世界中で利用者が急増しているロブロックスですが、日本ではまだまだ実態が掴めず、単なるゲームと捉えられがちです。
しかし、欧米を中心に、ロブロックスは次世代のIT人材を育てる教育プラットフォームとして高く評価されています。
本記事では、ロブロックスがなぜSTEAM教育の教材として注目されているのか、導入前に大人が必ず知っておくべきトラブル対策や安全設定についても詳しく紹介します。
この記事を読めば、ロブロックスの教育活用におけるメリットやトラブル対策が理解できるでしょう。

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ロブロックスが教育現場で注目されている理由
ロブロックスが教育業界で注目されている理由には、どういったものがあるのでしょうか。
没入型学習プラットフォームとしての活用
ロブロックスの仕組みを理解するには、「YouTubeのゲーム版」とイメージするのが近しいでしょう。
YouTubeが動画を視聴するだけでなく、誰もが動画を投稿できる場所であるのと同様に、ロブロックスは誰もが3Dコンテンツを公開できる場所として機能しています。
実際に、ロブロックス社が公表している2024年第3四半期の決算資料によると、1日あたりのアクティブユーザー数(DAU)は8890万人に達しています。
これほど多くのユーザーが集まる理由は、そこにあるコンテンツが、世界中のクリエイターによって日々生み出され続けているからです。
この環境は、単なる娯楽の場を超え、プログラミング学習や異文化コミュニケーションなどを自然に行える「没入型の学習プラットフォーム」として機能し始めています。
子供たちは遊びの中で、デジタル空間での振る舞いや、システムの裏側にある論理構造に無意識のうちに触れているのです。
クリエイターエコノミー
ロブロックスが教育的に優れているもう一つの点は、ユーザーを「消費者」から「生産者(クリエイター)」へと変える仕組みが整っていることです。
ロブロックスには「Roblox Studio」という無料の開発ツールが提供されており、これを使えば誰でも本格的なゲーム制作を行うことが可能です。
さらに、作成したゲーム内で課金アイテムが売れた場合、
その収益の一部がクリエイターに還元される「DevEx(Developer Exchange)」という仕組みがあります。
実際に、海外では学生でありながらロブロックスの開発で収益を得ている事例もあります。
このように、自分のアイデアを形にし、それが市場に評価されるという一連の経済活動を体験できる点は、従来のアクティブラーニングを超える実践的な学びの場と言えます。
遊びながら学べるSTEAM教育としての3つの効果
現在、文部科学省も推進している「STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)」の観点から見ても、ロブロックスは非常に優れた教材といえます。
子供たちは楽しみながら、結果としてプログラミングスキルやコミュニケーションスキルなど様々なスキルを習得していくことが可能です。
ここでは、具体的にどのような能力が育まれるのか、3つのポイントに絞って解説します。
プログラミングスキルの上達
プログラミング教育において最大の課題とされているのが、「ビジュアルプログラミング」から「テキストコーディング」への移行です。
小学校などで導入されている「Scratch(スクラッチ)」は、ブロックを積み木のように組み合わせることでプログラムを組みますが、実社会での開発は文字(コード)を記述して行います。
ロブロックスでのゲーム制作には、「Lua(ルア)」という軽量なスクリプト言語が採用されています。
Luaは、AdobeのLightroomや、他の有名ゲーム開発でも使用されている実用的なプログラミング言語です。
子供たちは、より複雑なゲームを作りたいというモチベーションを原動力に、自発的にコードの書き方を学び始めます。
「ブロックを並べる」段階から、「英語のコードを記述してコンピュータを制御する」段階へ、遊びながらスムーズにステップアップできる環境は、ロブロックスならではの強みです。
3D空間デザインによる空間認識能力の向上
