバンクおよび国際電気通信連合 (ITU) のデータで補足して分析しています。

メタバースの世界GDPへの影響

2009年から2019年までのデータを基に、10年後のGDPを計算すると、2031年時点におけるメタバースの世界GDPへの貢献度は、3.01兆ドルになると予測されています。

そのうち3分の1、つまり 1.04 兆ドルをAPAC(アジア太平洋)が占めており、カナダが0.02兆 ドル、ヨーロッパが0.44兆ドル、インドが0.24兆ドル、LATAM(ラテンアメリカ)が0.32兆ドル、MENATが0.36兆ドル、SSA(サブサハラアフリカ)が0.04 ドル、米国が0.56 兆ドルというGDPの内訳予測になっています。

|メタバース普及のカギ

ここまでは、メタバースがここ10年で普及した場合に想定される経済効果について様々な機関の観点から解説してきました。

メタバースが経済市場に大きな効果をもたらす未来を実現する為に、現状どのような障壁が存在しているのでしょうか?

ここからは、メタバースが普及していく為のカギとなる課題を説明していきます。

VR機器

現在、VR機器のデバイス自体がメタバースを使用する障壁となっています。

スマホ等の携帯機と比較してVRゴーグルは装着と起動の手間がかかります。

また、VR機器によってはサイズの大きさと重さ、VR酔いによって長時間の利用がしづらい難点もあります。

VR機器の価格もMetaQuest2が約6万円~と、手頃な価格とは言えません。

そして、VRゴーグルを装着しているプレイヤーと、周りでその様子を見ている人が隔絶してしまい、同じ場所にいるのにも関わらず両者とも孤独な状態になってしまうという問題があります。

それらをふまえてもプレーしてみたいVR機器専用コンテンツが登場していないというのも課題点です。この10年で技術が進歩してVR機器がより軽く、より小さく、手の届きやすい価格になることで、デバイスが普及するとより多くの企業がVR業界に投資するようになります。

そしてVR業界におけるキラーコンテンツが登場すれば、今後メタバースが大きく普及していくと考えられます。

法律やルールの整備

普及には、仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの整備が必要です。

メタバースが多くのユーザーを獲得して発展していくためには、メタバース内で提供されるコンテンツが、きわめて重要な要素となると思われます。

そのようなメタバース内のコンテンツの創作や利用、取引が活発に行われるためには、コンテンツに関する「権利」の適切な保護の仕組みが確立されている必要があります。

また、現実世界で保護されている権利が、メタバース内で侵害される場合も考えられます。

現実世界における権利保護の枠組みを正確に理解したうえで、これをメタバースに適用するのか、どの程度適用していくのかについて、ビジネスの実態も踏まえた実質的な議論をしていくことが必要になります。

次に、メタバースの経済性を成り立たせるためには、権利で保護された「モノ」や「コンテンツ」「サービス」を安全に取引することができ、取引対価の支払を確実に受領できるようなルールを考えていくことが必要です。

今後、メタバース内で、ユーザー主導で新しいビジネスモデルが次々と創出される過程で、そのルールについても考えていく必要があります。

また、メタバース内での経済活動の重要な基盤となり得るブロックチェーンや暗号資産の活用やルールについても議論を深めていく必要があります。

最後に、メタバースがユーザーを増やし、現実世界や現在のインターネット世界に匹敵する生活圏、経済圏となるためには、メタバースがユーザーにとって安全で、安心できる場所であることが必要です。

基本的なセキュリティの整備やハッキングの防止は、メタバースが持続的に発展するためには必須です。

メタバース自体のセキュリティが確保されていても、メタバースの中で活動するユーザーも人間であるため、現実世界あるいは現在のインターネット世界と同様に、悪意あるユーザーによる詐欺等の犯罪が起こるリスクも存在します。

現実世界、インターネット世界と同様、メタバースにおける「治安」を維持するルールは、重要な意義があります。

こういった諸問題に対応するために現在KDDIや東急らが「バーチャルシティコンソーシアム」を立ち上げ、仮想空間で行われる商取引などに関するルールを整理することを目的として、メタバース運営に関するガイドラインを策定しています。

|まとめ

今回の記事では、世界の各機関が予測する10年後のメタバースが及ぼす経済市場規模や影響分野、予測レポートの内容について解説しました。

また、メタバースが普及するための現状の障壁として「VR機器の普及」と「法律やルールの整備」を挙げました。

本記事を読んで皆様が「技術の進歩や人々の価値観のアップデートによって、私たちの暮らしが10年後にどうなっているのか」といった未来をイメージし、今何をしていくのかを考えるきっかけとなれば幸いです。