デジタルツインは、現実空間のヒトやモノをデジタル空間に再現する技術で、多くの業界で活用が進んでいます。
この技術により、リアルタイムでのモニタリングやシミュレーションが可能となり、効率化やコスト削減に大きく寄与しています。
今回は、国内の建設業界、製造業界、インフラ業界におけるデジタルツインの活用事例を業界別に紹介します。
これらの事例を通じて、デジタルツインがどのように現場で役立っているのか、その具体的な活用方法を詳しく見ていきましょう。
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目次
|デジタルツインとは
デジタルツインとは、現実の物やシステムをコンピュータ上にそっくり再現する技術です。
例えば、工場の機械やビルの構造をデジタルで作り上げ、リアルタイムでその状態を監視したり、シミュレーションしたりします。
これにより、実際に触らなくても問題が起きる前に予測して対策を立てることが可能です。
また、新しいアイデアや設計をデジタル空間で試すことで、安全に効率よく作業を進めることができます。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)と組み合わせることで、さらに便利に使えるようになり、さまざまな分野での活用が進んでいます。
例えば、建設業では建物の設計から施工までの工程を、製造業では生産ラインや設備の管理を、インフラ業界では電力や交通システムの維持管理に役立っています。
|建設業のデジタルツイン事例
建設業界では、デジタルツインが設計、施工、運用の全過程で活用され、効率化と安全性向上に貢献しています。以下に具体的な事例を紹介します。
鹿島建設
鹿島建設は、2020年に完成した大阪のオービック御堂筋ビルの新築工事でデジタルツイン技術を活用しました。このプロジェクトでは、企画、設計、施工、維持管理、運営の全ての段階でデジタルツインを取り入れました。
企画と設計段階では、ビル風の影響をシミュレーションし、その結果を設計に反映しました。
施工段階では、モジュール単位で組み立てる「モジュールコンストラクション」をデジタルツイン内で試行し、施工の進捗管理と工事プロセスのデジタル化を実現しました。
また、MR(複合現実)技術を使い、実際の施工状況を確認しました。
維持管理では、建物のデータをデジタルで一元管理し、日常の点検から得た情報を収集して将来の建築企画に活用しました。
このように、デジタルツインを通じて建物の品質向上と価値向上を実現しています。
清水建設
清水建設は、オートデスクと協力して都市デジタルツインの実現に向けたデータ基盤やプラットフォームを整備するプロジェクトを進めています。
都市デジタルツインとは、建物や道路などの静的データに加え、人の流れや物流、エネルギー消費などの動的データを統合した大規模なデジタルモデルです。
この技術を活用することで、より人が暮らしやすい都市開発が可能になります。
具体的には、交通の効率化やエネルギー使用の最適化など、都市全体の運営をリアルタイムで最適化することが期待されています。
清水建設は、まず豊洲エリアでのスマートシティ化を目指し、この都市デジタルツインをスタートアップ企業などに提供する計画です。
この取り組みを通じて得たノウハウを他の都市開発プロジェクトにも展開し、全国的な都市のスマート化を推進していく予定です。
コマツ
総合機械メーカーのコマツは、建設現場の生産性向上を目指してデジタルツイン「Smart Construction」を導入しています。
このシステムは、資材、建設機械、作業員の位置や稼働データと建物の図面データを組み合わせ、遠隔で管理するものです。
これにより、施工管理者は現地事務所や本社、支店から現場の詳細な状況を確認できます。
「Smart Construction」の導入により、少人数での効率的な現場管理が可能となり、資材や機材を探す時間やレンタル費用、車両の待ち時間の削減が期待されています。
また、コマツはこの取り組みを通じて、日本が直面する少子高齢化による労働力不足や、世界的なCO2排出量の増加という課題の解決にも貢献しようとしています。
大林組
大林組は、建設現場の状況をリアルタイムにデジタルモデルに反映する「4D施工管理システム」を開発しました。
このシステムは、建築物の3Dモデルに地形やクレーンの位置などを反映させることで、施工の進捗を正確に管理します。
この技術は、2023年3月に開業予定の北海道の「エスコンフィールドHOKKAIDO」の建設現場で実証されています。
クレーンに設置されたセンサーから位置や方角のデータを収集し、クレーンの動作をリアルタイムでデジタルツインに反映することで、施工の品質を向上させています。
