「VR元年」と呼ばれた2016年から今年2024年で8年が経ち、VR(Virtual Reality、仮想現実)という言葉を聞くことも多くなりました。

しかし、VRという言葉自体は知っていても

「VRってそもそもどういう意味

「VRでできることは何があるの?」

こういった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、VRとはそもそもどういう意味なのか、具体的に何ができるようになるのかをわかりやすく解説します。

簡単な仕組みやビジネスに導入するメリット、始め方や業界別の活用事例まで幅広く紹介しているので、ぜひ最後までお付き合いください。

今後のビジネストレンドになり得るVRについて、今のうちにしっかりと理解して時代に乗り遅れないような知識を蓄えていきましょう!

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目次

|VR(Virtual Reality、仮想現実)とは

VR とは、バーチャルリアリティ(Virtual Reality)の略称で、日本語では「仮想現実」と直訳されるのが一般的です

専用のVRヘッドセットを装着すれば、インターネット上に構築された仮想世界を360度現実世界と同じような感覚で体験できます。

VRと聞くと、最近登場したばかりの言葉のように思えますが、実は意外と歴史が古く、50年ほど前から概念自体は存在していました。

世界で初めてVRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)ができたのは1968年です。

その後、2016年に一般消費者向けのVRヘッドセット「Oculus Rift」が発売されたことで認知度が上昇しました。

現在では日本でも認知度が6割を超えており、VTuberやVRゲームなどの他にもビジネスシーンでの導入が目立ち始めています。

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AR(Augumented Reality、拡張現実)との違い

VR(Virtual Reality、仮想現実)とよく間違えられるのがAR(Augmented Reality、拡張現実)です。

ARとは、簡単にいえば現実空間にデジタル情報を付加することにより、現実を「拡張」して認識させる技術のことです。

「ポケモンGO」で遊んだことがある方なら理解しやすいかもしれません。

では、VRとARは何が違うのでしょうか?

わかりやすいように表にまとめました。

 VR(Virtual Reality)AR(Augmented Reality)
日本語表記仮想現実拡張現実
体験する空間仮想空間現実空間+デジタル情報
ユーザーの意識完全に仮想空間に没入現実空間に存在していると認識
必要なデバイス専用デバイスが必須スマホなどで体験可能な場合もある
利用シーン没入型ゲーム、仮想旅行スマホゲーム、ARナビゲーション
現実世界との関わり方完全に切り離された世界現実世界にデジタル情報を重ねる

細かい定義で説明すると複雑になってしまうので割愛しますが、最も大きく違うのは「完全に没入しているかどうか」です。

また、AR体験ではスマホなどがあれば専用デバイスが不要なことが多いですが、VR体験を味わうには専用のデバイスが必要です。

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MR(Mixed Reality、複合現実)との違い

MRとは、ミックスドリアリティ(Mixed Reality)の略称で、日本語では、「複合現実」と直訳されます。

MRという概念が初めて提唱されたのは、1994年にPaul Milgram氏とFumio Kishino氏によって発表された「A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays」という論文です。

本論文によると、

“MRは現実と仮想の環境の間の領域をカバーする存在であり、AR(拡張現実)とAV(拡張仮想)を含むものである”

(引用:A Taxonomy of Mixed Reality Visual Displays

とされています。

簡単にいえば、MRとはVRとAR技術を複合させた技術です。ゆえに、「複合現実」または「ミックスドリアリティ」と呼ばれます。

ARは現実空間にデジタル情報を付加する技術ですが、そのデジタル情報を「見る」ことはできても「触る」ことはできません。

仮想のオブジェクトが現実世界の物体とインタラクティブに反応することで、デジタル情報と現実の物体が相互作用するようにするのです。

少しごちゃごちゃになってきた方も多いかと思いますので、表でまとめてみましょう。

 VR(Virtual Reality)AR(Augmented Reality)MR(Mixed Reality)
日本語表記仮想現実拡張現実複合現実
体験する空間仮想空間現実空間現実空間+仮想空間
ユーザーの意識完全に仮想空間に没入現実空間に存在していると認識仮想空間と現実空間の統合
必要なデバイス専用デバイスが必須スマホなどで体験可能な場合もある専用デバイスが必要
利用シーン没入型ゲーム、仮想旅行スマホゲーム、ARナビゲーション設計、医療、教育
現実世界との関わり方完全に切り離された世界現実世界にデジタル情報を重ねる仮想オブジェクトと現実オブジェクトが相互作用

