インターネット上に構築された現実に近い特徴を持つ仮想空間であるメタバース。
近年、以前より「メタバース」という単語を耳にすることが増えてきました。
その中でも、「産業メタバース」が注目されていることはご存知でしょうか?
現在、産業メタバースに関する投資や取り組みがかなり拡大しつつあります。
この記事では、
「そもそも産業メタバースとは?」
「産業メタバースを活用することで何が変わるのか知りたい」
という方に向けて、
・産業メタバースとは
・産業メタバースが注目されている背景
・各社の産業メタバースの動き
などについて詳しく解説していきます。
産業メタバースに関する知識を包括的に知ることができます。
ぜひご覧ください!
企業独自のメタバースを迅速かつ安価に構築できる『プライベートメタバース』
サービスの特徴や開発事例をまとめた資料をご用意しました。
プライベートメタバース紹介資料の無料ダウンロードはこちら
資料をダウンロードする目次
|産業メタバースとは
産業メタバースとは、産業分野における現実世界のシステムをデジタル上で再現し、利用する仮想空間のことです。
構築される際には、様々なテクノロジーが活用されます。
その中でも大きな特徴として、デジタルツインと呼ばれるデジタル上で現実世界を忠実に再現する技術に、一般的なメタバース技術を取り入れているという点を挙げることができます。
この仮想空間上では、距離や時間に縛られずにプロダクトデザインのコラボレーションや不具合対応、実証実験を行うことができます。
そのため、工場や農場、医療機関などにおいてシミュレーションやデザイン設計、AI機械学習などのビジネス活動に活用されることが想定されています。
産業メタバースの活用により、様々なメリットが期待されています。
|産業メタバースが注目されている背景
出典:https://project.nikkeibp.co.jp/bpi/atcl/column/19/020100462/
日経BP 総合研究所が2023年9月に実施した調査において、「2030年までに大きな社会インパクトを与えるテクノロジー」の4位、「2030年までにビジネスを創るテクノロジー」のトップに「産業メタバース」が選ばれており、ここから産業メタバースに対する期待と注目が高まっていることがうかがえます。
では、実際どのような理由でここまで注目されているのでしょうか?
ここではその背景について詳しくご紹介していきます。
省人化
ひとつは省人化です。
産業メタバースの導入の対象となる様々な業界において、人手不足が深刻化しています。
それは日本のみに限らず世界中で問題視されており、グローバルな人材の獲得競争はますます激化していくことが予想されます。
その対策としての省人化を実現する技術として、産業メタバースは期待を集めています。
デジタルツインを含めた産業メタバースの導入により、遠隔からリアルタイムで監視・操作することができ、異常や効率低下を即座に検知・対応できるようになります。
また、複数拠点での共同作業のほかベテラン社員や専門家による遠隔サポートも可能となり、ひとりで複数現場の対応を行うことも可能となります。
このような可能性から、省人化に繋がるテクノロジーであると期待されています。
コストの削減
次にコストの削減です。
従来の製造プロセスでは、多くの試作品の製作が必要となり、莫大な時間とコストがかかることも少なくありません。産業メタバースの導入により、仮想空間上で試作品を作成でき、これらにかかる時間とコストを大幅に削減することができます。
また、合成データ生成技術やロボットシミュレーション技術などとの組み合わせにより、可能性をさらに広げることが可能となります。
合成データ生成とは、生成AIに基づく計算アルゴリズムとシミュレーションによって作成される、仮想的なデータです。この技術により、様々な場面で生じるデータギャップの解消を期待できます。
ロボットシミュレーションはAIを利用した高精度な技術であり、仮想空間において現実と同様の検証が可能です。
産業メタバースとこれらの技術との組み合わせにより、製造全体のコスト削減に繋がります。
売上の増加
3つ目は売上の増加です。
産業メタバースの導入による質の向上やトラブル対応が、売上の増加に寄与する見込みがあります。
仮想空間上で製品を目視しながら、実際に使った場合に近い高精度な検討を行うことができ、品質の向上に繋がります。
また、検討結果を素早く製品に反映できるため、改善サイクルを高速化することができ、さらなる質の向上が期待できます。
トラブルの予防と速やかな解決が実現できることも大きな利点であり、売上増加の一因となり得る点です。
現実世界においてトラブル対応の際に最も大切であり、時間のかかるのは把握です。
仮想空間では、何が起きたのか、現状、どうすれば治るのかという過去、現在、未来の動作や状態を迅速にまとめて把握できます。
対応自体に関しても、物理的距離関係なく、複数拠点でリアルタイムに共有することができるため、速やかに解決策を施行することができます。
さらには、仮想世界においてカスタマーエクスペリエンスやアフターサービスを提供することでも売上増が期待できるのではないでしょうか。
このように、産業メタバースの導入によって期待されるいくつもの利点により、売上の増加につながるのではないかと考えられています。
PR戦略
最後はPR戦略です。
産業メタバースの技術を活用することで、マーケティングやPR活動が進歩します。
具体的には、仮想空間上に疑似体験型のショールームを作成することで、顧客に商品やサービスの特徴を直感的に伝えることが可能となります。
特に離れた場所の顧客や新たな市場の顧客に対して、実際の体験を提供することが難しい場合に有効です。
この新しいアプローチはブランドのイメージや価値を高め、強力なブランディングツールとして機能します。
例えば、メタバース上で新製品発表会を実施するとします。
顧客は製品を見るだけでなく、試乗から検討、購入、契約までの流れすべてをメタバース内で完結することが可能となります。
これにより、物理的制限なく多くの顧客にアプローチすることができ、製品の訴求を効果的に行うことができます。
|各社の産業メタバースの動き
これまで挙げてきたメリットによる期待の高まりと同時に、近年産業メタバースを活用する企業が増えています。
ここでは、産業メタバースに対する具体的な動きについて、4社を事例とともにご紹介します。
シーメンス
産業メタバース領域において特に注目されているのがドイツの電機メーカーSiemens(シーメンス)です。
シーメンスはいち早くこの分野へのコミットを発表し、アメリカの半導体メーカーであるNVIDIAやソニー、Amazon Web Services(AWS)との提携も積極的に行っています。
ソニーとの連携は2024年にアメリカで開催された業界向けの見本市「CES2024」で発表されました。
具体的には、ソニーのXRヘッドセットを自社DXサービスXceleratorのツールとして採用し、産業メタバース上でのコラボレーションを加速するという計画です。
この計画はシーメンスの産業メタバースのためのデザインツール「NX Immersive Designer」に統合され、近々リリースされる見込みだそうです。
また、中国は南京にデジタルツインの技術を活用し、デジタルに基づいた工場を建設したことを発表しています。
物理的な工場建設前からのデジタルツインによるシミュレーションにより、工場操業時の姿を最適化することができ、ミス発生による時間と費用を大幅に省くことができたとしています。
さらに、現在進行形で常に最新データに基づいた最適化を行うことで、生産性20%、生産能力200%の向上に加え、電気代や工業用水の節約、CO2の削減などサステナブルな結果なども残しています。
産業メタバースの導入により、多くのメリットがあることが一目瞭然ですね!
