世界中で盛り上がりを見せているメタバース。日本でも注目度が高く、利用者もグッと増えてきました。
一方で、「人気のメタバースを自分も始めてみたい。でも新しいサービスなので、どんなリスクがあるのか心配…」という人も少なくありません。
そこで今回は、メタバースに潜むリスクを徹底解剖。
メタバースにはどんなリスクがあるのか?どんな対策が有効なのか?メタバースに関する懸念や安全性について、詳しく解説します。
楽しさやメリットだけではなく、リスクやデメリットについてもしっかり理解しておくことで、メタバースを安全に利用することができるでしょう。
メタバースをこれから始めようと考えている人には必見の内容。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
|メタバースの魅力やメリットとは?
メタバースは「Meta(超越した)」と「Universe(世界)」を組み合わせた造語で、インターネット上の3D仮想空間を意味します。
メタバースには自分自身の分身となる「アバター」を利用してアクセスし、他ユーザーとのコミュニケーションやゲームなど、仮想空間内で自分の思い通りに振る舞えます。
そのメタバースのメリットについては、以下のような点が挙げられます。
- 現実世界にはない新しい体験ができる
- 物理的な距離にとらわれず様々な人と交流できる
- ビジネスチャンスが広がる
その自由度の高さ、世界中の人たちとリアルタイムで交流できる間口の広さ、そして現実世界と同じような経済活動も行えることなどが、メタバースの大きな魅力と言えます。
では、それぞれのメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。
現実世界にはない新しい体験ができる
メタバースは3Dで構築されたインターネット上の仮想空間ですから、そこでは現実世界では実現が難しい、様々な非日常の体験を楽しめます。
映画「レディ・プレイヤー1」や、「龍とそばかすの姫」をご覧になったでしょうか?
映画では主人公たちがアバターとなり、現実ではありえない世界を楽しみますが、そこで描かれた世界観はメタバースそのもの。
実際のメタバースはまだその域まで達してはいませんが、音楽イベントやアトラクションなどで現実世界にはない新しい体験を提供しています。
例えば、ジャスティン・ビーバーがメタバースで行ったライヴでは、楽曲に合わせて様々に世界が移り変わったり、オーディエンスが光のパワーをジャスティン・ビーバーに送るなど、メタバースならではの演出が施されていました。
メタバースが進化するにつれて、これまで想像もできなかったような体験が楽しめるようになるでしょう。
物理的な距離にとらわれず様々な人と交流できる
メタバースは世界中どこにいても、同一の仮想空間へのアクセスが可能です。そのため、現実世界だとなかなか会えないような場所にいる人とも、物理的な距離にとらわれずにコミュケーションを取ることができます。
それだとSNSと変わらないと思われるかもしれませんが、メタバースでは「同一の仮想空間」に「不特定多数のユーザーがリアルタイムで集まる」ため、現実世界では知り合えないような人とも交流できるのです。
しかもメタバースでは3Dの仮想空間で話せるため、その臨場感はSNSやZoomとは段違い。そのため、メタバースは次世代SNSとも言われることも。
コロナ禍で多くの人が集まるイベントは軒並み中止になりましたが、メタバースならばいつでもどこにいても、簡単にイベントにも参加できるのです。
ビジネスチャンスが広がる
メタバースはエンタメ関連だけではなく、ビジネス分野での活用も広がっています。
世界中どこにいても同一空間に集まることができ、リアルタイムでコミュニケーションが取れるという特性を活かし、メタバース内にオフィスを設置したり、会議やセミナーなどを仮想空間内で開催しているのです。
さらにはNFTや仮想通貨を取り入れているメタバースでは、現実世界と同じような経済活動も行われています。
NIKEなどのブランドがメタバース内にバーチャルショップをオープンさせたり、NFTアートが高額で取引されているといったニュースをご覧になった人も多いでしょう。
ある調査によると、メタバースの市場規模は2030年までには200兆円を超えるとも予測されています。
「もう一つの世界」とも言われるメタバースには、非常に大きなビジネスチャンスが広がっているのです。
|メタバースで考えられるリスク
このように様々なメリットがあり、魅力的な仮想世界を提供しているメタバース。しかしその世界にはどんなリスクがあるのでしょうか?
