近年の3DCG技術は大幅な進化を遂げ、写真のようにリアルで実在の人間と区別のつかないようなCGキャラクターが次々に生まれています。
こういった人間と区別のつかないほど精密なCGキャラクターを「バーチャルヒューマン」と呼びます。
バーチャルヒューマンは人材不足が叫ばれる昨今の日本で非常に注目の技術であり、幅広い分野で活用可能です。
そこで本記事では、「バーチャルヒューマンとは何か知りたい!」、「バーチャルヒューマンをビジネスへ活用したい!」と考えている方に向けて、バーチャルヒューマンのメリットや実例をご紹介します。
専門的な用語はできるだけ避けてわかりやすく解説しているので、身構えずにぜひ最後までお付き合いください。
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目次
|バーチャルヒューマンとは
バーチャルヒューマンには、広い意味ではボーカロイドの「初音ミク」や、アニメ系のVTuberなども含まれることがあります。
しかし、いま注目されているのは人間と区別ができないぐらい精巧なCGキャラクターです。
外見だけでなく、人間のようにふるまい人間と会話もできます。
TwitterやInstagramなどSNSで発信し、大勢のフォロワーを持っているバーチャルヒューマンは「バーチャルインフルエンサー」と呼ばれます。
バーチャルヒューマンが知られるようになったのは、2019年の紅白歌合戦に出場した「AI美空ひばり」でしょう。
亡くなった美空ひばりさんをそっくりに再現し、未発表の新曲を歌わせるという意欲的なプロジェクトでした。
バーチャルヒューマンには、こうした実在の人物を再現するものと、全く架空の人物をゼロから創造するものの2種類があります。
特に後者が、ビジネスの世界で注目されています。
VTuberやAIアバターとの違い
バーチャルヒューマンと非常によく似たものに「VTuber」や「AIアバター」といったものがあります。
広義の意味ではVTuberやAIアバターはバーチャルヒューマンに含まれますが、それぞれ若干ニュアンスが違います。
まず、VTuber(Virtual YouTuberの略)とは、主にYouTubeや他の動画プラットフォームで活動する仮想のキャラクターです。
リアルタイムまたは録画されたビデオにおいて、人間の動きをトラッキングしてキャラクターを動かす技術を使用します。
Kizuna AI(キズナアイ)やホロライブのメンバーなどが日本で有名なVTuberの代表例といえるでしょう。
AIアバターとは、人工知能を基にした仮想の代表者またはキャラクターで、ユーザーとの対話やサービス提供を目的としています。
顧客サービス、教育、あるいはヘルスケアなど、特定の業務を支援するために設計されているのが特徴です。
例えば、ReplikaやMicrosoftのXiaoice(小冰)などがAIアバターとして知られています。
つまり、バーチャルヒューマン、VTuber、AIアバターの主な違いは、その目的と機能性にあります。
バーチャルヒューマンは広い意味での仮想的存在であり、エンターテインメントからプロフェッショナルサービスまで幅広い活動が可能です。
VTuberは主にエンターテインメントに特化しており、視聴者との相互作用を重視しています。
AIアバターは、特定のタスクやサービスの提供に焦点を当てたAI技術を使用しており、より機能的な役割を担っています。
バーチャルヒューマンを作るのにかかるコスト
バーチャルヒューマンの制作費用は、求めるクオリティや機能性によって大きく異なります。
最もリアルな外見と動作を追求する高品質なバーチャルヒューマンの制作には、数百万円から数千万円の費用がかかる場合も多いです。
一方で、比較的シンプルなデザインや限定的な機能を持つバーチャルヒューマンであれば、既存のソフトウェアやオンラインサービスを利用することで、より低コストでの制作が可能です。
例えば、3DCGオブジェクトを活用したVRコンテンツの制作費用は、40万円から数百万円程度で、具体的なアプリケーションやシステム開発の費用も含めると、さらに広範囲にわたる費用が必要になることがあります。
制作を検討されている場合、費用の見積もりや具体的な要件をクリアにするために、複数の制作会社に相見積もりを取ることがおすすめです。
これにより、プロジェクトのニーズに最も合ったサービスを選択し、コストパフォーマンスを最適化することができます。
|バーチャルヒューマンをビジネスに導入するメリット3つ
「疲れもせず、文句も言わず」で働いてくれるのがバーチャルヒューマンの素晴らしいところです。
しかし、それだけではありません。
