メタバースが最近注目されていますが、世の中を大きく変えるような可能性や将来性はあるのでしょうか。
メタバースは、ゲームが好きな人たちだけではなく、幅広い分野で企業のビジネスや個人の生活を大きく変えるものです。
ただ、メタバースの発展には課題も多くあり、一般の方に普及するためには課題を一つひとつ解決していく必要があります。
本記事では、メタバースの現状による可能性・将来性の分析や、
現状のビジネスモデルの把握、メタバースが発展するための課題について解説しています。
ぜひ最後までお読みいただき、メタバースの可能性や将来性を知る手掛かりとしてください。
目次
|メタバースとは?

メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間であり、ユーザーが「アバター」と呼ばれる自身の分身を介して活動し、他者とリアルタイムで交流できる世界(または概念)のことです。
「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語であり、現実世界と同様に、多くの人々が同時に存在・活動できる特徴を持っています。
その為、空間内で独自の社会性や経済活動(例:NFTなどのデジタルコンテンツ売買やイベント開催)が営まれる点が最大の特徴です。
現在はフォートナイトやRobloxなどのゲームでの活用を始め、教育、医療、小売など、あらゆるビジネス領域での活用が徐々に進んでいます。
メタバースの市場規模の現状
メタバースの市場規模は、国内外問わず急速な拡大が予測されており、次世代の巨大市場として大きな注目を集めています。
海外の市場規模
世界のメタバース市場は、成長が見込まれています。
米調査会社Fortune Business Insightsによると、2024年に737億7,300万ドル(約11兆円)と評価された市場は、2032年までに7,639億7,000万ドル(約114兆円)に達すると予測されています。
また、総務省「令和6年版 情報通信白書」では、世界の市場が2022年の461億ドルから2030年には5,078億ドルまで拡大するとの予測も紹介されており、分野別では特にeコマースやゲームでの活用が市場を牽引すると見られています。
日本の市場規模
一方で日本国内のメタバース市場も、海外と同様に力強い成長が見込まれています。
株式会社矢野経済研究所の調査によれば、2023年度の国内メタバース市場規模は1,863億円(推計)でした。
これが2024年度には2,750億円(見込み)へと成長し、さらに2028年度には1兆8,700億円に達すると予測されています。
特に自治体による行政サービス(メタバース役所など)での活用や、産業分野(教育、小売、エンターテイメント)での具体的なユースケースが普及し始めており、市場拡大の土台が着実に形成されています。
|メタバースの将来性とは?

メタバースは、単なる新しいエンターテイメントではなく、コミュニケーション、経済活動、働き方、教育など、あらゆる領域に浸透する新たな社会インフラになると見られています。
その将来性が高いとされる背景には、以下の3点があります。
1. 関連技術の進化
メタバースの体験価値は、関連技術の進化によって飛躍的に向上しています。
- XR技術
VRヘッドセットやARグラスの高性能化・軽量化(例:Apple Vision Proの登場)により、没入感と実用性が格段に向上しました。
- 通信技術
5Gや次世代の6Gによる大容量・低遅延・多接続通信が、多数のユーザーが同時接続するメタバース空間を安定させます。
- AI・ブロックチェーン
AIによるリアルタイムな3D空間の自動生成や、ブロックチェーン(NFT)によるデジタルアセット(資産)の所有権証明が可能になり、空間のリアリティと経済活動の信頼性が担保されつつあります。
これらの技術が融合することで、メタバースは「実用的なビジネス・生活空間」へと進化しています。
2. 巨大テック企業の投資
先ほどの市場拡大予測の背景として、Meta社(旧Facebook)、Apple、Microsoft、Googleといった世界の巨大テック企業が、次世代のプラットフォームを握るべく巨額の投資を続けています。
こういった企業の本格参入は、デバイス開発やプラットフォーム構築を加速させるだけでなく、仮想空間内でのデジタルコンテンツ売買、イベント、広告といった”メタバース経済圏”を活性化させます。
これは、現実世界を超える規模の新たな経済圏を生み出す可能性を秘めています。
3. 社会課題の解決
メタバースは、現実世界が抱える「物理的な制約」や「地理的な格差」といった課題を解決する強力なソリューションとして期待されています。
その代表例が「デジタルツイン(現実空間の再現)です。
現実の工場や都市空間をメタバース上に忠実に再現することで、製造ラインの事前シミュレーションによる最適化、都市計画の合意形成、あるいは現実では試せない災害シミュレーションが可能になります。
これにより、大幅なコスト削減、開発期間の短縮、安全性の向上が実現します。
また、コミュニケーションにも新しい形ができるでしょう。
アバターを介した「バーチャルオフィス」や「バーチャル教室」などは、同じ空間を共有する感覚を生み出します。
これにより、偶発的な雑談や一体感のある共同作業が促進され、リモートワークや不登校などの課題であったコミュニケーションの希薄化や創造性の低下を解消します。
さらに、建設現場や医療現場など、物理的な移動が必須だった業務も、遠隔からの熟練者による技術指導や共同作業支援が行えるようになり、人材不足の解消にも繋がります。
教育、医療、地域社会のあり方も変わるでしょう。
地理的な制約なく、世界中の誰もが高品質な教育(例:危険な化学実験のシミュレーション)や医療(例:手術シミュレーションによる技術向上、遠隔診療)へアクセスできる環境が整いつつあります。 身体的なハンディキャップや距離の問題で社会参加が難しかった人々も、アバターを通じて自由に活動できるようになり、より社会課題の解決に貢献する可能性を秘めています。
|メタバースのビジネスモデル3選
メタバースを活用したビジネスモデルが、以下のように現在でも多数存在します。
- TOKYO GAME SHOW VR 2021
- Virtual AKIBA World
- cluster
メタバースの可能性を理解するためにも、一つひとつ見ていきましょう。
・TOKYO GAME SHOW VR 2021

