DX(デジタルトランスフォーメーション)は、今やあらゆる企業の経営課題となっています。

「上司からDXの動向を調べてほしいと頼まれた」
「自社のDX推進の必要性を、客観的なデータで示したい」
「AIやVR/AR(メタバース)関連の市場がどれだけ伸びるのか知りたい」
こうしたビジネス上の具体的なお悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、信頼できる調査データに基づき、国内外のDX市場規模の最新動向を解説します。

さらに、市場が急成長する背景、AIやIoTといった技術別の市場動向、そして「なぜ今DXに取り組むべきか」の理由までを網羅的にご紹介しますので、DXにご興味がある方はぜひご覧ください。

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【2025年】国内と世界のDX市場規模は?

【国内】DX投資動向と今後の予測

国内のDX市場は、一言で表すと中長期的に非常に力強い成長が見込まれています。

株式会社富士キメラ総研の調査(2023年10月発表)によれば、国内のDX市場(投資金額)は2030年度に9兆2,715億円に達すると予測されています。

これは、2022年度の3兆4,236億円と比較して、約2.7倍に拡大することを意味します。

2025年度のピンポイントな数値予測ではありませんが、この中長期的なトレンドにより、国内企業のDX推進を本格化・継続しているスタンスが見受けられます。

【世界】DX投資動向と今後の予測

では、海外のDX市場規模はどうでしょうか。

複数の調査機関がレポートを発表していますが、例えばMordor Intelligence社の予測では、世界のDX市場は2025年に1.6兆米ドル(1ドル140円換算で約224兆円)に達する見込みです。

グローバル市場の巨大さと比較すると、日本のDX市場はまだ発展途上であるとされていますが、裏を返せば大きなDX推進のポテンシャルを秘めているとも考えられます。

DX市場の驚異的な成長率が示すもの

また、市場規模の「額」以上に注目すべきは、その「成長率」です。

前述の富士キメラ総研のデータでは、2022年度から2030年度までの国内DX市場のCAGR(年平均成長率)は13.2%と予測されています。

また、世界市場においても、多くの調査機関が10%台半ばから後半の高いCAGRを予測しており、国内外共に

DX市場拡大の背景とは?

国内DX市場が2030年度に9.2兆円規模へと急成長する背景には、どういったものがあるのでしょうか。

主な理由は、「2025年の崖」という業界問題、ビジネス環境の激変、そしてデジタル競争の激化です。

深刻化する人手不足と「2025年の崖」

第一の理由は、日本企業特有の構造的な課題である「2025年の崖」です。

これは経済産業省が2018年のレポートで警鐘を鳴らした問題で、多くの企業が抱える老朽化したレガシーシステムが、2025年以降、本格的な技術的負債となることを指します。

システムの維持・運用に膨大なコストとIT人材が割かれ、新しいデジタル技術(AI、IoTなど)への投資が阻害される事態が懸念されています。

さらに深刻化する人手不足と相まって、業務効率化や省人化は急務の状況であり、このレガシーシステムからの脱却と業務プロセスの抜本的な見直し(=DX)が、多くの企業にとって経営上の最優先課題となっています。

ビジネス環境の激変(コロナ禍、顧客ニーズの多様化)

第二に、ビジネスを取り巻く環境が劇的に変化したことです。

特に新型コロナウイルス感染症の拡大は、リモートワークや非対面での顧客接点を半ば強制的に常態化させました。

これにより、従来のアナログな業務プロセスや対面中心の営業活動は機能不全に陥り、デジタル技術を活用した業務基盤の再構築が急務となりました。

また、消費者の行動も大きく変わり、オンラインでの情報収集や購買が主流となるなど、顧客ニーズはますます多様化・高度化しています。

こうした新しい顧客体験(UX)に応えられない企業は、市場での競争力を失うことになります。

競合他社とのデジタル競争の激化

第三に、競争環境そのものがデジタルを前提としたものに変わった点です。

業種を問わず、AIを活用したデータ分析による需要予測、IoTによるサプライチェーンの最適化、あるいはメタバースを活用した新しいマーケティングなど、デジタル技術で先行する企業が次々と新しい価値を生み出しています。

「GAFAM」に代表される巨大テック企業や、デジタルネイティブなスタートアップが既存の市場秩序を破壊する(デジタル・ディスラプション)例も珍しくありません。

競合他社がDXによって顧客体験や生産性を向上させる中、旧来のやり方を続ければ、相対的に競争力は低下していきます。

「他社がやっているから」という消極的な理由ではなく、「やらなければ生き残れない」という危機感が、DX投資を強力に後押ししているのです。

【技術別】DXを牽引する主要テクノロジーの市場規模

DXの急成長は、個別の課題を解決する具体的なデジタル技術群によって支えられています。
特にAI、IoT、クラウド、ロボティクス、XRの5つは、企業の競争力を左右する中核技術であり、その市場動向はDXの「中身」を理解する上で不可欠です。

AI(人工知能)の市場規模と予測

AIは、DXにおけるデータ活用と業務効率化の「頭脳」として、市場が爆発的に成長しています。

IT専門調査会社 IDC Japanの2025年5月の発表によると、国内のAIシステム市場(ハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む)は、2024年に1兆3,412億円に達する見込みです。

