時代の変遷に伴い、人々の働き方も柔軟になりつつあります。
新型コロナウイルス流行下では「テレワーク」が日本国内でも採用され、出社する働き方だけではないということは私たちの中でも浸透しつつあるのではないでしょうか。
そこで今回はテレワーク等で利用が可能な「メタバースオフィス」について解説します。
導入を検討されている企業様へ、メタバースオフィス導入によるメリット・デメリット、活用事例、おすすめのサービスをご紹介させていただきます。
尚、メタバースについては以下記事も併せてお読みください。
目次
|メタバースオフィスとは
メタバースオフィスとは、仮想空間上に設置されている疑似オフィスのことです。「バーチャルオフィス」と呼ばれることもあります。
最大の特徴として、現実同様に職場の同僚や上司と同じ空間内で業務を行うことができ、出社と何ら変わらないコミュニケーションをとることができる点が挙げられます。
社員はアバターで出社しますので、今どこにいて、どのようなステータスなのかが一目でわかるようなサービスも増えています。
テレワークでよくありがちなコミュニケーション不足や社員の状況把握不足等の課題を解決できる画期的なアイデアで、現在でも導入している企業は少なくありません。
|メタバースオフィスの種類
メタバースオフィスには、実際のオフィス構造や機能の特徴等により、いくつかの種類に分類されます。
ここでは、代表的な2種類について紹介します。
- 3Dメタバース
- 2Dメタバース
3Dメタバース
VRやMRなどの技術を活用し、3次元の立体的な空間を提供することでよりリアルな空間を提供しているタイプです。ユーザーは自分自身をアバターとして表現し、他のユーザーとの対話や活動が立体的な環境で行われます。
VRヘッドセットやコントローラーを利用する必要があるものもあり、その場合は高度な操作性が必要になります。その分、身体的な動作やジェスチャーを反映させた動きが可能です。
ツールとしては、Meta社が提供する「Workrooms」などが挙げられます。
2Dメタバース
2次元の平面的なデザインで、アニメ、マンガ、ゲームの要素が中心のタイプです。アバターやキャラクターの視覚的な表現が強調されます。
一般的にシンプルで直感的な操作が可能なので、誰でも簡単に扱うことが可能です。アバターは2Dイメージで表現されることが多いです。
また、一般的なウェブブラウザやスマートフォン、パソコンを通じて利用でき、特別なハードウェアやソフトウェアのインストールが必要ないのも大きな特徴です。
ツールとしては、oVice株式会社が提供する「oVice」などが挙げられます。
3D、2Dそれぞれの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
|メタバースオフィスのメリット
メタバースオフィスには、以下4つのメリットがあります。
- 対面と変わらないコミュニケーションが可能
- 場所を問わず勤務可能
- 勤務状況が一目でわかる
- オフィスの賃料がかからない
対面と変わらないコミュニケーションが可能
先述した通り、メタバースオフィスでは対面の時とほぼ変わらないコミュニケーションをとることができます。
従来のテレワークでは、上司や同僚への相談がしにくい、会議以外で気軽に話しかけることができないなどコミュニケーションにおける問題を多数抱えていました。
しかしメタバースオフィスでは、同じ空間内に上司や同僚が常にいる環境となります。ですので、現実同様に会話をしたり、軽い相談や緊急の報告まで、タイムラグがないコミュニケーションが可能です。
また、今何をしているのか、どのような状況なのかといったステータスをアバターに反映することも可能ですので、話しかけても良いのか一目で判断できるようになります。
場所を問わず勤務可能
メタバースの強みである「世界中どこからでもアクセスできる」点が、このメタバースオフィスにも役立ちます。
仮想空間上にあるオフィスですので、インターネット環境とデバイスがあればどこにいても出社して勤務することが可能です。
これにより、遠方で出社ができない優秀な人材も採用できる可能性が一気に広がります。
また、日本国内に限らず海外からもアクセスすることが可能になれば、国内外問わず優秀な人材が集まる組織をつくることができるでしょう。
勤務状況が一目でわかる
メタバースオフィスでは、誰がどこにいてどのような状況にあるかを一目で確認することができます。
「会議中」「休憩中」「作業中」「電話中」など、サービスによって表現できるステータスはそれぞれ違います。
また、提供されているサービスの中には勤怠管理ができるものもありますので、管理側としても勤怠状況を簡単に把握することが可能です。
オフィスの賃料がかからない