メタバースで考えられるリスクは、以下のようなものが指摘されています。
- アバターを使ったなりすまし
- 個人情報や企業の機密情報の流出
- 仮想通貨の流出
- メタバースへの依存
どんなモノやサービスにもリスクはつきもの。メタバースを始める前に、そのリスクについてもしっかり理解しておきましょう。
アバターを使ったなりすまし
メタバースにはIDとパスワードを使ってログインし、アバターの姿になってアクセスします。
そのためこのIDとパスワードが何らかの形で他者に知られると、アバターを乗っ取られてしまう危険性があるのです。
メタバースの中では「アバター=ユーザー自身」ですから、アバターを使ったなりすましの被害は直接自分に跳ね返ってきます。
例えば自分に成りすました人がメタバース内で他ユーザーを誹謗中傷したり、金銭を要求したりといった行為をしてしまうとどうなるでしょうか?自分の評判が落ちることはもちろん、アカウントの停止という事態にもなりかねません。
SNSでもアカウントの乗っ取りや成りすましは大きな問題となっていますが、メタバースでのアバターを使ったなりすましは物理的にも、そして精神的な意味でも自分へのダメージは非常に大きい。
アバターを使ったなりすましのリスクには、十分に気をつけなくてはなりません。
個人情報や企業の機密情報の流出
IDとパスワードを乗っ取られるとアバターのなりすましだけではなく、自分自身の個人情報や企業の機密情報が流出してしまう危険も招きます。
実際にIDやパスワードが不正に取得されて、個人情報が流出してしまったニュースを私たちも多く目にしているでしょう。
上でも述べた通り、メタバースには大きな市場規模がありますから、個人情報や企業の秘密情報が流出した時の被害も非常に大きくなることが予想されます。
そうしたメタバースの安全性への懸念や課題を話し合うために、総務省でも有識者を招いた会議を行っています。「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」がそれで、なりすましや個人情報の管理のあり方などに関する報告書を、来年夏をめどに提出するとしています。
仮想通貨の流出
ハッカーなどの侵入を受け、仮想通貨が流出する事件がたびたび起こっています。
今年の6月にも、Harmonyブロックチェーンのブリッジサービスが不正アクセスを受け、1億ドル(約135億円)以上の暗号資産が流出しました。
メタバースではそれぞれ独自の仮想通貨を用いて経済活動が行われているため、同じように仮想通貨が流出してしまうのではないかという懸念が持たれています。
またメタバースではNFTを用いたアート作品やアイテムが取り引きされており、これらの安全性を保つための取り組みも急務となっています。
<NFTとは?>
NFTは「Non-Fungible Token (非代替性トークン)」の略で、デジタル・アートやアイテムなどの所有者を明確化するためのシステム。それによってデジタルデータにオリジナル性と価値を持たせることができるようになります。
仮想通貨にせよNFTにせよ、リアルマネーに換金できる立派な「資産」ですから、その流出のリスクには最大限の注意を払わなければなりません。
メタバースへの依存
ここまではメタバースのいわば物理的なリスクについて考えてきましたが、利用者のメンタル面に関する懸念も考慮しなければなりません。
それが、メタバースへの依存です。
メタバースはリアルな世界観に没入できる反面、依存症を引き起こす心配があるのです。
「ファントム・タイムライン症候群」についてお聞きになったことはあるでしょうか?
