世界中で大きな注目を集めているメタバース。その市場規模は2030年には10兆ドルにも達するという予測もされており、様々な企業が資金や人材を注入しています。

成長を続けるメタバース業界は多くの人材を必要としており、彼らの活躍の機会もさらに広がっていくでしょう。

そこで今回は、メタバースを作り上げるクリエイターについて取り上げます。

メタバースのクリエイターの仕事内容とは?どんな職種があるの?求められるスキルとは?などなど、メタバース・クリエイターになるために必要な要素を詳しく説明します。

メタバースのクリエイターに興味がある人には必見の内容。ぜひ最後までご覧ください。

|メタバースの構成要素は?

メタバースのクリエイターについて調べる前に、そもそもメタバースを構成する次の3つの要素について考えます。

  1. バーチャル空間
  2. プロップ
  3. アバター

メタバースの基本構成要素を理解することによって、クリエイターに求められることもハッキリ見えてくるでしょう。

バーチャル空間

メタバースは、インターネット上に構築された3Dのバーチャル空間です。

ユーザーはその仮想空間にアクセスし、他ユーザーとの交流やイベント、ゲームなどを楽しみます。

そのためメタバースのクリエイターにまず求められるのは、このバーチャル空間を作り上げること。その空間を構成するのは背景や環境、シーンなど様々ですが、メタバースという一つの「世界」を作るのがメタバース・クリエイターの大きな仕事なのです。

コロナ禍でリモートワークやバーチャルイベントなど、バーチャル空間のニーズも高まってきました。そうした中で、バーチャル空間を作り上げるメタバース・クリエイターの需要もさらに伸びていくに違いありません。

プロップ

プロップは英語で「支柱」、もしくは「小道具」という意味があり、演劇の舞台で用いられる道具を指して用いられてきました。

それが転じて、メタバースでは仮想世界の中に配置されるアイテムなどをまとめてプロップと呼んでいます。

メタバースの仮想空間内でリアリティを演出するには、多くのプロップが必要となります。

例えば建物に入る時のドア、中に置いてある机やその上に置かれている銃などは単なる背景ではなく、ユーザーが触れて扱えるように設計されています。

それら全てはプロップであり、プロップのデザインや設計もメタバースのクリエイターの重要な仕事の一つ。

「神は細部に宿る」とも言われるとおり、プロップの作り込みはメタバースにおけるユーザーの満足度を大きく左右するのです。

アバター

アバターは、メタバースでユーザーの分身となる存在。

人形だけではなく動物型や異星人など、自分の好きなアバターを操作して、メタバース内で行動することができます。

アバターは自分自身の分身ですから、それにこだわる人は非常に多い。

日本のメタバース・プラットフォームはアバターを細かく設定できるのがほとんどなのですが、欧米のメタバースのアバターは上半身だけなど簡略化することも多く、不満を感じている人も多いようです。

アバターの造形の細かさなどは、まさに日本人の得意とするところですから、日本人クリエイターの腕の見せどころと言えるでしょう。

|メタバースでクリエイターになるには?必要なスキルを紹介

メタバースの基本的な構成要素が理解できたところで、いよいよ本題。メタバースでクリエイターになるにはどうしたら良いのでしょうか?

ここではメタバースのクリエイターに必要とされる、以下の基本的な4つのスキルについて取り上げます。

  1. Unityの開発スキル           
  2. Unreal Engineの開発スキル           
  3. プログラミング   
  4. ビジネススキル   

どれもメタバースでクリエイターになるには必須のスキルとなりますから、しっかり頭に入れておきましょう。

Unityの開発スキル

「Unity」はゲーム開発に特化したゲームエンジン(ゲーム開発に必要な基本機能をまとめて提供するプログラムのこと)で、数あるゲームエンジンの中でも最も利用者が多いと言われています。

Unityは2D、3Dいずれのゲームも開発可能ですが、次の特徴を備えていることからメタバースの開発にも必須といえます。

<Unityの特徴>

  • VR・ARの開発が可能
  • スマホ向けアプリも開発可能
  • クロスプラットフォームに対応

VR・ARはメタバースにも欠かせない技術ですし、スマホ向けのメタバースもどんどん増加しています。こうしたことから、メタバースのプラットフォームは基本的にUnityを使って開発されています。