リアルの人間では決してまねのできない多くのメリットが、バーチャルヒューマンには存在します。
以下に、バーチャルヒューマンをビジネスに導入するメリット3つを詳しく解説します。
①インフルエンサーマーケティングと相性が良い
バーチャルヒューマンをビジネスに導入する最も大きなメリットは、インフルエンサーマーケティングの効果を最大限に発揮できることです。
インフルエンサーマーケティングとは、特定の分野やジャンルで影響力を持つ人物(インフルエンサー)を通じて製品やサービスを宣伝するマーケティング戦略です。
この手法は、インフルエンサーが持つファンとの信頼関係やコミュニティへの影響力を活用することで、広告よりも自然な形で商品やサービスを紹介し、消費者に受け入れられやすくします。
昨今のビジネスシーンにおいて、インフルエンサーマーケティングは非常に重要なマーケティング戦略の一つです。
消費者が広告に対して抵抗感を持つ中、信頼できる人物からの推薦は非常に有効であり、購入意欲を高めることができます。
さらに、バーチャルヒューマンはグローバルな観点からも様々な言語に対応し、多文化的なアピールをすることが可能です。
これにより、世界中のさまざまなターゲット市場に適応しやすくなります。
このように、バーチャルヒューマンはブランドの魅力を多角的に展開し、幅広い消費者にリーチする新しい可能性を企業に提供することができます。
②低予算で自社のブランドイメージを強化できる
2つ目のメリットは、低予算で自社のブランドイメージを強化できるという点です。
先述したように、バーチャルヒューマンの制作コストは一から作るとなるとかなり高額ですが、既存のプラットフォームを使用することで低価格で利用できます。
今まで、ブランドイメージの強化には、広告キャンペーンや有名タレントの起用などが効果的であるとされてきました。
これらの戦略は効果は高いものの、高額な広告費や使用料が必要です。
一方で、バーチャルヒューマンを活用することで、これらのコストを大幅に削減できます。
既存のテクノロジーやプラットフォームを利用することにより、新しいバーチャルキャラクターを比較的低コストで開発し、これをマーケティングや広告に活用することが可能です。
また、バーチャルヒューマンは24時間365日、疲れを知らずに活動できるため、一度の投資で長期間にわたって利用することができ、さらにコストパフォーマンスを高めることができます。
このように、バーチャルヒューマンを利用することにより、伝統的なマーケティング手法に比べて低予算で効果的にブランドイメージを強化し、持続的なブランドの価値向上に貢献することができるのです。
③新たな顧客層にリーチしやすくなる
3つ目のメリットは、今までターゲットにしづらかった顧客層にリーチしやすくなるという点です。
特に、SNSや新しい技術に興味関心の高い若年層にリーチしやすくなります。
人気VTuberが数多く所属する「にじさんじ」が実施したアンケートによると、VTuberグループの登録者の内訳は84%が29歳以下の若年層です。
(参考:NTT東日本)
このことから、若年層はVTuberなどのバーチャルヒューマンに忌避感がなく、むしろ好印象であることがわかります。
この性質を利用すれば、例えば今まで若年層をターゲティングするのが難しかったビジネス分野も容易に彼らに対してリーチすることが可能です。
|バーチャルヒューマンをビジネスに導入するデメリット3つ
このように、多くのメリットを享受できるバーチャルヒューマンですが、メリットばかりではありません。
以下に紹介するデメリットを理解せずにバーチャルヒューマンをビジネスに活用すると、思わぬ落とし穴にハマる可能性もあるので、必ず事前にチェックしておきましょう。
①生成AIの規制が世界的に強まっている
1つ目のデメリットは、生成AIに関する規制が世界的に強まりつつある点です。
バーチャルヒューマンはAI(人工知能)と非常に密接に関連している技術なので、生成AIの規制に関する動きが今後も続くようであれば、利用価値は下がっていくかもしれません。
例えば、EU(ヨーロッパ連合)は、AIを包括的に規制することを目指す新法案を採決し、賛成多数で承認しました。
この法案によると、AIの使用が人々の社会的信用度の評価や犯罪予測など、特定の目的での利用を禁止すると定めています。
さらに、AIによって生成された画像や音声は、それがAIによるものであることを明示することが義務付けられています。
このような規制が強化されると、バーチャルヒューマンの開発や運用においても厳しい基準が課される可能性が高いです。
ビジネスシーンでバーチャルヒューマンを導入する際には、これらの法的な側面を十分に理解し、対応する準備が必要です。
