なぜ私たちはリアルな課題や作業になかなか手をつけられないのに、ゲームの中ではさまざまな目標を楽しみながら追及するのでしょうか?
もし、その要素を実際の問題解決や課題へ適応出来たらどうでしょう。この手法こそが「ゲーミフィケーション」です。
ゲーミフィケーションによって目標を楽しみながら達成することができ、ゲームのような楽しみと喜びを通じて、モチベーションを引き出し、パフォーマンスを向上させることが可能です。
本記事ではゲーミフィケーションについてや有用性について活用例を交えながらわかりやすく解説していきます。
目次
|ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションは、ゲームの要素を他の分野に導入することで、ユーザーの参加意欲やモチベーションを刺激する手法または理論のことを指します。
ゲームの要素の例としては、ユーザーが特定の行動をするたびにポイントを獲得できる「ポイントシステム」や、ユーザーの活動に基づくランキングを表示する「リーダーボード」などがあり、ユーザーに対して具体的な報酬を提供します。
一部の研究では、ゲーミフィケーションの導入は効果的で、ユーザーの行動パターンを促進し、学習成果を向上させ、ユーザーのエンゲージメントを増やす効果が示されています。
こうしたゲームの要素は、達成すべき特定の目標に対するユーザーのモチベーションを刺激し、より意欲的に課題に挑戦させることができます。
これらの原理は教育からビジネス、健康管理に至るまで、さまざまな領域で応用できるため、ゲーミフィケーションは多くの分野で重要度を増しています。
|ゲーミフィケーションのメリット
ゲームフィケーションの特長を活用すれば、仕事や学習に対する没入感を高め、自発的な学習の促進やエンゲージメントの向上にもつながります。
以下では、これらのメリットを具体的に解説していきます。
目標設定がしやすい
ゲーミフィケーションは結果的な目標やゴール達成のための「クエスト」を立てることができます。その結果、目標定義が明確になり、目標設定がしやすくなります。
クエストを順にクリアしていくことで、結果的なゴールにつながっていき、「どのような行動をとるべきか」や「何のためにその行動をとるのか」といった疑問が解消し、作業に迷いが生じることが少なくなります。
さらに、ゲームの中でよく見られる「クエストの連鎖」を活用すると、小さな達成感を繰り返し体験することで持続的なモチベーションを維持することが可能です。
例えば、一つのクエストが完了すると次のクエストが解放されるという形式です。一つ一つのクエストが容易であればあるほど達成感を感じやすく、次の挑戦につなげられることでユーザーは継続的な参加を望むことができます。
モチベーションの維持
ゲーミフィケーションはゲーム感覚で楽しみながら作業を進められます。
明確な目標の設定により、それを達成したときにユーザーが達成感を感じることができます。その結果、クエストをクリアするごとに、自然とモチベーションが向上します。
さらに、称賛やバッジのような認識できる形での報酬も提供されます。これらの報酬は、他のユーザーとの競争が見える化され、それによってユーザーが楽しみながら目標を達成できる環境を生み出します。このように、報酬を与えることにより、ユーザーのモチベーションは持続的に維持されます。
このように、ゲーミフィケーションを続けていけば、生産性が向上するといった良いサイクルを創り出すことが可能です。
楽しみながら取り組める
ゲーミフィケーションの素晴らしさは「楽しみながら取り組める」特性にあり、これは難易度の高い課題をより魅力的に面白いものに変え、個人やチームの関与度とモチベーションを大いに高めます。この結果、組織全体としての生産性が飛躍的に向上します。
というわけで、この「楽しみながら取り組める」という特性こそがゲーミフィケーションの実践するうえでの重要な要素であり、その効果を最大限に引き出す鍵となるのです。
|ゲーミフィケーションの活用シーン
ここまで、ゲーミフィケーションとはどういったもので、その数々のメリットについて紹介してきました。ゲーミフィケーションの活用できる領域は驚くほど多様です。