メタバースのクリエイターを目指すには、Unityは必須のスキルの一つと言えるでしょう。

Unreal Engineの開発スキル

「Unreal Engine」もゲームエンジンの一つで、Unityと並んで非常に利用者が多いゲームエンジンです。

特に世界中で大人気のオンラインゲーム、「フォートナイト」の開発に用いられていることで有名。

フォートナイトはメタバースと非常に親和性が高いゲームで、実際にフォートナイトの「メタバース化」が進んでいるように思えます。

そうしたことからも、今後メタバースの開発に用いられる頻度も増していきそうです。

Unreal Engineは、2022年4月に最新版となる「Unreal Engine 5(UE5)」がリリースされました。しかしUE5の特徴であるポリゴンの取り込みや、美麗なムービーに必要な機能などはメタバースに絶対必要というわけではありません。

そのため、もうしばらくは現行のバージョンであるUE4が活躍しそう。実際にメタバースのエンジニアの求人要項でも、EU4の開発スキルを求めているものが多く見かけられます。

プログラミング

メタバースの開発にはゲームエンジンを扱うだけではなく、当然プログラミングのスキルも必要となります。

特にメタバースの開発に求められる言語は、「C++」と「Java」の2つ。

  • C++:「C言語」にオブジェクト指向のプログラミングを加え、汎用プログラム言語として幅広く利用されているのが「C++」。Unreal Engineの開発にも用いられているC++は汎用性が非常に広いため、メタバースの開発にも必要な言語の一つとなっています。
  • Java:C++と並んで人気の高いのが、「Java」。その最大の特徴は一度プログラムを書けば、様々なハードで動作させられるということ。汎用性が非常に高く、Webサービスやスマホアプリの開発にも良く用いられていることから、メタバースのクリエイターにも求められています。

メタバースの開発にはプログラミングのスキルが必須。その中でもC++とJavaは、ぜひ抑えておきましょう。

ビジネススキル

SEやプログラマーは一人で黙々とPCに向かっているイメージが強いかもしれませんが、実際の現場はチーム作業。そのため、コミュニケーション能力を始めとした基本的なビジネススキルがなければ仕事になりません。

さらにこの後に詳しく取り上げますが、メタバースの開発には多くの職種・業務が関わってきますから、マーケティングや企画力、プロジェクトマネジメントなどの様々なビジネススキルが求められます。

<メタバース・クリエイターに必要なビジネススキル>

  • コミュニケーション能力
  • マーケティング
  • プランニング
  • プロジェクトマネジメント
  • 英語

メタバースは世界的なプロジェクトになるため、上で挙げたビジネススキルに加えて英語も習得すると、自身のキャリアアップにつがなるでしょう。

|メタバースに関連するクリエイターの種類

上でも少し触れましたが、メタバースの開発にはプログラミングだけではなく、様々な職種やジョブが関わってきます。

ここでは、メタバースに関連する主なクリエイターの職種について取り上げます。

  1. ゲーム開発エンジニア      
  2. サーバー開発エンジニア  
  3. Android・iOSエンジニア  
  4. インフラ・セキュリティエンジニア            
  5. デザイナー・3DCGデザイナー

では、それぞれ詳しく見ていきましょう!

ゲーム開発エンジニア

「ゲーム開発エンジニア」はその名の通り、ゲームの制作に携わるエンジニアです。以前は「ゲームプログラマー」と呼ばれていましたが、最近ではゲーム制作に必要なスキルがプログラムだけにとどまらないため、より広範囲なスキルを含むエンジニアと称されるようになっています。

メタバースの世界を作るのは3Dゲームの制作とぼぼ変わらないため、メタバース制作においてもゲーム開発エンジニアは中心的な役割りを担います。

しかしゲーム開発エンジニアと言っても、その役割りは細分化されています。

  • ゲームプログラマー
  • サウンドプログラマー
  • グラフィックプログラマー
  • ネットワークプログラマー

いずれにしても、メタバース開発エンジニアにはUnityやUE、またはC++やJavaなどのプログラム言語スキルが必須となります。

サーバー開発エンジニア

メタバースの開発・運営に必要なネットワークサーバーの設計、構築、保守管理を行うのが「サーバー開発エンジニア」です。

多数のユーザーが同時接続するメタバースでは、サーバー開発エンジニアの役割りは非常に重要。サーバーの種類や速度、コストなどの様々な要素を考えながら最善の通信環境を整えます。

