新型コロナウイルスの影響を受け、他人とのコミュニケーションがリアルからバーチャルに移行しつつある今、オンラインの世界では自分の分身となるアバターに好きな洋服を着せファッションと楽しむという文化が生まれています。

本記事では、デジタルファッションに興味をお持ちの方や、新しいファッションビジネスを考えている方に向けてデジタルファッションの概要と今後の可能性について解説しますので、是非最後までご覧ください。

|デジタルファッションとは

デジタルファッションとは、ゲーム・SNS・オフィスなどのバーチャル空間でアバターに身に着けることができる衣服や靴のことです。

2018年1月にオランダのアムステルダムで「The Fabricant(ザ・ファブリカント)」という世界初のデジタルファッションハウスが設立され、2019年5月には、世界初のデジタルクチュールを発表しました。

世界初のデジタルファッションが誕生して以来、欧米を中心にさまざま企業が参入しています。

|デジタルファッションでできること

コロナ禍以降、人々のコミュニケーションや生活は大きく変わりました。ファッションにおいても、「バーチャル」という概念が浸透しつつある今、業界では様々な期待が寄せられています。

ここからは、デジタルファッションで実現できることを紹介します。

ECサイトのフィッティング

欧米ではすでに、自分の体型にフィットするファッションアイテムを販売するサービスが増えています。

オンラインでデジタルファッションアイテムを購入すると、そのアイテムを着用した自分の全身写真がダウンロードできるサービスや、従来のECサイトでは叶わなかったバーチャル空間での試着などが可能になります。

デジタルショールーム

ショールームにおけるアナログな非効率性を解消することができるのが、デジタルショールームです。

PRやメディア関係者は、ショールームで接客できるスタッフの関係から時間調整が必要だったり、必ずショールームに出向いてサンプル閲覧やリクエストを入れる作業が必要でした。

これらは、デジタルショールームにより24時間好きなタイミングで利用することが可能になります。

また、サンプルアイテムのキャパシティーを拡げることも可能です。

現実世界では、限られたスペースにアイテムを並べなければならないのに対して、デジタル上ではそのような制限はありません。

デジタルファッションショー

最先端の3D技術を活用すれば、衣類のシルエットや実際にアイテムを身に着けて歩いた時の細かい動きなどをリアルに再現することができます。

モーションキャプチャーを使い、デジタルファッションを身に着けたアバターが現実の人間と同じ動きをすることも可能です。

従来のファッションショーは、会場スペースに収まる限られた人のみが参加できるものでしたが、デジタルファッションショーでは、オンラインに接続できる全ての消費者が参加することができます。

|デジタルファッションのメリット・デメリット

新しい取り組みをはじめる前に、気になるのが長所と短所だとおもいます。

ここからは、デジタルファッションを取り入れるメリットとデメリットについてそれぞれ解説します。

メリット

デジタルファッションを取り入れる最大のメリットは、環境への負荷が少ないことです。

現在のアパレル業界では、製造工程で二酸化炭素の排出、水質汚染、廃棄後のゴミといった問題を抱えています。

オンライン上で完結するデジタルファッションなら、製造工程で環境汚染をすることは無く、着れなくなった服を廃棄することもありません。

こうしたことから、環境への負担を大幅に改善することができるのでアパレル業界では、地球に優しいサスティナブルなデジタルファッションを積極的に取り組む企業が増えています。

デメリット

デジタルファッションのデメリットが、実際に着用することができないことです。

現実世界では、洋服は肌に触れるものとして素材などの質感や着心地を重視する人も多いでしょう。

また、服は人によって似合うものとそうでないものに分かれます。

デジタルファッションでは、オンライン上で自分の分身となるアバターが試着を行うので、実際に着用することができないことはデメリットと言えるでしょう。

|デジタルファッションが注目を集めている理由

ここからは、なぜデジタルファッションが注目を集めているのかを以下2つの観点から解説します。

・環境汚染の問題

・新たな顧客層の獲得

環境汚染の問題

デジタルファッションが注目を集めている理由のひとつとして、環境汚染の問題を解決するという点があります。

アパレル業界は、国連貿易開発会議(UNCTAD)より「世界2位の環境汚染産業」と指摘されており、製造から廃棄に至るまで環境にダメージを与えていることが明らかになっています。

こうしたことから世界各地で、メーカーのサスティナブルな施策が相次いでおり、そのひとつとしてデジタルファッションに注目が集まっています。

メリットとして挙げたように、洋服の製造工程で排出される有害物質の他にも梱包や輸送の必要もないため、環境負荷が低いとされています。

新たな顧客層の獲得

2つめは、新たな購入層の獲得が期待できるという点です。

Z世代と呼ばれる物心ついた頃からデジタルな空間に慣れているデジタルネイティブな人達が消費者層となったことです。

Z世代の消費行動として、リアルと現実の両方を上手く活用するという特徴があります。

普段からSNSやオンラインゲーム上で過ごしているので当然のようにネットで服を買うのです。

2035年までには、デジタルネイティブ世代がラグジュアリーファッション市場顧客のほぼ半数を占めると言われています。

|日本企業のデジタルファッション取り組み事例

欧米企業が中心となってデジタルファッションへの参入をしているなか、日本でもデジタルへの取り組みを進めている企業が出てきています。

ここからは、実際に企業がどのようにデジタルファッションを取り入れているのか解説します。

METADRIP

出典:https://www.metadrip.world/

METADRIPは、web3クリエイティブスタジオ「1BLOCK(ワンブロック)」を展開する株式会社1SEC(ワンセック)が2022年8月にリリースしたβ版アプリです。

METADRIP(メタドリップ)を使用することで、3DCGで生成されたデジタルファッションをAR技術により着用することが可能になります。

NFT化されたデジタルファッションを単なる観賞用として終わらせるのではなく、ARなどの身近なテクノロジーを用いて新たな実用性と汎用性を生みだすことを目標としています。

XXXX™

出典:https://xxxxth.com/

XXXX™(フォックス)は、株式会社既読が運営する日本初のデジタルファッションブランドです。

現実世界とメタバースの世界を横断する時代を楽しく過ごすためのデジタルウェアを提供しています。

2021年、NFTマーケットプレイス「OpenSea」にて販売された「ネオ東京-“人気”に潜む光と闇-」は、「東京がメタバース化され、性別・容姿・職業など、あらゆるものを自分の思うがままに設定することができたらどうなるだろう? 」という発想から生まれたデジタルファッションです。

SNSの通知に連動して光るバーチャルスニーカーやアンチアカウントを通報するネックレスなどストーリー性のあるアイテムが展開されました。

Pocket RD

出典:https://pocket-rd.com/

Pocket RDは、現実世界と仮想世界を融合するXR技術を活用し、コミュニケーションをより表現力豊かにすることを掲げる企業です。

誰でも簡単にオリジナルアバターを作成することができ、さらにはカスタマイズもできるプラットフォーム「AVATARIUM(アバタリウム)」を展開しています。

2021年には、アパレルの生産工程の効率化を支援する3Dデータプラットフォーム「VIRTUAL CLOTHING™」を提供する豊島株式会社と協業し、VR空間での衣服の試着・購入を可能にするサービスの研究を行う「GET BOTHプロジェクト」をスタートしています。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、デジタルファッションの概要と今後の可能性について解説しました。

デジタルファッションは、まだまだ発展途上で活用の幅においてもこれから拡大する可能性が高いです。

人々の生活がリアルから、リアルとデジタルの融合された世界へと移行しているなかで今後人々が所有するデジタルファッションは増えていくと考えられるでしょう。

それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。