さまざまな場面で「メタバース」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか。

2021年10月に旧Facebookが社名を「Meta」に変え、メタバースを身近に感じるようになった方も多いのではないでしょうか。

近年、メタバースの需要が高まっており、様々な企業がメタバースを使ったビジネスを展開するようになってきています。

この記事では、メタバースを使ったビジネスが注目されている理由や、実際に起こっているメタバースによる各業界の変化について詳しく解説します。

|メタバースビジネスとは

メタバース(metaverse)とは「超越 / 高次の(meta)」と「宇宙(universe)」を合わせた造語で、インターネット上にある仮想空間やアバターを操作して仮想空間内を自由に行動することができるサービスを指します。

2021年に旧Facebook社が社名を「Meta」へ変更したり、adidasやNikeなどの世界的大企業がメタバースに参入したことによりメタバースの市場規模は急速に拡大しました。

従来、メタバースはオンラインゲームとして活用されることが主でしたが、近年ではショッピングやイベント、コミュニケーションの場として活用されることが多くなっています。

メタバースについては、下記記事で詳しく解説しています。

今更聞けないメタバースとは?注目される理由と可能性、代表するサービスを一挙紹介
今更聞けないメタバースとは?注目される理由と可能性、代表するサービスを一挙紹介

出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd236a00.html

また、総務省は「メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されている」と発表しました。

これからのメタバース市場規模拡大とともに「ビジネスへの活用」が加速していくでしょう。

|メタバースビジネスが注目される理由

Meta(旧Facebook)やadidas、Nikeといった世界的大企業の参入によって、市場規模拡大が予測されているメタバースに「ビジネスへの活用」が注目されています。

注目されている理由は2つ。

  • コロナ日によるユーザの行動変化
  • 仮想通貨やNFTの拡大

それでは1つずつ解説します。

コロナ禍によるユーザーの行動変化

メタバースビジネスが注目されている理由の1つ目は「コロナ禍によるユーザーの行動変化」があげられます。

コロナ禍によってテレワークやオンライン会議の推奨、外出自粛、音楽イベント・展示会の中止、外国人旅行客の入国制限などが余儀なくされました。

そんな状況の中、家にいながらどこにでもアクセスできるメタバース上でのショッピングやイベント、展示会、旅行・観光などに人々が集まるようになりました。

  • ジャスティン・ビーバーがメタバース上で音楽ライブを開催
  • 米津玄師や星野源がフォートナイトで音楽ライブを開催
  • バーチャルマーケット(仮想空間のショッピングモール)に70以上の企業が出店
  • バーチャルマーケットのイベントに延べ100万人以上が来場
  • HISが「HISバーチャル支店」を期間限定オープン
  • 韓国でメタバースを使ったインバウンド向けキャンペーンを開催

様々な企業がメタバース上のビジネスに取り組んでおり、今後も加速していくことが考えられます。

仮想通貨やNFTの拡大

メタバースビジネスが注目されている理由の2つ目は「仮想通貨やNFTの拡大」があげられます。

メタバースとブロックチェーンは親和性が高く、ブロックチェーン技術を使用することで取引履歴などを改ざんすることが難しいなど安全にショッピングやイベントを楽しむことができます。

また、メタバースで仮想通貨・NFTを使うメリットは以下のようなものが挙げられます。

  • ブロックチェーン上での取引履歴は改ざん不可能
  • 匿名で購入できる
  • クレジットカード番号などが不要なため、売買が安全に行える
  • 世界中どこにいても決済できる
  • チケットをNFTで発行すれば「購入価格以上での転売不可」などの設定ができる
  • ブロックチェーンは多数のコンピュータで動いているため、システムダウンがない

メタバースプラットフォーム「The Sandbox」はメタバース上の土地をNFTとして売買し、ゲーム内独自の通貨「SAND」を発行しているなど、メタバースとブロックチェーン技術を組み合わせているプラットフォームが増えてきています。

徐々に仮想通貨やNFTが浸透してきており、メタバース上でのビジネスが加速することが考えられます。

|メタバースによる各業界の変化

メタバースによって各業界にさまざまな変化が起きています。

以下は、メタバースによって変化が起きている業界です。

  • 広告・マーケティング業界
  • ゲーム業界
  • エンタメ業界
  • 医療業界
  • 不動産業界
  • 観光業界
  • 教育業界

1つずつ事例も含めて解説します。

広告・マーケティング業界

広告・マーケティング業界では、メタバース上にある壁面や大型ビジョンなどに商品やサービスの広告を出すことができます。

例えば、累計1,000万DLを誇るメタバースプラットフォーム「REALITYworld」では、各種ワールド内に広告を掲載するサービスがあります。

メタバースでの広告であれば、静止画、動画、ポスター、3D建造広告など、様々な種類の広告に対応することができます。

また、メタバース上に企業のワールドを作ることで、ブランディングに活用することができます。

例えば、コインチェックがThe Sandboxの土地に日本を想像させる街並み(Oasis TOKYO)を作り、商店街や美術館、ライブハウスなど様々な楽しめるコンテンツを制作し、自社のブランディングを行っています。

