「DXハイスクール」という言葉を耳にし、自校での申請を検討し始めている教育関係者の方も多いのではないでしょうか。
この制度は、高等学校におけるデジタル人材育成を加速させるための大規模なプロジェクトです。
しかし、多くの現場担当者が「具体的に何に使える予算なのか」「採択されるにはどのような準備が必要なのか」という点で頭を悩ませています。
本記事では、DXハイスクールの制度概要から、ハイスペックPCやVR機器といった具体的な補助対象経費、そして採択を勝ち取るためのポイントまでを網羅的に解説します。
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【3分でわかる】DXハイスクールとは?
DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)とは、文部科学省が主導する、高校段階におけるデジタル教育環境の抜本的な強化を目的とした支援事業です。
2024年度(令和6年度)より本格的に開始され、情報化社会に対応できる人材育成を加速させるため、必要な設備導入やカリキュラム刷新を行う高校に対し、財政的な支援を行っています。
この制度の最大の特徴は、従来の「研究指定校」のような一部のエリート校に向けたものではなく、全国の幅広い高校を対象に「底上げ」を図る点にあります。
1校1,000万円の定額補助の目的とは
本事業の核となるのは、対象となる高校1校につき1,000万円(新規採択校の場合)が補助されるという点です。
この予算措置の目的は、高度なデジタル人材を育成するための「環境」と「教育課程」のアップデートです。
これまでの高校教育では、予算不足により最新のデジタル技術に触れる機会が限定的であり、社会が求めるスキルとの間にギャップが生じていました。
つまり、この1,000万円は「生徒がデジタルを使って新しい価値を生み出せるようになる」ための補助金であると言えます。
「GIGAスクール」や「SSH」との違いとは
現場で最も多い誤解の一つが、小中学校を中心に進められた「GIGAスクール構想」との混同です。
GIGAスクール構想は「1人1台端末」によるデジタル活用の基礎固めが目的でしたが、そこで配備された一般的なタブレット端末では、高度なプログラミングや3Dコンテンツ制作にはスペックが足りません。
対してDXハイスクールは、そうした日常使いの端末では実行不可能な処理を行える「ハイスペックな環境」への上積み支援です。
具体的には、GPU搭載PCやVR・MRゴーグル、3Dプリンタなど、より専門的な学びを実現するための機材が対象となります。
また、文部科学省の他の支援事業と比較すると、「採択の間口が広い」点も大きな特徴です。
「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」のような特定の学校による研究開発事業とは異なり、DXハイスクールは全国約1,000校規模の採択を目指すプロジェクトです。
求められるのは、情報Ⅱや探究学習を充実させるための着実な環境整備計画です。
そのため、これまで国の指定事業に縁がなかった学校であっても、要件さえ満たせば採択される可能性がある、現実的な選択肢と言えるでしょう。
補助金で導入できる機材とできない機材
DXハイスクールの補助金は、用途が厳格に定められており、文部科学省が定める「デジタル等成長分野を支える人材育成」に直結するものでなければなりません。
ここでは、申請が通りやすい代表的な「対象経費」と、却下される可能性が高い「対象外経費」をリスト形式で解説します。
対象:ハイスペックPC、3Dプリンタ、VR/MRゴーグル

まず、ハードウェアに関しては「既存のGIGA端末では不可能な処理ができること」が選定の基準となります。
最も代表的なのは、開発や高度な動画編集などに耐えうる「ハイスペックPC」です。
具体的には、高性能なGPU(グラフィックボード)を搭載したデスクトップPCやノートPCがこれに該当し、情報Ⅱの演習室整備として多くの学校が導入を計画しています。
また、デジタルデータを物理的なモノとして出力するための「3Dプリンタ」や「レーザーカッター」も、ものづくり教育やSTEAM教育の文脈で推奨されています。
他にも、近年注目を集めているのが「VR(仮想現実)・MR(複合現実)ゴーグル」などのXR機器です。
これらは、物理的な理科実験室や実習場が不足している学校でも、仮想空間上で高度な実験やシミュレーションを行うための必須ツールとして、補助対象に含まれています。
特に、危険な化学実験や、物理的に訪問が難しい場所へのフィールドワークを代替する手段として、教育効果の高さが評価されやすい傾向にあります。
対象:ソフトウェア・クラウドサービスの利用料
補助金の対象は、目に見えるハードウェアだけではありません。
それらを活用するための「ソフトウェア」や「クラウドサービス利用料」も重要な支援対象です。
