皆さんは、「ミラーワールド」という言葉をご存知でしょうか。

ミラーワールドは、デジタルの世界に現実世界と同じ世界を作ることです。

第一のプラットフォーム「Web」、第二のプラットフォーム「SNS」に続く第三のプラットフォームとして、「ミラーワールド」が注目を集めています。

本記事では、ミラーワールドやデジタルツインに興味がある人に向けて、ミラーワールドの仕組みや特徴、活用例などを詳しく解説しますので是非最後までご覧ください。

|ミラーワールドとは

ミラーワールド(MIRROR WORLD)とは、現実世界の鏡(mirror)のような世界(world)という意味です。

90年代初頭に、イェール大学のデヴィッド・ゲランター氏が「ミラーワールド」という発想を提唱したことが始まりで、現在では、AR/VR技術を活用して、現実の都市や社会のすべてが1対1でデジタル化された世界を作る言葉として使われています。

ミラーワールドは、現実空間とリンクしない仮想空間とは異なり、現実世界とのデータ連動性やリアルタイム性がありシミュレーションなどに活用できます。

また、ミラーワールドには以下のような類義語があります。

間違えやすいので覚えておくとよいでしょう。

デジタルワールド:電脳世界。現実と交わらない。

デジタルツイン:現実世界の物体や環境から得た情報を仮想空間で再現する手法。

スマートシティ:ICT 等の新技術を活用しつつ、あらゆる面で最適化された都市運営。

|ミラーワールドの特長

ミラーワールド最大の特長は、大きくは2点あります。

1つめは、現実世界の物理モデルと仮想世界の数理モデルが対になって連動している点です。

現実世界から取得した情報を、鏡で映したように仮想世界に再現できます。

2つめは、現実世界とリアルタイムに連動している点です。

現実世界でセンサーなどを用いて、リアルタイムデータを処理することで、現実世界で起こる変化を仮想世界でシミュレーションすることができます。

これらは、メーカー製品の開発、設計、建築、航空、宇宙など様々な分野に応用することができると考えられます。

さらには、津波や地震などの災害対策にも活用することができるでしょう。

|ミラーワールドの作り方

ミラーワールドは、私たちの身の回りにあるデバイスによって作成されていきます。

以下、デバイス例。

・スマートフォン

・カメラ

・車

・タブレット

など。

最近のiPhoneには、周囲をスキャンすることができるLiDARスキャナ機能が搭載されていたり、車にもカメラが搭載されてスキャンやマッピングに活用されることが予想されています。

また、様々な企業が開発を進めている「ARグラス」にもカメラが搭載されており、装着しているだけで周囲がスキャンされるようになるかもしれません。

このような身近なデバイスを活用して、ミラーワールドを作るうえで必要な「現実世界の情報」を収集していきます。

|ミラーワールドの活用例

ここからは、ミラーワールドの具体的な活用例について紹介します。

日本でのミラーワールド

出典:https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2022/04/3443.html

まずは、日本での取り組み事例を紹介します。

株式会社MESONと株式会社博報堂DYホールディングスは、現実世界とサイバー空間を融合させた新たなコミュニケーション体験構築プロジェクト「GIBSON(ギブソン)」を実施し、東京渋谷エリアを舞台とした、AR/VR融合の周遊体験の実証実験を行いました。

渋谷区を仮想空間にミラーワールド化し、そこに遠隔地から参加しているVRユーザーと、現実世界にいるARユーザーが、あたかも同じ空間を共有しているようなコミュニケーション体験を可能にしました。

こちらのプロジェクトは今後、観光、イベント、ショッピングなどに応用できるとされています。

海外でのミラーワールド

続いては、海外での取り組み事例を紹介します。

シンガポールでは、2014年に立ち上がったプロジェクト、「バーチャル・シンガポール」が実施されています。

出典:https://youtu.be/y8cXBSI6o44

このプロジェクトは、国土全体の地形や建物、交通機関・水位・人間の位置などを統合するなど「国を丸ごと3Dデータ化する」という世界的に見ても驚きの取り組みです。

リアルタイムに都市情報を可視化することで、交通情報や工事状況を正確に共有し、渋滞緩和策や工事効率化に役立てることが可能になります。

ミラーワールドの応用例

ミラーワールドは、都市以外でも応用されています。

農業や環境問題への応用例として、昨今の気候変動によって世界中で食料不足が起きているなかで、IBMは衛星画像や農地に設置されたセンサーの値や天候、土壌の状態をデータ化し、仮想空間にミラーワールドを作ることで農場のシミュレーションモデルを構築しています。

環境省が策定した第五次環境基本計画では、ミラーワールドなどを活用して、エネルギー機器の開発期間短縮・CO2排出削減などの実現に向けた技術開発を進めると明記されており、CO2問題への活用も期待できます。

|注目の企業

さて、ここからはミラーワールドの実現に近い注目の企業を紹介します。

Niantic社

世界的社会現象にもなったAR技術を活用したスマートフォンアプリ「Pokémon GO」を開発しているNiantic社です。

Pokémon GOのようなアプリが流行すれば、みんなスマホ片手に街へ出掛けゲームをプレイします。

これによって自動的に街をスキャンすることができるというわけです。

Niantic社代表取締役の村井氏は、「我々はこのようなプロダクトを今後も作っていきたいと思っているし、Pokémon GOだけでなく、さらに新しいものにもチャレンジしていきたい。ゲーム的なものを出すのか、ゲームとは違うものを出すのかは分からないが、位置情報を活用したサービスを今後も作り続けたい」と語っています。

こうした企業がミラーワールドの実現に近い企業と言えるでしょう。

|ミラーワールドの課題

ミラーワールドの懸念点として、権利などの問題があります。

ミラーワールドを作成するには、現実世界をスキャンしてデータ化しなければなりません。

そこで問題となってしまうのは、建物、人物の権利、肖像権などについて、法整備が整っていないため、ミラーワールドの推進が滞ってしまう可能性が高いと言えるでしょう。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、ミラーワールドの仕組みや特徴、活用例などをわかりやすく解説しました。

ミラーワールドが一般化することで、渋滞情報や家具の配置まであらゆる分野で活用することができ、私たちの生活に大きなメリットを与えてくれるでしょう。

それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!