2024年現在、AIをはじめとした様々な新技術が世の中に登場し、我々の生活を大きく変化させようとしています。
そして技術進歩のペースは早く、驚くべきスピード感で数多くの技術、名称が現れ、テレビやラジオ、ネットニュースなどで当たり前のように使用され始めます。
こうした状況ですので、一般的に使用されつつある言葉であったとしても「実際はよく分かってない」という人は少なくないでしょう。
「VR」という単語も、そうした「良く分かっていない」ものの中の一つではないでしょうか。
「仮想現実」を意味するとぼんやりした内容を思い浮かべても、実際どういったものであり、どういったシーンで利用できるのかを説明できる人は多くありません。
そこで、本記事では今さら聞けない「VR」として、その基本的な概要から活用シーン、さらには類似した新技術について解説します。
一読いただければ「VR」に関する知識は網羅できますので、ぜひ最後までご覧ください。
|VRとは
VR とは、バーチャルリアリティ(Virtual Reality)の略称です。
日本語では「仮想現実」と直訳されます。
専用のVRヘッドセットを装着して、インターネット上に存在する仮想世界を360度現実世界と同じような高い没入感をもって体験できる視覚技術のことを指します。
VRヘッドセットには、パソコンと有線を繋いで連動するもの、ゲーム機と連動するもの、スマホを利用するものなど様々な種類があり、それぞれ機能や価格などが異なります。
VRの歴史は実は意外と古く、50年ほど前から概念自体は存在していました。
世界で初めてVRのヘッドマウントディスプレイができたのは1968年です。
その後Oculus Riftで人気が上昇し、その販売元をFacebook(現:Meta)が買収したことで世間に認知されるようになりました。
いまやVRはビジネスにも活用されており、日本の企業も続々と参入しています。
|AR・MR・SRとの違い
まずはVRについて概要を解説しました。
では、似たようなワードであるARやMR、SRとは何が違うのでしょうか。
いずれの技術もCGを活用して現実世界では不可能な視覚体験を実現していますが、ここからはそれぞれのワードとVRとの違いについて順に解説していきます。
ARとの違い
ARとは、オーグメンテッドリアリティ(Augmented Reality)の略称で、日本語では「拡張現実」と直訳されます。
スマートフォンやタブレット、カメラに映し出される映像を通じて、現実世界のデジタル映像を投影することができます。
AR技術を活用することで、現実世界をベースに3Dモデルや映像を付加することができますので、ビジネスにおいても広く利用されています。
ARとVRの違いは「見え方」と「体験方法」の2点です。
VRはヘッドセットを装着し、仮想空間しか見えない状況で体験します。
一方、ARは現実世界をベースとして+αの付加価値をつける技術です。
そのためヘッドセットは不要で、スマートフォンなどの画面上で完結するものとなっています。
ARについては、以下記事でご紹介しています。
MRとの違い
MRとは、ミックスリアリティ(Mixed Reality)の略称で、日本語では、「複合現実」と直訳されます。
専用のMRデバイスが現実世界を認識し、その認識した世界に合わせてデジタル情報を表示させることができます。
ユーザーは直接表示されている情報を触って操作することが可能です。
また、同時に複数の人間で体験をすることもできますよ。
今後もゲームやエンタメだけでなく、あらゆるビジネスで活用できる技術といわれています。
MRとVRの違いは「見え方」です。
双方とも専用のヘッドセットを通して体験することは共通していますが、VRは全て仮想空間上の体験になる事に対し、MRは現実世界と仮想空間を融合させた体験になっているという点が異なります。
MRについては、以下記事でご紹介しています。
SRとの違い
SRとは、サブスティチューショナルリアリティ(Substitutional Reality)の略称で、日本語では「代替現実」と訳されます。
現実世界と過去の映像を部分的、もしくは全体的に差し替えを行い、本来実在しない人物や事象がまるで存在しているかのように錯覚させる視覚技術のことを指します。
SRを体験するためには、専用のヘッドセットを装着し、差し替えをしたい過去の映像や音声を用意すれば体験が可能です。
近年では「マトリックス」や「インセプション」などの映画がこのSR技術をテーマにした内容となっていますので、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
SRとVRの違いは「体験における前提の理解」です。