メタバース上のオフィスは導入コストやランニングコストがかかるものの、現実のオフィス賃料に比べたら低く抑えることができます。
また、社員の増減にもスムーズに対応することができますので、今後規模が拡大する可能性のある企業でも柔軟に利用することができるでしょう。
もし全てをメタバースオフィスに移行するのは不安だという場合は、現実のオフィスとメタバースオフィスを併用し、現実のオフィス規模を最低限にするという施策を取ることも可能です。
|メタバースオフィスの課題
メタバースオフィスにはメリットがある一方で、以下のような課題もあります。
- 導入費用やランニングコストがかかる
- VR機器やパソコンのスペックが求められる
導入費用やランニングコストがかかる
メタバースオフィスを利用するには、既存のサービスを利用する、もしくは自社独自のメタバース空間を構築する2種類の方法が存在します。
どちらにせよ初期コストとして導入費用は必須であるのと、人数規模に応じたランニングコストが必要になります。
既存サービスを利用すれば費用は抑えられますが、イメージしている空間が見つからないという場合もあります。
自社独自のメタバースであれば企業ごとに特色のある空間をつくることができますが、その分初期費用が数百万程度必要になります。
VR機器やパソコンのスペックが求められる
メタバースオフィスの種類によっては、高性能なPCやVR機器が必要になります。
先述した中ですと、3Dメタバースがこれに該当します。
場合によっては社員全員分の高性能PCやVR機器を用意する必要がありますので、メタバース空間の導入費用に加えてこういったデバイス周りにも経費がかかる可能性があります。
|メタバースオフィスを利用している事例
2024年1月現在、すでに複数企業がメタバースオフィスを実際の業務において活用しています。
本記事ではメタバースオフィスに関するメリット、デメリットをそれぞれ解説してきましたが、実際どのように利用されているのでしょうか。
こちらでは、以下の企業の事例をそれぞれ紹介します。
- 伊藤忠商事株式会社
- 株式会社ブレイクスルー・ネットワーク
- GMOペパボ株式会社
伊藤忠商事株式会社
2022年2月、大手総合商社である伊藤忠商事会社は就活生を対象とした情報提供場所として、「メタバース伊藤忠商社東京本社」を開設。
メタバースオフィスを利用して多くの就活生に自社の魅力、取り組みを訴求することに成功しているのです。
就活生はアバター姿を通じ、実際の従業員を紹介してもらえるフロアや、伊藤忠商事の取り組みが理解できる動画やスタジオを見学できます。
「過去」「現在」「未来」「コーポレートブランディング」「採用情報」という5つの分野に分かれたフロアが展開。
それぞれでは実際のオフィスの様子を見学できたり、就職に関する情報を収集したりできます。
就活生と企業担当者がアバターを通じて交流するため、現実世界とは異なった意見交換が可能です。
より具体的な質問、深い話が実現することでお互いのギャップを埋め、入社後のミスマッチを下げるといった効果が期待されています。
株式会社ブレイクスルー・ネットワーク
株式会社ブレイクスルー・ネットワークは、アプリケーション開発やインフラ構築を手掛ける企業。
コロナ禍よりも早くから社員の育児、介護といった家庭事情に応じた働きを推進しており、2015年からテレワークを導入しています。
2019年にはテレワーク中のコミュニケーション円滑化を目的として、バーチャルオフィスを導入しました。
在宅勤務であっても常にお互いの顔が見える環境で働くことで、実際のオフィスで働いているかのような交流が実現したのです。
社員の要望を定期的にヒアリングしており、機能の拡充を常に図っているブレイクスルー・ネットワーク。
今後は社員の仕事内容に応じた働き方が選択できることを目的に、メタバースオフィスの推進を始めとした取り組みが期待されるでしょう。
GMOペパボ株式会社
2020年4月、インターネット関連サービスを提供するGMOペパボ株式会社はメタバースプラットフォームである「cluster」を導入。
コロナ禍によるテレワーク推進を目的として、メタバースの活用が社内で大きく広がりました。
GMOペパボ株式会社では元々、「cluster」を内定者を対象としたバーチャルオフィスツアーなどに活用していたといいます。
中でも「バーチャルお産合宿」と呼ばれるイベントは人気を集めました。
コロナ禍によって宿に泊まった合宿ができなくなったことから、開催場所をメタバースへ変更。
結果として、自宅以外に宿泊することなく一泊二日での開発合宿が実現したのです。
これまで30名程度だった参加者は200名にものぼり、参加者からは複数の展示を見学できて楽しかったという声が集まりました。
|おすすめのメタバースオフィス