<ファントム・タイムライン症候群とは?>
ファントム・タイムライン症候群は、仮想空間と現実世界の区別がつかなくなる感覚のことを指します。仮想空間で多くの時間を過ごすと、現実世界に戻ってきてもヴァーチャルの世界にいるような感覚が残ってしまうという症状が確認されています。
特にティーン世代など、メタバースにのめり込みやすい人たちはメタバースへの依存に注意が必要。
さらにメタバースで受け取った情報は、現実世界の情報よりも信じ込みやすいという報告もされています。SNSでも見られる傾向ですが、フェイク情報や陰謀論に巻き込まれないことも含め、メタバースへの依存リスクについてもしっかり理解しておきましょう。
|メタバースを安全に利用するために自分でできること
メタバースのリスクについて見てきましたが、しっかりとした対策を取ることによって、メタバースを安全に利用することはもちろん可能です。
ここでは、メタバースを安全に利用するために自分ができる2つの方法をご紹介します。
- ログイン時のID・パスワードを簡単なものにしない
- 二段階認証を設定しておく
どれも簡単にできて高い効果が期待できますから、忘れずに実行するようにしましょう。
ログイン時のID・パスワードを簡単なものにしない
メタバースの安全性を高めるために真っ先にすべきことは、ログイン時のIDとパスワードを誰にも推測されない強固なものにすることです。
これはメタバースに限らず、SNSやインターネット全般に言える大切なポイントなのですが、実はIDやパスワードを簡単なものにしてしまう人は以外に多いのです。
日本で最も多く使われた危険なパスワードは、「password」、「123456」、「1qaz2wsx」など。最後のものは一見複雑そうに見えますが、実はキーボードの左端の2列を縦に入力しただけ。
このような文字の組み合わせは、パスワードの体をなしていません。
<パスワードを強固なものにするために>
- 文字数を多くする(最低でも8文字以上、12文字以上が理想)
- 小文字だけではなく、大文字や記号なども含める
- 誕生日や住所など、個人情報と結びつくものは避ける
I特にパスワードは強固なものにして、自分の身は自分でしっかりと守るようにしてください。
二段階認証を設定しておく
不正アクセスを防ぐにはIDとパスワードを強固なものにするのに加えて、ログイン時の認証作業を2回に分ける二段階認証を設定することも非常に効果的です。
<二段階認証とは?>
ログイン時の認証作業を二回に分ける方法。
例えばパスワードを入力した後に、あらかじめ設定しておいた「秘密の質問」の答えを入力することによって、第三者からの不正アクセス・なりすましを防ぐことができる。一度ログインした端末なら、以後の二段階認証を省略することも可能。
メタバース・プラットフォームでは二段階認証を取り入れているのですが、それを設定するかどうかはユーザーの任意となっていることが多い。そのため二段階認証は必ず設定して、安全性を高めましょう。
|企業側ができる不正アクセスへの対策
個人でできる対策には限界があるため、メタバースを提供するプラットフォーム、つまり企業側がしっかりとしたセキュリティ対策を図ることも非常に重要です。
メタバースの運営会社が行える不正アクセスへの対策は、以下のようなものが有効と考えられています。
- アクセス制限機能(IPアドレス制限機能)をつける
- 多要素認証をつける
- eKYCサービスを導入
- 不正検知システムを導入する
メタバースへの参入を考えている企業・担当者はもちろんのこと、ユーザーとしても企業がこうした対策を取っているかどうかを確認することは、メタバースの安全性を高めるために大切なことと言えるでしょう。
アクセス制限機能(IPアドレス制限機能)をつける
アクセス制限機能(IPアドレス制限機能)とは、未登録のIPアドレスからのアクセスを制限する機能のことです。
メタバースのアカウントや運営ページへのアクセスを自社のIPアドレスのみに制限することによって、外部からの不正アクセスを防ぐことができます。
不正アクセス防止のためにアクセス制限機能が有効なのは、ハッカーはまずメタバースを運営する企業のアカウントやサイトにアクセスしようとするから。
メタバースのアカウントやサイトへのアクセス権限を自社のIPアドレスのみに制限することによって、そもそも外部からのアクセスを遮断することができるのです。
もちろん、メタバースの利用者がアクセスするのは運営ページではなくメタバースそのものであるため、アクセス制限の対象とはなりません。
これはあくまでも社内への不正アクセスを防止するための措置。それによって、メタバース全体を守ることができるのです。
多要素認証をつける
他要素認証とは、異なる複数の要素によってログインを認証するシステムのこと。
二段階認証との違いは、「段階」ではなく、「要素」の組み合わせで認証することにあります。
例えば…
- パスワードと秘密の答えでログインする ⇒ 「知識」という同じ要素の2ステップのため、二段階認証
- パスワードと生体認証でログインする ⇒ 「知識」と「生体認証」という異なる要素で認証するため、他要素認証となる