MRと同様、双方ともヘッドセットが必要だという点においては同じです。
ただ、VRは「これは仮想空間である」ということを理解したうえで体験しますが、SRは「錯覚」ですので、体験する側もこれが現実なのかどうかがわからなくなってしまいます。
ここでは、SRは「体験者を錯覚させる技術だ」ということを覚えておきましょう。その分、もちろん高度な映像や音声技術が必要となります。
SRについては、以下記事でご紹介しています。
|VRの仕組み
VRの技術の特徴である立体的な3D映像や没入感ある体験は、どのような仕組みで作られているのでしょうか。
以下2点から解説します。
・両眼視差を利用する
・トラッキング技術を利用する
両眼視差を利用する
VR映像の仕組みとして、「両眼視差を利用する」があります。
両眼視差を利用すると、左右の目で異なる風景を脳が処理し、人はあらゆるものを立体的に認識します。
通常、人がモノを見るとき、左右の目で異なる映像を見ています。
その異なった映像を脳が補完することで、奥行きや立体感を感じることができます。
つまり、VRは両眼視差を利用して、意図的に立体感のある映像を実現しているということです。
右目用の映像と左目用の映像の2種類をVRヘッドセットを通して同時にみることで立体感のある映像を実現することができます。
トラッキング技術を利用する
VR映像の仕組みとして、もうひとつ「トラッキング技術を利用する」があります。
トラッキング技術とは、人の顔や体の動きを感知する機能のことを指します。
VRにおいては、以下の4つの技術が活用されています。
・ヘッドトラッキング
・ポジショントラッキング
・モーショントラッキング
・アイトラッキング
ヘッドトラッキング
頭を動かすとその動きを感知する機能です。360度の動きに対応しており、頭の動きに合わせて映像を動かすことができます。
ポジショントラッキング
ポジショントラッキングとは、ヘッドマウントディスプレイの位置を認識する機能です。身体の動きと視界の動きを連動させるために使用されています。
モーショントラッキング
モーショントラッキングとは、VRの中で身体の動きをシミュレーションする技術です。
現実世界で動いた身体の動きを、VR内のアバターに反映させることができます。
アイトラッキング
アイトラッキングとは、身体の動きではなく目の動きを認識する機能です。
目の動きを感知し、映像を動かすことができます。この機能のおかげで、現実世界での認識と比べても違和感のない映像を見ることが可能となります。
|VRを体験するために必要な機器
実際にVRを体験するためには、以下の機器をそろえましょう。
VRゴーグル
VR体験をする際に、VRゴーグルは欠かせません。
VRゴーグルは主に、スタンドアロン型VRゴーグル、PC用VRゴーグル、スマートフォン用VRゴーグルに分類されます。
最新のVRゴーグルについての記事もぜひ参考にしてみてくださいね。
スタンドアロン型VRゴーグル
コンピューター機能が内蔵されているため、他の機器に接続せずVRゴーグルだけで映像をみることが可能です。
PC用VRゴーグル
コンピューターに有線で接続して活用します。接続しているコンピューターがハイスペックであればあるほど高解像度のVR体験をすることができます。
スマートフォン用VRゴーグル
スマホをゴーグルにはめ込んで映像をみることができます。比較的安価で販売されているものが多く、手軽にVR体験を行うことができます。
スマートフォン、ゲーム機
VRゲームなどで、空間移動が必要な場合に移動をコントロールする際、スマホやゲーム機のコントローラーを使用するケースがあります。
また、専用のコントローラーを使用したり、トラッキング機能を活用して限られた場所内を実際に移動するケースもあります。
一方で映像をみるだけの場合は、コントロールは必要ありません。
|VRキットを利用すれば開発可能
現在幅広い分野で活用が広がるVR技術は今後、大きなビジネスチャンスになる可能性を秘めています。
そのため、多くの企業が開発へ参入したいと考えることも自然なことでしょう。
しかし、高い専門知識を必要とするため開発、参入を諦めている企業は少なくないかもしれません。
現在、VRは開発キットが提供されており、企業だけではなく一般の方であっても開発できる環境が整っているのです。
VR環境を実際に確かめられるVRゴーグル、そしてある程度のスペックを持ったPCがあれば、一定レベルの開発は可能。
それぞれの機材購入に費用が発生しますが、一度揃えてしまえば誰でも簡単にVR開発環境を手に入れられるのです。
Webブラウザでの提供も
VR開発にはVRゴーグルに加えて、ある程度のスペックを持ったPCが必要であることは前述した通りです。
