皆さんは、「コモングラウンド」という言葉をご存知ですか?

コモングラウンドは、私たちが生きている物理空間とデジタルの情報が重層的に存在している共有基盤のことです。

現実世界を3Dデータとしてデジタルの世界にコピーすることを「デジタルツイン」と呼びますが、コモングラウンドは、それよりももう少し踏み込んだ新しい概念なのです。

本記事では、そんなコモングラウンドについての概要やデジタルツインとの違いなどをわかりやすく解説しますので、是非最後までご覧ください。

|コモングラウンド とは

コモングラウンドとは、現実世界に存在する都市や建築空間をデジタル化し、現実と同じ環境を仮想空間上に再現したものを指し、現実世界と仮想空間をシームレスにつなぐことで、人とロボットの共存を実現するためのものです。

最初は、京都大学の西田豊明教授が提唱した人工知能分野での「コモングラウンド」を、建築デザイン事務所noizおよび株式会社gluon共同パートナー兼、建築家である豊田啓介氏が「モノ(フィジカル)と情報(デジタル)が重なる共通基盤」と再定義し、その価値の重要性を説いています。

コモングラウンドでは、人間が認知できる物理的な世界のあらゆる情報を、一つの大きなデジタルデータとして集め、それをAIによって分析可能にします。

デジタルツインを活用して、デジタルの世界に現実世界の3Dコピーを作成し、AIがデジタル世界の動向をリアルタイムに予測や分析を行います。

そこで得た情報を現実世界に活かすことができるのです。

【コモングラウンドの例】

①現実世界で自動車や飛行機などの物体移動をセンサーで随時検知

②①で検知した情報はすべてデータ化され、コモングラウンド上に反映することで可視化できるようになる

③コモングラウンド上で人工知能によりリアルタイムで分析を実行

④③の分析結果を、現実世界に反映させることであらゆるものが予測できるようになる

|デジタルツインとコモングラウンドの違い

「デジタルツイン」と「コモングラウンド」は、とてもよく似た技術ですが、この2つには明確な違いがあるので解説します。

デジタルツインは、現実世界をそっくりそのまま仮想世界にコピーすることを指します。

現実世界とコピーした仮想世界を同時並行で活用する構造で、それぞれの世界を活かしたまま別世界として扱います

一方コモングラウンドは、現実世界と仮想世界の中間に位置し、リアルとデジタルの世界が重なり合う2つの共通基盤なのです。

現実世界から複製したデジタルツインデータをそのまま現実世界に反映させたものとするとわかりやすいでしょう。

デジタルツインについては、以下の記事をご覧ください。

メタバースとデジタルツインって何が違う?実際の事例などを元に両者の特徴を解説
メタバースとデジタルツインって何が違う?実際の事例などを元に両者の特徴を解説

|コモングラウンド関連の事例

現在において、完璧なコモングラウンドを活用した事例はありませんが、コモングラウンドに関連した事例が出てきていますので、いくつか紹介します。

PLATEAU

出典:https://www.mlit.go.jp/plateau/

PLATEAU(プラトー)とは、国土交通省が主導している日本全国の3D都市モデル整備のリーディングプロジェクトです。

今回整備する3D都市モデルは、都市空間の形状を単に再現した幾何形状(ジオメトリ)モデルではない。都市空間に存在する建物や街路、橋梁といったオブジェクトを定義し、これに名称や用途、建設年、行政計画といった都市活動情報を付与することで、都市空間の意味を再現したセマンティクス・モデルである。このセマンティクスにより、フィジカル空間とサイバー空間の高度の融合が可能となり、都市計画立案への活用や、都市活動のシミュレーション、分析が可能となる。

引用元:PLATEAU公式サイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/)

既に存在しているGoogle Earthでは、建物の形状情報を3Dで見ることができます。

対して、PLATEAUは、建物だけではなく道路や橋の都市構造物全般に対する3Dデータやそのほかのメタ情報を付与して、活用していくというものです。

コモングラウンド・リビングラボ

出典:https://www.cgll.osaka/

コモングラウンド・リビングラボは、「コモングラウンド」を提唱している豊田氏がディレクターを務め、2020年12月に大阪市にセミオープンしたコモングラウンド専用の実験場です。

異業種の企業が集い、シェアオフィスと共有実験場が用意され、実空間に加えて、実空間とほぼ同じデジタル空間がUnreal Engine 4でつくられており、この両方を使ってスマートシティに向けたサービスやアプリの開発を行っています。

|コモングラウンドの今後

コモングラウンドのような「形のデータ記述」は、現在において世界的にもあまり行われてきていません。

この技術が進んでいけば、現実空間よりもデジタル空間が優位になることも考えられます。

前例がない分、難しい挑戦となりますが、コモングラウンドが実現できれば、デジタル世界で遅れをとっていた日本が再び世界へ技術発信できるきっかけとなるかもしれません。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、コモングラウンドについての概要やデジタルツインとの違いなどをわかりやすく解説しました。

今後、コモングラウンドが実現されることによって、日本が今まで作りあげてきた「モノづくり」においての技術力が再度世界に広まることも夢ではないでしょう。

では、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!