エンタメだけではなく、ビジネス分野でのメタバースの活用が広がっています。
世界中の多くの企業がメタバースに注目し、続々と参入しているため、今まさにメタバースの利用を検討中という担当者も多いかもしれません。
しかしいざメタバースについて調べてみると、VRメタバース、ARメタバース、さらにXRなどの専門用語が混在し、良く分からない…。
そこで今回は、ARメタバースとVRメタバースの違いや、XR、そしてビジネス分野でのメタバースの活用事例などを紹介します。
メタバースを支える技術や利用方法などを、ビジネス的な観点から分かりやすく解説。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
|大手企業も注目するメタバースとは?
まず始めに、そもそもメタバースとは何なのか?という点をおさらいしておきましょう。
メタバースは、「メタ(超越した)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語で、多人数が参加できるインターネット上の仮想空間を意味します。
利用者は自身の分身となる『アバター」を使ってメタバースにアクセスし、そこで他ユーザーとの交流や、様々なイベントを楽しむことができます。
ビジネス分野でのメタバースの活用が広がったのは、コロナ禍になってから。
他の人とのリアルな接触やコミュニケーションを取ることが難しくなったため、メタバースが新たなビジネスの「場」として注目を集めたのです。
誰でも、どこからでもリアルタイムで集まれるというメタバースの特性を利用し、会議やセミナーを開催するのはもちろん、自社のショップを開設したり、オフィスをメタバースに移転させるなど、一気にその活用が広がったのです。
メタバースについては、下記記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
|メタバースを支えるXR技術(AR・VR・MR)
新たなビジネスの機会ともなっているメタバース。
そのメタバースを支えているのが、以下の3つの技術です。
- AR
- VR
- MR
では、それぞれのテクノロジーについて、詳しく見ていきましょう。
AR
ARは「Augmented Realit」の略で、「拡張現実」と訳されます。
スマホなどを介して、3DCGなどを現実世界に「拡張」表示させることができます。
あまり耳馴染みのない技術かもしれませんが、実はすでに一般にも広く利用されています。
例えば、自分のスマホでGoogleマップを立ち上げ、目的地を検索。「経路」の後に「ライブビュー」をタップして周囲の風景をスマホのカメラで読み込ませると、矢印で目的地の方向や距離、曲がり角の情報などが現実世界に重ね合わせて表示されます。
このように、現実の世界や風景に、CGの映像や情報を重ね合わせて表示させるのがAR。
ARによって、いわば現実の世界に仮想空間を作り上げることができるのです。
またスマホで簡単に利用できるため、ビジネスで活用するにもハードルが低いの特徴です。
ARについては、下記記事で詳しく説明していますので、是非ご覧ください。
VR
VRは「Virtual Reality」、つまり「仮想現実」を表す言葉。
現実にはありえない世界や体験を、CGによって仮想空間として再現させる技術のことです。
専用のVRヘッドセットを装着すると、まるで自分自身が仮想空間に飛び込んだかのような、高い没入感を得られるのが最大の特徴。ゲームやテーマパークのアトラクションなどで良く利用されています。
メタバースと聞くと、このVRをイメージする人が多いかもしれません。
決して間違いではないのですが、「メタバース=VR」ではありません。
VRは基本的に一人だけで利用するものであるのに対し、メタバースは多人数が参加できる空間だからです。
VRあくまでも仮想現実を体験するための「ツール」であり、メタバースそのものではありません。VR技術を利用した仮想空間がメタバースの一種である、と言い換えることもできるでしょう。
VRについては、下記記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
MR
MRは「Mixed Reality」の略で、「複合現実」と呼ばれます。
ARとVRの技術を組み合わせたものがMRであると考えると、分かりやすいでしょう。
専用のヘッドセットを装着すると、現実世界にデジタル情報を重ねて表示させることができ、さらにそれを複数人でリアルタイムで共有することも可能。
主に製造業や医療の現場で、複数のメンバーが同時に同じ情報を共有しながら作業を行うといったシーンで活用されています。
ARにVR、そしてMRなどの技術を総称して「XR(Extended Reality)」と呼びます。
現実世界と仮想世界を融合させる技術の総称がXRであり、インターネット上の仮想空間であるメタバースにはAR、VR、MRといったXR技術を用いてアクセスすることになるのです。
MRについては、下記記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
|ARメタバースとVRメタバースの違いは?
