近年、VRの業界が世の中から注目を浴びており、その中でもVRトラッキングという技術を目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。
MetaQuest2やPSVRなどを装着すると、VRトラッキングされたゲームを体感できますし、また最近では教育や訓練での使用が市場を牽引しております。
エンターテインメントで使用される一方で、危険な場所や実際にリアルでは体験できないものをVRトラッキングで疑似的に体験する需要も増えてきております。
このようなVRトラッキングについて今回は深ぼっていきたいと思います!
目次
|VRトラッキングとは
VRトラッキングとは、頭や手や身体などの動きを感知し追尾することを指します。
VR体験を一度経験したことがある方にはわかるかと思いますが、自分の頭の動きに連動して、VRの映像もその通りに動きます。
なぜ頭の動きに連動し映像が動くのかといいますと、それはVR機器に搭載されたセンサーによって正確に動きをトラッキングしているためです。
これはVRゴーグルの中でも「ヘッドマウントディスプレイ」と呼ばれるものを使用することで体験できます。
顔を下げたら映像も下がり、周辺を見渡したら映像もそれに合わせて見渡すことができます。
最近では冒頭でも説明したように、エンターテインメント的な使用だけではなく、教育や訓練といった場面での需要が増えております。
それは、実際に体験するには初心者では危険であったり大人数を1度に訓練するスペースがない場合にVRを利用すれば、安全に訓練ができたり多くの人数が同質の訓練を受けることが可能だからです。
具体的にVRトラッキングとはどのような技術なのか見ていきたいと思います。
|VRにおけるDoF
VR機器のセンサーで感知する動きや方向によって、3DoFと6DoFに分類されます。DoFとはDegree of Freedomの略称であり、日本語訳で自由度のことを指します。
自由度、すなわち感知できる方向が増えるほど、VR内での表現に幅ができ没入感や操作性が変わるため、非常に重要な機能と指標となっております。
3DoF
自由度が3パターンあることを指し「頭の回転や傾き」までを感知してくれます。
頭の上下、左右、傾きに対応しており、スマートフォン装着型のVRゴーグルやスタンドアローン型VRヘッドセット、「Oculus go」や「Gear VR」などが該当します。
6DoF
自由度が6パターンあることを指し「頭の動きのみならず身体の動き」に対応します。
具体的には「歩く」「しゃがむ」「体を近づける」といった動きを処理することが可能となるのです。
3DoFの要素に加え身体の上下、左右前後の動きに対応しており、「Oculus Rift」「PSVR」などが該当します。
3DoFのVRよりも価格は高くなりますが、より没入感が高い体験をさせてくれるVR機器です。
|VRトラッキングの種類
VRトラッキングには、ヘッドトラッキング、ポジショントラッキング、モーショントラッキング、アイトラッキングという4種類の機能があります。
それぞれ異なった機能を有しているので、1つずつ詳しく説明いていきたいと思います。
ヘッドトラッキング
ヘッドトラッキング機能とは、頭の角度や動きを感知する機能です。
VRゴーグルを装着したユーザーの頭の動きに合わせて、360°映し出す映像を変えます。
頭の動きとVRゴーグルを360°連動することで、仮想空間の中に実在しているかのような没入感を体験できます。
ポジショントラッキング
VRのコンテンツによっては、決められた空間内を移動し、その空間内の自分の位置や体制を仮想空間に反映させることができます。
これはポジショントラッキング機能と呼ばれており、ヘッドトラッキング機能と併用することでよりリアルなVRの世界を楽しむことができます。
また、ポジショントラッキング機能を利用するためには、対応コンテンツであること以外にVRゴーグルの位置をトレースする外部のセンサーが必要になります。
モーショントラッキング
モーショントラッキングは、VRの中で身体の動きをシミュレーションする技術です。
自分の身体を動かすことで、VRの中に映し出された身体も同じように動かすことができ、視覚だけでなく身体ごとVRの世界に入り込むことができます。
アイトラッキング
アイトラッキングは、身体の動きではなく目の動きを認識する機能です。
頭や身体を動かさなくても、目の動きだけで映像が動くことで、現実世界での認識と比べて違和感のない映像を見ることができます。
また、アイトラッキング機能によって、VRで酔うことを防ぐことにも繋がっています。
|トラッキングツール&アプリ
VRトラッキングにはどのような機能があるのかご理解いただけましたでしょうか。
続いては実際にVRトラッキングを使用するにあたって、どのようなツールがあるのかまた、どのようなアプリがあるのかお話ししていきたいと思います。