ロブロックスの開発画面では、3次元の空間を自由に操作してオブジェクトを配置します。
この作業は、建築家やエンジニアが使用するCADソフトや、3DCGソフトの操作と本質的に変わりません。
平面のディスプレイを見ながら、奥行きのある空間を脳内でイメージし、物体を回転させたり、サイズを調整したりするプロセスを繰り返します。
これにより、数学的な座標感覚や、立体を把握する「空間認識能力」が自然と鍛えられます。
2Dのマインクラフト的なブロック積み上げとは異なり、より滑らかな形状や物理演算(重力や摩擦など)も扱えるため、現実世界の物理法則をシミュレーションする学習にも繋がります。
VRやARといった分野への、基礎的な感覚も養うことができます。
ゲーム内通貨を通じたお金の使い方
ロブロックスには「ロブックス(Robux)」という独自のゲーム内通貨が存在します。
ロブックスは、アバターの服を購入したり、ゲーム内の特殊な機能を使ったりするために消費されます。
子供たちは、限られたお小遣いの中で「何に価値を見出し、何に投資するか」という判断を迫られます。
さらに、自作のアイテムやゲームを販売してロブックスを「稼ぐ」ことも可能です。
価格設定をどうするか、どのような商品がユーザーに受けるかというマーケティング的な思考は、座学では得難い経験です。
単に消費するだけでなく、価値交換の仕組みを肌で感じることは、金融リテラシーの基礎として学ぶことができます。
「Roblox Studio」の活用で学べる3つの効果
ロブロックスの真価は、プレイすること以上に、付属する無料の開発ツール「Roblox Studio」を使いこなすプロセスにあります。
子供たちはここで「作りたいものを形にする」というゴールに向かって試行錯誤を繰り返します。
このプロセスこそが、「課題解決能力」を育みます。
アイデアを形にするプロセスで学ぶ論理的思考
面白いゲームを作るためには、単なる思いつきだけでは不十分であり、システムの挙動を論理的に組み立てる必要があります。
例えば、「プレイヤーがゴールに触れたら、勝利の音楽を鳴らして、次のステージへ移動させる」という一連の動きを作る場合を考えてみます。
これを実現するには、「触れた瞬間を検知する」「音声を再生する」「シーンを切り替える」という手順を、コンピュータが理解できる順序で指示しなければなりません。
子供たちは、自分が意図した結果を得るために、原因と結果の因果関係を整理し、構造化して考えるようになります。
この思考プロセスで、プログラミングに限らず、ビジネスにおけるロジカルシンキングに近しい体験ができます。
Roblox Studioでの制作は、抽象的なアイデアを具体的なロジックに落とし込むためのトレーニングと言えるでしょう。
エラーと向き合い改善するトライ&エラーの習慣化
プログラミング学習において最も重要な学びの一つは、「失敗への耐性」をつけることです。
Roblox Studioでスクリプトを書くと、最初は間違いなくエラーが発生し、思い通りに動きません。
しかし、そこには必ず「記述ミス」や「論理の矛盾」という原因が存在します。
子供たちは、赤い文字で表示されるエラーメッセージを読み解き、どこが間違っているのかを仮説検証し、修正しては再度実行するというサイクルを何度も繰り返します。
このデバッグの作業を通じて、失敗をネガティブなものとして捉えるのではなく、「改善のためのデータ」として捉えるマインドセットが形成されます。
共同制作機能によるチームワークとコミュニケーション
現代のソフトウェア開発やプロジェクト運営において、一人で全てを完結させることは稀です。
Roblox Studioには「Team Create(チームクリエイト)」という機能があり、複数のユーザーがリアルタイムで同じプロジェクトを編集することができます。
この機能を活用することで、マップを作る担当、スクリプトを書く担当、アイテムをデザインする担当といった具合に、役割分担をして一つの作品を作り上げることが可能です。
チーム開発では、「自分の作業が遅れると仲間に迷惑がかかる」「自分のコードが原因で全体が動かなくなった」といった経験をすることになります。
こうした経験を通じて、他者と協調してゴールを目指す難しさと楽しさを学び、報告・連絡・相談といったコミュニケーションの重要性を肌で感じることができます。