おすすめのメタバースオフィスツール9選を紹介します。
サービスの特徴などから、自社に適したツールを見つけてみてください。
XR CLOUD
XR CLOUDは、monoAI technology株式会社が提供する3Dメタバースプラットフォームです。
大規模同時接続エンジンを搭載していることで、1つの空間に1000名の同時参加が可能です。その特性から、講演会や商談展示会、交流会など、大規模なイベントに広く活用されており、もちろんメタバースオフィスとしても利用が可能です。
3Dタイプでありながらも直感的に操作ができ、アバターを操作しながら音声やチャットでコミュニケーションができます。相手との距離が近いほど、音が大きく聞こえるため、リアルに近い会話を体感できるのも特徴です。
パソコンやスマホなどマルチデバイスに対応しているので気軽に利用できますね。
RISA
RISA(リサ)は、株式会社OPSIONによって提供されている、2Dメタバースのタイプのツールです。
なお、かつては3DメタバースタイプのツールだったRISAは、2Dメタバースタイプにリニューアルされています。
わかりやすいユーザーインタフェースで、初めて体験するユーザーでも直感的に操作ができるため、すぐに使えます。
また、好きなアバターでアクションできて、気軽にコミュニケーションがとれます。
また、複数のフロアを作成して、数千人規模で利用することも可能です。
初期費用は33,000円(税込)で、スモールプランなら、同時接続数は5人で月額4,400円(税込)から利用できます。
最低契約期間は3ヶ月です。専用デバイスは不要で、日本語に対応しています。
Mesh for Microsoft Teams
Mesh for Microsoft Teamsは、Windowsを開発提供するMicrosoft社が発表したサービスです。
2023年10月にプレビュー版が公開されており、3D空間での会議や交流などが実現します。
対応するハードはパソコンに加えて、Meta社(旧:Facebook)が提供する「Meta Quest 」シリーズです。
現在提供されている Microsoft Teamsを経由して利用できるため、今後多くの企業や個人が活用することが期待されています。
従来、 Microsoft Teamsを通じた会議参加はカメラの「オン」「オフ」しか選択できませんでした。
しかし、その時々の状況によってカメラを常時「オン」にできないという人は少なくありません。
Mesh for Microsoft Teamsであれば、「アバター」という選択肢が加わるため、これまで以上に柔軟な会議進行が実現するのです。
MicrosoftはMesh for Microsoft Teamsを単なるビデオ会議サービスとしてだけではなく、その他サービスとのコラボや拡張を計画しています。
Teams内に構築したメタバース空間を通じて会議、プレゼンが可能になるなど、さらなる可能性が期待できるでしょう。
今後の動向に注目すべきサービスの一つです。
以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は合わせてご覧ください。
Horizon Workrooms
Horizon Workroomは、Meta社(旧:Facebook)が提供するメタバースオフィスです。
世界的なSNSサービスであるFacebookを運営するMeta社は、2021年10月に社名を変更しています。
代表サービスである「Facebook」から「Meta」という名称に変更したことからも、メタバースに対する姿勢がうかがえるでしょう。
Horizon WorkroomはMeta社が開発、提供するVRゴーグル「Meta Quest」シリーズを通じてアクセスします。
現実世界で利用しているデスク、パソコン、キーボードといった物体をスキャンし、メタバース空間へ反映することが可能です。
その他メタバースオフィスサービスと比較しても革新的であり、最も近未来的なシステムを持つHorizon Workroom。
機能をフル活用するためには「Meta Quest」が必要ではありますが、ブラウザを経由したビデオ会議であれば誰でも参加可能です。
本格的なメタバースオフィスを構築したいと考えるとき、Horizon Workroomの存在は決して無視できないでしょう。
oVice
Viceは、インターネット上の仮想空間(メタバース)で複数人とリアルタイムで気軽に会話ができる、コミュニケーションツールです。
2Dのバーチャルオフィスで自分のアバターを操作すると、実際のオフィスで隣の人に話しかけるような感覚で、他のメンバーと気軽にコミュニケーションを取ることができます。
