GPT-3とは、OpenAIが開発した人工知能技術のひとつで、自然言語処理(NLP)の分野において最も高度な技術のひとつとされています。
GPT-3は、膨大な量のテキストデータを学習して、自然言語の理解や生成を行うことができます。
この技術は、様々な分野で活用され、自動翻訳や文章生成、音声認識、自動要約などのアプリケーションに応用されています。
今回の記事では、GPT-3の仕組みや活用事例について詳しく解説していきます。
目次
|GPT-3とは
GPT-3は、Generative Pretrained Transformer 3の略称であり、OpenAIが開発した自然言語処理(NLP)技術です。
自然言語処理とは、人間の言葉(自然言語)を機械的に処理し、その内容を抽出することです。
GPT-3は、トランスフォーマーという機械学習の手法を使用して、膨大な量のテキストデータを学習することで、自然言語の理解や生成を行うことができます。
GPT-3は、1750億個のパラメーターを持つ、これまでで最も大きなモデルのひとつであり、非常に高い自然言語処理能力を持っています。
パラメータとは、プログラムの動作に影響を与えるデータで、変数のことです。
GPT-3の応用例としては、文章生成や自動翻訳、音声認識、自動要約などがあります。
GPT-3は、その高度な技術力から、AI分野での注目度が高く、今後のNLP技術の発展に大きな影響を与えることが期待されています。
|GPTの歴史
GPTは、2018年に初めて登場しました。
GPTは、Transformerのデコーダー部分だけを使って、大量のテキストデータから事前学習を行いました。
事前学習とは、特定のタスクに依存しない一般的な言語知識を学習することです。
GPTは、事前学習したモデルをさまざまなタスクに適応させることで、高い精度を達成しました。
GPTのパラメータ数は1億1700万個でした。
GPTのパラメータは、データからパターンを学習し、新しい入力データに対して予測を行うために使用されます。
GPTは、パラメータの数が非常に多いため、トレーニングには大量のコンピューティングリソースが必要となります。
しかし、学習済みのGPTモデルを利用することで、これらのリソースを必要とせずに自然言語処理タスクを実行することができます。
GPT-2は、2019年に発表されました。
GPT-2は、GPTの改良版で、より多くのテキストデータから事前学習を行いました。
GPT-2は、さまざまなタスクにおいて、事前学習したモデルだけで高い性能を示しました。
GPT-2は、パラメータ数が15億個と大幅に増えました。
GPT-3は、2020年に発表されました。GPT-3は、GPT-2のさらなる拡張版で、45TBのテキストデータから事前学習を行いました。
GPT-3は、事前学習したモデルだけで、ほとんどの自然言語処理のタスクにおいて人間並み以上の性能を達成しました。
GPT-3は、パラメータ数が1750億個と驚異的な規模になりました。
GPT-4は、GPT-3のさらに進化版で、1PB(ペタバイト)のテキストデータから事前学習を行うと言われています。
GPT-4は、事前学習したモデルだけで、自然言語処理だけでなく画像や音声などのマルチモーダルなタスクにも対応できると期待されています。
GPT-4のパラメータ数は100兆個あると言われています。
|GPT-3の仕組み
GPT-3は、Googleが開発したTransformerというモデルをベースにしています。
Transformerは、単語や文の意味や関係を表すベクトルを計算することで、自然言語処理のタスクを行うことができます。
GPT-3は、Transformerの一部であるデコーダーだけを使っています。
デコーダーは、ある単語の次に来る単語を予測することができます。
例えば、「今日は」という単語が与えられたとき、「晴れです」とか「仕事が忙しいです」とか「何か予定がありますか」とか、次に来そうな単語を予測します。
この予測は、前の文脈にある単語との関係性に基づいて行われます。
GPT-3は、45TBのテキストデータからこの予測を学習します。
このテキストデータには、インターネット上のさまざまな文章や書籍やニュースなどが含まれています。
GPT-3は、このデータから得た言語知識をもとに、さまざまな自然言語処理のタスクに対応できます。
例えば、文章生成や要約や質問応答や機械翻訳などです。
|GPT-3でできること
GPT-3は、自然な文章を生成できる言語モデルです。
インターネット上のさまざまなテキストデータを学習して、言語知識を持っています。
そのため、文章生成以外にも、機械翻訳や質問応答などの自然言語処理のタスクに対応できます。
