ファッション業界とAR技術は親和性があり、2010年頃からARを用いた試着体験を提供しているブランドも存在しています。
しかし当初は導入時のコストや利便性が低く、幅広く受け入れらる技術ではありませんでした。
しかし、現在ではスマートフォンやタブレットの進化によりARは身近な存在になり、
さまざまな分野で改めて注目されています。
今回は現在のファッション業界におけるAR技術導入のメリットと活用事例をご紹介しますので、是非最後までご覧ください。
目次
|ARとは
ARとは、Augmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)の略です。
この技術は目の前に実際に見えている空間やモノに対して、
ARグラスやスマートフォン、タブレットなどデバイスを通してバーチャルな視覚情報を一緒に映し出す事が出来ます。
例えば商品のカラーバリエーションやサイズ、部分的なカスタマイズなど、
視覚情報に対して補助する内容を加えて現実の世界をより分かりやすくする技術です。
また、ARを使えば目の前で確認できないものをまるで存在しているかのように体験することができます。
ARは情報の補助だけではなく現実世界のイメージを拡張させて、
手間をかけずに好きな情報を自分の使いたい場面に投影して体感できるのが特徴です。
|ファッション業界でのARの活用メリット
現在におけるファッション業界にAR技術を導入するメリットは以下の3点です。
- 新しいブランド表現ができる
- 購買率改善・ミスマッチの削減
- SNSでの認知向上
マーケティングにも活用できるメリットもありますので是非ご覧ください。
新しいブランド表現ができる
まず、ECショップの場合であれば3D商品の表示の仕方や世界観を作り込めば、ユーザーの見たい現実空間でブランドを表現できるだけではなく、ユーザーをブランドの世界に「没入」させる事もできるでしょう。
一方で実店舗の場合はARを導入した目新しいディスプレイを設けることができます。
例えば、鏡のような画面の前に自分が立った時にブランドのコレクションが自身の画像に自動で投影されたり、そこの店舗に行かなければ見れない世界観やコレクションを用意したりすれば、今までにはなかった新しい体験を提供することも可能です。
ECサイト、実店舗でも共通して言えることは、ユーザーがARを通して「没入感」を楽しんで、ブランドの世界観を感じることができるのが特徴です。
購買率改善・ミスマッチの削減
ネットや物流の発展により、どこでも買い物ができる環境になり、高級ブランドからファストブランドまでさまざまなお店がECサイトに力を入れて顧客獲得を目指しています。
しかし、手軽に買い物ができるようになっても実物が見れない事で、消費者と商品のミスマッチが起きやすいのも現実です。
今までは、製品マニュアルの情報や多くの画像、実際の利用者のレビューが購入の後押しになっていましたが、それでもある一定数サイズが合わなかったりレビューとの印象が違ったりと、ミスマッチを回避することが困難でした。
そこにARを導入し、さまざまな方法で仮想試着を可能にすることで、
ミスマッチの削減をするだけではなく、購入前の満足度や期待度も上げやすいので、購買率の改善が期待されています。
SNSでの認知向上
AR体験はSNSなどの情報発信とも相性が良いです。
例えば宣伝したい洋服やブランドのアイコンを写真映えする画像に加工して、指定した店舗やスポットで写真撮影すると、特別にその画像が映し出されるなど、
ファンや消費者心理をくすぐるような仕掛けが多数考えられます。
このようにスマートフォンを使ったAR画像は拡散しやすく、SNSでの広告効果が高いです。
ブランドのキャンペーンと合わせて投稿を促すプロモーションをかければ幅広く拡散も可能でしょう。
これらは試供品や在庫を抱えず、コストや広告宣伝費も抑えられるだけでなく、
ユーザーに直接情報を届けられるため、購買率も高めながらブランドの宣伝効率も上げることが期待できます。
|ファッション業界でのARの活用事例
ファッション業界でAR技術を導入した企業のご紹介を致します。
高級ブランドから洋服、アクセサリー、眼鏡、時計など多岐にわたるブランドとアイテムが斬新なアイデアによって実践されていますので、AR導入の参考になれば幸いです。
GUCCHI
GUCCIは百貨店でも必ず見かけるハイブランドですが、積極的にAR技術を導入し、ネットショッピングの販売網を広げています。
2019年から公式アプリ内でARを導入し、GUCCIの高級スニーカー「エースシリーズ」の仮想試着を皮切りに、現在では以下のアイテムが試着可能です。
・時計
・スニーカー
・リップスティック
・アイウェア
・ハット
・雑貨
・マスク
これらのAR画像の完成度も高く、画面の中の動く身体や風景をしっかり認識し、自分が動けば画面内の商品も連動して動き、商品の装着感を演出しています。
仮想試着できるモノもこれから増えていきますが、いまでもカラーバリエーションや多数のサイズ感を体験できるので、気軽にハイブランドの雰囲気を味わえることでしょう。