メタバースにアクセスするには、ARやVRの技術を利用します。
アクセス方法が異なるということは、その世界も異なるということ。
つまりAR技術によってアクセスできるのがARメタバース、そしてVRによるのがVRメタバースと言うわけです。
アクセスする方法と技術が異なるため、ARメタバースとVRメタバースには明確な違いが存在します。
- ARメタバース:AR技術を活用した、現実世界をベースにしたメタバース
- VRメタバース:VR技術によって再現された仮想世界をベースにしたメタバース
ARメタバースは現実世界がベースであるため、いわば「一つだけのメタバース」であるのに対し、VRメタバースはインターネット上に多数存在する仮想空間というのも大きな違い。
ARメタバースは現実の世界にデジタル情報を投影した仮想空間であるため、利用するためのハードルが低いことがメリットと言えるでしょう。
一方のVRメタバースは現在のメタバースの主流となっており、ビジネスシーンで活用されているのも、主にこのVRメタバースとなります。
|メタバースを利用するメリットとは?
ARメタバースとVRメタバースの違いについては理解できましたが、ではそのメタバースをビジネス目的で利用するのにはどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、以下の4つのメリットについて取り上げます。
- 世界各国のユーザーと交流できる
- 非日常的な体験ができる
- ビジネスの幅が広がる
- コストの削減
メタバースが新たなビジネスシーンとして注目されている理由について、探っていきましょう。
世界各国のユーザーと交流できる
メタバースはインターネット上の仮想空間であるため、そこにアクセスする人は人種や国籍、年齢などの属性にとらわれず、あらゆる人と交流を楽しむことができます。
またメタバース上では自身の分身となるアバターを通してコミュニケーションを取るため、現実世界での自分の姿をさらす必要もありません。
そのため、他人と面と向かって話すことが苦手な人や、外見のコンプレックスやハンディキャップを抱えている人でも、他ユーザーと全く同等な立場でコミュニケーションを取ることができるのです。
世界中の人とコミュニケーションが取れる、さらにはあらゆる属性の人にアプローチできるという点は、ビジネス面でも非常に大きなメリットとなるでしょう。
非日常的な体験ができる
現実世界ではありえないような、非日常的な体験ができることもメタバースの大きなメリットです。
映画「レディ・プレイヤー1」や「龍とそばかすの姫」で描かれた世界が、メタバースそのもの。非現実的な出来事も、メタバースならば簡単に体感できるのです。
もちろん実際のメタバースではまだまだ映画のようにはいきませんが、それでも例えば動物の姿になったり、空を飛び回るなど、現実世界では不可能な体験を味わうことができます。
このメタバースの特徴を活かして、現実世界では難しいサービスを提供することに注力する企業も多くあります。
メタバースでどんなサービスを提供できるかは、まさしく企業の発想次第。
ぜひ、メタバースでしかありえないサービスを生み出してください。
ビジネスの幅が広がる
メタバースでは現実世界と同じように自社のショップを出店させ、そこで実際にアイテムを販売することも可能です。
しかし、仮想空間で何を販売するのか?