GPT-3は、数行の文章から長い文章を作成したり、商品の概要や写真からキャッチコピーを作成したり、文章でイメージを伝えるだけでアプリケーションのデザインを生成させたりすることができます。
これらの応用例は、GPT-3の規模の大きさや汎用性を示しています。
|GPT-3のメリット
GPT-3は、大量のテキストデータから言語知識を学習して、自然な文章を生成できる言語モデルです。
GPT-3は、文章生成だけでなく、機械翻訳や質問応答などのさまざまな自然言語処理のタスクにも対応できます。
GPT-3は、規模が大きくて汎用性が高いので、多くの分野で活用できます。
作業効率を上げられる可能性
GPT-3は作業効率を上げられる可能性があります。
大量のテキストデータから言語知識を学習して、自然な文章を生成できる言語モデルです。
GPT-3は、文章生成だけでなく、機械翻訳や質問応答などのさまざまな自然言語処理のタスクにも対応できます。
GPT-3は、事前学習したデータの中にプログラミングに関するデータが含まれているため、ソースコードを生成したり、アプリケーションのデザインを生成させたりすることができます。
これらの機能は、開発者の作業効率を高めることができます。
ライターの負担を減らせる
GPT-3は、自然言語処理による文章生成が可能なため、ライターの負担を減らすことができます。
GPT-3は、与えられたトピックやコンテキストに基づいて、自然な文章を生成することができます。
これにより、ライターが手作業で行っていた記事の執筆やレポートの作成などのタスクを自動化することができます。
また、GPT-3は多様な言語表現を持ち、独自の言語スタイルを学習することができるため、ライターが新しいスタイルを取り入れることにも役立ちます。
これにより、ライターは時間を節約し、より創造的なタスクに集中することができます。
しかし、GPT-3はまだ完全に自律的な文章生成ができるわけではなく、機械が自動生成した文章を人間がチェックする必要があります。
ライターは、GPT-3が生成した文章をチェックし、必要に応じて修正することで、より質の高いコンテンツを作成することができます。
大手企業との提携で信頼性が高い
GPT-3は、オープンソースの人工知能技術を提供しているOpenAIによって開発されました。
OpenAIは、イーロン・マスクやピーター・ティールなどの著名な投資家から出資を受けており、テクノロジー業界で高い評価を受けています。
また、GPT-3はMicrosoftと提携しており、Azureプラットフォームを介してAPIサービスを提供しています。
Microsoftは、世界的に信頼性が高いIT企業であり、セキュリティやプライバシーなどの面でも高い水準を維持しています。
しかし、GPT-3にはまだ改善の余地があり、特に偏ったデータに基づいたバイアスを排除することが課題となっています。
これらの問題に対処するために、OpenAIは透明性と責任を重視した取り組みを行っており、従業員や外部研究者からのフィードバックに基づいて技術の改善を進めています。
|GPT-3のデメリット
GPT-3のデメリットとして、表現の限界や料金がかかる、フェイクニュースの可能性があります。
単語の次にくる単語を予測することはできますが、文章の意味や文脈を理解することはできません。
そのため、文章生成に矛盾や不自然さが生じる可能性があります。
GPT-3は、OpenAIが提供するAPIを通じて利用できますが、そのAPIは有料です。
また、非常に大規模なモデルであるため、その運用には高いコストがかかります。
見出しを入力すればそれに応じた文章を自動生成することができますが、その文章は必ずしも真実や正確さを反映しているとは限りません。
GPT-3によって生成されたフェイクニュースは、人間によるものと区別がつきにくく、人々の考えや行動に悪影響を及ぼす可能性があります。
表現の限界がある
GPT-3は、生成された文章が完全に自然であるわけではありません。
単語の関連性や文法的な規則に基づいて文章を生成するため、単語の意味や文脈、行間の意味などは十分に理解できているわけではありません。
そのため、生成された文章には一貫性がなく、意味のない文章が生成されることもあります。
また、感情表現や論理的思考についても、限界があるため、GPT-3によって生成された文章には、感情表現が不適切な場合や、論理的に矛盾する文章が生成されることもあります。
そのため、生成する文章は確認と修正が必要です。
料金がかかる
GPT-3は、導入には一定のコストがかかります。
特に、企業や開発者が独自にGPT-3を導入する場合には、データセットの作成やモデルの学習、システム構築などの技術的な要件が必要であり、それに伴うコストがかかります。