このように、MRはVRとARに密接に関係しています。理解するのが難しい方は、

VR + AR = MR

と覚えておきましょう。

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XR(Cross Reality、エックスアール)との違い

最近では「XR」という言葉もよく聞くようになりました。

XR(Cross Reality)とは、特に日本語で直訳に当たる言葉は無く、その言葉通り「エックスアール」か「クロスリアリティ」と呼ぶことが一般的です。

XRはあくまでもVR/AR/MRの総称であり、特定の技術を指す用語ではありません

最近では、VRゴーグルなどの専用デバイスがかなり高性能になってきたこともあり、一つのデバイスでVR体験もAR体験もMR体験もできるようになっています。

そのため、一括りにXRという言葉でまとめたのです。

ただし、XRと記載してあったとしてもAR機能に焦点を当てたものもありますし、VRやMRに焦点を当てたものもあります。

専門機関が定義した言葉ではないのでこの辺りは少し曖昧になりつつありますが、XRといえばVR/AR/MRを組み合わせたもの、と覚えておきましょう。

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SR(Substitutional Reality、代替現実)との違い

SR(Substitutional Reality)は、日本語で「代替現実」と訳されるのが一般的です。

SR(代替現実)とは、実際の現実を完全に別の現実に置き換える技術やコンセプトのことです。

わかりやすく言えば、私たちが普段見ている現実世界をまったく違う世界に変えてしまうものです。ゆえに、「代替」現実と呼ばれます。

例えば、あなたが家にいるとしましょう。

SR技術を使うと、その家が突然宇宙船の中のように見えたり、ファンタジーの城の中のように変わったりします。

実際には何も変わっていないのに、見える世界が完全に別物になるのです。

比較表でそれぞれの違いをみてみましょう。

 VR(Virtual Reality)AR(Augmented Reality)SR(Substitutional Reality)
日本語表記仮想現実拡張現実代替現実
体験する空間仮想空間現実空間現実空間
ユーザーの意識完全に仮想空間に没入現実空間に存在していると認識現実と仮想を同時に体験
必要なデバイス専用デバイスが必須スマホなどで体験可能な場合もある専用デバイスが必要
利用シーン没入型ゲーム、仮想旅行スマホゲーム、ARナビゲーション医療訓練、テーマパークのアトラクション
現実世界との関わり方完全に切り離された世界現実世界にデジタル情報を重ねる現実の要素を仮想情報で代替

