いま世界中で注目を集めている「スマートシティ」構想をご存知でしょうか?
これは、急速に進歩する最新技術を駆使し、都市問題の克服と持続的な発展を目指すための都市計画を指す言葉です。
従来の都市とは一線を画す、スマートシティとはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、その魅力や具体的な事例を紹介するとともに、私たちの生活に与える影響について解説します。
未来の都市生活を一緒に想像してみましょう!
目次
|スマートシティとは
スマートシティとは、最先端のICT(情報通信技術)を駆使し、都市における様々な問題の解決と持続的な発展を目指す都市モデルを意味します。
具体的には、交通渋滞の緩和、エネルギー消費量の削減、防災対策の強化、医療・介護サービスの向上、経済活性化など、様々な分野における最適化と効率化を図ります。
従来の都市運営では、個々の課題に対して個別に対処してきましたが、スマートシティでは都市全体を俯瞰的に捉え、関係するあらゆるデータを収集・分析することで、より包括的で効果的な解決策を導き出すことが可能になります。
さらに、住民一人ひとりのニーズや意見を反映した、官民連携や地域住民との協働を推進することで、持続可能な都市の発展を実現する狙いがあります。
注目される背景
スマートシティが脚光を浴びた背景には、近年の少子高齢化の進行と労働力不足の深刻化があります。
そこで、デジタル技術の導入による業務の効率化や自動化、労働力不足の解消を目指すスマートシティ構想が脚光を浴びるようになりました。
また、再生可能エネルギーへの転換によるエネルギー効率の向上や環境負荷の軽減も目的の一つです。
都市部への人口集中により、環境問題、エネルギー問題、交通渋滞、地方経済の停滞などが顕在化しており、これに対応する取り組みとしても期待されています。
ICT技術の飛躍的な進歩も相まって、環境に優しく効果的な都市計画を導き出す可能性を秘めた取り組みとして、世界中で注目を集めているのです。
|スマートシティのメリット
スマートシティの実現は、住民の生活品質や安全性の向上に大きな意味を持ちます。
ここでは、スマートシティの導入によって得られる3つのメリットについて、詳しく説明します。
持続可能な都市設計
スマートシティの一つのメリットは、持続可能な都市設計の実現です。
これは、ICTを活用することで、多くの社会課題を解決し、住民の生活の質を向上させることが可能になるためです。
具体的には、交通渋滞の緩和、高齢者ケアの強化、エネルギー不足の解消などが挙げられ、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも直結しています。
例えば、目標11「住み続けられるまちづくり」では、データやAIを活用した都市管理が交通渋滞の緩和や防災対策の強化を促進し、良い住環境を作ります。
また、目標16「平和と公正をすべての人に」や目標1「貧困をなくそう」、目標8「働きがいも経済成長も」にも関連し、すべての人々に豊かで繫栄した生活を提供することが期待されています。
防災対策
スマートシティのメリットには、防災対策の強化も挙げられます。
自然災害のリスクが高い地域では、スマートシティ化により効果的な防災・減災が期待できます。
例えば、IoTセンサーやカメラを活用することで、河川の氾濫や土砂崩れといった危険を早期に検知し、住民への避難指示を迅速に行うことができます。
この時にビッグデータ分析を活用することで、過去の災害データに基づいた最適な避難ルートを導き出すことも可能です。
また、災害発生時にドローンやロボットを活用して被災状況を迅速に把握し、必要な支援物資を届けることもできます。
近年、異常気象の激化や地震などの自然災害の発生頻度が高まっていることから、スマートシティ構想はますます重要性を増しています。
新たな経済圏の創出
スマートシティは、新たな経済圏を創出することにも期待されています。
スマートシティ化が進むことで、自治体や教育機関、民間企業の連携が強化され、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高まります。
官民連携によって、住民の利便性が向上するだけでなく、地域企業にも新しいビジネスの機会が提供されるでしょう。
都市の非効率や生産性の低下といった経済成長の障害を克服するために、IoTやAIなどの最先端技術を導入し、効率性と生産性を向上させるための施策が進められています。
具体的な課題と解決策を組み合わせることで、環境への配慮も実現できるため、スマートシティは数多くの地方自治体や企業の関心を集めています。
|スマートシティの注目事例
近年、国内外において、スマートシティ構想を積極的に取り入れている企業や自治体は増加しています。
以下で具体例を7つ紹介しますので、未来の都市モデルをイメージしてみてくださいね。
ウーブンシティ
トヨタ自動車は、静岡県裾野市に「ウーブンシティ」というスマートシティを建設中です。
これは、かつてトヨタグループの東富士工場があった場所に建設され、3,000人を超える応募者が入居を希望しています。
2025年の入居開始を目指し、多様な施設とサービスの整備が進められています。