そのためには、ゲーム開発エンジニアなどとの緊密な打ち合わせも欠かせません。

メタバースが出来上がったあとも、サーバー開発エンジニアの仕事は終わりません。ユーザーが快適にメタバースを楽しめるよう、サーバー開発エンジニアはサーバーの監視、セキュリティチェック、バックアップ業務などを行います。

またサーバーに障害が生じた際には、一刻も早く復旧にあたらなければなりません。

メタバースを支える縁の下の力持ち、それがサーバー開発エンジニアなのです。

Android・iOSエンジニア

メタバースはPCだけではなく、スマホアプリとしても提供することが可能です。そのメタバース用スマホアプリの開発にあたるのが、「Android・iOSエンジニア」です。

Android・iOSエンジニアの主な仕事は以下の通り。

  • スマホアプリの開発
  • アプリの維持保守
  • 海外ドキュメントの確認

Android・iOSエンジニアはスマホアプリの各種機能の設計・開発だけではなく、アプリリリース後のアップデートを含む修正、維持保守も担当業務となります。

またAndroid、iOSの最新リリースは基本的にアメリカ発となりますので、そのドキュメントの確認、時には翻訳作業もAndroid・iOSエンジニアの役割りとなります。

インフラ・セキュリティエンジニア

インターネット・サーバーの構築や運営、保守を行うのがサーバー開発エンジニアですが、その中でも特にセキュリティ面の責任を担うのが「インフラ・セキュリティエンジニア」です。

以前はサーバー開発エンジニアがセキュリティの対策業務も行っていました。しかしインターネットにおける安全保障の重要性の向上、ならびにサイバー攻撃の巧妙化などの時代の変化を受けて、セキュリティエンジニアという専門職が登場することになったのです。

セキュリティエンジニアの業務も多岐にわたります。

  • セキュリティ診断・アセスメント
  • 新たな脅威に関する調査や対策
  • セキュリティの設計・運用・保守
  • 社内のセキュリティ教育

セキュリティエンジニアの仕事によって、メタバースの安全は保たれているのです。

デザイナー

メタバースを構成する3つの要素、1.バーチャル空間、2.プロップ、3.アバター。これらのデザインやモデリングを行うのが「デザイナー」です。

デザイナーの仕事は文字通りユーザーの目に見える部分ですから、その役割りは非常に重要。そのメタバースが成功するかどうかは、デザイナーの肩にかかっていると言っても過言ではありません。

メタバースは3Dの仮想空間ですから、メタバースのデザイナーも当然3DCGやモデリングのスキルがなければなりません。「メタバース・デザイナー」=「3DCGデザイナー」なのです。

デザイナーの業務は3Dモデルのデザイン、モデリング、アニメーション、エフェクトなど多岐にわたります。しかしそれだけに、非常にやりがいのある仕事だとも言えるでしょう。

|メタバースのプラットフォーム

メタバースのクリエイターがどんなものか、よく理解できたと思います。

では次に、そのクリエイターが活躍する「場」について見てきましょう。

というのも一口にメタバースと言ってもその世界、つまりプラットフォームは数多く存在するからです。

そこでここでは、メタバースの代表的な3つのプラットフォームを紹介します。

  1. XR CLOUD
  2. cluster
  3. The Sand box   

自分がどのメタバース・プラットフォームで働きたいか、ということも考えながらご覧ください。

XR CLOUD

「XR CLOUD」は、兵庫県に本社を置く「monoAI technology株式会社」が提供する日本初のメタバースです。

XR CLOUDの最大の特徴は、最大10万人ものユーザーが同時接続できるということ。

展示会やイベント、カンファレンスなどの大型イベントをメタバースで実施するのに向いています。

またVRゴーグルだけではなく、スマホやPCからでも参加可能なため、初心者にも利用しやすい。

こうした特徴から、XR CLOUDはゲーム開発クリエイターだけではなく、サーバー開発エンジニア、Android・iOSエンジニアなど多くのエンジニアが活躍できる土壌があると言えるでしょう。