②専門のIT人材が必要になる
バーチャルヒューマンはただ導入すれば効果を最大限に発揮できるものではありません。効果的に運用または導入していくためには、専門のIT人材が不可欠です。
バーチャルヒューマンの運用や導入には、プログラミング、データサイエンス、AIの専門知識を持つ技術者が必要です。
専門のIT人材は、バーチャルヒューマンの設計、開発、維持管理を行い、またユーザーとのインタラクションを最適化するためのシステムのアップデートや改善を継続的に行います。
加えて、セキュリティの専門家も重要で、ユーザーデータの保護とプライバシーの確保を担います。
しかし、日本では2030年までに約79万人のIT人材が不足するとも言われています(※いわゆる「2030年問題」)。
このような状況下で適切なIT人材を確保するのは、特に中小企業にとっては非常に難しいものと言わざるを得ません。
③効果的に成果を上げるにはオウンドメディアの運営が必要になる
バーチャルヒューマンをビジネスに導入して効果的に成果を上げるには、一つのチャネルだけでの利用だけではなく、多角的なメディアで展開する必要があります。
そのためには、オウンドメディア(自社運営メディア)を複数運営することが不可欠です。
オウンドメディアとは、企業が直接管理して内容をコントロールできるウェブサイトやブログ、ソーシャルメディアのアカウントなどのことを指します。
オウンドメディアを通じて、コンテンツや情報を発信し、消費者と直接的にコミュニケーションを取り、ブランドのメッセージを一貫して伝え、消費者との関係を深めることが可能になります。
しかし、そのためには社内リソースをオウンドメディアの運営に割かなければなりません。
オウンドメディアの運営には、定期的なコンテンツの更新、デザインの最適化、ユーザーからのフィードバックへの対応など、継続的な労力と時間が必要です。
特に中小企業などリソースに限りがある企業では、これらの活動が大きな負担となるでしょう。
したがって、社内リソースに限りがあるような企業ではバーチャルヒューマンの運用は少し厳しいものになるかもしれません。
|バーチャルヒューマンを採用できる主な領域
とはいえ、デジタルマーケティングなどにあまり詳しくない方は
「そもそもバーチャルヒューマンってどのような場面で採用すればいいの?」
と疑問に思われるかもしれません。
そこで本セクションでは、バーチャルヒューマンを効果的に活用できるビジネス領域をいくつかご紹介します。
①コマーシャル
バーチャルヒューマンは特に広告やメディア展開などと非常に相性が良いです。
特に、TVコマーシャルやネットコマーシャルでの利用がおすすめです。
バーチャルヒューマンとコマーシャルとの相性が良い理由は以下の3つになります。
- バーチャルヒューマンは新しい技術であるため、消費者の好奇心や注目を引きやすく、ブランドの認知度を向上させる効果が期待できる
- 様々な衣装や背景、異なる言語でのプレゼンテーションも容易に調整できるので、広告を国際的に展開する際のコストを削減できる
- 一度作成したバーチャルヒューマンは再利用できるので、季節ごとのキャンペーンや異なるプロモーションに同じキャラクターを使うことで、一貫性のあるブランディングを行える。
以上の点から、バーチャルヒューマンはコマーシャルにおいて非常に効率的に活用することができ、多くのビジネスにとって価値のある投資となるでしょう。
②コールセンターやヘルプデスク
企業にとって、ヘルプデスクやコールセンターというのは顧客満足度を高めるために必ず必要な部署ですが、バーチャルヒューマンを採用すれば業務効率化が可能です。
バーチャルヒューマンとヘルプデスクやコールセンターとの相性が良い理由は以下の3つになります。
- バーチャルヒューマンは人間のように休息を必要としません。そのため、昼夜を問わずに24時間365日顧客からの問い合わせに対応できる。
- プログラム通りに動作するため、人間のオペレーターと異なり、サービスの質が波になることがない。
- 大規模なコールセンターでは、多くのオペレーターを雇用する必要があるため、バーチャルヒューマンによる自動化は大きなコスト削減につながる可能性がある。
したがって、バーチャルヒューマンはコールセンターやヘルプデスクでの活用に非常に適しており、企業の業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上に貢献することが期待されます。
③ソーシャルメディア
近年では、Twitter(現X)やInstagramといったソーシャルメディアを中心にマーケティング戦略を練るのが当然の時代です。