また、このデータは、各業者の作業進捗の計測にも活用されています。
さらに、現場に設置された入退場システムから取得した作業員の入退場データを基に、各作業員の工数を測定し、作業効率を高める試みも行われています。
|製造業のデジタルツイン事例
製造業界では、デジタルツインが生産ラインの最適化や設備のメンテナンスに活用され、生産効率と品質の向上に役立っています。
以下に具体的な事例を紹介します。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、生産設備の効率化を目指して貞宝工場でデジタルツイン技術を導入しています。
お客様が欲しい商品をタイムリーに提供するためには、生産設備の迅速な立ち上げが必要です。
しかし、新たな生産設備の立ち上げ時には、図面上では予期しない不具合が発生し、リードタイムが長くなるという課題がありました。
この課題に対し、トヨタは3Dモデルを作成し、設備の設計担当、製造担当、実際の作業者が事前に不具合を洗い出せるようにしました。
これにより、現場の知恵が設計段階から反映され、やり直しなく完成度の高い設備を導入できるようになり、設計から生産開始までのリードタイムは半分になりました。
この取り組みを社内外に拡大することで、さらにリードタイムの短縮と生産性向上が期待されています。
日立製作所
日立製作所は、工場の生産性向上を目指し、デジタルツイン技術をLumadaプラットフォームを通じて導入しています。
大みか事業所では、約8万枚のRFIDタグと約450台のRFIDリーダー、ビデオカメラを活用し、工場内の「ヒト」と「モノ」の動きをリアルタイムで監視。これにより、作業の効率化と生産性の向上が実現しました。
管理者の経験に頼らず、データに基づく正確な作業評価が可能になり、代表製品の生産リードタイムを50%短縮することに成功しました。
さらに、データマネジメントの重要性にも着目し、生産プロセスの改善前後を比較し、問題を特定・解決しています。
Lumadaは、データを可視化し分析することで、工場全体の最適化をサポートし、将来的なさらなる生産性向上とコスト削減が期待されています。
川崎重工
川崎重工は、マイクロソフト社の「Build 2022」で、工場全体をバーチャル空間でシミュレーションする「インダストリアルメタバース」の構築を発表しました。
この取り組みでは、Azure IoTやHoloLens 2を使用して、生産ラインや製造現場の管理を行います。これにより、ロボットの障害発生時の迅速な対応、予知保全、遠隔地の専門家からのリアルタイム支援が可能になります。
また、「Azure Digital Twins」を活用し、過去・現在・未来の稼働状況を仮想空間で把握し、問題の原因を特定・解決することができます。
川崎重工のこの技術により、工場の効率化と生産性向上が大きく期待されています。
富士通
富士通は、製造現場での人の行動を高精度にデジタルツインで再現する技術を開発しました。
この技術は、AI「Actlyzer」を使用してカメラ映像を解析し、行動を仮想空間に再現します。これにより、作業動線や行動を簡単に把握でき、効率的な作業管理が可能です。
さらに、深層学習技術によりカメラの自動キャリブレーションを行います。
これはカメラの位置や角度を自動的に調整し、最適な視野を確保する技術です。
特別なスキルがなくても高精度な3次元行動認識が実現します。
この技術で、導入コストを削減しながら製造現場の生産性向上と品質管理を支援しています。
ダイキン
ダイキン工業は、製造現場のデジタル化を進めるため、堺製作所臨海工場でデジタルツイン技術を導入しています。
この取り組みでは、工場内の作業工程をリアルタイムで監視するために、カメラとセンサーを利用しています。
これにより、作業の遅れや異常を即座に把握し、対策を講じることが可能となります。
また、製造ラインの稼働状況をクラウド上で再現することで、効率的な作業管理と速度ロスの削減が実現しました。
さらに、自社育成のDX人材が中心となり、全体のプロセスを内製化している点も特筆すべきです。
これにより、製造現場の生産性が向上し、作業ロスが3〜4割減少するなどの成果を上げています。
三菱電機
三菱電機は、デジタルツイン技術を活用した「MELSOFT Gemini」を導入し、工場や設備ラインの設計と立ち上げを効率化しています。
このシステムでは、デジタル空間で機器や装置の動作を事前にシミュレーションし、工程ごとの作業を最適化、不具合を検証します。
これにより、実機立ち上げの前に問題を発見し修正できるため、トラブルの発生を未然に防ぎます。