実際monoAI technology株式会社は新卒・中途採用ともに人材を広く募集しています。

気になる方は公式HPをチェックしてみてください。

cluster

「cluster(クラスター)」も、日本のクラスター株式会社が運営するメタバース。

渋谷区公認のメタバース「バーチャル渋谷」を手がけるなど、日本を代表するメタバース・プラットフォームの一つです。

特にメタバース内でのコミュニケーションに特化し、スマホからでも気軽に利用できることから、10代~20代のユーザーが多いのが特徴です。

またclusterでは誰でも3Dのバーチャル空間を作るクリエイターを重視しており、メタバース空間内にはユーザーが作成した「ワールド」と呼ばれるバーチャル空間がいくつも存在しています。

ユーザー主導でプラットフォームを盛り上げていこう、というそのオープンなマインドは、働く側としてもやる気が出るに違いありません。

クラスター株式会社でも現在、3DCGデザイナーやUnityエンジニアなど、メタバースのクリエイターを広く募集しています。

The Sand box

「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」 はメタバースを舞台とした、ブロックチェーン技術を利用したNFTゲームの一つで、世界中のユーザーから支持されています。

ユーザーはメタバース内のオープンワールドで他ユーザーとの交流やイベントなど、自由に仮想空間を楽しむことができます。

しかし、NFTゲーム最大の特徴は、仮想通貨を利用して実際にお金を稼ぐことができるということ。

現実世界と同じような経済活動が行えることから、メタバース業界以外の多くの企業からも熱い視線が注がれています。

2020年にはスクウェア・エニックスも出資し、日本でのサービスも本格的に展開しているThe Sandbox。今後は日本での求人も増えてくるかもしれません。

|メタバースクリエイターの今後

せっかくクリエイターとして働くなら、今後も成長が続く業界で活躍したいもの。

ではメタバースは引き続き発展が見込め、クリエイターとしても自分のスキルを十分に活かせる環境なのでしょうか?

そこで最後に、メタバースのクリエイターとしての今後の展望について考えてみましょう。

メタバースの注目と共に需要が高まる

近年のメタバース・ブームは実際の数字として表れています。

総務省の発表によると、2023年のAR・VR機器の出荷意台数は3,820万台、関連ソフトウェアの売上高は7,900億円と、ここ3年で倍増しています。

業界の規模が拡大すれば当然その分、人材への需要も高まります。

しかし現状として、メタバースのクリエイターはまだまだ限られています。

メタバースの現場では、ゲームの開発に携わっていた人がメタバースのクリエイターとして働いているのです。

そのため、メタバース関連の求人市場は完全に売り手市場。

次世代のSNSとしても注目されているメタバースは、今後も注目されていくでしょう。それに伴い、クリエイターの需要がますます高まっていくのも確実なのです。

新たなスキルを学ぶ姿勢が求められる

メタバースはまだまだ成長段階の産業で、その技術も日々進化しています。

今回の記事ではメタバースのクリエイターに求められるスキルとして、Unityやプログラミングなどを取り上げましたが、今後どんなスキルが必要になるのかは誰にも分かりません。

もしかすると明日発表される新しい技術が、メタバースのスタンダードになるかもしれないのです。

そのため、メタバース業界で働くクリエイターには新たなスキルを学び続ける姿勢が求められます。

新たな技術をいち早く自分のものにすれば、それだけ自分の活躍の場も広がりますし、キャリアアップにも直結します。

それだけに、クリエイターとしては非常にやりがいのある環境なのです。

メタバースのクリエイターに一番求められるスキルとは、技術革新に追いつこうとするその姿勢そのものなのかもしれません。

|まとめ

メタバースはまだまだ始まったばかりの新しいサービスで、今後も成長が続くことが見込まれています。そのため、クリエイターとして非常に働きがいのある業界と言えるでしょう。

3Dの仮想空間に多くのユーザーが集うメタバースは、これまで私たちが知らなかった新しい世界を提供してくれています。

そんなメタバースを作り上げるクリエイターとして活躍するために、ぜひ必要なスキルを修得できるよう学び続けてください。

メタバース相談室は、メタバース・クリエイターを目指す皆さんを応援しています!