バーチャルヒューマンをソーシャルメディアのプロモーションに活用することで、さまざまな効果を期待できます。
バーチャルヒューマンとソーシャルメディアとの相性が良い理由は以下の3つになります。
- バーチャルヒューマンはユニークな外見や個性を持つため、ソーシャルメディアで目を引く可能性が高い。
- 24時間365日どんな時間でもすぐにリアクションできるため、フォロワーとの関係を強化し、エンゲージメントを高めることができる。
- プログラムされた行動や発言しかしないため、企業のブランド戦略に完全に沿った形でのプロモーションが可能。
これらの理由から、バーチャルヒューマンはソーシャルメディアマーケティングにおいて非常に効果的なツールとなり得ます。
④eコマース
eコマースとは、インターネットを通じて商品やサービスを販売・購入することです。
この形式の商取引は、物理的な店舗を持たずに幅広い地域にアクセス可能であることが最大の特徴です。
eコマースでは従来、顧客との直接的な対面コミュニケーションの欠如が問題となることがありました。
また、顧客が商品を実際に見たり触れたりすることができないため、購入決定に至るまでの不安を感じる場合があります。
しかし、バーチャルヒューマンをeコマースに活用することで、上記のデメリットを解消できる可能性があります。
バーチャルヒューマンとeコマースとの相性が良い理由は以下の3つになります。
- 顧客にマンツーマンでパーソナライズされたアドバイスを提供することができるので、オンラインショッピングの際の不安を減少させられる
- 時間の制限なく稼働できるため、顧客満足度の向上につながる
- 特定のキャラクターを通じてブランドメッセージを伝えることで、顧客との信頼関係を築きやすくなる。
上記の理由から、バーチャルヒューマンはeコマースの分野で非常に有効なツールとなり得ます。
特にオンラインでの顧客エンゲージメントとサポートを強化することが求められる現代において、その活用価値はさらに増していくことになるでしょう。
⑤オンライン教育プラットフォーム
慢性的な人材不足が続いている日本では、自社の人材を効果的に育成することが一つの成功の鍵ともいえます。
こういった背景もあり、昨今ではオンライン教育プラットフォームの利用もかなり目立ってきました。
オンライン教育プラットフォームとバーチャルヒューマンは一見何の関連もないように見えますが、実は非常に相性が良いです。
バーチャルヒューマンとオンライン教育プラットフォームとの相性が良い理由は以下の3つになります。
- 学習者の進捗やニーズに合わせてカスタマイズ可能な教育コンテンツを提供できるので、個々の学習スタイルに最適化された指導が可能。
- 魅力的なキャラクターを作成できれば、学習者との対話やフィードバックを通じて学習意欲を刺激でき、満足度の向上にもつながる。
- どの地域にいても同じ質の教育を受けることが可能になるので、一貫した教育が提供でき、教育の格差を減らすことができる。
これらの理由から、バーチャルヒューマンはオンライン教育プラットフォームにおいて非常に重要な役割を担うことが期待されます。
特に人材育成が必要な企業や、地理的な制約により教育の機会が限られている場所での利用が有効でしょう。
|代表的なバーチャルヒューマン7選
バーチャルヒューマンは、まだまだ発展途上のように思えますが、既に有名なバーチャルヒューマンはたくさん誕生しています。
特に韓国や中国やアメリカなどの地域での活躍が顕著ですが、日本でも有名なバーチャルヒューマンが多くなってきました。
そこでここでは、世界各国のバーチャルヒューマンの代表例を画像付きで紹介します。
地域によってデザインや使用用途が若干違ってくるので、最適なバーチャルヒューマンを作成するときの一助となれば幸いです。
①imma(イマ)|フォロワー約40万の日本発のバーチャルヒューマン
出典:imma 公式Twitter(現X)
Imma(イマ)は日本発のバーチャルヒューマンで、特徴的なピンクのボブカットヘアが印象的なデジタルモデルです。
2018年にInstagramでデビュー以降、瞬く間に注目を集め、現在ではInstagramのフォロワー数は約40万人に達しています。
immaはCG技術を用いて非常にリアリスティックに作られており、上記の画像からもわかるように、もはや実際の人間と見分けがつかないほどのクオリティです。
恐らく、初見で彼女がバーチャルヒューマンであることを見抜ける人はほとんどいないのではないでしょうか。
彼女の活動は多岐にわたり、国内外の有名ブランドとのコラボレーションや広告キャンペーンに登場しています。
