映画の世界で、お医者さんが遠隔で手術をしているシーンを見たことはありませんか?
映画の世界とはいえ、画面を見ながら遠隔操作で手術なんて、数mmでもズレたら失敗するのではないかとヒヤヒヤしてしまいます。
しかし、「テレイグジスタンス」という技術を活用すれば、現実世界の遠隔地の物体を、自身の身体の一部のようにリアルタイムに操作することが可能になります。
本記事では、テレイグジスタンスについての概要や、今後の可能性、遠隔操作との違いなどわかりやすく解説しますので、是非最後までご覧ください。
|テレイグジスタンスとは
テレイグジスタンス(Telexistence)とは、英語で「遠隔」を意味する接頭語の「Tel」と、「存在」を意味する「existence」を合わせた言葉です。
VR(仮想現実)の一分野と捉えることができ、現地世界の遠隔地で実質的に存在し、自在に行動する人間存在拡張の考え方および技術こそがテレイグジスタンスなのです。
具体的には、遠隔地にいるロボットを、離れた場所にいる人間が操作を行ってロボットを動かしたり、動かした際にロボットから取得できる情報(匂いや感触など)を人間に送ることができる技術で、人間とロボットが一体となった感覚のことを言います。
|テレイグジスタンスの現在
テレイグジスタンスの技術は、日々発展を遂げています。
現在、視聴覚において、これまでの研究やVRの発展により、実際にその場にいるのにほぼ近い高度な「臨場感」を実現できるようになっています。
しかし、触覚については、現状の技術では、ロボットが得る触覚の記録や、人間への伝送が特定の目的のためだけに行われてしまっており、視覚や聴覚のように、人間の生理・心理に基づいた標準化された方式が確立されていないため、実現が難しいとされています。
|「遠隔操作」との違い
テレイグジスタンスと遠隔操作はとてもよく似た言葉ですが、決定的に違いがありますので紹介します。
遠隔操作とテレイグジスタンスの違いは利用者の視点にあります。
どういうことかと言いますと、遠隔操作は、外部からコントロールされるモノを見ますが、テレイグジスタンスの場合は、VRを使って利用者はそのコントロールされているモノの視点で外界を見ることになります。
例えば、ドローンが飛ぶ姿を、利用者は地上から見ながら操作します。これは遠隔操作と言えます。
対して、実際にドローンに乗っているような感覚で操作することができればそれは、「テレイグジスタンス」と言えます。
|テレイグジスタンスの可能性
テレイグジスタンスとは、ロボットとVRと通信があってこそ成り立つ技術とされています。
つまり、自分の義体としてロボットを活用し、身体機能を補綴・拡張することが可能になります。
テレイグジスタンスを活用し、十全な力を発揮できない高齢者やなんらかのハンディキャップを抱えた人でも、豊富な経験を生かして、労働を続けることが可能となります。
また、身体機能の移動を実現するテレイグジスタンスは、国外からの遠隔就労で移民問題を解消できる可能性もあります。
現代課題の一つとされる労働環境問題は、テレイグジスタンスによって解消されます。
例えば、土地の安い場所に工場を設置して、労働者が集まらないという現象が起こらないからです。
労働者は全国、または全世界から勤務可能になるため、いままでとは工場の立地条件が大きく変わり、大都市への集中が避けられます。
さらに国外から労働者を集めれば、時差を利用した24時間営業の実現など労働環境改善も期待できるでしょう。
|テレイグジスタンスの社会実装
出典:https://youtu.be/WLDucRUwJbo
テレイグジスタンスの技術は、実はすでに社会で実装されはじめています。
その好例が、2020年9月にテレイグジスタンス株式会社が開業した「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」にて、ロボットがテレイグジスタンスによって操作され商品陳列作業を行いました。
また、遠隔操作中の商品のピッキングや設置などの行動を、人間とロボットの動きのデータを蓄積し、AIに学習させることで、遠隔操作をせずとも自動で制御・処理する割合を増やすための研究開発も進められています。
|まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、テレイグジスタンスについての概要や、今後の可能性、遠隔操作との違いなどわかりやすく解説しました。
テレイグジスタンスがさらに進化し、社会に普及することでこれまで物理的な問題で諦めていたことが実現できるようになります。
近い将来、ロボットと会話したり遊んだりする絵が当たり前になるかもしれませんね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!