現代の物流現場では、ネットショッピングの拡大により小口配送による配送頻度の上昇や業務過多による離職や人手不足に苦しんでいます。

そこでこの問題を解決するために注目されているのがAR技術です。

AR技術が導入されると物流業界においてどのような業務が簡素化されどんなメリットがあるのかを詳しく解説していきます。

この記事を読むとARが物流業界に与えるメリットやデメリットが可視化されます。

是非最後までご覧ください。

|そもそもAR技術とは?

ARは(アグメンティッド・リアリティ) の略で現実を拡張する技術のことです。

現実世界を主体にARを用いることで、画像やテキストを加えて新たな世界を広げる事が可能です。

以前まではPCが主体となっておりましたが、近年ではスマホでも比較的簡単に実装できることもあり、日常生活での満足度を高め様々な分野から注目を集めています。

ARを採用したスマホ用ゲームで注目が集まった例には「ポケモンGo」があります。

登場したポケモンが現実世界の風景と融合しモンスターがあたかも現実世界に現れたかのような事がARを使って可能になりました。

AR技術は物流業界に多大なる利益をもたらすと考えられます。

ARについては、下記記事で詳しく解説しています。

AR(拡張現実)とは?活用シーンからVR、MRとの違いまでわかりやすく解説
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|物流業界がARを活用すべき理由

現状の物流業界では小口配送や激務による人手不足により悩まされています。

そんな問題を解決出来るのではないかということで、ARが注目を集めています。

下記では、AR導入によって物流業界がどのように変化していくのか、今後の未来について紹介します。

小口配送が増加し深刻な人手不足に陥っている

近年、小口配送が増加し配送頻度が高くなるとその分コストや人件費がかかり物流コストが増大します。

特に現代ではネットショッピングの拡大によって小口配送の増加や即日出荷なども相まって物流業界の従業員の負担が大きくなり短期間で退職に至ったりと人手不足に悩まされています。

さらに少子高齢化や採用難もあり、人手不足が加速しているのをなんとかする必要があります。

このように私たちの生活はネットショッピングの発達により便利になった一方で物流業界では苦悩を強いられています。

トラックドライバーだけでなく物流業界の様々な現場において人手不足が大きな課題になっています。

個人が簡単に小口で商品を頼める以上、これからは、ARを活用して共存して深刻な現状を解決する必要があると感じます。

ARを活用すれば作業が効率化できて人手不足に対処できる

物流業界の小口配送や人手不足、こうした問題の解決策としてARが注目を集めています。

ARスマートグラスを利用すれば、現場作業者は常にハンズフリーで作業を行えます。

特にARによって作業者と指示者が離れた場所にいても同じ空間にいるような体験が得られます。

このことからもわかるようにARを使えばピッキング作業も簡素化しトラブル時の対応もARで解決することが可能になります。

また、人手不足の面でも、入れ替わりが激しい物流業界でもARを活用し経験年数が浅い人もすぐに即戦力になれるメリットがあります。

ARは作業を効率化し人手不足の対処やヒューマンエラーの面を考えても物流業界にとって重宝すると考えられています。

|物流業界にARを取り入れるメリットとは?

物流業界にARを導入することで小口配送や人手不足の悩みを解消できるのでは?