安全性は問題ない?リスクとトラブル対策
しかし、ロブロックスがいくら教育的に優れたツールであっても、子供たちがトラブルに巻き込まれてしまっては意味がありません。
オンラインプラットフォームである以上、不特定多数のユーザーとの接触や、不適切なコンテンツへのアクセスといったリスクは常に存在します。
ここでは、安全に利用するために必須となる具体的な設定と対策について解説します。
ペアレンタルコントロールによるチャットと連絡先の制限
最も警戒すべきトラブルは、チャット機能を通じた見知らぬ他者との接触です。
ロブロックスの設定画面には「プライバシー」という項目があり、ここで他ユーザーとのコミュニケーション範囲を細かく指定することができます。
具体的には、「チャットできる相手」や「メッセージを送れる相手」を、「誰とも許可しない(オフ)」または「友達のみ」に設定することが可能です。
学校や教育現場で導入する場合は、基本設定としてチャット機能を完全にオフにするか、許可されたクラスメート同士のみに限定する運用が推奨されます。
また、子供が勝手に設定を変更できないよう、保護者用の4桁のPINコードを設定する機能も搭載されています。
このPINコードを設定することで、大人の許可なくセキュリティ設定が解除されることを物理的に防ぐことができます。
年齢制限設定と適切なコンテンツのフィルタリング
ロブロックス内には数百万以上のゲームが存在しますが、中にはホラー要素が強いものや、過激な表現が含まれるものも少なからず存在します。
これに対し、ロブロックスでは「エクスペリエンスガイドライン」という年齢推奨システムを導入しています。
コンテンツは「全年齢」「9歳以上」「13歳以上」「17歳以上」といった区分でレーティングされており、保護者は子供のアカウントに対してプレイ可能な年齢区分を制限できます。
例えば、小学生が利用する場合は「全年齢」または「9歳以上」までのコンテンツしか表示されないように設定することで、発達段階にそぐわない過激な表現を自動的にフィルタリングすることが可能です。
この機能により、膨大なコンテンツの中から安全なものだけを選別する手間を省きつつ、安心して遊ばせることができます。
子供と事前に決めるべき「運用ルール」の具体例
システム的な制限に加え、家庭や教室での「運用ルール」を明確にすることも、ITリテラシー教育の一環として非常に重要です。
技術的なブロックだけでは防ぎきれないリスクに対し、子供自身の判断力を養うためのルール作りが求められます。
具体的には、以下のようなルールを事前に話し合って決めておくことが有効です。
- プレイ場所の限定:
個室ではなくリビングなどの大人の目がある場所でのみプレイさせることで、異変にすぐに気づくことができます。
- 個人情報の保護:
本名、住所、学校名、顔写真などを絶対にプロフィールやチャットに載せないことを徹底させます。
- 課金に関するルール:
クレジットカードを登録したままにせず、課金が必要な場合はプリペイドカードを利用する、あるいは「月額◯◯円まで」という予算管理を子供自身にさせるといった方法です。
これらのルールを一方的に押し付けるのではなく、なぜ危険なのかを説明し、子供から理解してもらうことで、デジタル社会を生きるための知識を高めます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ロブロックスについて、単なるゲームという認識から、教育の可能性を秘めたプラットフォームであるということをご紹介しました。
ロブロックスをプレイすることで、創造性、論理的思考、コミュニケーション能力など、これからの時代に必須となるスキルを、子供たちは”遊び”を通じて自然に習得していくことができます。
もちろん、ネットリテラシーや安全性に関する懸念は無視できませんが、それは適切な設定と大人の関与によって十分にコントロール可能なリスクです。
「危ないから禁止する」のではなく、「安全に使う方法を教えて活用する」という姿勢こそが、子供たちの将来の可能性を広げることにつながります。
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