SRはVRとの違いは理解しにくいですが、VRが仮想世界に完全に「没入」するのに対し、SRは現実の要素を仮想の情報に置き換えて「錯覚」させます。

つまり、SRは「体験者に現実なのか仮想空間なのかわからないようにする」技術、と覚えておきましょう。

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メタバース(Metaverse)との違い

VRとよく間違われるのが「メタバース(Metaverse)」です。

メタバースとは、「超越する」を意味する英単語の「Meta(メタ)」と「宇宙や広大な空間」を意味する「Verse(バース)」を組み合わせた造語です。

日本語では「仮想空間」や「仮想世界」と呼称されるのが一般的になります。

2009年にジェームズ・キャメロン監督の元で制作され大ヒットを記録したSF映画「アバター」をご覧になったことがある方は理解しやすいかもしれません。

本作では、主人公が青色の肌を持つ特殊生命体に自身の意識を移し、惑星パンドラという星で未知の生命体や環境を調査します。

直接的にメタバースは登場しませんが、メタバースのイメージはこれに非常に近いです。

映画アバターでいうと、メタバース、つまり仮想空間は惑星パンドラにあたります。

メタバースでは専用のアバター、つまり仮想空間上での自分の分身を利用して現実空間と変わらないような体験が可能です。

つまり、VRが仮想空間に完全に没入させる技術なのに対し、メタバースは仮想空間そのものを指します。

【まとめ】VRとAR/MR/XR/SR/メタバースの違い

ここまで、VRとAR/MR/XR/メタバースについて解説してきました。似ている要素が多く登場して混乱している方も多いかもしれません。

そこで最後に、全ての違いを一覧で簡単に把握しておきましょう。

  • VRとは、完全に仮想空間に没入する技術で、ユーザーは現実とは切り離された仮想環境を体験する
  • ARとは、現実空間にデジタル情報を重ね合わせる技術で、ユーザーは現実と仮想を同時に体験する
  • MRとは、現実空間と仮想空間を融合し、仮想オブジェクトと現実オブジェクトが相互に影響し合う技術
  • XRとは、VR、AR、MR、SRなどの総称であり、特定の技術を指す言葉ではない
  • SRとは、現実の環境や状況を仮想情報で代替し、現実と仮想を錯覚させる技術
  • メタバースとは、アバターを通じて交流や活動を行うことができるオンラインの仮想世界

それぞれの言葉は、今後のビジネスシーンでも多く耳にすることになるでしょう。

全て意味合いが変わってくるので、違いを明確に把握しておくことが重要です。

|VR(仮想現実)の簡単な仕組み

では、VR(仮想現実)はどのような仕組みで没入感を高めているのでしょうか?

ここからは、VRの仕組みについてなるべくわかりやすく説明していきます。

両眼視差を利用して立体として認識させる

VR映像は「両眼視差」を利用して人間に立体映像として認識させています。

両眼視差とは、人間の両眼が異なる角度から物体を見るため、各眼が異なる画像を捉える現象のことです。

この差異を利用して、脳は一つの立体的な画像を生成します。

VRデバイスはこの原理を模倣し、左右の眼に異なる画像を写すことで立体視を実現しています。

このように、実はVR映像が立体的に見える仕組みというのは至ってシンプルなものです。

専用のセンサーで動きをトラッキング(追跡)している

両眼視差の原理を利用すれば視覚的な没入感を高めることができますが、総合的な没入感を高めるためには視覚だけでは物足りません。

仮想空間内で自分の動きが反映されるように、現実空間の動きをセンサーで精確に捉える必要があります。

この人間の動きを捉える技術のことを「トラッキング」と呼びます。

VRで利用されるトラッキング技術一覧

VRで主に利用されるトラッキング技術は以下の5種類です。

トラッキングの種類特徴
1.ヘッドトラッキングヘッドセット内のセンサーを使用して、頭部の動きを追跡します。
2.アイトラッキング目の動きを追跡し、ユーザーの視線が向いている場所を特定します。
3.ボディトラッキング全身の動きを追跡するために、体に装着されるセンサーやトラッキングスーツを使用します。
4.ハンドトラッキングとジェスチャー認識手と指の動きを追跡し、コントローラーを使わずにジェスチャーで操作が可能にします。

基本的に、多くのVRデバイスにはヘッドトラッキングとアイトラッキングが搭載されていますが、ボディトラッキングやハンドトラッキングには専用のコントローラーや別デバイスが必要になってきます。

トラッキング方式には3DoFと6DoFがある

また、トラッキング方式には「3DoF(スリードフ)」と「6DoF(シックスドフ)」という2種類の方式があります。(※DoF:Degrees of Freedom、自由度)

3DoFというのは簡単にいうと、上下左右と奥行き(x軸とy軸とz軸)のみをトラッキングする方式のことです。

6DoFというのは、3DoFに加えて「ピッチ(前後の傾き)」と「ヨー(左右の回転)」と「ロール(横転)」を付け加えた方式のことです。

一般的なVR動画を視聴するだけであれば3DoFでも全く問題ありませんが、アクション性の高いVRゲームなどで遊ぶ時はよりトラッキング性能の高い6DoFの方が適しています。