Chiquelle
Chiquelleはスウェーデン発のファッションブランドです。
ARアプリ「Chiquelle Style AR」はオンラインの顧客向けにARならではのエッセンスを入れて、オンラインでも満足度を得られるファッション体験を提供するように工夫されています。
ユーザーは自分のボディサイズや容姿の特徴を入力したアバターを作ることができ、そのアバターでECサイトに並んでいる洋服を試着していきます。
また、アバターにはヘアメイクやメイクも施すことができるので、普段の自分や用途によって細かなシチュエーションを設定でき、着てみたい場所を映し出す事も可能でその場の雰囲気に服があっているかどうかなど、TPOも確認できるのが特徴です。
calif
califは渋谷PARCOのセレクトショップです。
califでは実店舗とセレクトショップの強みを掛け合わせたAR体験を提供しています。
店頭にあるAR専用の鏡の前に立つと、試着してみたいファッションアイテムを選択する事ができます。
セレクトショップは複数のブランドのイチオシ商品が見れる事がメリットですが、在庫管理が難しく着てみたいカラーやサイズがない場合があります。
その課題をARを使って補い、シームレスな着用イメージの確認が可能です。
また、試着点数が増えればメイクが試着服につかないかなど、気苦労もたえません。
その辺りのストレス軽減も購買率を高めるポイントです。
Warby Parker
Warby Parkerはアメリカのメガネブランドです。
同社は以前からオンラインでのメガネ販売に取り組んでいるブランドで、今まではユーザーが気になるフレームをオンラインでチェックして、実施に取り寄せて試着し、気に入ったモノを注文するという方法をとっていました。
そこにiPhoneX以降に搭載されている顔面3Dマッピング機能が登場し、スマートフォンで顔をスキャンする機能でARを利用したメガネ試着サービスを開始しました。
スマートフォンは手鏡のようにも使えるので、メガネの試着体験には非常に向いているデバイスです。
好きなヘアスタイルやファッションと組み合わせて気軽に試着できることで、カスタマーエクスペリエンスの実現に貢献しています。
Lologem
Lologemは韓国のアクセサリーメーカーです。
オンラインでアクセサリーを販売するECサイトはよく見ますが、やはり質感や大きさなど、実際に装着したところが見てみたいのが本音です。
実店舗の試着でもイヤリングやピアスを耳にあてがうツールがあるほど、重要なポイントです。
オンラインでアクセサリーを展開する同社は、2018年に人の顔を3Dで認識してイヤリングを試着できるアプリをリリース。
同社のECサイトで気になるイヤリングを見つけたら、顔認証機能で自身をスキャンして3D画像化されたイヤリングを実際に耳に装着しているイメージができます。
顔の動きに合わせてアクセサリーも動き、大きさも変化するため、本当に装着しているようなサイズ感で見れるのが特徴です。
KARITOKE
KARITOKEは日本で時計のサブスクリプションサービスを展開しています。
ロレックスやカルティエなど高級時計を買う前に、実際の時計をサブスクリプションで貸し出しをして、気に入った時計があれば購入できるサービスです。
そのサービスの一環で専用アプリを使い気になる時計を選び、
カメラを起動してメジャーをかざすことで時計の試着体験ができるARを展開しています。
事前にARで試着できることで、普段の自分のファッションと合わせてみたり
文字盤の大きさやベルトの長さなど事前に確認し調整できることで、
実物を装着したときもピッタリのサイズで着ける事が可能です。
また、購入を迷っている時などにAR試着で再検討でき、
ユーザーの購買意欲を維持させる効果もあるでしょう。
H&M
H&Mは、スマホアプリ「Snapchat」のカメラ技術を活用し、H&Mのモバイルアプリ(Android/iOS)とSnapchatを通じて、3つの拡張現実(AR)上で、H&Mの商品(衣服)を試着することができます。
このAR体験は、H&Mとロンドンを拠点とするデジタル・アトリエ兼シンクタンク、Institute of Digital Fashion(IODF)が共同でデザインしたものです。
|まとめ
今回はファッション業界におけるAR導入のメリットと活用事例をご紹介致しました。
ファッションとARは親和性も高く、個人のイメージや個性を大事にするユーザーにとって特別な体験ができるツールです。
実際、店舗で何着も試着することは難しいですし、何店舗も回るのも大変でしょう。
また、販売側にとってもユーザーに飽きられないように新しい価値提供をしないといけません。
その双方の課題を解決して、シームレスに結びつけるのがAR技術です。
ユーザーはARにより、ファッションを身近に体験できるようになりますし、
販売側は開発費や返品によるコスト削減にもつながり、さらにユーザーにとって有益なサービスを生み出すことができます。
今後もファッション業界とARの関係性は発展していくでしょう。