ダッソー・システムズ
産業用ソフトウエアを手掛けているフランスの会社Dassault Systemes(ダッソー・システムズ)は、2024年4月にドイツ・ハノーバーで開催された世界最大級の産業展示会「HANNOVER MESSE 2024」において新たなサービスを展示しました。
それはデジタルツイン技術を用いることで、仮想空間上で製造ラインの配置を検討したり設備のシミュレーションをしたりできるソフトウエアでした。
このソフトウエアによって、実際に機械を動かさずとも、生産効率の高い設備レイアウトや自律搬送ロボット(AMR)のルートを短期間で検討が可能となります。
これにより、製造の自動化を実現でき、製造業において世界中で深刻となっている労働者不足を解決することができるとしています。
また、同社は2024年1月ごろから工場全体を3Dスキャンして3Dモデル化する、3Dモデル製作サービスも開始しています。
設計ツールに習熟していない人でも扱うことができ、工場をバーチャル化して生産性を高めたいというニーズに応えることができると発表しています。
日本でも2024年中にサービス開始される予定です。
BMW
ドイツの自動車メーカーBMWは、デジタルツインと産業メタバースの技術を用い、新しい時代のデジタル自動車生産を行っています。
その際に、NVIDIAのサービスであるNVIDIA OmniverseとNVIDIA AIを活用しているとしています。
現実世界の作業者のデータを利用してトレーニングされたデジタルヒューマンでシミュレーションを実施し、作業員の人間工学と効率性に基づいた新たな業務フローを検討しています。
BMWは工場に物流用のインテリジェント・ロボットをいくつも配備しており、それらをコマンドセンターからリアルタイムで監視し、安全かつ一括で管理・指揮しています。それにより、生産する際のマテリアル・フローを改善しています。
15か国に31の工場を展開しているBMWですが、NVIDIA OmniverseとNVIDIA AIを活用することで31すべての向上をシミュレートし、計画時間の短縮や精度と柔軟性の向上を可能にし、プランニングを30%以上効率化することができると予測しています。
これらの技術により、年間250万台の車を生産し、そのうちの99%であるカスタマイズ仕様にも対応することができているのですね。
BMWのNVIDIA活用について、NVIDIA公式YouTubeチャンネルに動画があるので、こちらもぜひご覧ください!
川崎重工
日本国内でも産業メタバースの取り組みが行われています。
日本の総合エンジニアリングメーカーである川崎重工は、2030年に目指す将来像として、新たな社会課題に対するソリューションの創出を目指していると制定しています。
その実現に向けて「Kawasaki DX」をスタートさせており、その中で目指すKawasaki Digital Platformの構築に繋がるとして、米Microsoft社と連携して産業メタバースに取り組んでいます。
ロボットを使った製造現場において、クラウド型プラットフォームのMicrosoft Azureや非接続型MRヘッドセットのHoloLensを使い、仮想空間上での共同作業や、デジタルツインによる遠隔ロボット操作の実現を目指した取り組みを行っています。
産業メタバースを活用して、デジタルプラットフォームを構築することで、新たなロボットビジネスの創出に繋がることが期待されます。
取り組みの紹介ビデオも公開されているので、見てみてくださいね!
他にも、2023年7月にAIを活用したソリューションの創出と人材育成を目的に、神戸市に 「Microsoft AI Co-Innovation Lab」 を開設するなど、多様な取り組みが行われています。
|まとめ
本記事では、今注目の「産業メタバース」と注目されている背景や各社の動きについて解説しました。
産業メタバースは省人化、コスト削減、売上の増加、PR戦略などいくつもの点において期待されています。
それに伴い、産業メタバースを活用する企業も増えてきていることで、さらに発展していくと見込まれています。
この記事が、産業メタバースについて理解し、社会に与える影響を深く考えるための一助となれば幸いです。
企業独自のメタバースを迅速かつ安価に構築できる『プライベートメタバース』
サービスの特徴や開発事例をまとめた資料をご用意しました。
プライベートメタバース紹介資料の無料ダウンロードはこちら
資料をダウンロードする