3DoFと6DoFは、よくVRデバイスのスペック表に記載されているので、購入の際には3DoFなのか6DoFなのかを必ず確認しておきましょう。

立体音響でさらに没入感を高める

両眼視差を利用して視覚的な没入感を高め、トラッキング技術を利用して現実空間の動きを精確に再現することで、基本的なVRの仕組みは成り立ちます。

しかし、もう一つのピースが組み合わさることでVRの没入感はさらに高まります。

それが「立体音響」です。(※「スペーシャルオーディオ」や「3Dオーディオ」と呼ばれることもある)

立体音響とは、音があたかも実際の空間内の特定の位置から聞こえてくるかのように聴覚的な錯覚を作り出す技術です。

音源の位置、距離、動きをリアルタイムでシミュレートすることで、ユーザーが仮想環境内での方向感覚や距離感を感じられるようにします。

最新型のゲーミングヘッドフォンなどには立体音響技術が既に多く搭載されています。

そのため、VR体験をさらに向上させるためにはヘッドフォンなどのオーディオ製品にもこだわりたいところです。

|VR(仮想現実)をビジネスに活用するメリット3つ

VR(仮想現実)は既に多くのビジネスに活用されており、2024年から2032年までの市場の年平均成長率(CAGR)は約28.6%もの驚異的な速度で拡大していく見込みです。

(参考:バーチャルリアリティ(VR)の市場規模、シェア及び業界分析

ではなぜ、これほどまでに驚異的な速度でVRはビジネスに活用されているのでしょうか?

ここでは、VRをビジネスに導入するメリットを3つ具体的にご紹介します。

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①ターゲットに効果的にアプローチできる

VRをビジネスに導入する1つ目のメリットは、ターゲット層に効率的にアプローチできるという点です。

今まで、ターゲットにアプローチする主な方法は広告やイベントといった手法が主流でしたが、VRを使うことでターゲットを完全に異なる環境や体験に没入させることが可能になります。

<主な活用法>

  • 不動産業界:VRバーチャルツアーで遠方の顧客に物件を見せる。
  • 自動車業界:VR試乗体験で自宅から新車の魅力を伝える。

旅行業界:VRで観光スポットを事前体験させ、旅行意欲を高める。

このように、VRはターゲットに対するアプローチ方法を根本から変革し、ビジネスにおける顧客体験の質を大幅に向上させるための手段となります。

②データに基づいたマーケティング戦略が立案できる

2つ目のメリットは、確かなデータに基づいたデータ志向のマーケティング戦略が実現できるという点です。

昨今のマーケティング戦略というのは、ビッグデータなどに蓄積された膨大なデータを解析し、その結果をもとに戦略を練るのが一般的です。

しかし、VRの導入によりこのプロセスはさらに進化し、より具体的かつ詳細なデータを活用することが可能になります。

<主な活用法>

  • リテール業界:VR仮想店舗でどの商品に興味を示し、どのルートを辿るかをデータとして収集し、商品配置や店舗レイアウトの最適化に役立てる。
  • エンタメ業界:VRイベントでの参加者の反応や滞在時間、注目したコンテンツなどを解析し、次回のイベント企画やマーケティング戦略に反映させる。
  • 医療・ヘルスケア業界:ユーザーがどのエクササイズを好むかなどのデータを収集し、パーソナライズされたフィットネスプランやマーケティング施策を立案する。

VR環境では、ユーザーの動き一つ一つがデータとして収集され、どの部分に興味を示したか、どのような反応を示したかといった情報が正確に記録されます。

そのため、顧客の行動パターンや嗜好をより深く理解することができ、それを元にしたパーソナライズされたマーケティングが実施できるのです。

③若年層を顧客に取り入れられる

3つ目のメリットは、若年層、特にZ世代を顧客層に取り込める点です。

LINE株式会社の運営しているリサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」で実施した最新の調査によると、VRを今後利用したいと回答した人は全体で56%となりました。