Uni-motion
「Uni-motion」は胸(1個)、腰(1個)、両足(各2個ずつ)の計6個のセンサーで構成されるフルトラッキングデバイスです。
こちらは外部センサー不要で単独動作し、ジャンプや逆立ちまでトラッキング可能となっております。
Oculus Quest 2やHTC VIVEといった主要VRヘッドセットで動作し、SteamVRを介するため「VRChat」「Virtual Cast」「Neos VR」「Virtual Motion Capture」と対応アプリも豊富です。
スペック的には高性能さと運用面の難易度の低さが両立しており、それでありながら価格は49,500円(税込)に収まっております。
なお、2021年6月現在はプレオーダーが終了しています。次の注文受付は11月3日となっております。
運営会社情報
Uni-motionは日本の技術開発チームUni-devices(ファウンダー:未来ゆうき)によって開発された製品です。Uni-devicesは新しい技術で新しい製品を開発・販売するモノづくり集団です。
2021年に発表されたUni-motionプレリリース版の販売後、本格的な事業活動をおこなうために、新たに「株式会社ユニ・デバイセズ」が設立されました。
会社名:株式会社ユニ・デバイセズ
創業者:未来ゆうき
代表取締役:上地 忍
ホームページ:https://www.uni-motion.com/
HaritoraX
「HaritoraX」は、下半身のトラッキングに特化したフルトラッキングデバイスです。
外部センサー不要で単独で動作し、安価かつ省スペースのメタバースユーザー向けのワイヤレス・モーション・トラッキング装置となっております。
Oculus Quest 2やHTC VIVEなどのVRヘッドセットとの併用も可能なうえ、SteamVRに対応しているため、「VRChat」「cluster」「Virtual Motion Capture」といった幅広いアプリでも動作することが可能です。
汎用性の高さと運用難易度の低さをあわせもち、さらに価格は27,900円(税込)とお手頃です。現在、8~9月出荷分の予約が受け付け中です。
運営会社情報
社名:株式会社Shifttall
代表取締役CEO:岩佐琢磨
ホームページ:https://ja.shiftall.net/products/haritorax
VISION:未だ見ぬハードとソフトの両輪で、生活を1歩ミライへ
IoTというバズワードで語られるインターネット接続型、サービス接続型のハードウェアの世界で求められるのは、ハードとソフトが高度に混ざりあった新しいモノづくり。驚くほどのスピードで進化するネットとソフトの技術革新に追従しながらの開発・製造は、いちエンジニア、いちデザイナーの力だけでは成し遂げることができません。世界最強のゴールキーパーと契約ができても、他のポジションが機能しなければサッカーの試合には勝てないように。Shiftallは、数十名の高いチーム力を発揮できるIoT開発・量産化専門チームを擁し、1歩ミライの生活実現へと挑みます。
VIVEトラッカー
コンシューマ向けのフルトラッキングデバイスの代名詞である「VIVEトラッカー」を紹介します。
VIVEトラッカーは、VRヘッドセットであるHTC VIVEシリーズのオプションデバイスであり、人間のみならず物体にも取り付けて「VR空間へ物を持ち込む」といったことも可能です。
人間のフルトラッキング用途で使用する場合は、最低でも3台(腰に1台、両足に1台ずつ)、最大では7台(腰に1台、両足、両膝、両肘に1台ずつ)が必要となります。
1台の価格は、旧機種である「VIVEトラッカー 2018」は12,731円(税込)、新機種である「VIVEトラッカー 3.0」は17,500円(税込)となっており、個人で3台そろえるのは価格的なハードルが若干高めです。
さらに運用には外部センサーとVR HMD(※Lighthouse規格のアウトサイドイン方式)、それを動作させる高性能なPCが必須です(トラッカーに対応したドングルを挿すためのUSBポートも必要)。
また、「VRChat」のようにアプリケーション単独でフルトラッキングを運用できるケースもあれば、アバタートラッキング用のアプリケーションを経由してゲームと合成する必要があるケースもあり、それぞれに柔軟に対応するための知識も必要となります。
その分、価格に見合った非常に安定かつ高精度なトラッキング精度を誇ります。一度検討してみるのも良いかもしれません。
MocapForAll
「MocapForAll」は、普通のウェブカメラを複数使って、AIで簡易なモーションキャプチャをするWindows専用のモーションキャプチャアプリです。
最大の特徴はWebカメラを最低2台(最大100台)用いてトラッキングする点で、これによって相当に高い精度で全身の動きをトラッキング可能となっています。
