近年、観光業界においてXR技術の活用が盛んになっています。

VRやAR、MRといった技術を駆使することで、これまでとは一味違う、臨場感あふれる体験を可能にするXRは、観光の新たな可能性を広げているのです。

本記事では、XRを活用した観光について詳しく解説します。

XR技術の種類や、観光への活用のメリット、さらに最新の事例などを紹介していきます。今までにない新しい観光体験を求めている方、必見です!

|XRとは

XRは「Extended Reality」または「Cross Reality」の略で、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)を包括する総称です。

最近では、これらの技術が複合的に利用されるケースが増えており、たとえばVRゲームにAR要素を加えるような新しい体験が生まれています。

このように、技術の境界が曖昧になる中で、XRという用語が登場しました。

現実世界と仮想世界が一体となった新たな体験が可能になり、観光、教育、エンターテインメントなど多くの分野で活用されています。

XRは、進化し続ける技術の一つとして、これからの未来に向けてさらなる発展が期待されます。

詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。

「XR(Cross Reality)」とは?根底を支える4つの技術と共に解説
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|XRを観光に利用するメリット

「観光はリアルな現地に行かないと意味がないじゃないか」と考える人も多いでしょう。

その一方で、XR観光に注目が集まっているのはなぜでしょうか。

以下で、観光にXRを利用するメリットを3つ挙げています。

観光DXの推進が可能

観光庁は、「観光DX推進プロジェクト」を通じて、観光業界全体の生産性向上や、旅行者の満足度向上を目指しています。

具体的には、シームレスな予約・決済システムの構築や、個々の旅行者に最適な情報を提供するレコメンド機能の実装が挙げられます。

また、顧客の予約データを基にした戦略的なマーケティングや、地域全体の収益を最大化するためのデータ連携が可能となります。

デジタル人材の育成も重要な課題であり、産学連携やリカレント教育を推進することで、観光分野でのデジタル技術の活用を促進しています。

これらの取り組みを通じて、観光業界全体がDXを進め、最新技術を活用した新たな観光体験が提供されることが期待されています。

DXについては、こちらの記事も参考にしてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や課題、企業事例まで解説!
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新たな客層を獲得できる

旅行を計画している段階で重要なのは、観光地に興味のある人だけでなく、これまで関心がなかった人々を引き込むことです。

興味のある人には、VRを用いた360°動画や、ウェブサイトでQRコードをスキャンして体験できるARコンテンツを通じて、リアルに観光地の魅力を伝えることができます。

一方、観光に興味のなかった人々には、実在する都市をモデルにしたVRワールドを制作したり、人気のアニメや漫画とコラボレーションすることで関心を引きます。

また、VR空間で現実の店舗で使えるクーポンを配布するなどのプロモーションも効果的です。

さらに、SNSでのシェアを通じて、さらなる宣伝効果も期待できるでしょう。

場所や時間の制約が不要なものもある

XR技術を観光に活用する大きなメリットの一つは、場所や時間の制約がないことです。

仮想空間であるVRを使えば、ユーザーはいつでも自分の好きなときに観光地を訪れることができます。

このため、時間的な制約がなく、どこからでもアクセスできるため、物理的な場所の制約もありません。

さらに、VR上の観光地ではユーザーが自分の興味や好みに合わせて観光コースをカスタマイズできるため、自発的な観光スタイルを提供できます。

例えば、ユーザーが夜中や早朝に観光したい場合でも、XR技術を使えばその希望に応じた体験が可能です。

この柔軟性により、観光地の魅力を24時間365日、世界中のどこからでも楽しむことができるのです。

|XR×観光の事例

XRを取り入れた具体的な観光事例を、以下の3つに分けてご紹介していきます。

  • 観光PRへの活用
  • XR観光バス
  • オンライン観光ツアー

観光PRへの活用

観光地へのPRに活用する例としては、VRを用いて360°映像で観光地の雰囲気を疑似体験させることが挙げられます。

訪れる前にその魅力をリアルに伝えることができたり、ARを使ったウェブサイトやパンフレットで、観光地の歴史や文化を視覚的に紹介することも可能です。

これにより、国内外の観光客に対して強力なプロモーションを行うことができるため、観光地への興味を喚起することに繋がるでしょう。

以下で、その具体例をご紹介します。

京都市宮津市観光VRプロモーション

京都府宮津市は、コロナ禍で落ち込んだ観光需要を回復させるため、XR技術を活用した観光PRを実施しました。

天橋立や丹後ちりめんの生産風景をドローンで撮影し、360度VR映像や180度映像を制作。

NTT ExCパートナーのVR制御システムを使った視聴イベントやYouTubeでの公開を行いました。

ドローン映像は、地元住民も見たことのない角度からの4K映像で魅力を発信し、グルメ映像や伝統産業の映像も工夫を凝らして制作されました。

あまくさ観光プラスAR

2023年1月13日から3月12日にかけて、熊本県天草市で「あまくさ観光プラスAR」イベントが開催されました。

096k熊本歌劇団と天草のコラボレーションで、ARフォトフレームを使った記念写真や、xR技術を活用した「アマクサ xR 水族館」で空飛ぶイルカと写真・動画を撮影する体験が提供されました。