例えば、画像生成AIやプログラミング支援AIなどの有料ライセンス費用は、最先端の技術に触れるために必要な経費として認められます。
また、動画編集ソフトや3Dモデリングソフト(CAD等)のライセンス料も対象となります。
さらに、教育現場での導入が進む「メタバースプラットフォーム」の利用料や、オリジナルの仮想空間構築にかかる委託費も対象に含まれます。
ハードウェアは一度購入すれば終わりですが、ソフトウェアやクラウドサービスは継続的な活用が見込めるため、予算計画に組み込む際は数年分のランニングコストも考慮しておくと良いでしょう。
対象外:汎用タブレット、一般教具、通常の教員人件費
一方で、デジタルに関連するものであっても補助対象外となるものが存在するため、注意が必要です。
最も代表的なNG例は、一般的な学習に用いる「汎用タブレット端末」や「低スペックなノートPC」です。
これらは既にGIGAスクール構想などで整備済みであるという前提があるため、DXハイスクールの高度化予算で購入することは重複投資とみなされるリスクがあります。
また、机や椅子、ホワイトボードといった「一般的な什器」も、単なる教室整備と判断され、対象外となるケースがほとんどです。
ただし、eスポーツ用のゲーミングチェアや、VR機器を使用するための特殊なデスクなど、高度なデジタル教育に不可欠であると合理的に説明できる場合は、認められる可能性もあります。
人件費については、外部から招く専門家への謝金や旅費は対象になりますが、普段勤務している教職員の給与や手当に充てることはできません。
申請書を作成する際は、その物品が「なぜデジタル人材育成に必要なのか」という理由付けが明確にできるかどうかが、採択のポイントとなります。
採択されるための3つのポイントとは?
ここでは、採択されるために押さえておくべき主要な3つの要件について解説します。
「情報Ⅱ」開設と環境整備
DXハイスクールの要件の中で、最も基礎となるのが「情報Ⅱ」や「数学Ⅱ・B」「数学Ⅲ・C」といった科目の履修推進です。
特に「情報Ⅱ」は、データサイエンスや情報システムの構築を含む発展的な内容であり、本事業の肝となる科目です。
まずは選択科目として開設し、希望者が履修できる体制を整えることからスタートする計画でも、十分に採択の余地があります。
また、「環境整備」の要件については、まさに今回の補助金で購入する機材そのものが該当します。
つまり、「情報Ⅱを教えるために、ハイスペックPC室を整備します」という計画自体が、要件の一つ(環境整備)を満たすことになるのです。
このように、教育課程の変更と機材導入はセットで考えることで、自然と要件をクリアできる仕組みになっています。
文系・理系を問わない「探究的な学び」の実装
二つ目の重要な要件が、教科横断的な「探究的な学び」の実施です。
これは理数科の生徒だけを対象にしたものではなく、文系の生徒も含めた全校的な取り組みが期待されています。
「文理横断」という言葉がよく使われますが、難しく考える必要はありません。
例えば、地理歴史の授業で統計データを用いた分析を行ったり、芸術の授業でデジタルツールを用いた創作活動を行ったりすることも、立派なDX教育です。
現在、多くの高校で実施されている「総合的な探究の時間」に、デジタル技術を掛け合わせる形が最も導入しやすいでしょう。
「地域の課題を解決する」というテーマに対し、これまでは模造紙で発表していたものを、データ分析に基づいたプレゼンや、デジタルコンテンツの制作に置き換えるだけで、要件を満たす質の高い計画になります。
企業や大学と連携する「外部リソース」の活用
三つ目のポイントは、学校の中だけで完結させず、外部とつながることです。
デジタル分野の技術進歩は非常に速く、教員だけで最新のAIやXR技術を教え続けることは現実的ではありません。
そのため、DXハイスクールでは、企業や大学、研究機関と連携体制を構築することが推奨されています。
これは「外部講師を招いて講演会を開く」といった単発のイベントだけでなく、企業が提供する教育プログラムやプラットフォームを持続的に利用することも含まれます。
例えば、企業が開発したメタバース空間を利用して他校と交流したり、IT企業のエンジニアからオンラインで指導を受けたりする取り組みです。
教員ですべて教える必要はなく、外部リソースを活用した計画を立てることが、採択への近道であり、教員の負担軽減にもつながります。
DXハイスクールの活用事例
DXハイスクールで成功する学校は、授業だけでなく、部活動や生徒の自主活動まで含めた「稼働率の高い計画」を立てています。
ここでは、機材を有効活用し、学校の特色作りにも成功している具体的な事例を紹介します。
ハイスペックPCで「動画制作」

高性能なGPUを搭載したPCを導入する場合、単にプログラミングの授業でコードを書くだけでは、その真価を発揮できません。
先進的な学校では、放課後にそのPC室を「創造の場」として開放しています。
例えば、文化祭や学校説明会のPR動画を生徒自身が制作するための「動画編集スタジオ」として活用する事例が増えています。