キャプチャ結果は、OSC (VMTまたはVMC) プロトコルまたは共有メモリ経由で外部に出力、あるいは、BVH形式またはFBX形式のファイルとして保存できます。 Unreal Engine と Unity でデータを受信するためのプラグインとサンプルプロジェクトも公開しています。
なお、無料版では、キャプチャ結果を外部にエクスポートする機能に時間制限が設けられています。
(OSCでのデータ送信は10秒ごとに送信の停止・再開が繰り返されます。ファイルへの出力は300フレームまでに制限されます)
「Virtual Motion Tracker」を介せばSteamVR上でもフルトラッキングを反映可能とのことです(HMDは別途必要)。
Webカメラを2台以上用意する点や、ミドルクラスのマシンが必要な点、そのほか導入面などで多くの準備が必要になりますが、そのハードルに見合った精度を発揮します。価格は9,999円(税込)ですが、無料体験版で動作検証を行うことができます。
会社概要
社名:株式会社空き家総合研究所
代表取締約:田口 貴士
ホームページ:https://vrlab.akiya-souken.co.jp/product
ThreeDPoseTracker
「ThreeDPoseTracker」はWindows10用のモーションキャプチャアプリです。USBカメラか動画ファイルをもとにアバターへ動きを反映できます。
通常のカメラからの動画や画像データを入力すると、自社開発の画像認識AI技術(ディープラーニング)により、体の24の検出ポイントを3次元の座標で出力することができる、リアルタイムモーションキャプチャシステムです。
《 カメラだけで誰でも簡単にフルボディトラッキングを始められます。 》Windows用のフリーウェアとして配布中です。
トラッキング精度は高めで、無料で自由にVRMアバターを読み込み可能です。
ただし動作保証となっているマシンスペックはやや高めとなっております。
また非営利利用のみである点には留意が必要です。
会社概要
社名:株式会社デジタル・スタンダード
代表者:代表取締役社長 片山源治郎
ホームページ:https://digital-standard.com/tdpt/
TDPT
「TDPT」はスマートフォンで使用できるモーションキャプチャアプリです。
スマートフォンのカメラ映像か動画ファイルをもとに、アバターへ全身の動きを反映させることができます。基本使用は無料です。
スマホで動作するモーションキャプチャアプリとしてはトラッキングの精度が高めです。
有料の追加機能として、VRoid Hubとの連携によるアバター変更、モーションデータの送信・書き出し(VMD、BVH形式)なども行えます。
iPhone専用アプリとなっており、iPhone11以上が動作対象となっています。
会社概要
社名:株式会社デジタル・スタンダード
代表者:代表取締役社長 片山源治郎
ホームページ:https://digital-standard.com/tdpt_lp/
ミチコンPlus
「ミチコンPlus」は、スマートフォンで使用できるモーションキャプチャアプリのひとつです。
こちらも「TDPT」同様に、スマートフォンのカメラ映像か動画ファイルでアバターへ動きを反映できます。
グリーンバック機能があり、背景編集が思いのままにできます。
簡単合成で使い方はさまざまになっており、配信ソフトで切り抜いてLIVEをすることも可能となっています。
また、AR機能でアバターを現実とARの合成も可能です。
背面カメラ・前面カメラを同時利用してまるでキャラクターが現実空間にいるような映像が撮影できます。
基本利用は無料ですが、有料でVRoid Hubとの連携によるアバター変更、モーションデータの書き出し(CSV形式)が行えます。
iPhone専用アプリとなっており、iPhone XS以上からが動作対象です。
会社概要
会社名:株式会社ネクストシステム
取締役:藤田 義生:代表取締役 最高経営責任者/CEO
木村 晋宏:取締役 東京オフィスチーフ/ゼネラルマネージャー
|まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はVRトラッキングについてDoFの話や、実際にどのようなツールやアプリがあるのか、詳しくお話ししてまいりました。
私が本記事を書いていての感想としましては、最初VRトラッキングと聞いてヘッドマウントディスプレイの用意の大変さや技術的知識の必要性などを感じ、自分にはまだ扱えなさそうなものという印象がありました。
しかし、ツールやアプリを調べていると比較的安価に行えるものとかもあり、想像するものとリアルでギャップがあると感じました。
今後VRトラッキングの技術が発展していき、日常生活で普通に目にする技術になる日も近いのかもしれません。