本記事では、姿勢推定技術について知りたい、使用したいと考えている企業の役職者向けに
・姿勢推定技術とは
・姿勢推定技術の用途・目的
・姿勢推定サービスのチェックポイント
・主なAI姿勢推定サービス
などなどの「姿勢推定技術」に対する疑問を解決させていただきます。
本記事を読めば、自社のニーズに姿勢推定技術が合うのかどうかがわかり、実際にサービスを検討できた状態になりますので、是非最後までご覧ください!
目次
|姿勢推定技術とは
姿勢推定技術とは、動画、静止画から人物の関節点を推定し、関節点を結んだ人物の姿勢を検出する技術です。
AIを使った姿勢推定サービスでは、ディープラーニングによって衣服の上からでも特徴点を検出することができるので、これまで視覚など人間の感覚に頼っていた領域で、定量的なデータに基づいたコーチングやレポーティングが可能になります。
AIによるディープラーニングを使用するので、モーションキャプチャ用のマーカーや慣性センサーといった特殊な機材や専門知識はほとんど不要。
Webカメラやカメラ付きタブレットだけで骨格情報を検出できます。
姿勢推定には大きくわけて二つのアプローチがあり、トップダウン方式とボトムアップ方式と呼ばれる手法です。
トップダウン方式ではまず物体検知を用いて人物を検知し、切り出した個々の人物に対して関節の検知を行います。
一方ボトムアップ方式は、物体検知を用いずに画像の中の関節点を一気に推定した後に、それぞれの人物を構成する関節点をまとめていく手法です。
|姿勢推定技術の用途・目的
ではここからは姿勢推定技術の用途・目的についてお話しします。
業種別に分類すると、産業系(製造・建設など)やスポーツ、研究・教育用途、エンターテインメント、医療・リハビリが多く、用途別にみると姿勢評価やモーションキャプチャ、異常検知、動作評価が多めのようです。
製造業向けの用途
作業員の身体への負荷の可視化したい
昨今作業員の高齢化が進んでいる上、作業が属人化して負荷が見えないという問題があります。そのため身体的負担を軽減できる働きやすい環境づくりが大切です。
姿勢推定技術を利用すると、作業員の姿勢負荷を可視化し、作業方法や作業空間を見直すことで腰痛などの健康被害の防止や安全管理、作業員の定着に役立ちます。
作業員の行動を可視化したい
作業員や作業工程ごとの作業内容が不透明で、現場管理が属人化しているため問題が表面化しづらい傾向があります。
姿勢推定技術で解析すると作業員がマニュアルと異なる動作(スマートフォン利用など)をとった場合にアラートを出すことも可能です。
ベテラン作業員の技術を継承したい
作業員の高齢化や海外人材の雇用の増化を背景に人材不足が問題として上がっています。
そこでベテラン作業員の作業を姿勢推定技術で解析してデータ化し、新人作業員の動きと比較することで動作改善し業務を最適化することで解決したいというニーズもあります。
スポーツ分野向けの用途
自動採点で標準化&効率UPしたい
ダンスなどの競技は採点を行うために専門性が必要で、人が評価するため、どうしても評価が異なる傾向があります。
そこで姿勢推定技術で骨格情報を数値化すると、評価軸が一定になるため採点の専門性が不要になり、自動で採点されるため手間がかかりません。
ケガ予防やコンディション管理したい
ケガを予兆して回避し、コンディションの維持に役立てることへの活用も可能です。
実際に、一般社団法人 Sports Science Laboratory様では少年野球選手の投球動作と投球障害の関連性を導くために姿勢推定技術を活用した例があります。
フォーム解析でパフォーマンスを向上させたい
染み付いた癖を自覚することは困難であり、プロスポーツ選手の場合、数センチのフォームの誤差がパフォーマンスに悪影響するケースもあります。
そこで骨格情報を数値化できれば、普段の自分との違いやプロとの違いも一目瞭然に。
姿勢情報から、自分のフォームと理想のフォームを比較することで修正箇所を発見し、コンディションの管理や、悪い癖などの修正を効率的に行えます。
医療分野向けの用途
姿勢情報の数値化でリハビリを支援したい
リハビリ分野では手間をかけずに数値化し、評価をAIが自動化することで日々の測定業務の軽減が期待できます。同一の指標で測定できるから評価のバラつきも防げそうですよね。