クリックだけで操作ができるので誰でも簡単に利用でき、自分がどのようなステータスなのかも一目で表すことができますのでメタバースオフィスとして広く活用されています。
その便利さと気軽さから、oViceは世界で約4,000社の企業に導入され、アフターコロナでのテレワークに役立てられています。
Viket Town
ViKet Townはアバターを通じた交流が可能となるバーチャルオフィスです。
シュミレーションゲームのような空間にて、仮想通貨である「vike」を活用した経済が展開されます。
分散型自律組織と称される「DAO」によるチーム運営をベースに、メタバースオフィスを構築することも可能であり、比較的自由度の高い利用が魅力。
経営や組織力の強化を目的としていることから、様々な数値を見える化できる空間が実現できます。
勤怠や社内報、日報、位置情報といった機能に加えて、チームごとに共有できるアラート、さらには健康管理なども可能。
チーム全体のコミュニケーション向上、成果向上など多角的なサポートがメタバースオフィスを通じて実現するでしょう。
ViKet Townは以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は合わせてご覧ください。
mycrew
mycrew(マイクルー)は、株式会社mycrewが提供する2Dメタバースオフィスツールです。
mycrewでは、メンバーのアイコンが、ステータスに応じた色付きで表示されるため、話しかけていいかがすぐわかるのが特徴。
また、フロアボードと呼ばれる各フロアに設置されたチャットスペースがあり、気軽に呼びかけができるため、雑談や相談がしやすいのも特徴です。
スタートプランでは、1ユーザーあたり月額500円で、2週間の無料トライアルもあります。
利用人数の制限はありませんが、最低利用人数があります。最低利用人数や他のプランの詳細などについては、問い合わせが必要です。
なお、専用デバイスは不要で、日本語に対応しています。
LIVEWORK
LIVEWORK(ライブワーク)は、株式会社ライブリンクスが提供するバーチャルオフィスツールです。
パソコンのカメラで自動撮影された写真が、一定間隔で共有されるワーカービュー機能があるのが特徴。
一緒に働く社員が見えるため、同じオフィスで働いている一体感が生まれます。
メタバースオフィスのツールでは、使い慣れるまで時間がかかるものが多いのに対して、LIVEWORKでは、シンプル操作が可能であり、誰でも使いやすくなっています。
また、ワンクリックで希望の相手と気軽に音声通話ができるインスタントトーク機能があり、あたかも近くの同僚に話しかける感覚でコミュニケーションがとれます。
参加人数は10名からで、10名単位で追加購入できます。ライトプランでは、月額2,750円(税込)で10名の利用が可能です。
30日間の無料トライアルもあります。
プランによって、ビデオ利用時間や音声通話人数などが変わります。詳しくは問い合わせください。
なお、専用のデバイスは不要で、日本語に対応しています。
Sococo
Sococo(ソココ)は、株式会社テレワークマネジメントが提供する2Dメタバースオフィスです。
Sococoでは、執務エリアや会議エリア、休憩エリアなど部屋を移動するだけで、相手の状況がわかるのが特徴です。
また、アイコンの表示で、相手の様子が一目でわかるので、連絡や相談が気軽にできます。
また、同じ部屋にいれば、メンバーの相談や会話が自然と聞こえるので、オフィスといるときと同じように気軽に話しかけられます。
ノック機能によりノックをして入室できるのも特徴で、会議中の社員に急ぎの連絡をしたいときも、相手に失礼な印象を与えずに連絡がとれます。
初期費用無料で、10名以上から月額25,000円で利用でき、最大3週間の無料トライアルもあります。
メタバースオフィスのツールでは、ユーザー数やスペースに応じて追加費用がかかるのが一般的ですが、Sococoでは、ユーザー数やスペースを増やしても、追加費用がかかりません。
また、専用デバイスは不要で利用でき、日本語に対応しています。
|まとめ
メタバースオフィスについて、利用するメリットから現在抱える課題、そして実際の事例から各種サービスを紹介しました。
2024年5月にはコロナ禍が明け、これまで通りの日常が戻ってきてから丸1年が経過します。
コロナ禍によって急激に普及したテレワークですが、その利便性の高さから今後もメタバースオフィスを活用する企業は増加することが想定されます。
Mesh for Microsoft Teamsなど新たなサービスの登場も期待されますので、最新動向に注目していきましょう。
メタバースオフィスに関する特徴やメリット、バーチャルオフィスとの違いについては、ぜひこちらのサイトもご覧ください ≫DX攻略部