例えば、SK-II、Fendi、Prada、Tommy Hilfigerなどの高級ファッションブランドとのコラボを行っており、バーチャルながらファッションモデルとしての地位は確固たるものです。
②Lil Miquela(リル・ミケーラ)|大手ブランドとのコラボ多数
Lil Miquela(リル・ミケーラ)は、2016年にデビューしたバーチャルヒューマンで、特に若者文化とファッション業界で注目されているバーチャルヒューマンの草分け的存在です。
非常にリアルなCGI(コンピュータ生成イメージ)で作られており、Instagramを中心に活動しています。
2024年4月時点でのフォロワー数は約262万人にものぼり、現在最も影響力のあるデジタルヒューマンといっても過言ではないでしょう。
Lil Miquelaは、PradaやCalvin Klein、Dieselなど多くの有名ブランドとコラボレーションを行っており、ファッションモデルとしての活動の他に音楽活動も行っています。
さらに、英国の雑誌「Dazed」に編集部員として雇用されたり、さまざまなデジタルプラットフォームで話題を呼んでいます。
③Saya(サヤ)|日本の女子高生風の透明感
出典:TELYUKA 公式サイト
「Saya(サヤ)」はCGで作成された女子校生のキャラクターです。
2015年に夫婦CGクリエーター、TELYUKAがTwitterに投稿した1枚の画像から始まりました。
CGとは思えないほど人間そっくりだったことで話題になり、広告代理店が参加してプロジェクトが発足。その後、AIで人間と音声でコミュニケーションする能力も実装されました。
少し考えながら話し、目を伏せたり、表情を変えて感情を表すことができます。
2017年に講談社主催のアイドルオーディション「ミスiD」に応募して、架空のキャラクターとしては初めてセミファイナリストを獲得するなど、大きな反響を読んでいます。
TV番組や雑誌、広告やイベントなどでも幅広く活躍しており、現在ではAIシステムも進化し続けています。
④AYAYI (アナイ)|中国ではかなり有名なバーチャルインフルエンサー
出典:KRAFTON 公式Instagram
「AYAYI(アナイ)」は、中国で活動する若い女性のバーチャルヒューマンで、2021年にデビューしました。
日本のバーチャルヒューマン製作会社Awwと中国のIP(知的財産)企業Ranmai Technologyの共同開発です。
中国のSNSサービスRED(小紅書)にアカウントを開設し、初回投稿で3000万回超の視聴を記録して話題になりました。
そのあまりのリアルさに、「彼女は本物の人間なのか」と熱い議論が沸き起こったといいます。
AYAYIはインフルエンサーとして活動しており、SNSのフォロワーも100万人超。
フランスの化粧品ブランド、Guerlain(ゲラン)とタイアップしたほか、2021年末からは中国のEC最大手Alibaba(アリババ)の社員として、同社のECモール「天猫(Tmall)」でナビゲーターなどを務めています。
中国は比較的早くからバーチャルキャラクターやチャットボットを商品プロモーションに活用してきた環境もあり、バーチャルヒューマンをすんなり受け入れる環境があったことも成功の一因でしょう。
⑤Reah Keem(キム・レア)|韓国発のシンガーソングライター兼DJ
出典:Korea.net
「Reah Keem(キム・レア)」は、韓国LGエレクトロニクスの「デジタルアンバサダー」です。
2021年はじめにオンライン開催の国際ハイテク見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」でお披露目されました。
「未来から来た子」という言葉から名前をとった女性キャラクターで、シンガーソングライター兼DJという設定です。
CESでは記者会見で3分間の英語プレゼンを行い、室内用滅菌ロボットや、ノートPCなどLGの製品を説明しました。
その後はInstagramへの投稿などを通じてフォロワーと交流したり、自作の楽曲を音楽ファイル共有サービスで公開したりとネットで活動しています。
メディアのバーチャルインタビューに対しては、IT開発者の父と母の3人家族で、地方の小さな村で暮らして自然の音を聴きながら音楽に興味を持ったと答えています。(実際は、開発者へのメールインタビューだったそうです)
⑥Liam Nikuro(リアム・ニクロ)|アメリカと日本のハーフイケメン
出典:Liam Nikuro 公式Twitter(現X)
「Liam Nikuro」は、日本で初めての男性バーチャルインフルエンサーとして2019年、InstagramとTwitterを活動の場としてデビューしました。