リハビリやヘルスケアの改善具合を可視化したい
姿勢の悪さは肩こりや腰痛をはじめ、体へさまざまな悪影響があります。
しかし正しい姿勢を自分で判断することは難しいです。
そこで姿勢情報を数値化し、正しい姿勢とのズレを可視化すると自分の姿勢のどこが悪いのか確認しやすくなります。
視覚化するとお客様のモチベーション向上が期待できますし、カメラの前に立つだけで自動測定できるため、計測に手間がかかりません。
危険行動の検出でヘルパーの負担を軽減したい
近年介護の現場では、6割以上が人手不足を実感するなど人手不足が深刻化している中、転倒事故や認知症患者様の無断外出、など予期できない事故への早急な対応力も求められています。
姿勢推定技術を応用し、患者様の行動を見守ることで、これらの事故の早期発見が期待できます。
エンターテインメント業向け用途
Vtuberやモーション制作などに役立てたい
通常モーションキャプチャするには体に機器等を装着する必要があります。
しかし本格的なモーションキャプチャは高額で手が出づらいかもしれません。
しかし姿勢推定技術はカメラだけで全身のモーショントラッキングが可能なので、体に機器等を装着する必要がなく手軽で簡単であり、費用も抑えられます。
PCだけでなくスマホにも対応しているものもあるので、スマホアプリ開発でも利用できます。
ステージ、ライブ、舞台の新しい演出手法に!体の動きに合わせて効果を演出したい。
姿勢推定技術で検出した演者の体の動きとエフェクトを連動させることで、ステージやライブ、舞台等での新しい演出効果に活用も可能です。
演者の体に機器を身に付ける必要がないため、衣装やパフォーマンスの邪魔にならないのはメリットですよね。
セキュリティ向けの用途
「侵入検知SDK」「人物同定SDK」「違和感検知SDK」で、それぞれ工事現場などへの不法侵入検知、商業施設での動線分析、大型施設での異常行動の検知に役立ちます。
AIが常時自動監視を行い、異常を検知したらスマホ等に通知されるので、監視コストの大幅削減が可能となります。
取得した姿勢情報から、飲食、通話、喫煙などの禁止行動の検出も見込めます。
さらにリアルタイムで自動検出し、警備員や店員へ即座に通報も可能です。警備業務のサポートとして活用が期待できます。
セキュリティ以外に、店舗や街なかでのカウンティング、店舗レイアウトの改善のための導線分析といった用途にも利用できます。
|姿勢推定サービスのチェックポイント
ここからは用途目的以外にチェックすべき比較ポイントを2つ解説します。
精度
使用目的によって、どの程度の姿勢検出精度を求めるかが変わってきます。
検出の精度はAIの学習量や、AIを作動させるマシンのスペック、カメラの性能が関係します。
精度を上げようとすると、AIの追加学習や機材にかかるコストも上がるため、導入前に「何のためにどのくらいの精度が必要なのか」を定義して、自社ニーズにフィットしたサービスを選びましょう。
処理スピード
特徴点の検出から姿勢の分析までにかかる、画像の処理スピードは重要なチェックポイント。
ヘルスケア分野で利用するなら静止画の処理に数分、スポーツ分野なら動画の処理に数分、製造現場の管理やセキュリティ対策には動画をリアルタイムで分析できるくらいの処理スピードが必要になります。
|主なAI姿勢推定サービス
ここからはサービス開発に向いているAI姿勢推定サービスをご紹介します。
VisionPose(株式会社ネクストシステム)
人の骨格や姿勢情報をマーカーレスで解析できる姿勢推定AIエンジン。
カメラ映像や静止画、動画からの解析が可能。
複数人の骨格をまとめて検出することもできること、エッジデバイス(末端機器)上でデータ処理ができることから、産業、スポーツ、研究教育機関、エンターテインメントといったリアルタイム性が求められる分野での導入が多い。
搭載されているAIは、一般的な姿勢を認識しやすいよう学習済み。
ダンスやスポーツといった一般的でない動きについては、オプションサービスの追加学習によって解析精度向上が見込める。アプリの受託開発も可能。
AnyMotion(株式会社NTTPCコミュニケーションズ)
