未来の都市づくりが進化を遂げる中、世界各地でスマートシティ構想が急速に拡大しています。

AIやIoTなどの先端技術の発展により、都市の運営効率が向上し、住民の生活水準も向上しているのです。

この記事では、国内外のスマートシティ事例を23選一気に紹介。

各都市がどのような技術を活用し、どのような課題解決に取り組んでいるのか、詳細に掘り下げていきます。

世界最先端の事例から、明日を拓くヒントがきっと見えてくるはずです。

|スマートシティとは

スマートシティとは、最新のICT技術を駆使し、都市が持つあらゆる課題に対処する持続可能な地区のことを指します。

国土交通省が目指すのは、ICT等の革新技術を活用しつつ、計画から整備、管理・運営までを最適化し、住民の生活水準を引き上げることです。

具体的には、センサーやAIによるデータ収集・分析を通じて、都市インフラや施設の効率化を図ることが挙げられます。

また、スマートシティは単なる技術の組み合わせにとどまらず、環境問題や人口減少、高齢化といった地域の課題にも対応します。

各国や自治体は、独自のニーズに応じて構想を進めており、その実現に向けた取り組みが世界中で広がっています。

詳しくは、こちらも参考にしてください。

スマートシティとは?概要やメリット、注目事例について紹介
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|国内のスマートシティ16事例

スマートシティはまだまだ未来のような話だと感じている方、実態がつかみにくいと思っている方は少なくないでしょう。

以下では、国内で実際に取り組んでいる都市16事例をご紹介していきます。

渋谷スマートシティ

東京・渋谷区では、単なる技術革新にとどまらず、住民共創の理念を核として、産官民連携によるユニークなサービスが続々と誕生しています。

高齢者向けには、デジタル機器の無料貸与や専門家による利用支援を提供し、デジタルデバイド解消に取り組んでいます。

また、遠隔操作ロボットを活用した子育て支援や、公立保育園におけるおむつの負担軽減サービスなど、子どもと保護者のニーズにもきめ細かく対応。

これらの実証実験を通して得られた成果を基に、更なるサービス拡充も計画されています。

Smart City Takeshiba

2020年、ソフトバンクは竹芝エリアに本社を移転し、東急不動産と共同で「Smart City Takeshiba」プロジェクトを始動しました。

国家戦略特区に選定された竹芝エリアを舞台に、都市型スマートシティの実現を目指しています。

STEP1はオフィスビル内のあらゆるデータを収集・活用し、効率的な運営と快適なワークプレイスを実現するスマートビル構想、STEP2は竹芝地区全体へのソリューション展開、STEP3では他都市との連携が予定されています。

DATA-SMART CITY SAPPORO

北海道札幌市は、ビッグデータとオープンデータの利活用による「データ駆動型まちづくり」を目指しています。

このサイトでは、観光客の動向、雪対策情報、市民の健康状態など、さまざまな分野のデータを可視化・分析したダッシュボードや、データの検索・ダウンロード機能を提供。

また、効果的なインバウンドマーケティングやキャッシュレス化の推進、そして市民の歩行距離や移動履歴データを収集・分析し、健康寿命の延伸や地域活性化に役立てています。

宮城県仙台市スーパーシティ構想

宮城県仙台市は、東北大学と連携し、「まるごと未来都市」の実現を目指しています。

複数分野のデータを連携させ、最先端技術を活用することで、持続的な経済成長と市民の生活向上を両立するまちづくりを推進しています。

具体的には、NTTドコモとの協働による、ドローンやXR技術を用いた実証実験や、AIで通行量や属性を分析するシステムの導入など、先進的な取り組みが多数進められています。

浪江町復興スマートコミュニティ

福島県浪江町は、スマートコミュニティの構築を通して、「非常時の安全・安心」「再生可能エネルギーの導入」「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」という3つの目標を掲げ、復興を目指しています。

サービスとして、電気自動車(EV)を活用したレンタカーやカーシェアリング、乗合タクシーを提供したり、太陽光発電や小型風力発電などを積極的に導入し、持続可能なまちづくりを目指しています。

スマートシティ会津若松

福島県会津若松市は、ICTを活用した復興と地域活性化を目指しています。

会津大学やコンサルティングファームのアクセンチュアと連携し、2012年から取り組みを開始しました。

具体的には、スマートメーターによる省エネ支援、オープンデータの利活用、地域企業誘致のためのオフィスビル開設など、多岐にわたる事業を展開。

また、デジタルデバイド解消に向け、無料Wi-Fi環境の整備やスマートフォン教室の開催、地域アプリの開発などに取り組み、地域経済活性化に繋げています。

スマートシティさいたまモデル

埼玉県さいたま市は、アーバンデザインセンターみその(UDCMi)を拠点に、人々の結びつきを強め、市民生活をより良くすることを目的として、官・民・学が連携して取り組んでいます。