マーケティング支援とバーチャルヒューマン開発企業の1SECが手がけたキャラクターです。
米ロサンゼルス出身で、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたイケメンのハーフという設定です。
日本人離れしたルックスとリアルな肌の質感が特徴で、Instagramには日常のさりげない姿を写真投稿しています。
バーチャルモデルのほか、マルチプロデューサーとして音楽や映像の分野でも活動しています。
2020年には、プロバスケットボールプレイヤーの八村塁選手が在籍するNBAのワシントン・ウィザーズとパートナーシップを締結しました。
⑦YU(ユウ)|“普通の女の子”をあえて採用
「YU(ユウ)」はアパレル大手のGUのバーチャルヒューマンモデルで、2020年にデビューしました。
身長158cmの女子大生で、いわゆるモデル体型ではない普通の女の子なのが特徴です。
デザインにあたっては、17歳から33歳の日本人女性200人の体型データをベースにしました。
標準的な体型にすることで、「あらゆる人々に似合う商品や着こなしがあること」を伝えるのがミッションです。
YUについて、GUは「さまざまな体型に変化しながら、それに合った着こなしを提案する」としています。
名前は親しみを込めた「YOU」から取っており、「流行に敏感な妹キャラで、かつ自由人、オシャレと食べることが大好き」という性格設定です。
ユーザーに親近感を持ってもらうことをコンセプトとしたバーチャルヒューマンです。
|バーチャルヒューマンはどうやって作る?必要技術とおすすめツール一覧
バーチャルヒューマンの作り方は非常に複雑です。
しかし、前項で紹介したバーチャルヒューマンのSaya(サヤ)は一般のクリエイター夫婦が作成しました。
これらの例からもわかるように、ある程度の3DCGに関する知識やスキルがあれば、バーチャルヒューマンを一から作ることも十分に可能です。
ここでは、バーチャルヒューマンを作るために必要な技術とおすすめのツールをご紹介します。
3Dモデリング
バーチャルヒューマンを作る上で最も欠かせないのが3Dモデリングツールです。
3Dモデリングツールとは、コンピュータ上で物体やキャラクターを3次元的にデザイン・造形するソフトウェアのことです。
このツールを使うことで、リアルな人間や想像上のキャラクターを詳細に再現することが可能になります。
具体的には、形状を作成し、テクスチャ(表面の素材や色)を適用し、アニメーションを設定することで、キャラクターに動きを与えることができます。
おすすめの3Dモデリングツールは以下の通りです。
- Blender:オープンソースでありながら、モデリング、リギング、アニメーション、シミュレーション、レンダリング、コンポジット、モーショントラッキングなど、プロレベルの機能を備えている。
- Autodesk Maya:映画やテレビの特殊効果やゲーム制作で広く使用される業界標準のソフトウェア。高度なツールセットが特徴で、複雑な3Dアニメーションやモデリングが可能。
- 3ds Max:Autodesk社が提供する3Dモデリングツールで、建築ビジュアリゼーションやゲームデザインに特に優れている。使いやすいインターフェイスと強力なモデリング機能が特徴。
これらのツールを使うことで、バーチャルヒューマンの作成だけでなく、映画やビデオゲーム、バーチャルリアリティなど多岐にわたる分野での3Dコンテンツ制作にも活用できます。
各種生成AI
2022年末にChatGPT(GPT-3)がOpenAIからリリースされて以降、生成AIは飛躍的な進化を遂げています。
生成AIは主に以下の4種類です。
- テキスト生成AI:ユーザーの入力に基づいてテキストを生成するAI。例えば、ChatGPTは会話形式のテキストを生成するのに使用されます。
- 画像生成AI:指定されたテキストの説明から新しい画像を生成するAI。バーチャルヒューマンの外見をデザインする際に重要です。
- 音声生成AI:テキストから自然な音声を生成するAIで、バーチャルヒューマンが人間のように話すことを可能にする。
- 動画生成AI:動きのあるビジュアルコンテンツを生成するAIで、バーチャルヒューマンの動きや表情をリアルタイムで再現するのに使用される。
バーチャルヒューマンを作成するのにおすすめの生成AIは以下の通りです。
- RunwayML:ビデオコンテンツの生成に特化したAIで、非常にリアルな動画を簡単に生成できる。
- Synthesia:AIを使って任意のテキストからプロフェッショナルなビデオを生成し、多言語対応のバーチャルヒューマンを作成するのに適している。