アバターが身につけるファッションアイテムやNFT、メタバース内の土地などが実際に高額で取り引きされています。
- NFT:複製が容易なデジタルデータにオリジナル性を持たせ、唯一無二のデジタル資産を生み出すことができるデジタル技術。それによって、例えばデジタルアートなどに希少性を持たせることができる。
デジタルアイテムだけではなく、メタバース内でも利用できるコンテンツの販売など、メタバースはビジネスの幅を広げる絶好の機会。
企業だけではなく個人でも自分の作品を販売できるメタバースには、新たなビジネスチャンスが眠っているのです。
コストの削減
メタバースでビジネスを展開するメリットの別の側面が、コストの削減です。
リアルの店舗と異なり、メタバース内のバーチャルショップには当然ですが家賃や光熱費も必要ありません。人件費も大幅にカットすることができます。
それでいて世界中のユーザーに自社のサービスやコンテンツを販売できるわけですから、費用対効果も非常に高い。
もちろんメタバースを導入し、出店させるための初期費用、またはシステムを構築・運営するためのコストはそれなりにかかります。
しかし、それでも長い目で見るとリアルと比較して大幅なコストカットが可能なのです。
|AR・VRを用いたメタバースの活用例6選
メタバースのメリットを踏まえた上で、ここからはビジネスシーンにおけるメタバースの実際の活用事例を見ていきましょう。
以下の6つの事例を取り上げます。
- ポケモンGO
- Horizon Workrooms
- Snapchat
- RoomCo AR
- TOKYO GAME SHOW VR 2021
- 拡張現実(AR)蛍光システム GLOW800
ぜひ、自社のビジネスモデルに当てはめられる事例がないか、イメージを膨らませながらご覧ください。
ポケモンGO
出典:https://www.pokemongo.jp/
「ポケモンGO」は、ARで現実世界に『出現した』ポケモンたちをゲットする位置情報ゲームアプリです。
このポケモンGOの大ヒットを受けて、「ドラゴンクエストウォーク」や「妖怪ウォッチ ワールド」などの後追いゲームアプリも続々登場しました。
ポケモンGO自体は、基本プレイ料金は無料。ではこれがどうしてビジネスモデルとして成り立つのかというと、位置情報を活かした広告として大きな収益をもたらすからです。
ポケモンGOでモンスターをゲットするには、特定の場所(ポケストップ)に立ち寄る必要があります。その場所を企業に提供することで、莫大な利益をもたらすのです。
実際、マクドナルドは全国の店舗をポケストップにすることで、年間で数十億円以上の増益になったとか。ポケモンGO全体での経済効果は10兆円にも上るという試算もあるほどです。
ARというテクノロジーを活用することで、企業として大きな収益をもたらすことをポケモンGOは実証してみせたのです。
Horizon Workrooms
出典:https://www.meta.com/jp/work/workrooms/
「Horizon Workrooms(ホリゾンワークルーム)」はMeta(旧Facebook)が提供する、ビジネス向けのメタバースプラットフォーム。仮想空間内の会議室にメンバーが集って、会議や共同作業を行えます。
これは企業がメタバースに求める、最も基本的な活用方法の一つ。
同じ空間内に集まり合うことができるため、Zoomでのリモート会議よりも濃密なディスカッションを行うことができます。
またHorizon Workroomsにはデスクやキーボードを持ち込んだり、ホワイトボードに自由に書き込みができるなどのワーキングに特化した機能を備えているため、すぐにでも企業活動に取り入れることが可能です。
特に支社や支店を多く持つ企業では、場所に関係なくリアルタイムで会議やタスクをこなせるHorizon Workroomsは、非常に有益なツールとなるに違いありません。
Snapchat
出典https://www.snapchat.com/ja-JP
「スナチャ」とも呼ばれる若者に人気のスマホアプリが、「Snapchat(スナップチャット)」です。
SnapchatはAR技術を利用した「ARフィルター」によって、自分の顔や姿を変えることができます。
例えば「魚」というフィルターを使うと、耳のあたりにエラが生え、周りに空気の泡が現れる。ほかにも男性が女性の姿になったり、その逆も可能。さらには現実の風景にCGのキャラクターを登場させたり、富士山に虹をかけたりなどの加工も簡単に行なえます。現実にはありえない世界をその場に創り出すという意味では、これも一つのARメタバースなのです。
ARメタバースの一番のメリットは、特別な機材を必要とせずにスマホだけでサービスを提供できること。