また、天草パールラインマラソン大会では、絶景とxRが融合した特別なイベントも開催するなど、デジタル技術を存分に組み合わせました。

XRで体感!川中島の戦い

長野市では、「XRで体感!川中島の戦い」デジタルコンテンツが公開されています。

川中島の戦いに関連する錦絵などの文化財を使った体験型デジタルコンテンツが市内各所に設置され、ARを用いて、川中島古戦場史跡公園や長野市立博物館などで歴史を楽しむことができます。

また、VRゴーグルを装着してCGと錦絵で再現された合戦の臨場感を長野市立博物館で体験できます。ただし入館料が必要ですのでご注意ください。

XR観光バス

XR観光バスは、バスの窓をディスプレイとして活用し、ARやVR映像を表示することで移動時間をエンターテインメントに変える観光バスです。

乗客は座席に座っていながら、リアルと仮想が融合した臨場感ある映像を楽しめます。

ルートごとに異なるテーマやストーリーが設定されていたり、地域の観光資源を最大限に活かす工夫が施されています。

そんなXR観光バスの事例を、以下でご紹介します。

XR観光バスについては、こちらも参考にしてください。

XRを利用した観光バスの魅力とは?概要や導入背景、楽しむポイントを解説!
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WOW RIDE いこっさ!福井号

「WOW RIDE いこっさ!福井号」は、福井県の四季折々の風景や伝統文化、歴史、恐竜などの魅力をAR・VR映像で車窓に映し出すXR観光バスです。

この新感覚の観光バスは、北陸新幹線福井・敦賀開業に合わせて導入され、観光スポットを巡りながら地域の魅力を深く体験できる新しい観光コンテンツとして注目されています。

総合演出には堤幸彦監督、出演には今井翼さんや温水洋一さんといった有名人が名を連ねています。

NAKED XR TOUR

「NAKED XR TOUR」は、横浜市みなとみらいを舞台にした新感覚の観光バス体験です。

NAKED, INC.が提供するこのツアーでは、VRゴーグルを装着して屋根のない「KEIKYU OPEN TOP BUS横浜」に乗り、XR技術を駆使した未来都市や海中都市などを巡ります。

ツアーは、未来の観光地を体験するプロローグから始まり、未来のテーマパークや海中の世界などを経て、現実の横浜に戻るエピローグで締めくくられます。

XR FANTASIC TOUR FUKUYAMA

アサヒタクシーが提供する「XR FANTASIC TOUR FUKUYAMA」は、福山城や鞆の浦などの観光地を、VR・AR・MR技術を駆使して楽しむことができます。

「鞆の浦コース」は、福山の名所や瀬戸内海を巡る幻想的なバスツアーで、宇宙旅行や海底探検のような体験も楽しめます。

「福山城周辺コース」は、エコな乗り物「グリスロ」に乗って過去や未来の福山を探索。

定員3名の少人数で体験でき、ちょっとしたアクシデントが楽しめるのも魅力です。

オンライン観光ツアー

大手旅行会社は、「オンライン観光ツアー」に力を入れています。

コロナ禍による旅行自粛をきっかけに、自宅にいながら世界中の観光スポットを疑似体験できる、新しい旅の形として人気が高まっているのです。

さらに、費用も従来の旅行に比べて格安で、気軽に様々なツアーに参加することができます。

以下で、オンライン観光ツアーの事例をご紹介しましょう。

JTB

JTBのオンライン観光ツアーでは、参加者はZoomやVimeoなどのアプリを使用して簡単にアクセス可能です。

現地スタッフやガイドとチャットを通じて直接質問できるため、リアルな旅行体験をオンラインで楽しめます。

これにより旅行準備や最新情報が得られ、旅行が難しい状況でも手軽に世界各地を訪れる感覚を体験できます。

これまで実施されたツアーには、ハワイの有名ホテルや絶景が楽しめるものや、米セドナを360°カメラで満喫できるものなどがあります。

HIS

HISのオンライン体験ツアーは、2020年の開始以来30万人以上が参加する人気のサービスです。

観光地の下見やショッピング、フィットネスなど多彩なコースを提供し、現地ガイドとの交流も楽しめます。

1コースからの参加も可能ですが、月額3,000円で見放題の「IKUxMIRU」プランもおすすめです。

ニューデリーの街歩きやフィジーの市場探索など、コースは続々と追加され、とことん海外旅行気分を味わえます。

近畿日本ツーリスト

近畿日本ツーリストは、360°バーチャル観光やスタッフによる動画配信により、国内外の魅力的な旅情報を紹介しています。

グアムの青空と澄んだ海を360°で楽しめたり、東京や埼玉の隈研吾建築を巡るツアーや、奄美大島の自然を楽しむ旅など、バラエティ豊かなコンテンツが揃っています。

観光地の紹介や特集記事も充実しており、自宅にいながら気軽に旅行気分を味わえます。

|まとめ

XRを活用した観光は、これまで想像もできなかったような臨場感あふれる体験や、時間や空間を超えた自由な旅を可能にします。

最新事例からもわかるように、観光業界にXR技術を取り入れることにより、旅行者の満足感を飛躍的に向上させ、事業者にとっても新たな収益源の創出など、多くのメリットをもたらします。

今後もさらなる技術の進化により、XR観光はますます発展していくことでしょう。

「バーチャル」と「リアル」が融合した、全く新しい旅の形に期待が高まります。