しかし、近年ではVR環境をWebブラウザを通じて確認できる「WebVR」に注目が集まっています。
これはVRゴーグルを必要とせず、WebURLを通じてPCやスマホの画面を通じてVR空間へアクセスできるというもの。
VRゴーグルという専門機器を必要としないことから、気軽な開発環境が実現できるだけではなく、VRユーザー数の増加にも繋がることが考えられます。
WebVRでの開発はWeb制作と類似した環境で進められるため、HTMLやCSSといった基本的な知識で開発が可能。
今後VRの普及に貢献する技術として期待されているのです。
|VRの活用シーン
VRは、どのような場面で活用できるのでしょうか。
ここからは、VRの活用シーンについて、以下の業界別でご紹介します。
・ゲーム業界
・エンタメ業界
・スポーツ業界
・観光業界
・医療業界
・不動産業界
・広告業界
・教育業界
・介護福祉業界
・物流業界
メタバース相談室内で詳しくご紹介している記事もご一緒に紹介しますので、興味のある業界については併せてお読みいただき、検討のきっかけになれば幸いです。
ゲーム業界
VRの筆頭と言えばゲームで、対応したVRゴーグルがあれば自宅で気軽に楽しむことができます。
これまでは画面を視聴するだけでしたが、VRゲームでは実際に自分の腕を振って剣を振るなどといったリアルな体験をすることが可能になりました。
これによって、より没入感の高いゲーム体験をすることができるようになります。
ジャンルも幅広く、シューティングからアドベンチャー、パズルゲームなど多岐にわたります。
また、過去に発売されたゲームのVR版が発売されているものもありますので、年齢を問わず誰でも自分に合ったゲームを見つけることができるでしょう。
エンタメ業界
近年でもアミューズメント施設などでVRが活用されているように、エンタメ業界においてVRは抜群に相性が良いと言えます。
テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、アトラクションの1つにもVRが導入されているほど、エンタメ業界ではVRが注目されています。
また、水族館や動物園、博物館などをVRで楽しめるものもあります。
それだけではなく、アーティストのライブやイベントの開催、動画、映画、読書など、幅広いジャンルをVRで体験することが可能です。
没入感が高いため、ハイクオリティなエンタメ体験を提供することができますよ。
スポーツ業界
スポーツ業界でもVRの活用が注目を集めています。
スポーツ観戦においては、現地に行かなくても360°見渡せるVRスポーツ観戦が可能になります。これにより、実際に足を運ぶことが難しい場合でも、臨場感あるスポーツ観戦が自宅で実現可能となります。
また、特定の選手や監督の視点をVRで見ることができるサービスなどもあり、これはVRならではのサービスであると言えるでしょう。
事例として、J SPORTS VRやバーチャルハマスタ、V-RAGEなどが挙げられます。
さらに、選手向けに開発されたiCubeというシステムもVRを利用しています。選手が試合に向けてよりよい準備ができるようにサポートしてくれるトレーニングシステムです。
また、VRを装着したままフィットネスを体験するサービスも出てきています。
空間内にトレーナーが現れて、コーチングをしながら身体を動かすことができます。
ジムに通う手間が省け、自分のペースでトレーニングを行うことが可能になります。
観光業界
VRと観光業界も相性は良いと言えます。
自宅から世界中の好きな場所へと行くことができる、まるで夢のような機会をVRは体験させてくれるでしょう。VRゴーグルを装着して、観光地をVR上に作り、3D映像をみることで実際に現地にいったような体験をすることができます。
また、日本政府観光局は、YoutubeチャンネルでVRを活用した外国人向け動画コンテンツ「360°JAPON」を配信しています。
背景には、新型コロナウイルスの影響で旅行に大幅な制限が掛かったことが1つの理由として挙げられるでしょう。
観光業界はコロナ渦で大きなダメージを受けましたが、VR活用という新たなビジネスモデルを生み出すことができたきっかけにもなったのではないでしょうか。
それだけではなく、けがや病気、高齢などを理由として遠くに行くことができない人、旅行の下見をしたい人など、幅広いニーズに応えられる可能性をVRは秘めています。
医療業界
医療業界でのVR活用についてご紹介します。
医療業界では、患者および医師を志す人向けにVR技術を上手く活用しています。
患者に対しては、リハビリや精神疾患の治療などに役立てています。
何度でも疑似体験ができるという強みを生かして、失敗しても安心な環境下で実施することができます。