しかしながら、年代別で見ると10〜20代では7割弱が利用したいと回答しており、若年層はVRに非常に高い関心を持っていることがわかります。

若年層というのはSNSなどの利用頻度が高く、顧客に取り込めれば製品やサービスが一気に拡散される可能性が高いです。

したがって、今まで若年層をターゲットにしづらかった業種、例えば建築業や医療業界にとって、VRをビジネスに取り入れるのは非常に効果的といえるでしょう。

(参考:リサーチノート|LINE株式会社)

|VR(仮想現実)が流行しない理由3つ

非常に多くのメリットを持つVRですが、2024年時点ではお世辞にも流行っているとはいえない状況です。

もちろん、以前と比較するとVRという言葉の認知度自体は上昇しましたが、実際にVRを日常的に体験している人はまだまだ少ないです。

ではなぜ、VRは流行らないのでしょうか?

ここでは、VRがなかなか流行しない理由を3つご紹介します。

VRに将来性はある?現状の市場規模から今後の展望を予測!
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①VRゴーグルの価格が高い

本格的なVR体験を楽しむために必要なのが「VRゴーグル」です。しかし、このVRゴーグルの値段は非常に高いです。

参考までに、現在の主流VRゴーグルの公式価格は以下の通りになります。

製品名価格(税込)
Meta Quest 239,600円〜
Meta Quest 374,800円〜
PSVR2(PlayStation VR)74,980円〜
PICO449,000円〜
VIVE Pro 2103,400円
VALVE INDEX VRキット165,980円

(※値段は2024年4月時点のものです)

このように、VRゴーグルの相場は平均で約4万円〜10万円程度です

ただし、スマホ装着型などのVRゴーグルであれば1万円以内で購入できるものも多くありますが、本格的なVR体験とは程遠いものです。

また、VRゴーグルはほとんどが海外製であり、円安に歯止めがかからない昨今の日本の為替市場を考慮すると、その値段は今後さらに高くなるかもしれません。

一般庶民にはおいそれと手を出せる金額ではないため、VRゴーグルの価格がもう少し安くならない限り、本格的な流行は難しいでしょう。

②市場では「新技術」という認識

VRのような新しい技術がどれくらい市場に浸透しているかを表す指標として、ガートナー社が提唱する「ハイプサイクルモデル」というものがあります。

少し難しそうな響きですが、非常にシンプルなモデルなので安心してください。

ハイプサイクルモデルでは、新技術が市場にどれほど浸透しているかを以下の5つのフェーズに分類します。

1.黎明期

新しい技術が登場して注目が集まるが、実用製品はまだ存在しない時期

2.過度な期待のピーク期

多くの成功例が報じられて一部で実装が行われるが、多くの失敗も伴う時期

3.幻滅期

初期の試みが失敗に終わることで興味が失われて投資が減少する時期

4.啓発期

第二世代、第三世代の製品が市場に出始め、具体的な事例が増えることで理解と実装が進む時期

5.生産性の安定期

技術が大衆に受け入れられ、市場での実用性とビジネス価値が確立する最終フェーズ

ガートナージャパンの「日本におけるユーザー・エクスペリエンスのハイプ・サイクル:2021年」によると、VR/AR技術は「幻滅期」に入ったことが報告されています。

2024年時点でのVR/AR技術の立ち位置はまだ発表されてはいませんが、「啓発期」に入っているか差し掛かる直前だと予想されています。

一般的に、啓発期から市場に完全に技術が浸透した状態、つまり「生産性の安定期」を迎えるまでの期間は約5〜10年です。

したがって、VR技術が流行るのは早くて2029年頃、遅くとも2030年代前半から中盤頃になるでしょう。

③「フルダイブ型VR」の実現には至っていない

VRと聞いて、恐らく多くの人がイメージするのが「フルダイブ型VR」です。

フルダイブ型VRとは、完全に仮想世界に没入できる高度なバーチャルリアリティ技術のことです。

このタイプのVRは、単に視覚や聴覚に訴えるだけでなく、ユーザーの意識を仮想環境に完全に移行させます。

しかし、フルダイブ型VRの実現はまだまだ先の話です。

脳神経に関する研究は現在でも活発に行われており、日々目覚ましい進歩を遂げてはいますが、完全な神経接続を介して仮想世界に「意識を移動」させる技術は、現在の科学技術では実現されていません。