また、人やロボット、AGV(自動搬送車)の動線や稼働率をシミュレーションし、機械の干渉を3Dモデル上で事前に確認します。
これにより、稼働開始後の効率が大幅に向上し、時間とコストの削減が可能になります。
ゼネラル・エレクトリック
ゼネラル・エレクトリック(GE)は、デジタルツイン技術を用いて航空機エンジンの保守費用を大幅に削減しました。
GEのデジタルツインは、エンジンに取り付けられたセンサーから得られるデータをリアルタイムで収集し、仮想空間でエンジンの動作を再現します。
この技術により、エンジンの性能や状態を常に監視し、予知保全を行うことで、未然にトラブルを防ぎます。
過去のデータや運用データを組み合わせて分析し、最適なメンテナンス時期を予測することで、メンテナンスコストを削減し、エンジンの稼働率を高めています。
さらに、デジタルツインはエンジンの設計から運用までの全ライフサイクルにわたって使用され、新しい設計の評価や運用パフォーマンスの最適化にも役立っています。
ボーイング
ボーイングは、飛行機の製造と保守にデジタルツイン技術を取り入れています。
商用部門では、エアコンなどの部品のデジタルツインを作成し、これらの部品がどのように劣化するかをリアルタイムで追跡しています。
これにより、故障する前に部品を交換できるようになり、予期せぬ修理を減らし計画的なメンテナンスが可能になります。
防衛部門では、軍用爆撃機B-52のエンジン交換や戦闘機F-15のメンテナンスにもデジタルツインを活用しています。
B-52のエンジン交換については、エンジンの動作を仮想空間で再現し、性能を事前に評価しています。
F-15では、どこが疲れているかを見つけ、効率的な保守を行うことでコスト削減と信頼性向上を実現しています。
|インフラ業のデジタルツイン事例
インフラ業界では、デジタルツインが電力、交通、下水道などのインフラ管理に利用され、維持管理と最適化に大きな効果をもたらしています。
以下に具体的な事例を紹介します。
国土交通省
国土交通省は、2020年度から「Project PLATEAU」を推進し、日本全国の都市で3D都市モデルを構築しています。
このプロジェクトでは、都市の立体情報をデジタルで再現し、幅広いシミュレーションが可能です。2021年には全国の3D都市モデル整備が完了し、地方公共団体や民間企業がこれを活用して未来のまちづくりの実証実験を行っています。
例えば、東京海上日動火災保険と応用地質は、「リアルタイム浸水情報」という防災サービスを共同開発しました。
このサービスは、浸水エリア予測と実測データを組み合わせたもので、防災対策の精度向上に貢献しています。
3D都市モデルは、防災、交通計画、環境評価などさまざまな用途に利用され、都市の効率的な管理と開発を支援します。
JR東日本
JR東日本は、鉄道運行の効率化と安全性向上のために「JEMAPS」(JR East Mashup Probe System)というデジタルツイン技術を導入しました。
JEMAPSは、列車の運行データや乗客の流れ、気象情報などをリアルタイムで統合・可視化するプラットフォームです。
このシステムにより、災害時の迅速な対応や混雑緩和が可能となり、輸送障害時には列車の位置や混雑状況を把握して代替交通手段を案内することができます。
これにより、鉄道運行の透明性と効率性が大幅に向上し、旅客の不便を最小限に抑えることができています。
SANY Heavy Energy
SANY Heavy Energyは、中国を拠点とする重機メーカーで、風力発電分野でも活躍しています。
同社は風力発電の効率化と最適化のために、デジタルツイン技術を導入しています。
具体的には、シーメンスの「Simcenter 3D」を利用して、風力タービンの設計や運用をシミュレーションしています。
これにより、タービンの動作や劣化を詳細に解析し、最適な設計と運用方法を見つけることができます。
この技術により、設計効率が50%向上し、運用コストが大幅に削減されました。
さらに、タービンの故障予測と予知保全が可能になり、メンテナンスの効率化が実現しました。
これにより、風力発電所全体の稼働率とエネルギー効率が向上しています。
|まとめ
この記事では、デジタルツイン技術を活用した事例を製造、建設、インフラの各分野から紹介しました。
今後、デジタルツイン技術はAIやIoTと連携することで、さらに精密なシミュレーションや予測が可能になり、製造・建築分野だけでなくスマートシティや持続可能なエネルギー利用の分野でも重要な役割を果たすことが期待されます。
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