日本を代表する放送会社、TBS。

TBSと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

ドラマや報道番組、バラエティー番組などのテレビ放送、映画、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』をはじめとした舞台など、たくさんありますね!

赤坂にある放送センターも有名で、訪れたことのある方も多いのではないでしょうか?

このように、多岐にわたる事業を展開しているTBSが、今意欲的に活用しているものがメタバースです。

この記事では、TBSのメタバース活用における目的や詳細について、活用事例を用いて解説していきます。

|メタバースとは

メタバースとは「超越」を意味する「Meta(メタ)」と、「宇宙」を意味する「Verse(バース)」を掛け合わせた造語です。 

日本語では一般的に「仮想空間」や「仮想世界」と呼ばれています。

メタバースには未だ明確な定義は存在していませんが、アバターを通じて現実と同様の交流が可能なデジタル空間であると言えます。

2003年にリリースされた「Second Life」は、2006年ごろには日本でもブームとなり、メタバースの先駆けとして有名ですね。

その後、技術不足などでブームは終焉を迎え、セカンドライフは「早すぎたメタバース」として揶揄されています。

しかし、現在では技術開発が進んだことで市場規模が大幅に拡大しつつあり、ブームが再燃していると言われています。

また、それと同時にメタバースがもたらす多くのメリットを活用しようと、様々なビジネスシーンやサービスに導入されています。

メタバースについての詳細は、以下の記事もご覧ください。

【わかりやすく解説】メタバースとは?注目される理由やビジネス活用例を紹介
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メタバースなんて意味ないって本当?普及しない理由と将来の可能性
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|TBSとは

TBSは「ときめくときを。」をキャッチコピーとして、1951年に「株式会社ラジオ東京」として設立されて以来、主にメディア・コンテンツ事業を展開している日本の放送会社です。

単位:%

出典:令和5年間の【総合視聴率ランキング】(リアルタイムもしくはタイムシフトでの視聴)|ビデオリサーチ

令和5年間の19時〜24時台に放送されたレギュラードラマの関東地区の視聴率を見ると、上位10位中8個がTBSです。ここから、TBSが日曜劇場をはじめとしたドラマをかなりの強みとしていることが分かりますね。

ドラマ以外でも、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の公演を行うなど、イベント事業や不動産など幅広い事業を行っています。

共通して、常に新しい取り組みを行い、多様なコンテンツを通じて「ときめくときを。」提供している会社であると言うことができるでしょう。

|TBSのメタバース活用事例8選

そんなTBSが現在多く活用しているのがメタバースです。 

TBSとメタバースの関連性に疑問を持つ方もいるかもしれませんが、現在TBSは幅広い事業においてメタバースを活用しています。

その活用方法も多岐に渡りますので、ここではその内容について詳しくご紹介していきます。

人気ドラマとの連動

まず、TBSといえばドラマ。いくつもの人気ドラマがありますよね。

 近年、TBSを代表する人気ドラマでもメタバースが活用されています。

 その中で、3つの日曜劇場でどのようにメタバースが活用されたのか、ご紹介したいと思います。

「Get Ready!」

2023年1月期の日曜劇場『Get Ready!』では、株式会社360Channelが共同でメタバース空間の企画と制作を行いました。

TBS初のメタバース空間での制作発表も行われ、新しい視聴体験が提供されたことで話題となりました。

ドラマの主要な場所であるパティスリーやアジト、オペ室などが再現され、24時間いつでもアクセス可能となっていました。

ドラマの合言葉で開く秘密の扉や、メタバース空間を利用したガチャガチャなど、視聴者がドラマの世界を楽しむことができるようになっていました。

リアルタイムイベントとしては、空間内のクイズに参加することで応募できるプレゼント企画も開催されました。

中でも、双方向コミュニケーションが可能であるメタバースならではの特徴を活かし、ユーザー同士のテキストチャット機能を用いてファンコミュニティの場としても活用されたことが画期的でした。

「TOKYO MER」

出典:https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=18167

2021年7月期において民放1位の平均視聴率を取った大ヒット医療ドラマ、日曜劇場「TOKYO MER」でもメタバースが活用されました。

連続ドラマ放送後、多数寄せられた続編や映画化の期待に応えるように2023年4月に特別ドラマの放送と劇場版の公開が行われました。その際に、TBS×東宝×ZEXAVERSEの3社共同で劇場版の舞台やスタッフルームなどをリアルなグラフィックで完全再現し、劇場版を盛り上げました。

また、空間だけでなく俳優陣の3Dアバターを約130個の6Kカメラで撮影して登場させており、視聴者がキャストアバターと出会うことができるリアルではなかなか体験できないイベントとなっていました。

結果として、劇場版は興行収入が45億円、観客動員数は340万人を突破し、2023年上半期の実写映画の最高記録をマークしました。

「オールドルーキー」

 メタバース空間の「ビクトリー」(上)と、ドラマ内の「ビクトリー」(下)

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000017626.html

2022年7月期の日曜劇場『オールドルーキー』とクラスター株式会社がコラボし、ドラマ内で主人公たちが出勤する会社「ビクトリー」のオフィスが再現されました。

視聴者がドラマへの応援メッセージをメタバース空間内のチャット機能で投稿することで、そのメッセージがドラマ内の「ビクトリー」に反映される仕組みも準備されていました。

これは、空間を超えて視聴者がリアルタイムに参加できる新しい試みで、視聴者としては自分の言葉が実際に放送されるとても嬉しい機会ですよね。

この空間はTBS内で2022年3月に立ち上げられた、メタバース関連の新規事業開発を担うプロジェクトメンバーが率いてわずか3カ月で作り上げたとのこと。

そんな短期間でこんなにもクオリティーが高いとは驚きですね!