ただし、視覚や触覚・聴覚・嗅覚・味覚は既に再現できており、脳とコンピューターを直接接続する技術(ブレイン・コンピューター・インターフェース、BCI)は研究が進められています。

|VRを体験するために必要なもの

ここからは、VRを体験するために必要なものを見ていきましょう。

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VRゴーグル

本格的なVR体験を楽しむためには、VRゴーグルは欠かせません。

ただし、360度動画やVR動画を楽しむだけならスマホやPCなどでも視聴自体は可能です。

しかしながら、実際に仮想世界に没入した感覚を味わうためにも、やはりどうしてもVRゴーグルが欲しくなってきます。

先述したように、VRゴーグルは非常に高価なものが多いですが、種類によってはかなり安価なものも多くリリースされています。

そのため、VRゴーグルを準備する際には、まずVRゴーグルの種類について理解しておきましょう。

VRゴーグルの種類一覧

VRゴーグルの種類は、大まかに分けて「スタンドアロン型」、「PC接続型」、「スマホ接続型」の3種類です。

それぞれの価格帯や特徴については以下の表をご確認ください。

 スタンドアロンPC接続スマホ接続
価格帯約4〜10万円10万円以上1万円未満
主な用途VRゲーム VR動画の視聴 バーチャル会議 などVRゲーム コンテンツ制作 専門シミュレーション など360°動画視聴 簡単な教育用コンテンツ など
対応ゲーム数多い少ない
画質中〜高画質最高画質低〜中画質
対象ユーザー初心者から中級者向け中級者〜上級者向け初心者向け
代表的なVRデバイスMeta Quest 2/3、HTC Vive FocusValve Index、HTC Vive Pro、Oculus Rift SSamsung Gear VR、Google Daydream View

VR体験をまだ経験したことがない方は、スマホ接続型のVRゴーグルで使用感を確かめてみるのもありですが、本格的なものとは程遠い点に注意してください。

PC接続型はかなり上級者向けのものが多いので、やはり最もおすすめなのが持ち運びもしやすいスタンドアロン型のVRゴーグルです。

ただし、スタンドアロン型も値段が安いとはいえないので、できれば家電量販店などで使用感を確かめてみてから購入することをおすすめします。

高性能PCまたはゲーム機

PC接続型のVR体験をする場合は、別途高性能PCやゲーム機が必要になってきます。

PCの必要スペックに関しては以下の表をご確認ください。

 最低推奨スペック推奨スペック
プロセッサIntel i5-4590 / AMD Ryzen 5 1500XIntel i7-6700K / AMD Ryzen 7 1800X
グラフィックカードNVIDIA GTX 1060 / AMD Radeon RX 480NVIDIA GTX 1080 Ti / AMD Radeon RX Vega 56
メモリ8GB RAM16GB RAM
ビデオ出力HDMI 1.4 / DisplayPort 1.2 以上HDMI 1.4 / DisplayPort 1.2 以上
USBポート3x USB 3.0ポート3x USB 3.0ポート以上
OSWindows 10Windows 10以上

なお、ゲーム機であればPS4またはPS5、Xboxなどが最もおすすめです。

5Gなどの高速通信環境

VR体験はリアルタイムでの反応が求められるため、通信の遅延(レイテンシー)が少ないことが非常に重要です。

5G通信は低遅延を実現し、ユーザーの動作に対する即時のフィードバックを提供することができます。

これにより、より自然で没入感のあるVR体験が可能になります。

また、VRコンテンツは高解像度のビデオや複雑な3D環境データを含むため、大量のデータ転送が必要です。

そのため、少なくとも下り速度(ダウンロード速度)で5Mbps(メガビット/秒)以上、万全を期すのなら1Gbps(ギガビット/秒)以上の通信速度が必要になってきます。