ゲーム業界

ゲーム業界では「ブロックチェーンゲーム(NFTゲーム)」が注目を集めています。

ブロックチェーンゲームとはPlay to Earn(P2E)ともいわれており、ブロックチェーン技術を用いることでゲーム内の通貨やアイテムに金銭的価値を付けることができます。

2012年に台湾で”Game of the year 金賞”を受賞した「エレメンタルオンライン」の新作『元素騎士Online』では、ゲーム内アイテムがNFTとなっており、現実世界での売買も可能です。

また、ゲーム内通貨は海外の仮想通貨取引所に上場しているため法定通貨へ換金ができるようになっています。

世界的に有名な「キャプテン翼」もブロックチェーンゲームをローンチするなど勢いを増しています。

エンタメ業界

エンタメ業界ではスポーツや音楽、映画などがメタバースで観戦できるようになりました。

スポーツ観戦ではKDDIが「AFCアジア予選-Road to Qatar」の日本代表VSベトナム代表を、渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」(clusterアプリ)の特設ステージにてパブリックビューイングの形で実施しています。

音楽イベントはジャスティン・ビーバーがメタバースで音楽ライブを開催。

また、日本人では米津玄師や星野源がフォートナイトで音楽ライブを開催した事例があります。

さらに、イオンシネマがメタバースで映画鑑賞ができる「バーチャルシネマ」を開発し、メタバース上で様々な映画を楽しむことができます。

今後はスポーツ観戦など「”好きなチーム”などでコミュニティを作り、メタバースで一緒に応援する」ことが増えるでしょう。

医療業界

医療業界ではメタバースで誰もが匿名アバターで医療者へお悩み相談できる「メタバースクリニック」が設立されています。

匿名アバターであることで心理的負担を減らし、発話量の増加・自己開示性の促進などのメリットがあり、対面やビデオ通話が苦手な人でも相談しやすい環境が作られています。

メタバースクリニックの主なサービス内容はカウンセリングや心理療法、オンライン診療です。

また、実際に受診できる状態になれば、来院診療の案内までしてもらえます。

外出が困難な患者のための集団イベントなどにも参加することができます。

現在はメンタルヘルス領域でメタバース診療が模索されていますが、今後は領域を広げて診療していく可能性が高いでしょう。

不動産業界

不動産業界ではコロナ禍によって内見がしづらくなったことで、メタバースでの「バーチャル内見」が行われるようになりました。

例えば、LiveStyle PARTNER(大和ハウス工業)や三井ホームではメタバースモデルハウス見学が可能です。

事前の申し込みは必要ですが、当日は担当スタッフが無料でモデルルームを案内してくれます。

メタバースでのモデルルームは3DCGで構成されており、すぐに部屋の内装や家具の場所を変更できることが特徴です。

他の不動産ではメタバースモデルハウスがなくても、VR内見ができるところが増えています。

今後も実際に内見に行くのではなく、VRやメタバース内見が増えていくと予想されます。

観光業界

観光業界はコロナ禍によって外出自粛や外国人入国制限などがあり、メタバースで旅行気分が味わえるような取り組みがあります。

映像や写真を楽しむだけでなく、実際にアバターを使って歩いてみたり、旅先のお土産を買うことで、より旅行気分を味わうことがでるサービスです。

例えば、「バーチャルOKINAWA」では、国際通りや首里城、ビーチなど沖縄県のさまざまな観光地をメタバース上で楽しむことができます。

さらに、バーチャルOKINAWAでは以下のコンテンツを楽しむことができます。

  • バーチャル飲み会
  • バーチャルショッピング
  • 三線ライブ
  • 360°沖縄映像体験
  • 世界遺産散策
  • ビーチでBBQや花火体験

海外でも、バーチャルOKINAWAのような取り組みが進んでおり、世界の観光業界でメタバースが使われるようになってきています。

教育業界

学校や教育機関でもメタバースが使われるようになってきています。

何らかの理由で学校に行けない人でも、メタバースによってどこにいても好きに学ぶことができるのが特徴です。

例えば、「MEキャンパス」はメタバースクリエイターを目指せる学校で、メタバース内に学校が存在します。

アバターを使うことによって性別・年齢・見た目などあらゆる要素をフラットにし、自分らしいキャンパスライフを送ることができます。

また、自宅など好きな場所からいつでも学ぶことができ、高校卒業資格も取得することができる学校です。

リアルの学校でもメタバースを使って、現実では体験できないような課外授業を取り入れる学校も増えてきています。

|まとめ

いかがだったでしょうか。

コロナ禍によるユーザの行動変化や仮想通貨・NFTなどのブロックチェーン技術によってメタバースの需要が拡大しています。

すでに以下のような業界ではメタバースを使ったビジネスが浸透してきています。

  • 広告・マーケティング業界
  • ゲーム業界
  • エンタメ業界
  • 医療業界
  • 不動産業界
  • 観光業界
  • 教育業界

総務省の発表でもメタバースの世界市場が拡大していくと予想しており、メタバースを使ったビジネスが当たり前となっていくでしょう。

また、adidasやGUCCIなどの世界的大企業や日産やavexなどの日本企業もメタバースに続々と参入しており、どのようなサービスが開発されるのかメタバース関連の動向に注視しておく必要があります。