また、GPT-3の利用には、API利用料がかかります。利用者によっては、大量のリクエストを送信する場合には、高額なAPI利用料が発生する可能性もあります。
一方で、GPT-3を提供する企業やサービスを利用する場合には、導入コストが低い場合があります。
企業や開発者が独自に開発することなく、既存のサービスを利用することで、技術的な問題やコストを回避することができます。
また、GPT-3を提供するサービスの品質や機能性によって、価格設定が異なるため、良質なサービスほど高価なことも想定されます。
しかし、API利用料が発生するため、利用者は必要な機能を正確に把握して、適切なサービスを選択する必要があります。
フェイクの可能性
GPT-3は、機械学習アルゴリズムを用いた自然言語処理技術に基づいており、その出力においてフェイクニュースの可能性があることが指摘されています。
大量のデータを学習しており、その中には偏見や差別が含まれている場合があります。
そのため、GPT-3の出力には、それらのバイアスが反映される可能性があります。
この問題に対応するため、データセットの選定や前処理、機械学習アルゴリズムの改善などが必要とされています。
また、利用者がGPT-3を利用する際には、フェイクニュース対策が重要です。
GPT-3を利用して生成された文章が、真偽の確認ができない情報を含んでいる可能性があるため、利用者は出力された文章の正確性や信憑性を確認することが必要です。
また、GPT-3を用いた文章の生成においては、慎重な判断が必要であり、社会的な影響を考慮した利用が求められます。
|GPT-3の活用事例
GPT-3の活用事例として、Viableが開発したAIツールや、Microsoft Power Appsのアプリ開発支援、Fable StudioのAIアバター制作におけるGPT-3の活用について紹介します。
これらの事例から、GPT-3が企業やクリエイターの業務効率化や新しい価値の創造に貢献する可能性があることが示されています。
Viable
Viableは、顧客のフィードバックを分析して、ビジネスに役立つ洞察を提供するAIプラットフォームです。
Viableは、顧客サポート、ライブチャット、CRM、顧客調査などのデータを集約し、顧客の思考や感情を理解するのに役立ちます。
Viableのシステムは、顧客のフィードバックデータを取り込み、構造化します。
そして、チームの誰でも自然言語でデータに質問すると、数秒でデータに基づいた回答を得ることができます。
Viableは、手作業で時間のかかる分析やレポート作成を自動化し、盲点をなくして顧客の声に耳を傾けることができるツールです。
Microsoft Power Apps
Microsoft Power Appsは、プログラミングの知識なしにアプリケーションを作成できるプラットフォームです。
アプリケーションを作成するためのデザイン、接続、およびビルドツールを提供し、ユーザーが既存のデータソースやAPI、またはMicrosoft 365のアプリケーションと統合して、カスタムアプリケーションを作成できます。
Power Appsは、Web、iOS、およびAndroid向けにアプリケーションを構築することができ、共同作業やデータの共有も可能です。
Fable Studio
Fable Studioは、ストーリーテリングと仮想現実技術を組み合わせて、没入型のストーリー体験を提供するVR開発会社です。
同社は、GPT-3を活用して、テキストに基づくストーリーテリングの自動化を目指しています。
Fable Studioが制作した「Wolves in the Walls」は、GPT-3を使用してリアルタイムでテキスト生成することで、ユーザーの回答に合わせてストーリーを自動的に変更できるインタラクティブなVR体験となっています。
|まとめ
GPT-3は、巨大なトレーニングデータセットから構築された言語モデルで、文脈から適切な応答を生成することができます。
そのため、文章の生成や文章の意図を推測することなど、様々な応用が可能です。
GPT-3は、文章の自動生成や言語処理において、高い精度と自然な表現を持っています。
そのため、ビジネス分野やクリエイティブ分野など、様々な分野で活用されています。
例えば、Viableは、GPT-3を用いて、自動でレポートを生成するソフトウェアを開発しています。
また、Microsoft Power Appsでは、GPT-3を用いて、自動で文章を生成するアプリを提供しています。Fable Studioは、GPT-3を用いて、仮想キャラクターの自然な会話を実現しています。
GPT-3は、自然言語処理技術の革新として注目されており、今後も様々な分野での活用が期待されています。