ドラマ制作現場での活用

メタバースはドラマとの連動だけでなく、ドラマ制作の現場でも活用されています。 

ハリウッドでは盛んに行われている、撮影前にシミュレーションをしてイメージを共有する「プリビズ(Pre Visualization)」というワークフローがあります。

しかし、日本ではいまだ取り入れている現場は少なく、プリビズをしないことで発生するいくつもの課題点がありました。

2023年4月期の日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』では、メタバースをツールとして使ってプリビズすることで、よりクリエイティブで深い話し合いを行うことができ、ドラマ監督の想いを形にすることを可能にしました。

将来的にはリアルな質感や動きをシミュレーションし、若手ディレクターのスキル向上にも貢献することが期待されています。

音楽フェスの開催

TBSといえばドラマという印象が強いですが、メタバースを舞台にしたイベント事業にも取り組んでいます。

2024年3月30日から4月20日の毎週土曜日に計4回、メタバース音楽フェス「META=KNOT 2024 in AKASAKABLITZ」が開催されました。

このイベントではメタバースだからこそできる点がいくつもあり、かなり盛り上がりました。

 まず、舞台はライブの聖地とも呼ばれ、惜しまれつつ2020年9月に閉館した「マイナビBLITZ赤坂」。

もう2度と行くことができないはずだったこの聖地が、メタバース上で復活を遂げました。

また、視覚的に音楽を体感できる「オーデイオリアクティブ」などの演出を用い、メタバースだからこその没入体験「パーティクルライブ」が提供されました。出演者はTBSテレビが厳選する音楽性に優れたバーチャルシンガーが登場しました。

現在、TBS公式YouTubeチャンネル上でアーカイブを視聴することができるので、是非ご覧ください!

week1:https://youtube.com/live/dvNP7JNJ26c

week2:https://youtube.com/live/h6gbjbn3oko

week3:https://youtube.com/live/KvTOGwLtMFU

week4:https://youtube.com/live/r4xvxXm7x9I

選挙番組での活用

エンタメの分野だけでなく、堅い印象のある選挙番組にも活用されました。

 「変わる」をテーマに放送された特番「選挙の日2022 私たちの明日」では、一部ディスカッションがメタバース空間で行われました。

スペシャルキャスターを務めた爆笑問題の太田光さんがアバターとなり、視聴者と同じ目線に立って政治家と議論を行うという内容でした。また、1万人の視聴者も同じ空間に入って目の前で激論を見ることができる迫力のあるものとなりました。

誰でも、どこからでも、分身となってアクセスすることができるメタバースは、公に政治の話をしたがらない日本人にこそ合っているのかもしれないですね。

メタバース動物園の開発・実施

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001370.000033034.html

自然環境とメタバース、一見全く相容れない2つですが、メタバースは自然環境の重要性や興味関心を広めるツールとしてかなり適しているといえます。

その実例として、TBSとTOPPANグループが共同で開発、開催した「メタバース動物園」があります。

第一弾として、2024年3月29日から3日間開催された「AKASAKA あそび!学び!フェスタ」内で、ミツバチの生態を学べる「メタパ里山ワールド・ミツバチ編」が公開されました。

「リアルの動物園を超える体験で、本当の動物の生態を知ろう」というコンセプト通り、蜂が苦手な人は体験が難しいのではと感じるほどリアルな3Dアニメーションなどが展開されました。

また、立体音響によりミツバチが自分の周りを飛んでいるかのような体験も可能で、言葉通りリアルを超えていますよね! 

この体験を通して、小学生などの子供たちが自然環境への興味関心を持つきっかけとなることが期待されています。

eスポーツへの活用

TBSはデジタルコンテンツ自体の拡張にも力を入れています。 

メタバース向けのコンテンツ企画と開発を行っているオッドナンバーとの間で、esports展開を視野に入れた、今までにないコンテンツの企画・開発を行っていくと発表しました。

TBSは数多くのIPを保有し、高いコンテンツ企画力を誇ります。

それとオッドナンバーのメタバースに関するノウハウを掛け合わせ、どのような新しいコンテンツが作られるのでしょうか?

コンテンツ内容は順次発表予定となっているので、要チェックです!

|まとめ

これまで紹介した事例は、TBSテレビが掲げる「EDGE」(= Expand Digital Global Experience)戦略に基づいて行われています。

EDGE戦略とは、コンテンツ価値の最大化を目指すものであり、その一つとしてメタバース領域でのビジネスも推進しているのです。

この戦略からも、TBSはこれからもメタバース領域での展開に意欲的であり続けることが考えられます。

今後もTBSがどのようにメタバース領域で革新的なコンテンツを作り出していくのか、楽しみですね!