具体的な取り組みとして、ENEOS株式会社と連携し、水素に関する実証実験を行い、カーボンニュートラルの実現を目指しています。
また、NTTと共同で「スマートシティプラットフォーム」を開発し、AIを活用して生活、医療、行政など多岐にわたるサービスを連携させる計画です。
ウーブンシティは先端技術と企業連携による未来の都市モデルとして注目されています。
スマートシティ会津若松
福島県会津若松市が取り組むスマートシティは、持続可能で活力ある地域社会と快適なまちづくりを推進しています。
そのために、地域・市民・企業が三方良しになる利益を享受し、納得感を共有できる地域社会の実現を目指しています。
特に市民の理解を深めるための努力を重要視しており、例えば、よろずデジタル相談所の設置やスマホ操作の指導教室、地域アプリの事前設定などを通じて、デジタルサポート体制を整えています。
また、母子健康手帳の電子化やオンライン診療の導入など、幅広い世代が恩恵を受けられるサービスを提供し、ICTを活用した「スマートアグリ」など農業の振興にも力を入れています。
Smart City Takeshiba
東京都港区の「Smart City Takeshiba」は、東急不動産株式会社とソフトバンク株式会社が協力して進める、市民参加型のまちづくりプロジェクトです。
まず、「都市OS」を活用した3D都市モデルを運用することで、人流シミュレーションなどが可能となり、地域活動や合意形成のための手段として役立っています。
また、MaaSサービス(異なる交通手段を一つにまとめた移動サービス)の開発が進められており、公式LINEと連携することで、地域の交通や防災サービスの整備にも貢献しています。
プロジェクトの成果として、交通モビリティの連携数が5件、サービス連携施設数が6施設など、具体的な数字でその効果が表れています。
DATA-SMART CITY SAPPORO
北海道札幌市では、健康寿命の延伸やイノベーションの創出を目指し、ICTを活用したスマートシティ化を進めています。
代表的な取り組みの一つが「健康ポイント事業」です。
この事業では、専用アプリを通じて市民が街歩きに参加し、そのデータがまちづくりや新サービスの開発に役立てられています。
また、オープンデータ事業では、市が管理するICT活用プラットフォームの利用を促進し、データの協調利用を推進。
さらに、インバウンドマーケティング事業では、外国人観光客の行動データを分析し、効果的なマーケティングを実施しています。
これらの取り組みを通じて、札幌市は市民の生活の質向上や地域経済の活性化、効率的な行政運営を実現しています。
LinkNYC
ニューヨーク市では、公衆電話を高速インターネットに対応したタブレット型情報端末「Link」に置き換える取り組みが進められています。
この「Link」端末は、公衆Wi-Fiの無料提供、地図の確認、国内通話の無料利用、USBポートでのデバイス充電、監視カメラ機能など、多機能なサービスを提供しています。
これらのサービスの運用コストは、端末のディスプレイに表示される広告収入で賄われています。
2022年5月までに約2,000台の端末が市内に設置され、誰でもWi-Fiを利用できる環境が整備されました。
この取り組みにより、ニューヨーク市内でのインターネット接続が容易になり、スマートシティ化が一層進展しています。
Smart Nation Singapore
シンガポールは、スマート国家への変革を世界に先駆けて推進している国として知られています。
例えば、企業が政府のサービスに簡単にアクセスできる「GoBusiness」や、政府と民間のデジタルサービスを統合する「CODEX」があります。
また、すべての人が効率的に金融取引を行えるようにする電子決済システムや、政府サービスに簡単にアクセスできる「LifeSG」も導入されています。
さらに、公共交通システムを強化し、車を使わない生活を支援する「スマート都市モビリティ」も進められています。
これらの取り組みの結果、シンガポールはスマートシティ指数で世界第7位にランクされており、他国にとっても非常に参考になる事例です。
ET City Brain
中国の杭州市では、「ET City Brain」計画が推進されています。
2017年から、アリババを中心に人工知能を活用した交通監視システムの実装が進められ、渋滞、違反、事故の減少を目指しています。
これにより、交通信号を制御して交通の流れを調整して渋滞の予防と抑制を実現したり、緊急車両が通過する際には信号を青に変え、到着時間は平均で15分以上短縮されました。
この「城市大脳(シティブレイン)1.0」というシステムは、アリババにより2020年6月に「3.0」の新バージョンを発表。
救急車が患者を搬送中に病院に患者データを送信したり、空いている駐車場をナビゲーションしたりすることができるようになり、さまざまな都市課題の解決に役立っています。
|まとめ
スマートシティは、持続可能な都市設計や防災対策、新たな経済圏の創出など、多くのメリットが期待されています。
単なる技術導入にとどまらず、市民一人ひとりのニーズや意見を反映した、より住みやすく、心豊かなまちづくりを目指しています。
今回紹介した事例からも、スマートシティの可能性が見て取れるでしょう。
期待が高まるスマートシティの未来像から、目が離せません。