近年、VR技術は急速に進化しており、建築業界でもその導入が加速しています。

VRは設計から施工、顧客とのコミュニケーション、社員教育と幅広い範囲で活用されております。

本記事では、建築業界におけるVR導入のメリット・デメリットを解説し、その具体的な活用事例を8つ紹介します。

これにより、建築業界でのVR導入を検討する際の参考にしていただければと思います。

そもそもVRとは何かを詳しく知りたい方は↓をご覧ください!

VR(仮想現実)とは?ARやMRとの違い、仕組み、メリット、できることをわかりやすく解説!
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|建築業界でVRを活用するメリット

VRを活用することで得られるメリットは様々あります。

その中でも「イメージ共有」「効率化」「安全性」の3つの観点から詳しくご紹介していきます!

イメージ共有が容易にできる

VRを活用することで、設計図や模型では伝えきれない完成後の建物のイメージをリアルに体感することができます。

これによりお客様との正確なイメージ共有が設計段階から可能になり、設計段階と完成時のギャップを抑えることができます。

また、お客様だけでなく社員同士でもイメージの共有が可能であるため、社員研修においても正確な指導が行うことに役立ちます。

このようにイメージ共有が容易にできることにより、「顧客満足度」「社員教育」の改善が期待されます。

業務効率化・コスト削減が可能

従来の建築業界では現地調査や模型制作に多くの時間とコストがかかっていました。

VRを活用することでこれらをバーチャル上で行うことが可能になります。

例えば施工シミュレーションをVRで行うことで、施工前に問題点を発見をすることができ、事前に修正することができます。

そのため、現場での修正工数を減少させ、コストを削減することができます。

また、遠隔地にいる関係者ともリアルタイムで情報を共有できます。

意思決定が迅速になり、プロジェクトの進行がスムーズになります。

このように、VR活用により「業務効率化」「コスト削減」が期待されます。

安全な環境下でスキル習得ができる

実際の建設現場は危険が伴うため、安全教育が重要となってきます。

VRを活用することで、仮想空間内で安全に訓練を行うことができます。

例えば、高所作業や重機操作のシミュレーションを行うことで、作業員は現場に出る前に安全な環境で技術を習得できます。

これにより、実際の現場での事故のリスクを大幅に減少させることができます。

このように、まずはVRを用いて安全に指導を受け、スキルを習得してから実際の現場へとステップアップすることができ、「安全な社員教育」が期待されます。

|建築業界でVRを活用するデメリット

VR技術の導入には多くのメリットがありますが、一方でいくつかの注意点も存在します。

デメリットを理解して正しいVR活用ができるよう、詳しく紹介していきます!

初期費用がかかる

VRの導入には、専用の機材やソフトウェアの購入、セットアップなどにかかる初期費用が必要です。

高品質なVR機器や専用ソフトウェアは高額なものが多いのが現状です。

また、専用のVRコンテンツの制作には専門的な知識と技術が必要です。

外部依頼することが多く、その費用も考慮する必要があります。

要件次第では高クオリティなVRコンテンツが必要となり高額になる場合があります。

このように、機材やVRコンテンツの開発で初期費用がかかります。

ただ長期的なコスト削減を目指すものですので、効果検証を行い判断することが重要です。

操作に慣れるまで時間がかかる

VR機器の操作は直感的ではないため、従業員が慣れるまでに時間がかかることがあります。

特に、技術に不慣れな従業員にとっては、初期のトレーニングが必要です。

また、VRを効果的に活用するためには、ソフトウェアの操作やコンテンツの利用方法を習得する必要があり、この習得には時間と労力がかかる場合があります。

これにより、短期間での導入効果が見込めない場合もあります。

したがって、トレーニング期間も加味した余裕のあるVR活用のスケジュール作成をすることが重要です。

VR酔いになる可能性がある

VR酔いとは、VR環境での視覚と体の動きの不一致によって引き起こされる酔いの一種です。個人差がありますが、25%の人が体験すると言われており、対策をする必要があります。

長時間使用や動きの多いコンテンツの場合にVR酔いしやすい傾向にあります。

そのため、適切なコンテンツ設計と使用時間の管理が必要です。

例えば、研修としての利用の場合であれば、短いコンテンツを沢山用意して、長時間使用しないコンテンツ設計にする必要があります。

このように、コンテンツの設計段階で対策を考えることが重要です。

|建築業界でのVR活用事例8選

これまで建築業界におけるVR活用についてのメリット・デメリットを紹介してきました。

ここでは、実際にどのように活用されているのかを紹介していこうと思います!