NTTコミュニケーションズグループが提供する動作解析APIプラットフォームサービス。スマートフォンやタブレットなどで撮影した静止画や動画を、クラウド上で解析処理する。
リラクゼーションサロンや治療院といったヘルスケア業界向けのアプリや、ジムやヨガスタジオなどでフォーム比較に活用するアプリ開発に使われるほか、コンテンツ制作の現場といったエンタメ業界でも導入されている。
動画処理やAIによる推定、データの抽出といった作業を「AnyMotion」側にアウトソースできるので、既存アプリに組み込むのも簡単。開発期間の短縮やコスト削減も期待できる。
人物分析AI(株式会社ユーザーローカル)
スマホやタブレットをはじめとした、一般的なカメラだけで複数人同時にリアルタイムで姿勢推定が可能なシステム。
姿勢だけでなく、表情推定、性別推定、年齢推定など、あらゆる視点から人物を認識・分析することができる。
その分、使用用途も幅広く、スポーツやヘルスケアといった一般的な分野だけでなく、広告効果測定、店舗や施設の来訪者分析といった、より精度の高い分析が求められる分野でも活用されている。
また、画像だけでなく、テキストや音声から感情を読み取ることもできるので、VOC(Voice of Customer)の評価分析にも役立つ。
Sportip Pro(株式会社Sportip)
筑波大学初のベンチャー企業・株式会社Sportipが開発した、スポーツ指導に特化したAI姿勢推定サービス。姿勢を分析する際に、可動域を測定したり、筋肉の状態や重心位置を推定したりといった、スポーツ指導に役立つ機能が充実している。
その他に、撮影した動画のスロー再生、2画面再生によるフォームのBefore/Afterチェック、トレーニングメニューの自動作成といった機能も。
SNSで顧客に分析結果を共有することもできるので、トレーニングの根拠の可視化に伴う信頼度アップにつながったというレポートも見られる。
独自AIの開発、利用方法のカウンセリングといったサポートも充実。
シセイカルテ(株式会社 Sapeet)
姿勢の歪みを可視化して、おすすめの施術メニューを提案するヘルスケアに特化したサービス。東大発のスタートアップ企業が開発・提供している。
3分ほどで数枚の写真から体の状態を詳細分析し、体の傾きや頭の位置のズレ、猫背の度合いといった体の歪みを数値化。
これらのデータを蓄積・比較することで施術効果が見える化できる。さらに、重心位置を分析することで、歪みがある部分をマークした3Dアバターの作成も可能。顧客への興味喚起が期待できる。
これらの分析結果を踏まえて、改善プログラムや治療提案へとスムーズにつなげられるので、リピーター創出にも役立つ。
Posen(Posen株式会社)
頭痛や肩こり、不眠といった現代人の悩みの原因を姿勢から分析・診断するサービス。タブレットで全身を撮影すれば、1分で姿勢測定が完了。
電子カルテシステムで従業員や利用者の情報を管理できるので、過去の診断結果との比較、健康状態の把握が可能となる。
管理画面から診断結果をLINEやメールで送信できるので、アフターフォローや継続的な行動改善の促進にもつなげられる。治療院では、治療の経過を視覚的に確認できることから、
顧客満足度アップにも貢献している。
Asilla SDK(株式会社アジラ)
独自の姿勢推定モデル「AsillaPose」を搭載したSDK。
既存システムとのAPI連携によって、すぐに高度なAIを利用することができる。
「侵入検知SDK」「人物同定SDK」「違和感検知SDK」といったラインナップがあり、それぞれ工事現場などへの不法侵入検知、商業施設での動線分析、大型施設での異常行動の検知に役立つ。
AIが常時自動監視を行い、異常を検知したらスマホ等に通知されるので、監視コストの大幅削減が可能となる。
セキュリティ以外に、店舗や街なかでのカウンティング、店舗レイアウトの改善のための導線分析といった用途も。
|まとめ
本記事では、姿勢推定技術について紹介していきました。
本記事が、自社のニーズに姿勢推定技術が合うのかどうかがわかり、実際にサービスを検討の助けとなればうれしいです。
AI姿勢推定システムの導入によって、さまざまな効果が期待できます。新しい技術をいち早く取り入れることで、生産性の高い現場づくりを実現しましょう。