地域住民によるコミュニティの形成や、先端技術(AIやIoTなど)を活用した生活支援サービスの開発・提供も進めており、モビリティ、健康、エネルギー、データなどの分野で、市民の利便性アップを目指しています。

横浜スマートシティプロジェクト

神奈川県横浜市は、規模、スピード、先進性、ユーザー満足度を兼ね備えたスマートシティの実現を目指しています。

これには、実用化間近な技術を検証し、経済性を確認、普及効果を実証するという段階的な取り組みを推進。

みなとみらい21エリア、港北ニュータウン、横浜グリーンバレーエリアの3つのエリアを重点地区として、CO2排出量60%削減などの低炭素化につながる重要な計画として注目されています。

柏の葉スマートシティ

千葉県柏市では、環境共生、新産業創造、健康長寿をテーマにしたスマートシティプロジェクトが推進されています。

これは、公・民・学が連携し、「柏の葉国際キャンパスタウン構想」に基づいて進められており、スマートグリッドの導入や、電動キックボードのレンタル、自動運転バスの運行などが特徴です。

また、オープンデータの活用やAIカメラによる人流解析を通じて、都市全体の効率化と市民の利便性向上を目指しています。

Woven City

トヨタが静岡県裾野市で進めるWoven Cityは、トヨタの元工場跡地を活用し、自動運転技術やAI、ロボットの検証・実証を目的とした都市を構築しています。

2024年夏には建物が完成する予定で、2025年から一部の実証実験がスタート。

この街では完全自動運転車両のみが走行し、CO2排出ゼロを目指します。

また、家庭内ロボットやセンサーで収集したデータをAIが解析し、住民の健康状態をモニタリングする機能も計画されています。

藤枝ICTコンソーシアム

静岡県藤枝市が設立した「藤枝ICTコンソーシアム」は、産学官連携の中心となり、AI防災やオンデマンド交通、データ活用による見守りサービスなどの取り組みを推進しています。

具体的な目標として、データ活用による政策推進や交通弱者への対応(路線バスと乗合タクシーの利用促進)、ICT人材と市内企業のマッチング、若年層の流出防止のための子育て世代転入促進、災害時情報配信システムの登録者数増加などを掲げています。

長野県伊那市スマートローカル

高齢化が進む長野県伊那市の一地域では、「スマートローカル」を推進しています。

例えば、テレビのリモコンで注文し、当日ドローン配送する「ゆうあいマーケット」を導入し、住民の買い物を支援しています。

また、AIが効率的な運行ルートを提案する「ぐるっとタクシー」や、移動診療車を使った「モバイルクリニック」により、交通と医療の利便性を向上させています。

このように、地域の生活インフラを強化し、市民の生活を支えています。

加古川スマートシティプロジェクト

兵庫県加古川市は、市民とのコミュニケーションを重視しながら、まちぐるみで市民の安全向上に取り組んでいます。

具体的には、見守りカメラと次世代見守りサービスを導入し、複数事業者の見守りタグが検知できる共通検知器を開発しています。

これにより、犯罪発生件数や認知症患者の徘徊問題を減少させることに成功しました。

今後は行政情報アプリ「かこがわアプリ」を利用し、市外での見守りサービスの検知が可能な体制を整える予定です。

スマートシティたかまつ

香川県高松市は、IoTを中心にしたデータ収集と分析を活用することで、地域の防災対策や観光振興に取り組んでいます。

具体的には、河川の水位観測や安全情報の伝達、レンタサイクルの管理などにGPSを活用し、市民の利便性を向上させています。

広域防災協力のためのIoTプラットフォームを構築し、近隣自治体との情報共有を推進。

地域の強靭なまちづくりを目指し、自然災害時の迅速な対応力を高めています。

FUKUOKA Smart EAST

福岡県福岡市は、少子高齢化や都市課題解決に向けて、ドローン、自動配送ロボット、自動運転バスなどの実証実験を進めています。

特に九州大学との連携を活かし、箱崎キャンパス跡地を活用したまちづくりや、災害時の避難支援に自動翻訳ツールを活用。

これにより、多言語対応の災害情報伝達が可能となり、市内外の住民に安全かつ迅速な避難支援を提供しています。

北九州スマートコミュニティ創造事業

北九州市は、住民参加を重視したまちづくりを推進し、地域エネルギーの共存社会を実現しています。

具体的には、電力料金を需要に応じて変動させる仕組みを導入したことで、電力のピーク使用量を約20%削減することができた事例などが挙げられ、エネルギーマネジメントの推進や自然エネルギーの導入を通じて、CO2の削減を目指しています。