ラストスマイルワークス|建築業界特化のVRサービスを提供

ラストスマイルワークスは、住宅関連業界向けに特化したVRサービスを提供しています。VRプラットフォーム「comony」を利用することで、施主は自宅からでもVR内見を行うことができ、建物の詳細を確認できます。

これにより、物理的なモデルハウスを用意する必要がなくなり、コスト削減につながりま す。

また、いつでもモデルハウスの共有を行うことができるため、顧客とのコミュニケーションが円滑になり、理解が深まり満足度の向上が期待できます。

東急建設|建設現場をVR空間で共有

東急建設は、VR技術を活用して建設現場の情報を関係者間で共有しています。

従来の資料による情報共有ではなく、VRを活用することで業務の効率化や生産性の向上を目的としたものです。

これにより、同じ情報を関係者間でリアルタイムで確認でき、イメージの共有、コミュニケーションが円滑になりました。

特に、大規模なプロジェクトでは、VRを使った情報共有が効果的です。今後もVRの活用によって現場での意思決定が迅速化し、プロジェクトの進行がスムーズになることが期待されます。

大成建設|VR切羽観察システムを開発

大成建設は、山岳トンネル工事における切羽の岩盤状況を高精度に把握するためのVR切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を開発しました。

このシステムは3Dレーザスキャナで計測したデータを基に、VR空間に切羽の詳細な映像を再現します。

従来の目視観察では難しかった岩盤の割れ目や形状を安全に確認でき、「肌落ち」と呼ばれる災害リスクを低減します。

このように、VRを活用することで遠隔地でも情報共有や意思決定が迅速に行えるため、施工の安全性と効率性が向上すると期待されています。

奥村組|VRで設計・施工シミュレーションを実施

モックアップを作成する際に、実寸大では作成に工数がかかり、産業廃棄物が生まれてしまうことや、縮小版では完全に再現ができず、手戻りが発生してしまうなどの課題がありました。

そういった課題に対して、奥村組は「メタバース技術研究所」を構築しました。

この施設では、VR技術を活用して建設プロジェクトの検討精度を向上させ、設計・施工工数を削減します。

VRを活用してモックアップを再現することで、施工工数を減らすことや、イメージの共有、さらには産業廃棄物を無くしSDGsに貢献することが効果として期待されています。

明電舎|労働災害を防ぐVR安全教育を提供

明電舎は、VR技術を活用した安全体感教育を提供しています。

3Dシミュレーターと組み合わせたVRは、臨場感のある事故体感を実現し、高い学習効果を提供します。

これにより、労働災害を擬似的に体験し、危険に対する感受性を高めることができます。

また、サブスクリプションやレンタルサービスにより、企業は手軽に最新のコンテンツを利用可能になりました。自社でコンテンツを用意することなく、容易に作業員の安全意識向上や現場での事故防止を期待することができます。

つくし工房|建設現場での災害をVRで体験

つくし工房は、工事現場の安全教育にVR技術を活用しています。

VRを用いることで、足場からの墜落、飛来物、土砂崩壊、重機災害などをリアルに体験させることでき、作業員の危険意識を高め、災害防止につなげます。

これにより、作業員は実際の現場での危険を予測し、どの程度安全領域を確保するべきかなどの、適切な対応を取る能力を養うことができます。

このように、VR安全教育は現場での事故リスクを低減し、作業員の安全意識向上が期待されます。

積木製作|安全教育にVRを活用

積木製作は、VR技術を活用した安全体感教育を提供しています。

この「安全体感VRトレーニング」では、作業員が墜落、挟まれ、火傷などの災害を仮想的に体験できるコンテンツを提供し、安全意識を向上させることを目的としています。

VRの臨場感ある体験により、現実の災害に対する感受性が高まり、労働災害の予防につながります。

また、多言語対応しており、国内外で働く作業員の安全意識向上に効果的であると期待されています。

大林組|BIMを活用したVR研修を実施

大林組は積木製作と共同で、BIM(Building Information Modeling)データを活用した施工管理者向けのVR教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発しました。

BIMとは、建物の設計から施工、維持管理までの情報を3Dモデルで一元管理する技術です。

このシステムでは、施工現場の鉄筋配置の不具合を仮想空間で体験でき、受講者はVRゴーグルを使用して現場と同様の環境で学習できます。

これにより、施工管理の品質管理技術を効率的に習得できるほか、不具合に気づく感性も養えます。

このようにVRielを通じて技術者教育の充実を図り、業界全体の品質向上が期待されています。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

建築業界でのVR活用について理解が深まっていれば幸いです。

私の感想として、現在の活用方法としては安全教育という観点での活用が多いような気がしました。

効率化やコスト削減にどうしても注目してしまいがちですが、安全という観点での活用価値が高いのが非常に興味深いと感じました。

今後さらなる技術の進化により、より安全に作業員が働ける環境が整備されていくことを願っています。

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