これらのAI技術を組み合わせることで、視覚的および聴覚的にリアルなバーチャルヒューマンを作成することが可能となります。
自然言語処理(NLP)
バーチャルヒューマンに人間の言語を理解させるためには、自然言語処理(NLP)に関する知識も必要です。
自然言語処理(NLP)については、厳密に説明するとかなり専門的になってしまいますが、簡単にいえば人間が日常で使う言語をコンピュータが理解し、処理できるようにする技術です。
バーチャルヒューマンを作る際に自然言語処理が必要な理由は、これがコミュニケーションの基本となるからです。
バーチャルヒューマンは、人間と自然に対話できるよう設計されているため、人間の言葉を理解し、適切に応答する能力が求められます。
例えば、ユーザーからの質問に対して意味を解析し、適切な情報を提供したり、感情的なサポートを行ったりすることが可能になります。
これにより、カスタマーサポート、教育、エンターテインメントなど、さまざまな分野での応用が可能です。
このように、自然言語処理はバーチャルヒューマンにとって、人間とのスムーズな対話を実現するための鍵となる技術です。
機械学習とディープラーニング
バーチャルヒューマンに人間のような自律性を付与するために必要になってくるのが、機械学習とディープラーニング技術です。
機械学習とディープラーニングはよく同じものと勘違いしている人も多いですが、厳密にいえば全く異なる技術です。
機械学習とは、データからパターンを学習し、そのパターンを基にして新しいデータに対する予測や判断を行う技術です。例えば、過去のデータをもとにして、どのような入力にどのような反応をすべきかを学習します。
対してディープラーニングとは、機械学習の一分野であり、多層のニューラルネットワークを用いて非常に複雑なパターンを学習する技術です。これは人間の脳の働きにインスピレーションを得ており、非常に深い学習層を通じてデータの特徴を捉えます。
バーチャルヒューマンを作成するのに機械学習とディープラーニングが必要な理由は、これらの技術がバーチャルヒューマンに複雑なタスクを実行させたり、自然な対話を可能にするからです。
ディープラーニングは特に、自然言語処理や画像認識において、バーチャルヒューマンが人間と自然に対話したり、感情を理解し表現する能力を高めるのに役立ちます。
また、機械学習はこれらのシステムが経験から学び、改善することを可能にします。
これにより、バーチャルヒューマンはより人間に近い振る舞いを模倣し、リアルタイムでの対話や問題解決に対応できるようになるのです。
リアルタイムレンダリング
バーチャルヒューマンは通常のCGと比較すると、とてつもないデータ量が必要になってきます。
そのため、非常に高精度なリアルタイムレンダリングが求められます。
リアルタイムレンダリングとは、コンピュータが生成する画像やアニメーションを、ユーザーの操作や外部からの入力に即座に反応して、画面上に即時に表示する技術です。
これにより、ユーザーが何らかのアクションを取った際に、遅延なく画面が更新されるため、非常にスムーズな体験が可能になります。
バーチャルヒューマンにリアルタイムレンダリングが必要な理由は、リアルタイムでのインタラクションを実現するためです。
例えば、バーチャルヒューマンとの対話中にユーザーが質問をすると、バーチャルヒューマンは即座に反応して答えを返す必要があります。
このプロセスにおいて、顔の表情や口の動き、手の動きなどを自然に見せるためには、リアルタイムで高品質なレンダリングが不可欠なのです。
この技術があることで、バーチャルヒューマンはただのプログラムであることを忘れさせるほどの没入感を提供することができるのです。
|まとめ:バーチャルヒューマンはマーケティングに特に強い!
本記事では、バーチャルヒューマンとは何かをわかりやすく解説し、具体的な実例7選と作り方を紹介しました。
バーチャルヒューマンは、人種、年齢、スタイルも関係なく、発想力次第でさまざまなニーズに合致した架空のキャラクターを作成できます。また、スキャンダルも炎上もなく、肖像権や著作権の問題も比較的簡単にクリアできます。
考え次第で活躍の場は無限大といえますが、主にブランディング、マーケティング、ファッション、エンターテインメントなどの世界で多く活用されています。
今後、新たなツールやプラットフォームの発展次第では、企業だけでなく個人での活用も進んでいくかもしれません。
近い将来、誰でも簡単にバーチャルヒューマンを活用できる時代も近づきつつあるでしょう。
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