皆さんは、近年話題となっているARや、MR、VRといった最新視覚技術のひとつ、「SR」をご存知でしょうか。
SRとは、代替現実と呼ばれています。現在見えている映像と過去に撮影していた映像を重ね合わせることで、過去に起こったことを、あたかも今起こっているかのように見せることができる視覚技術のことです。
ARやVRに比べるとSR技術の具体的なビジネス活用は少ないのですが、今後SR技術の進化により、様々な産業の発展が期待できるとされています。
本記事では、SR技術のビジネス活用を検討している方に向けて、その他の視覚技術との違いや、SR技術の活用事例を紹介します。是非最後までご覧ください。
|SRとは
SRとは、Substitutional Reality(サブスティチューショナル・リアリティ)の略称で、日本語では「代替現実」と訳されます。
現実世界と過去の映像の一部もしくは全部を差し替えて、本来実在しない人物や事象が実時間、実空間にまるで存在しているかのように錯覚させる視覚技術のことを指します。
では、SRを体験するにはどうしたらよいのでしょうか。
まず必要なものは「あらかじめ現実世界で記録した映像や音声など過去の情報」です。また、映像を見せるために専用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が必要となります。
ここから実際の体験手順となります。
体験者はHMDを装着し、目の前の現実空間をカメラ越しに見ます。
その映像に対し、用意しておいた過去の情報を見せることで現実の情報と混在させます。
これにより、体験者本人は過去の出来事が今起きている現実であると錯覚するのです。
通常私たちは記録された映像を見るとき「これは過去のことである」とわかりますよね。
その認識をうまく騙し、過去と現在の境界をなくしてしまうのがSRなのです。
現時点では、過去の資料映像をリアルに再現し、今と過去を交互に往復しながら新たな現実を表すといった活用方法が考えられています。
また、日本でも有名な「マトリックス」や「インセプション」などの映画はこのSRをテーマにした作品となっており、より身近に感じることができます。
|AR・MR・VRとの違い
SRについてまずはご紹介いたしましたが、その他(AR・MR・VR)の視覚技術との違いについて解説していきます。
AR
ARとは、「アグメンティッド・リアリティ(Augmented Reality)」の略称で、日本語では、「拡張現実」と直訳されます。
1990年代から開発が本格化し、1992年にアメリカ空軍のArmstrong研究所が「Virtual Fixtures」というARシステムを開発したのが始まりといわれています。以降、2000年代には続々とAR技術を用いたものが登場しています。
スマートフォンやタブレット、カメラに映し出される映像を通じて、現実世界にデジタル情報を投影する視覚技術です。
この後ご紹介するVRと混同されがちですが、現実に情報を加えて「拡張」するものがARです。
この技術は、家具・インテリア商品の配置イメージを確認できるアプリに多く使われています。
例えば大手家具販売店のニトリではインテリア試着アプリを開発したことで、顧客にとって大きなメリットを生み出しました。
洋服や靴と違って、家具は部屋に置いた時のイメージが難しいので画期的ですよね。
また、今でも人気を誇る「ポケモンGO」はこのAR技術が用いられています。
現実世界にポケモンたちが現れるということで、大人から子供まで人気を博したゲームです。
ARについては、下記記事で詳しく解説しています。
MR
MRとは、「ミックスリアリティ(Mixed Reality)」の略称で、日本語では、「複合現実」と直訳されます。
現実世界に仮想世界の情報やCGなどを取り込み、ARのように単純に現実世界へデジタル映像を投影するのではなく、現実世界の中に仮想世界の情報や映像が「まさにそこにあるように」存在させることのできる視覚技術です。
例えば、あるキャラクターがいると仮定しましょう。
ARでは「そこにキャラクターがいる」ことは認識できても、近づいたり横に並んだりということはできませんでした。少しもどかしいですよね。
一方MRは位置情報を算出しているので、キャラクターに近づくことも横に並ぶことも、触れることもできるようになっています。
また、MRは複数人での空間共有も可能にしているため、コミュニケーションツールとしても優秀です。
ですので、現代で増えているリモートワークにおける会議ツールとして用いられるというケースも多くなっています。
MRについては、下記記事で詳しく解説しています。
VR
VRとは、「バーチャルリアリティ(Virtual Reality)」の略称で、日本語では「仮想現実」と直訳されます。
VR専用のゴーグルを装着し、360度映し出されるデジタルコンテンツの中に入り込んだような没入体験ができる視覚技術です。
現在は主にゲームやSNSで使用されていますが、近年は様々な分野でビジネスに活用されています。
リアルに近い状況を再現した医療現場での研修、現地に行かなくてもできる不動産の内見や旅行の模擬体験、ショッピングにも利用されています。
もちろん今後も多方面で活用されていくことが期待されていますよ。
VRについては、下記記事で詳しく解説しています。
|SRの活用事例
ここからは、実際のSR活用事例について紹介します。
脳科学の研究
SRの概念自体は2000年代前半から存在しており、もともとは人間の認知・心理についての研究するための装置として考案されました。
脳は、人が現実世界として五感を通して感じているリアルタイムの出来事を「現実」として認識しています。
しかし、この脳が認識している現実とつじつまが合わない事があると、「現実ではない事」として強制的に解釈するのです。
このような人の特性を活かし、SRは「メタ認知」などの高度認知機能の研究に活用されています。
今回ご紹介した他の3つ(AR・MR・VR)では、体験者はあらかじめ「この体験は仮想の出来事である」と理解している状態ですので「メタ認知」などの高度認知機能は作用しません。
現実かどうかわからない状況下のSRだからこそ研究を進めることができるのです。
システムの体験によって、脳機能、心理状態、心拍などの生理状態がどのように変化するかを調査・分析し、メタ認知の仕組みの研究に役立てています。
心理療法
SRは、人の脳が現実と認識する世界を操作できるため、心的外傷後ストレス障害のような心的疾患に対する新しいタイプの心理療法としての活用が期待されています。
SRシステムは、予め記録し編集しておいた過去の出来事を、今まさに目の前で起きている現実であると被験者に信じさせることや、それに疑いをもたせることもできます。
このようなSRシステムを用いることにより、これまで困難だったメタ認知に関わるさまざまな認知・心理実験が可能になります。
|まとめ
いかがでしょうか。
本記事では、SR技術のビジネス活用を検討している方に向けて、その他の視覚技術との違いや、SR技術の活用事例を紹介しました。
今回紹介したSR、AR、MR、VRなどの最新視覚技術は、ある程度知識や理解を深めておかなければ、活用方法の取得に時間がかかってしまいますので、それぞれの技術をきちんと理解することが大切です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!