生体認証はユーザーの側へのハードルが高くなってしまいますが、事前に設定された携帯電話番号宛に届くSMSに記されているワンタイムコードを再度入力させることも、「知識」と「所持情報」という異なる要素の認証になるため、他要素認証となります。
企業が他要素認証を付け加えることによって、安全性をさらに高めることができるのです。
eKYCサービスを導入
eKYCサービスとは、スマホやパソコンなどを利用して、オンライン上で本人確認ができるサービスのことです。
従来の本人確認(例えば銀行口座の開設など)では、本人が窓口を訪れて、そこで運転免許証等を提示して本人確認を行っていました。
それをオンラインで完結させてしまおうというのが、eKYCサービスなのです。
eKYCサービスでは、スマホで自分自身を撮影し、同時に写真つきの本人確認書類を撮影。それをサイトにアップロードすることによって、本人確認を行います。
ネット銀行の開設やクレジットカードの申込みなどには、すでにこのeKYCサービスが導入されています。
メタバースではNFTや仮想通貨などの個人資産も扱うため、eKYCサービスによって本人確認を行うことが今後のスタンダードになるかもしれません。
不正検知システムを導入する
第三者による不正アクセスを防ぐ手段は色々とありますが、あまり複雑になりすぎるとユーザーに負担をかけてしまう。それを防ぐのが、不正検知システムの導入です。
不正検知システムを導入すれば、全てのユーザーではなく、「不正の疑いがあるユーザー」にのみ、多要素認証やeKYCを実施できるようになります。
不正検知システムは不正の疑いのあるユーザーだけではなく、機械による不正ログインや同一人物による複数アカウントの登録、なりすましログインなども防ぐことができます。
不正アクセス検知システムは不正アクセスなどの異常を検知した時に、自動で通信を遮断するシステムですから、企業としても人員やコストを増やすことなく安全性を高めることが可能となります。
|メタバースの今後の課題
ここまでメタバースの潜むリスクと、安全に利用するための対策を見てきました。
では、メタバースの安全性をさらに高めていくために、今後どのような課題に取り組んでいけばよいのでしょうか?
最後に、メタバースの今後の課題として以下の二つの問題を取り上げます。
- チーティングとデューピング
- サイバースクワッティング
メタバースを安全に利用するために、引き続きこうした課題に取り組んでいくことが重要となるでしょう。
チーティングとデューピング
メタバースを安全に利用するには、チーティングやディーピングなどの不正行為をしっかりと防ぐことが必要となります。
- チーティング(Cheating):データの改竄(チート)を始めとする不正行為によって、メタバース内のアイテムをいじったり、仮想通貨の額などを引き上げたりすること
- デューピング(Duping):複製の意味。チーティングの一種で、メタバース内のアイテムを大量に複製することなどが挙げられる
メタバースではアバターを利用するため、犯罪者が自分の正体を隠してチーティングやデューピングなどの不正を行う危険性が指摘されています(日本においてチーティングは立派な犯罪です)。
NFTや仮想通貨を扱うメタバースにおいて、こうした不正行為をしっかりと取り締まること、そしてそもそも不正が起きないような仕組みを構築することが重要になっていくでしょう。
サイバースクワッティング
サイバースクワッティングとは、有名サービスのドメインを偽装して消費者を欺く犯罪行為のこと。
犯罪者は既存のドメインやブランドに非常によく似た名前を登録し、利用者を欺いてお金を振り込ませたり個人情報を不正に入手しようとします。
メタバースにおいても仮想通貨のイーサ(ETH)を取り扱うプラットフォーム、イーサリアムのウェブサイトをハイジャックする犯罪行為などへの警鐘が鳴らされています。
ユーザー側がサイバースクワッティングを見極め、被害を防ぐのには非常に困難であるため、企業の側の努力が求められます。
不正検知システムによるブロッキングや本人確認を徹底するなど、ユーザーがメタバースを安全に利用できるよう、あらゆる手段を講じなければなりません。
|まとめ
メタバースには現実世界にはない新しい体験ができる、物理的な距離にとらわれず様々な人と交流できる、ビジネスチャンスが広がるなどの非常に大きなメリットが存在します。
しかしそれだけ魅力的な世界だからこそ、潜在的なリスクにも十分に気をつけなければなりません。
我々ユーザーとしてはメタバースを安全に利用できるよう、ID・パスワードの強化や二段階認証を設定するなどの対策を講じて、リスクに備える必要があります。
企業としても、アクセス制限機能や多要素認証、eKYCサービスなどを導入してメタバースの安全性を高めるとともに、今後起こりうる不正行為への対策も講じなければなりません。
ユーザーも、そうした企業の取り組みを確認することによって、メタバースをより安全に利用できるようになるでしょう。
メタバースのリスクを理解し、自分でできる対策をしっかり取って、ぜひ安心してメタバースを利用してください!