Snapchatのようにスマホを利用したメタバースならば、アイディア次第ですぐにでもビジネスへの活用が見込めそうです。
RoomCo AR
出典:https://apps.livingstyle.jp/roomco/launchApp.html
「RoomCo AR(ルムコAR)」は、ニトリが開発したインテリアの試着アプリ。
現実世界にCGを拡張表示するというARの特徴を活かし、ニトリで販売している家具を『試し置き』することができます。
大型の家具などが実際に部屋に収まるのか、ほかのインテリアとの調和はどうなのか?といった点を購入前に確認することは難しい。
しかしRoomCo ARなら自分の部屋にスマホをかざすだけで、家具を配置した実際の様子を確認することができます。
メタバースでの新たなビジネスモデルを探るだけではなく、自社の商品やサービスをメタバースによって補強する。これもビジネスにおけるメタバースの有効な活用方法なのです。
「TOKYO GAME SHOW VR 2021」
出典:https://tgsvr.com/
毎年30万人以上が訪れる、国内最大のゲームショウーである「TOKYO GAME SHOW」。
コロナ禍によって実際の来場ができない中、メタバースで開催されたのが「TOKYO GAME SHOW VR 2021」です。
NTTが提供するメタバース、「DOOR」を利用して、公式グッズやゲームキャラのアバターコスチュムの販売、Vtuberによる接客なども行われました。
一からメタバースを構築するのは大変ですが、既存のメタバース・プラットフォームを利用することによってメタバースでのイベントを比較的容易に実施することが可能。
アフターコロナにおいても、現実のイベントとメタバースを組み合わせた「ハイブリッド型」のイベントが注目されています。
TOKYO GAME SHOW VR 2021を参考にして、メタバースでのイベントを計画なさってはいかがでしょうか?
拡張現実(AR)蛍光システム GLOW800
出典:https://onl.la/cazT8LG
「拡張現実(AR)蛍光システム GLOW800」は、医療向けの顕微鏡などを開発するLeica Microsystems社が開発したARによる手術サポートシステムです。
通常、手術中の血液測定には特別な色素を用いた蛍光造影法という手法が用いられます。しかし、遠赤外線カメラでの撮影のため、映し出されるのはモノクロ。周囲の臓器などの状況が把握しづらいという問題がありました。
しかしこのGLOW800なら、ARによって患者の血流の流れを極めて鮮明に表示させることが可能。手術部位の状況がクリアになることによって、事故を防ぐことに役立っています。
こうした事例から明らかなように、AR・VRを用いたメタバースは企業活動に大きなメリットをもたらすだけではなく、私たちの暮らしや社会を大きくアップデートさせる可能性を秘めているのです。
|メタバースの展望と課題
最後に、今後のメタバースの展望と課題について考えてみましょう。
現在、ARやVR技術は主にエンタメでの活用がメインとなっています。しかしそれでメタバースがより身近になることによって、ビジネス分野での活用もさらに進んでいくでしょう。
時間や場所の制約を受けないメタバースは、アフターコロナにおける企業活動にも大きなメリットをもたらします。新たなサービスやビジネスチャンスを生み出せるだけでなく、誰とでも気軽にコミュニケーションが取れるメタバースは、企業と消費者の距離をも縮められるのです。
一方、メタバースの今後の課題として、使い勝手の向上が挙げられます。
確かに専用のヘッドセットを装着すれば、よりリアルで没入感の高いメタバース体験を楽しめます。しかしよりメタバースを一般的なものにするには、スマホやタブレット、PCでも密度の高いメタバースを提供することが不可欠。
ガジェットの性能向上や5Gの普及といった技術的な進歩によって、メタバースが当たり前という時代が、もうすぐそこまでやって来ようとしているのです。
|まとめ
世界中のユーザーと気軽にコミュニケーションが取れ、非日常の体験を提供できるメタバースは、ビジネスの幅を大きく広げる絶好の機会となるでしょう。
また場所に関係なく濃密な会議が行える、コスト削減に役立つといったメタバースのメリットは、今すぐにでも自社の活動に取り入れられるはずです。
ARメタバースとVRメタバースは全く異なるので、その違いを理解した上で、自社の企業活動にどのように活用できるかを検討するのが重要となります。
イベントやプロモーション、マーケティングや広告など、あらゆるビジネスシーンに活用できるメタバース。
ぜひ今回紹介した活用事例などを参考にして、企業活動にメタバースを利用なさってください。