と上記で解説しましたが実際にARを業務に取り入れることでどのような業務が簡素化し物流業界にどのようなメリットがあるのか紹介します。

作業効率の向上が狙える

小口配送が増える現代では、配送頻度が高くなり作業量が増える一方でARを活用することによって作業効率が向上します。

必要な品物を集めるピッキングはARとの相性が非常に高く、小口配送による配送量過多にある現状の業務の作業効率を挙げる施策として注目を集めています。

ネットショッピングが拡大されるにつれて、扱う商品の数が増加、扱うジャンルも細分化しこのピッキング作業の効率化が物流業界でも大きな課題になっています。

実際の物流現場では、ピッキングに時間がかかったりピッキングのための動線が複雑だったり商品の位置が分かりづらいなどの課題があります。

ここで役立つのがARで、自分が集めるべき商品の場所やルートを表示させることができれば、ピッキング作業が初めての人でも問題なく収集することができます。

作業が正確に行える

ARを導入すれば作業の効率性が高まりヒューマンエラーが減ります。

人間が行う物流現場では倉庫内の膨大の量から目当ての荷物を探し出すためには時間がかかり、さらにミスにもつながります。

これらをAR技術が解決します。

ARによって膨大にある倉庫内の商品からデジタルで目当ての物を探す事が可能になります。

またARによるピッキングと人間によるチェックにより配送ミスの減少に繋がると期待されています。

教育や研修が効果的に行える

物流業界においても宅配物が絡む人身事故の事例も多くあります。

そのため、作業員の教育や研修も物流現場において大きなテーマです。

物流現場でARを活用することによって新人社員のための安全教育のトレーニングに繋がると考えられています。

現状の教育では紙のマニュアルや口頭での説明や映像からの説明が一般的ですが十分に教育ができていないのが現状です。

ARやVRを活用することで実際に体験できないことを体感できるため、より危険に対する意識が向上できるのではないかと期待がかかります。

物流業界のみならず事故は絶対に防がないといけないのでARを活用しヒューマンエラーを最大限減らしていける未来に期待したいですね。

初心者でも生産性の高い仕事ができる

物流産業の問題として長時間労働や激務のため離職率も高く新しく入った作業員が独り立ちするまでに時間がかかってしまう面が問題に挙げられます。

そんな初心者の人でもARグラスを使ったリモートサポートで作業効率を大きく向上させベテラン作業員の方と変わらない作業をこなす事が可能になります。

また、若年層や経験年数の浅い作業員でもピッキングによってミスも最小限に防ぐことが実現できます。

|実際に物流業界に導入されているAR技術を紹介

実際に、物流業界に導入されているAR技術はどのような物があるのでしょうか。

ARによって物流業界がどのように変わっていけるのか具体的に取り入れている技術を6つ紹介します。

ARピッキング

出典:https://jpn.nec.com/dx/offering/design/xr/ar_picking.html

ARピッキングは日本電気株式会社(NEC)が提供しています。

物流現場では、商品を棚から取り出すピッキングではスピードと正確性が求められます。

特にピッキングミスが重大な事故に繋がってしまう現場では高い正確性が要求されます。

そのためピッキング作業を担当する人は心理的、精神的負担が大きくかかってしまいます。

これを解決するのが「ARピッキング」です。

ARピッキングはスマートグラスやプロジェクタを通して商品の場所までガイドしてくれます。

そのため、ARピッキングを活用すれば、商品の設置場所に詳しくない人でも正確なピッキングが可能です。

経験年数が浅い人でもARピッキング導入によりいち早く即戦力に加われる点もARピッキングの魅力の一つといえるでしょう。

遠隔業務支援システム

出典:https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/remote/index.html

NECではARピッキングの他にも現場作業をしている従業員をサポートできるように遠隔業務支援システムを提供しています。

現場作業者と支援者を繋げることで下記メリットが実現できると考えています。

  1. 支援者が作業者の視界映像を確認して、状況をリアルタイムで共有
  2. 作業者が正しく作業できるよう、支援者がメッセージや画像を送信
  3. 作業者から送信された視界映像を録画して動画ファイルとして出力

作業者端末としてスマートグラスを使用することで、ハンドフリーで現場作業の実現、また支援者端末として利用することで支援者も作業現場にいながら支援が可能になるでしょう。

Google Glass Enterprise Edition 2

出典:https://www.google.com/glass/start/

Google Glass Enterprise Edition 2はGoogleが法人向けに提供しているものです。

Android上で構築されているため、既に使用しているサービスとAPIを簡単に同期する事が可能です。

Google Glass Enterprise Edition 2はよりスマートでより早く安全に従業員が作業できるようにするデバイスです。

一日装着しても疲れないように軽量に設計され様々な業務で業務効率を向上させるのに役立ちます。

業務に必要な情報とツールにハンドフリーでアクセスが可能なため、作業現場でのチェック確認等、現場の情報をリアルタイムで共有ができます。

Optimal Second Sight

出典:https://www.optim.co.jp/remote/secondsight/

Optimal Second Sightは株式会社オプティムが提供しているサービスです。

現場の作業者が見ている視点をリアルタイムで指示者に共有ができるので現場状況を把握しすぐに対応できます。

またサポート中に資料や図面の共有が可能となっており、口頭での説明では理解しにくい難しい内容の際にも映像共有する事で指示者と作業者間での認識のズレを埋める事ができます。

現場側で撮影した画像を指示者に共有することも可能なためOptimal Second Sightはスピーディーな問題解決に期待がかかっています。

Vision Picking

Vision PickinはDHL社が導入しているサービスで倉庫内通路や商品補完位置の情報をARで表示してくれるサービスです。

220以上の国や地域への配送をサポートするDHLでビジョンピッキング(AR)は活用されています。

従業員はスマートグラスにて商品の保管位置を確認でき、ピッキングミスを削減できるのがメリットです。

実際のデータとしてビジョンピッキング活用により2015年には与えられた2万商品以上をピッキングして9000件を完了させ、作業効率が25%向上したという結果が発表されています。

このことからもわかるように作業スピードを高めるとともにピッキングによるミスを減らすことが期待されています。

ランプ作業の効率化システム

アジアを軸に47空港で航空関連事業をはじめ、多種多様な事業を手がけるグループ会社から構成されているSATS社が導入しているサービスです。

空港の手荷物やコンテナの積み込み作業をARで効率化をするサービスもあります。

SATS社では従業員600名にスマートグラスを採用。

スマートグラスでコンテナのQRコードを読み込むことですぐに搭載方法を確認できます。

また、AR導入でSATS社では業務でスマートグラスを活用することで大型フライトにおける積載時間を15分短縮することを見込んでいます。

|物流業界におけるARまとめ

ARは物流業界において必要不可欠な技術です。

今後、バーチャルショッピング等が一般化してくるとより業務が激化し作業員の負担が大きくなると予想されます。

AR技術を取り入れ仕事を効率化しミスの減少を測ることで物流業界が働きやすい環境になっていくと考えられます。

時代にあった対応をしていき物流業界でのARが一般化していくことを望みます。