ただし、一般的な5G通信の下り通信速度は基本的に1Gbpsを大きく超えるので、5G通信エリア内であれば問題ありません。

|VR(仮想現実)を活用してできること5つ

VR(仮想現実)を活用すると、今までにはできなかった様々なことができるようになります。

ここでは、VRの活用法についてわかりやすく解説します。

【業界別】VRの導入事例15選!導入ポイント・活用分野・将来性も紹介!
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①没入型の新感覚ゲーム体験

VR(仮想現実)を活用することで、従来の2Dスクリーンでのゲーム体験とは一線を画す、没入型の新感覚ゲーム体験が可能になります。

プレイヤーはVRヘッドセットを装着することで、360度どこを見てもゲームの世界が広がり、自分自身がその世界に入り込んだかのような感覚を味わえます。

物理的な動きやジェスチャーを取り入れた操作も可能で、ゲームキャラクターの動きを自分の身体で再現することで、よりリアルで臨場感溢れるプレイが楽しめるようになるのです。

これにより、ユーザーはゲームの中での冒険や戦闘、謎解きなどを実際に体験しているかのような没入感を得ることができ、ゲームの楽しみ方が大きく広がります。

②360度見渡せる動画や映画鑑賞

VRを活用すれば、従来のスクリーンでの視聴とは異なり、360度見渡せる動画や映画鑑賞が可能になります。

VRヘッドセットを装着することで、ユーザーはまるで映画の中に入り込んだかのような体験が可能です。

映像のあらゆる方向に目を向けることができ、視点を自由に移動させることで、通常の映画鑑賞では味わえない新たな視聴体験が得られます。

特に、ドキュメンタリーや旅行動画、ライブコンサートなどでは、その場にいるかのような臨場感が味わえるため、今までにはない新しい体験を堪能できます。

これにより、映像コンテンツの楽しみ方が多様化し、エンターテインメントの新たな可能性が広がるでしょう。

③場所に左右されないビジネスやコミュニケーション

VRを活用することで、物理的な場所にとらわれずにビジネスやコミュニケーションを行えるようになります。

例えば、仮想オフィスや会議室を専用のプラットフォーム上に構築することで、世界中のどこからでも同じ空間に集まり、リアルタイムで対話や共同作業が可能です。

これにより、出張や通勤のコストや時間を削減し、効率的なビジネス運営が可能になります。

この活用法は既に多くの企業が取り入れており、近い将来には私たちは会社に通勤することなく自宅でオフィスに出社、というような働き方になっているかもしれません。

④医療やリハビリの効率化

実は、VRを積極的に取り入れているのが医療業界です。

例えば、仮想環境を利用して手術のシミュレーションを行うことで、医学生や若手医師が実際の手術を体験する前に十分な練習を積むことができます。

これにより、手術自体の安全性を高めると同時に医者としての技術の向上が可能になるのです。

また、リハビリテーションでは、VRを使用して患者が楽しくリハビリに取り組めるようなプログラムを既に取り入れています。

仮想環境での運動やゲームを通じて、患者はモチベーションを維持しながら効果的にリハビリを進めることができ、回復が促進されます。

自主性を持って取り組めるので医療従事者の負担も軽減でき、逼迫した日本の医療界の働き方改革の一助となるでしょう。

⑤デジタルツインを利用したシミュレーション

デジタルツインとは、現実の物理的なオブジェクトやシステムを仮想空間にリアルタイムで再現する技術です。

VRを活用することで、これらのデジタルツインを利用したシミュレーションが可能になります。

例えば、製造業では工場や製品のデジタルツインを作成し、VR内で操作や改良のシミュレーションを行うことができます。

これにより、実際の製造プロセスに入る前に問題点を発見し、コストや時間の削減が可能になります。

また、都市計画や建築設計の分野でも、デジタルツインを用いたVRシミュレーションを行うことで、設計の最適化や安全性の確認が行えます。

現実世界での試行回数を減らせるので、コストに限りのある中小企業などにとってはまさに救世主といえるでしょう。

|【2024最新】VR市場の将来性について

「VR元年」と呼ばれた2016年から今年で8年目を迎えましたが、VRは一部の人しか使っていない状況です。

このような現状を悲観的に捉えて、

「VRはオワコン」

「VRに将来性はない」

というような論調で指摘するメディアも見かけるようになりました。

しかし、果たして本当にVRに将来性はないのでしょうか?