ここからはこの手法を活用する具体的な事例についてご紹介していきます。
教育としてのゲーミフィケーション
どの分野の中から最初にゲーミフィケーションを取り入れ始めたのが教育の場です。
現在ではゲーミフィケーションを採用した学習アプリなどが数多く存在し、アクティブラーニングを促すことに成功しています。
ゲーミフィケーションを取り入れた例として、株式会社すららネットが開発した「すらら」という学習教材があります。
出典:https://surala.jp/
すららの特徴は学習の取り組みに応じてポイントが付与され、そのポイントによってすらら上のアバターの作成・育成ができることです。さらにポイントをためることでアバター用のアイテムが購入できます。
アバターのレベルアップや部屋のグレードアップは勉強の証であり、自己肯定感が育まれ、勉強に取り組みたくなるサイクルを生み出しています。
ビジネスとしてのゲーミフィケーション
私たちの日常生活には、ビジネスの領域で応用されたゲーミフィケーションの例が無数に存在しています。
その一つとして、回転寿司チェーンのくら寿司が展開する「びっくらぽん」があります。
出典:https://www.kurasushi.co.jp/author/005014.html
「びっくらぽん」は、お客さんが寿司の皿を食べ終わって専用投入口に入れるとその枚数が記録される、ゲーミフィケーションの一形態です。5枚ごとにゲームに挑戦する機会が与えられ、クリアするとオリジナルの景品が得られるという仕組みになっています。
その結果、お客さんは景品を得るための目標である「5皿の寿司を食べる」ことに向かって食べることを動機づけられます。
これは、ゲーミフィケーションの要素を活用したマーケティング戦略の一例と言えます。
研修としてのゲーミフィケーション
ヒルトン・ホテル社が展開するホテルチェーン、ヒルトン・ガーデン・インでは、新入社員の教育にゲーミフィケーションを採用しています。新入社員は接客や清掃など、ホテル業務の基本的な作業をシミュレーションゲームを通じて体験できるようにしています。
このゲームでは、お客様からの依頼にどのように対応するかでスコアが更新されます。これにより日常業務を実際よりもリスクなく、しかも楽しみながら学ぶことができます。
また、ゲーム形式なので、日常では稀にしか出くわさないような特殊な依頼も想定できます。その結果、実際の業務で同様の状況が生じたときにも、既にその経験がある状態の新人従業員はスムーズに対応することが可能です。
さらに、スコアによって達成感を得られるだけでなく、他の新入社員との間に健全な競争意識を育むことも可能になります。
|ゲーミフィケーションの注意点
ゲーミフィケーションの鍵となる特性は「ゲームの要素を利用して、モチベーションの向上などポジティブな結果を生み出す」ことです。しかし、全てのゲームがユーザーにとって魅力的とは限りません。
スマートフォンゲームやテレビゲームの世界でも、面白さが欠ける作品は売上げに影響を及ぼすことがあります。同じように、ゲーミフィケーションで楽しさが犠牲になれば、その効果も損なわれてしまうのです。
専門家が指摘するゲーミフィケーションのリスクの一つは「すべての対象者に対して魅力的なゲームを作成できるわけではない」という事実です。一部のユーザー、特にもともと仕事や学習に対する意欲が高い人々は、付け加えられたゲーム要素を余計な負担と感じるかもしれません。
したがって、ゲーミフィケーションの成功には各ユーザーが楽しむことができるゲーム設計が欠かせません。
|まとめ
いかがだったでしょうか。
ゲーミフィケーションとは本来ゲームにかかわりのない物にゲームの要素や考え方を取り入れて、対象者のモチベーションを向上させる戦略として理解していただけたでしょうか。
ゲーミフィケーションは、ビジネス、教育、研修など多くの分野で効果的に活用されています。
しかし、ゲームの要素を手あたり次第に取り入れるのではなく、具体的な対象者が楽しむことができるようなゲーム設計が重要であることも、この機会にご理解いただけたかと思います。
ぜひとも、皆さんも今回提供した情報を基にゲーミフィケーションを理解し、適切に活用していきましょう。