これにより、患者自身も自信を失うことなく、楽しくトレーニングに励むことができます。
また、医師を志す人にとってVRは、貴重な体験の機会を与えてくれる存在となります。
手術の体験、普段見ることのできない臓器を目視して学ぶ体験など、失敗が許されない医療の現場においてVRでないと得られない体験を提供してくれます。
これによって、医療全体の質や効率が向上することは間違いありません。
医療需要はなくなることはありませんから、今後も継続してVR導入にむけた臨床試験が多々行われていくでしょう。
不動産業界
VRは、不動産業界でも活用することができます。
近年では、入居希望者がVRゴーグルを装着して行う「VR住宅展示場」や「VR内見」などに活用されています。
これらは、実際に物件を訪れなくても部屋の様子や窓からの眺望などを自分の好きな角度で確認することができます。また、写真だけでは伝わりにくい物件の雰囲気を体験することができるほか、移動時間の短縮にもつながります。
こういった取り組みは、移動時間をかけずゆっくりと内見したい、遠隔地に転居を検討しているという一定数あるニーズに応えることができるでしょう。
日本では大和ハウスや東急不動産などで既に導入されていますので、興味がある方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
広告業界
広告業界では、技術を活用して配信される「VR広告」や、VR空間内に広告を設置するといった方法でVR技術を活用することが可能です。
VR広告では、VRの特徴である「没入感」を強みとした広告が多数出されています。
広告を見た人がそのまま商品やサービスを体験することで、よりその商品やサービスを知ることができるような仕掛けが織り込まれています。
また、興味がある人が能動的に視聴するVR広告は流入しやすいという傾向がありますので、成果にも期待することができるでしょう。
過去には、NTT×電通、コカ・コーラ、グリコなどといった大手企業がVR広告を利用しています。
教育業界
VRは教育の場でも広く利用されています。
VRを用いた授業は既に学校教育の中でも取り入れられており、体験型学習による習熟度・学びの質向上へ大いに寄与しています。
教科書だけでは学べない事柄、準備ができないものや行くことができない場所を体験することができるのは、生徒にとっても嬉しいことですよね。
また、近年では遠隔地からオンラインで授業を受講する生徒も一定数いますので、そういった生徒たちも自宅からリアルな体験により理解度を深めることができるのです。
ただし、VRゴーグルの利用については年齢制限もありますので、理解したうえで活用をしていくのがよいでしょう。
介護・福祉業界
介護および福祉の場でもVR技術は大いに役立っています。
特に今後高齢化が進むということ、さらに介護や福祉を提供する人員が不足していることなども踏まえると、さらなる活用が期待できる業界でもあるといえるでしょう。
VRが用いられている理由として最も大きいのは「疑似体験ができる」「リハビリができる」という2点です。
失敗を恐れず何度もトレーニングができる場を設けることで自信がつき、前向きに取り組むことができるようになります。
また、介護をする側や健常者に介護福祉を体験してもらう場としても有効です。
以上の理由から、様々な企業や自治体でVRは活用されていますよ。
物流業界
物流業界では多くの課題を抱えており、その解決策としてVR技術が注目されています。
課題の一つとして挙げられるのが「2024年問題」です。
2024年4月1日より試行される働き方改革関連法により、ドライバーの時間外労働時間に上限が設けられます。
これにより長時間労働が改善される一方で、収入の減少や深刻な人手不足に陥ることが危惧されているのです。
これに対して、各企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を進めています。
その中の1つとしてVRが用いられており、倉庫内状況の確認やシミュレーション、研修など幅広い用途で役立っています。
|まとめ
本記事では、VRについての概要やビジネス活用例について解説しました。
VR技術の活用の幅は日々広がってきており、業界によってそのビジネスモデルも多岐にわたります。
用途としても、娯楽目的・PR目的だけではなく、課題を解決してくれるきっかけになるものも多く存在しているのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ぜひ皆さまの企業でもVRを導入して、新しいビジネスモデルを構築してみませんか。
メタバース相談室ではVRについても様々な記事を執筆しておりますので、本記事含めて検討のきっかけになれば幸いです。