電力使用を効率的に管理することで、家庭でのエネルギー管理システムの普及を促進しています。

|海外のスマートシティ7事例

国内の事例に引き続き、海外の事例も見てみましょう。

スマートシティは世界的に注目されている取り組みですが、日本と比べると環境に配慮することに重点を置いた施策が多いのが特徴的です。

LinkNYC

アメリカ・ニューヨークが展開する「LinkNYC」は、街中の電話ボックスをギガビット通信のデジタルキオスクに変えるプロジェクトです。

この取り組みは、無料で超高速Wi-Fiを提供し、インターネット環境のない世帯にもアクセスを確保することを目的としています。

公衆電話の代わりに設置されたキオスクは、住民や観光客にギガビット通信を提供し、市民生活を快適にしています。

Barcelona Digital City

スペイン・バルセロナは、環境と経済の調和を目指して、全市にWi-Fiを整備し、スマートパーキングやゴミ収集管理システムを導入しています。

空き駐車スペースやゴミ箱の満杯状況を検知し、渋滞緩和や効率的なゴミ収集を実現。

また、都市のイノベーションを促進するプラットフォームも構築しています。

2014年には欧州委員会から最もイノベーティブな都市として認定されました。

市民のデジタル権利保護や5G技術の活用も進めています。

Amsterdam Smart City

オランダ・アムステルダムは、環境問題に積極的に取り組む都市として、2009年からエネルギー消費とCO2排出削減を中心にスマートシティ化を推進しています。

例えば、サテライトオフィスの利用促進や、駐車場の空き情報を提供するスマートパーキングがあります。

また、オープンデータプラットフォームには人口、経済、風力発電などのデータが公開されており、デジタル上に再現した「3Dアムステルダム」も提供されています。

ET City Brain

中国の杭州市は、アリババグループのクラウドとAI技術を活用し、「ET City Brain」システムを運用しています。

このシステムは、道路沿いに設置されたカメラで交通状況をリアルタイムに把握し、AIが信号のタイミングを最適化することで渋滞を緩和します。

また、ビッグデータを用いた感染症管理により、公衆衛生の向上も実現しました。

これらの取り組みにより、杭州市は中国全国第一のデジタル管理都市と評価されています。

Smart City Taiwan

台湾では、「スマート台北」プロジェクトを推進し、交通、住宅、医療、教育の各分野でのデジタル化を進めています。

例えば、台北駅ではゲートや駐車券が不要なスマートパーキングシステムが導入されています。

他にも、将来的なインフラ計画として、2025年までに全発電量の20%を再生可能エネルギーにする目標を掲げていたり、サイエンスシティプロジェクトにより、研究所を集めて実証実験を行う計画も進行中です。

Smart Nation Singapore

シンガポールでは、スマート国家を目指す取り組みとして、キャッシュレス決済の普及やコロナワクチン接種予約のオンライン化など、デジタル技術が市民生活に深く浸透しています。

環境省のアプリによる降水情報のアラートや、交通省のデータを活用したバスの到着時間通知など、IoTデータを活用したサービスも充実しています。

これらの取り組みは国際的に高く評価され、IMDのスマートシティランキングで3年連続1位を獲得しました。

New Administrative Capital

エジプト政府が推進する「New Administrative Capital」プロジェクトは、カイロと新首都を結ぶ都市鉄道とモノレールで交通網を整備し、資源を効率的に管理するスマートビルディングや水道の消費量削減を目指すシステムを導入しています。

さらに、ビジネス地区の中心には中国の資金と労働力による「アイコニック・タワー」が建設中です。

このプロジェクトは、エジプトの未来を象徴する大規模な取り組みとして期待されています。

|まとめ

今回ご紹介した各事例は、地域課題やニーズに合わせた様々な取り組みを実施しており、持続可能な社会の実現に向けた模範となるものです。

スマートシティ化は、単なる技術導入ではなく、市民の生活向上と地域活性化を両立させるための総合的なまちづくりであるという認識が重要です。

本記事を参考に、それぞれの地域に最適な未来都市を想像してみてくださいね。