生徒がAdobe Premiere ProやAfter Effectsなどのプロ仕様のソフトを使いこなし、Youtuber顔負けのクオリティで作品を作る経験は、まさにデジタル人材育成そのものです。
このように、授業時間外も含めた多目的利用を前提とすることで、投資対効果を最大化できます。
理科室が狭くても実験ができる「VR・メタバース」活用

都市部の学校や小規模校で特に課題となるのが、「物理的なスペース不足」や「設備の老朽化」です。
「高度な理科実験をさせたいが、危険な薬品を扱う設備がない」
「生徒全員分の実験器具を揃える予算がない」といった悩みに対し、XR技術が画期的な解決策となります。
例えば、爆発の危険がある化学反応の実験や、肉眼では見えない分子構造の観察などを、安全かつ低コストで何度でも繰り返すことが可能です。
また、歴史的な遺跡や海外の美術館を仮想空間で訪問する「バーチャル社会見学」のような使い方も、没入感の高い学びとして注目されています。
物理的な増築が難しい学校こそ、バーチャルな空間拡張ができるXR技術への投資が、最もコストパフォーマンスの高い選択肢となるでしょう。
地域の課題を解決する「データサイエンス」連携授業

ハイスペックPCの計算能力を活かした「データサイエンス」の授業も、DXハイスクールの王道的な活用法です。
成功している事例では、地元の自治体や企業と連携し、「生きたデータ」を扱っています。
例えば、地元の商店街のPOSレジデータを提供してもらい、売上向上のための施策を高校生が分析して提案するというプロジェクトです。
あるいは、市内の交通量データを分析し、バスの遅延解消ダイヤを提案するといった取り組みもあります。
こうした膨大なデータの処理や、AIを用いた予測モデルの構築には、一般的なタブレット端末では処理能力が足りません。
DXハイスクールで導入したハイスペック環境があるからこそ実現できる、社会と直結した学びの形です。
申請から採択までのロードマップと注意点
ここでは、一般的な公募スケジュールと、申請作業においてボトルネックとなりやすいポイントを解説します。
公募開始から締切までのスケジュール感
例年の傾向を見ると、文部科学省からの公募要領の発表は年度末(1月~2月頃)に行われ、そこから約1ヶ月強という短い期間で申請書類を作成し、提出する必要があります。
採択結果の通知は新年度が始まった4月以降に行われ、そこから正式な交付決定を経て、夏頃から機材の発注・納品が可能になるという流れが一般的です。
このスケジュールの中で最も注意すべきは、公募開始から締切までの「1ヶ月間」です。
この短期間に、校内の企画会議を通し、教育委員会(公立の場合)や理事会(私立の場合)の承認を得て、書類を完成させるのは至難の業です。
そのため、公募要領が発表されるのを待っていては手遅れになる可能性が高いと言えます。
「申請する」という意思決定と、「何を買うか」という大枠の計画は、公募開始前の段階(年内や秋口)から固めておくことが、余裕を持って申請するための鉄則です。
申請書作成で「最も時間がかかる」部分とは
申請書の作成において、多くの先生方が最も苦労し、時間を取られるのが「経費の算出」と「事業者からの見積取得」です。
「メタバースをやりたいが、どのVRゴーグルを選べばいいのか?」
「ハイスペックPCのGPUは何を選べば情報Ⅱに対応できるのか?」といった技術的な判断は、現場の先生方では難しい場合がほとんどです。
さらに、申請には根拠となる「参考見積書」の添付や、正確なカタログ価格の記載が求められる場合が多々あります。
公募締切直前になると、全国の高校からシステムベンダーや販売店に見積もり依頼が殺到し、回答まで数週間待たされるという事態も頻発します。
その結果、スペックの検討が不十分なまま申請してしまったり、希望する機材が見積もりに間に合わず申請を断念したりするケースも後を絶ちません。
こうした事態を避けるためにも、信頼できるベンダーや、教育現場のDXに詳しい専門企業に、技術的な仕様策定や構成案の作成を手伝ってもらうことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、DXハイスクールの制度概要から、具体的な補助対象経費、そして採択されるためのポイントについて解説してきました。
DXハイスクールは、予算の限られた学校現場にとって、1,000万円規模の投資を行えるチャンスです。
この予算を「単なるPCの入れ替え」で終わらせるか、それとも「学校の未来を変える新たな学びの基盤」にできるかは、最初の機材選定と計画作りにかかっています。
特に、場所や時間の制約を超えて高度な体験を提供できる「XR(VR/メタバース)技術」は、これからの教育現場において、ハイスペックPCと並ぶ強力な武器となるはずです。
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