さらに市場は高い成長率で拡大を続け、2029年には4兆1,873億円に達すると予測されています。

特に「生成AI」の登場により、データ分析や需要予測だけでなく、コンテンツ制作や顧客対応など、あらゆる業務プロセスでAI活用が進んでいます。

IoT(モノのインターネット)の市場規模と予測

IoTは、現場のデータを収集し、DXの「神経網」として機能する技術です。

IDC Japanの2025年1月の発表によれば、国内IoT市場の支出額は2024年に7兆2,958億円に達する見込みです。

この市場は今後も堅調に成長し、2028年には11兆1,539億円規模(2023年~2028年のCAGR 8.9%)になると予測されています。

製造業のスマートファクトリー化、物流のトレーサビリティ強化、社会インフラの遠隔監視など、IoTは物理的な世界とデジタル空間を繋ぎ、AI分析の元となるデータを収集する上で欠かせない技術となっています。

クラウドサービスの市場規模と予測

AIやIoTが収集・処理する膨大なデータを支える「インフラ」がクラウドサービスです。

IDC Japanの調査(2025年8月発表)によると、国内のクラウド市場は、2024年に9兆7,084億円という巨大な市場に達する見込みです。

この市場は今後も高い成長率(2024年~2029年のCAGR 14.6%)で推移し、2029年には19兆1,965億円に達すると予測されています。

DX推進のために不可欠な柔軟性、拡張性、最新技術(AIなど)への迅速なアクセスを提供する基盤として、クラウドへの投資は拡大し続けています。

ロボティクスの市場規模と予測

ロボティクスは、DXによる業務自動化・省人化を「実行」する技術として重要性が高まっています。 IDC Japanの2025年6月の発表では、国内ロボティクス市場(ハードウェア、ソフトウェア、サービス)は2024年に1兆5,432億円、2029年には3兆1,012億円(CAGR 15.0%)に達すると予測されています。

製造現場の産業用ロボットだけでなく、物流倉庫でのピッキングや病院内での物品搬送など、サービスロボットの活用領域が急速に拡大しており、深刻化する人手不足の解決策としてDX投資を集めています。

H3: XR(VR/AR/MR)の市場規模と予測

XR(VR/AR/MRの総称)は、DXにおいて「新しい体験」と「効率的な作業」を提供する技術です。

株式会社矢野経済研究所の調査(2024年12月発表)によれば、国内のメタバース市場(XR技術が中核となる)は2023年度の1,863億円から、2028年度には1兆8,700億円へと約10倍の飛躍的な成長が予測されています。

ARグラスを通じた遠隔作業支援、VR空間でのリアルな研修、デジタルツインの活用など、物理的な制約を超えるためのDXソリューションとして、その活用に大きな期待が寄せられています。

【業種別】特にDX投資が進む業界の動向

DXは全産業共通の課題ですが、業界特有の課題解決に向けて、特に投資が先行している分野があります。 ここでは代表的な業界の動向を紹介します。

製造業・建設業のDX動向

日本の基幹産業である製造業と建設業は、DX投資が非常に活発な分野です。

両業界に共通する背景として、熟練技術者の高齢化による「技能継承」の問題や、深刻な「人手不足」があり、生産性の抜本的な向上が待ったなしの状況となっているためです。

製造業では、工場内の機器をIoTで接続しデータを収集・分析する「スマートファクトリー」化が急速に進んでいます。

株式会社富士キメラ総研の調査(2024年1月発表)によれば、国内のスマートファクトリー市場は2030年度に5兆9,788億円に達すると予測されています(2022年度比2.2倍)。

AIによる製品検査の自動化や設備の予知保全、デジタルツインを活用した生産ラインの最適化などが進んでいます。

建設業・建築業においても、「建設テック(ConTech)」と呼ばれる領域への投資が拡大しています。

株式会社矢野経済研究所の調査(2025年4月発表)によれば、建築分野の建設テック国内市場は2023年度の1,845億円から、2030年度には3,042億7000万円に拡大すると予測されています。

特に「2024年問題」(時間外労働の上限規制)への対応が急務となる中、BIM/CIM(※)による設計・施工プロセスの3D化・効率化や、ドローン、AR/VRを活用した遠隔臨場(現場の遠隔管理)など、デジタル技術による業務改革が不可欠となっています。

金融・保険業のDX動向

金融・保険業も、DXによってビジネスモデルそのものが大きく変革している業界です。

「FinTech(フィンテック)」と呼ばれる、IT技術と金融サービスを融合させた新しいサービス(例:スマートフォン決済、AIによる資産運用アドバイス)が台頭しています。

従来の金融機関は、巨大で複雑なレガシーシステム(勘定系システムなど)の維持・刷新という課題を抱えつつも、顧客体験(UX)の向上や業務効率化のためにDXを推進しています。

AIを活用した融資審査の高速化、保険金支払いの自動査定、オンラインでの口座開設や各種手続きの完結などが、その代表例です。

小売・物流業(EC・データ分析)のDX動向

小売・物流業は、EC(電子商取引)市場の拡大と「物流の2024年問題」という大きな変化に直面しています。

小売業においては、ECサイトと実店舗のデータを統合し、AIを用いて個々の顧客に最適化された商品をおすすめする(パーソナライズ)など、データ分析に基づく顧客体験の向上が競争力の源泉となっています。

物流業においては、IoTセンサーによる配送状況のリアルタイム追跡や、AIによる最適な配送ルートの自動算出、倉庫内作業の自動化(ロボティクス)など、深刻な人手不足を補うための省人化・効率化DXが急務となっています。

まとめ

本記事では、DXの市場規模に関する最新動向と、その背景にある技術トレンドについて解説しました。

国内のDX市場は、2030年度に9.2兆円規模への成長が予測されています。
市場の急成長は、「2025年の崖」や人手不足といった課題への対応が急務であることを示しています。

特にAI、IoT、クラウド、ロボティクス、XRといった技術が市場を牽引しています。

これらの技術は、製造業、建設業、金融業、小売・物流業など、あらゆる業界で具体的な課題解決のために導入が進んでいます。

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