出典:https://tgsvr.com/
「TOKYO GAME SHOW VR 2021」は、2021年9月30日から2021年10年3日の日程でWebVR会場の「DOOR」で開催されました。
東京ゲームショウでは初めてのVRイベントで、海に浮かぶメイン会場のGAME FLOATと、空に浮かぶGAME FLOAT SKの2会場で以下のイベントが行われました。
- GAME FLOAT:企業スペースやスペシャルルーム、公式放送を見るシアターを設置。また、公式ショップを運営
- GAME FLOAT SKY:アバターコスチュームの販売が行われ、Vtuberによる接客も実施
「東京ゲームショウ2021」は、コロナ禍のため2年連続でオンライン開催となりました。
・Virtual AKIBA World

出典:https://jrakiba.vketcloud.com/VAW/
「Virtual AKIBA World」は、2022年3 月にメタバース内にオープンした世界初のメタバース・ステーションです。
秋葉原駅や駅周辺が、メタバース内ではシン・秋葉原駅やシン・秋葉原駅前広場などとして再現されています。
現実世界と同じように駅の改札から駅に入って電車に乗ったり、シン・秋葉原駅周辺の街を歩いたりなどを体験できます。
また、来訪者同士のコミュニケーションも可能です。
なお、JR東日本の駅にもあるテナントビルブランド・アトレも近日オープン予定で、現実世界と同じようなことがメタバース内で行われています。
今後はビジネスでの展開も予定されており、現段階ではNTTドコモとの連携に合意しています。
・cluster

出典:https://cluster.mu/
「cluster」は、「イベント」と「ワールド」の二つの楽しみ方があるメタバースプラットフォームです。
イベントでは音楽ライブやカンファレンスなどを楽しめて、数万人の同時接続ができるため、大規模なイベントの開催も可能です。
ワールドは参加者が作った仮想空間で遊べるため、参加者数に比例してワールドの多様性が広がります。
また、clusterではVRデバイスだけではなくスマートフォンやパソコンからでも利用できるため、他のメタバースやVRイベントよりもハードルが低いことが特徴です。
ちなみに、clusterを運営しているクラスター株式会社は2015年に設立されたばかりの新しい会社です。
|メタバースの課題とは?
メタバースをより将来性あるものにするためには、様々な課題を解決していかなければなりません。
現段階で考えられるメタバースの課題に以下のようなものがあります。
- メタバース内での法律やルールの整備
- VR機器の普及
- メタバース依存や現実世界のコミュニケーション不足
メタバースの将来性を判断するためにも確認していきましょう。
メタバース内での法律やルールの整備
メタバースの課題に法律やルールの整備が追いついていない点があります。
現在の法令では物理的に存在するものに所有権があり、メタバース内のような仮想空間での商取引を想定していません。
そのため、メタバース内で支払済みの商品が受け渡されないような場合に、法的に対応することが難しい状況です。
ただ、このようなメタバースの法律やルールの整備への動きもあります。
2021年11月に「バーチャル渋谷」の運営経験を活かし、課題解決や情報発信のために「バーチャルコンソーシアム」が設立されました。
バーチャルコンソーシアムはメタバースの発展のために、商取引のルール作りやコンプライアンスなどのガイドライン策定を進めています。

VR機器の普及
多くの方が満足するレベルまでメタバースが発展するためには、没入感が得られるVRデバイスが必要ですが、現状はあまり普及していません。
現状のVRデバイスは一般の方にとって購入しにくい価格です。
Metaが販売している2022年5月時点の最新モデル「Meta Quest 2」の定価(税込み)は128GBで37,180円、256GBで49,280円です。
VRデバイスはスマートフォンやパソコンのように生活に必要なものではなく、一部のコアな層が持っている状況です。
一般的なユーザーが利用するためにも、手頃な価格や便利なアプリの開発などの利用しやすさが求められます。
メタバース依存や現実世界のコミュニケーション不足
メタバースの発展によって考えられる問題として、メタバース依存や現実世界でのコミュニケーション不足が考えられます。
メタバースが発展すれば現実世界よりも楽しく有意義に感じる人が増加します。
ゲームやインターネット、SNSなどが楽しく感じて依存するのと同じようにメタバースに依存し、現実世界よりもメタバース内の自分が気になってしまうのです。
特にメタバースはゲームとの親和性が高いため、メタバース内でのゲームにはまってしまう方が増えるかもしれません。
また、メタバースへ依存することで現実世界での交流が減ります。メタバース内では多くの方と会話するが、現実世界では誰とも話さない人が多くあらわれるかもしれません。
|まとめ
メタバースは世の中を大きく変えるような可能性にあふれています。
メタバースの将来性をいち早く察知して企業が投資を行い、医療機関もメタバースを活用しようとする動きがある状況です。
また、現時点でもメタバースを活用した多数のビジネスモデルが存在していて、今後も増えることが予想されます。
順調に見えるメタバースの活用ですが課題も多数存在しています。
ただ、それらの課題を解決するための動きもあり、メタバースから目をそらせない状況がこれからも続いていきそうです。