ここでは最後に、VRの将来性についてご紹介します。

VRに将来性はある?現状の市場規模から今後の展望を予測!
VRに将来性はある?現状の市場規模から今後の展望を予測!

2029年までに約31.6兆円規模の市場に成長予測

株式会社グローバルインフォメーションの最新の調査報告書によると、バーチャルリアリティ(VR)市場規模は2024年に676億6,000万米ドルと推定され、2029年までに2,043億5,000万米ドルに達すると予測されています。

これは、日本円に換算すると約31.6兆円に相当し、予測期間(2024年から2029年)中に24.74%の年平均成長率(CAGR)で成長する見込みです。

一般的に、年平均成長率が10%を超えると成長産業とみなされます。20%を超えると、その産業は超成長産業と認識されます。

このことから、VR市場は非常に将来性のある市場といえるでしょう。

(参考:市場シェア分析、業界動向と統計、成長予測(2024~2029年))

最大の市場はゲーム産業と医療業界

VR市場における最大のセクターはゲーム産業と医療業界です。

ゲーム産業では、VR技術がもたらす没入型の一人称視点体験がプレイヤーに新たな感動をもたらしています。

エンターテインメントソフトウェア協会の調査によれば、毎週2億2,700万人近くのアメリカ人がビデオゲームをプレイしており、VRゲームの需要は今後も増加が予想されるとのことです。

一方、医療業界では、VR技術が手術のシミュレーションや医療トレーニングに革命をもたらしています。

複雑な手術のシミュレーションをVRで行うことで、医師や医学生がリスクを負わずに実践的なスキルを習得することができるので、医療の質の向上と患者の安全性が確保され、医療現場でのVRの重要性は今後も高まり続けるでしょう。

今後はMeta社とNVIDIA、SONYの動向に要注目!

VR市場の成長を牽引する企業として、Meta社、NVIDIA、SONYの動向に注目が集まっています。

Meta社(旧Facebook)は、Oculusシリーズ(現在ではMeta Questシリーズ)の開発を通じてVR市場のリーディングカンパニーとして不動の地位を確立しています。

NVIDIAは、高品質のVRストリーミングのためのクラウドサービスを提供しており、VR体験の質をさらに向上させています。

NVIDIAの先進的なGPUは、リアルタイムでの高精度な映像描写を可能にし、VR環境をよりリアルに再現するのに必要不可欠です。

SONYは、ゲーム業界での強力なブランド力を活かし、PlayStation VR2(PSVR2)を通じて次世代のVRゲーム体験を提供しています。

これらの企業の技術革新と市場戦略は、VR市場の未来を形作る重要な要素となっており、今後の動向には目を光らせておきましょう。

|VRはAIと並ぶ今後のビジネストレンドへ

本記事では、VR(Virtual Reality、仮想現実)について、AR/MR/SR/XR/メタバースとの違いや仕組み・メリットを簡単に解説しました。

VR技術の活用の幅は日々広がってきており、今後はAIと並ぶビジネストレンドへと昇華していく可能性が非常に高いです。

しかし、2024年現在ではまだまだ流行っているとは言えない状況であるのも事実です。

本記事でも解説していますが、VR技術が本格的に流行るまでにはまだ5〜10年ほど必要です。

2030年頃になって「VRってそもそも何?」という状態では、ビジネスシーンで笑い者にされてしまうかもしれません。

そうならないためにも、本記事の情報を参考にVRに対して正しい理解を深めておきましょう。

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それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!