「画像や文章をAIに作成してもらった」という話をよく耳にするようになったと思いませんか?

画像を生成する「Stable Diffusion」や「Midjourney」、自然な文章を作成する「ChatGPT」などがそのAIとして代表的です。

これらはジェネレーティブAIと呼ばれ、さまざまな分野で注目されており日々進化を続けています。

今回の記事では、ジェネレーティブAIがどのようなシーンで活用されているのか、その事例を紹介していきます。

メリットや課題についても解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

|そもそもジェネレーティブAIとは?

ジェネレーティブAIとは、与えられた入力データに基づいて0から新しいデータを生成するAIのことを指し、AIがもたらす新たな設計手法です。

生成AIともよばれており、新しいアイデアの発掘などに利用されています。

現在、製造業はもとより、画像・動画・音楽・自然な言語の生成など、さまざまな分野で注目されています。

いままでのAIは、過去のデータに基づいた結果を回答することはできましたが、新しいものを生み出すことはできませんでした。

しかし、ジェネレーティブAIは既存のデータから学習したうえで新しい答えをアウトプットすることができます。

これにより生産性に革命が起き、ビジネスの急速な成長を予感させています。

より効率的で高品質なデザインや製品の生成、新しい表現の創出、従来の手作業の自動化などがジェネレーティブAIに期待されています。

個人でも簡単に利用できることから、漫画やアニメを簡単に作れる時代がくるかもしれませんね。

|ジェネレーティブAIを活用するメリット

ジェネレーティブAIを活用することは多くのメリットをもたらします。

おもに以下の3点が特徴といえるでしょう。

  • 豊富なバリエーション
  • よりクリエイティブな提案
  • コスト削減と業務効率化

ひとつずつ解説していきます。

豊富なバリエーションを提案してくれる

設定条件の範囲内でアイデアを生成していくのがジェネレーティブAIです。

定められた条件から実現できる多数のアイデアを提案してくれるため、バリエーションも豊富で偏りがありません。

提案された案に納得いくものがなければ、条件を見直すだけで再度新しいアイデアを提案してくれます。

また、条件から外れることがないため、ブランディングの一貫性を保つことができます。

一貫性を保ちながら豊富なバリエーションを提案してくれるため、提案された多数のアイデアから最も適したものを探せば、よりクオリティの高いものができることでしょう。

くわえて、豊富なバリエーションの提案を短時間でアウトプットされるということもメリットです。

よりクリエイティブな提案が可能になる

なにかをデザインする場合、ジェネレーティブAIであれば先入観や固定概念にとらわれることがないことも大きな特徴のひとつといえます。

設定条件の範囲内で実現可能なものをアウトプットするため、いままで人では考えつかなかったデザインがうまれる可能性があります。

過去のデータから学習し、新しいデザインを提供し続けてくれるため、人の思考パターンにない新しいアプローチができます。

ジェネレーティブAIにヒントを出してもらうことで新たな発見があり、よりクリエイティブな提案が可能となると考えられます。

人がもつ質の高い経験とジェネレーティブAIのもつ革新性が合わされば、いったいどんなものが生み出されるのか楽しみになりますね。

コストの削減や業務の効率化につながる

ジェネレーティブAIを活用するうえで最も大きなメリットといえるのが、コスト削減と業務効率化といえるでしょう。

今までであれば、人が案を考えたうえで条件との整合性をひとつひとつ確認・検証する必要がありました。

しかしジェネレーティブAIを活用すれば、こういった手間を省くことができます。

トライ&エラーを短時間で何度もできることは、設計にかかる時間と費用の削減につながります。

ジェネレーティブAIに対して、「部品の数と質量を抑えて最大限の効果を出す」というような条件を設定すれば、コストを大幅に削減し生産性の向上に役立つでしょう。

人間の限られた労力と時間を補ってくれるのがジェネレーティブAIといえるかもしれません。

|ジェネレーティブAIでできることは?事例を紹介

ここまで、ジェネレーティブAIがどんな恩恵をもたらすのかについて解説してきました。

メリットや可能性についてご理解いただけたのではないでしょうか。

つぎに、ジェネレーティブAIの活用事例について紹介していきます。

さまざまな分野で活用されていますので、ぜひ参考にしてください。

ロケット部品の設計

ロケット開発の研究をしている日本国内のとある大学のサークルでもジェネレーティブAIが活用されています。

本来、ロケット部品の設計には大量のデータが必要であり、最適なものを生み出すためには設計にかかる時間は膨大なものになるはずです。

しかし、ジェネレーティブAIにそのデータを入力すれば、複雑なデータやパターンを解析し、新しい設計パターンを短時間で生成することができます。

生成されたパターンを評価し改善していけば、部品の性能を最適化していくことにつながります。

性能が最適化されれば、より効率的で信頼性の高い部品を実現することができるでしょう。

実際にそのサークルでは、耐久性と軽量化を満たしたプロトタイプを自動でアウトプットできるようになったということです。

集合住宅のレイアウトデザイン

ジェネレーティブAIは建築分野でも活用されています。

空間を最大限に生かす必要がある集合住宅の設計において、特に利用価値があるかもしれません。

たとえば営業マンがオーナーに設計案を提示するとき、ジェネレーティブAIを活用することはとても有用といえるでしょう。

部屋数や面積といったオーナーの意向に沿った条件を指定すれば、それに合う設計が短時間で複数提案することができます。

条件に問題がなければ、オーナーはそのなかから気に入ったものを選ぶだけです。

本来必要であった設計や検討にかかる時間とコストを削減できるため、生産性を飛躍的に高めることができるといえるでしょう。

Webデザイン

WebサイトのUIなどの設計にも応用が可能です。

たとえばタイトルロゴや見出しのフォントを作成すれば、かんたんに他サイトとの差別化を図ることもできます。

適切なカラー配置やページレイアウトを自動生成すれば、Webサイトの基本構造の設定に時間をかける必要もなくなるでしょう。

使用する画像にジェネレーティブAIを活用すれば、画像作成にかけていた時間を削減することができ、新たな改善にかける時間を増やすことができます。

自動車設計

大手自動者メーカーが3D CAD事業者と協力して、脚をもつ無人小型移動ロボットの開発にAIを活用した事例もあります。

そのロボットには車輪とは別に歩行機能を搭載した脚がついているのが特徴です。

一般道路の走行はもちろんのこと、自動車では進めない場所や災害救助での運用を見据えて設計されています。内部に荷物が積み込めるため物資の運搬にも利用される予定です。

今までにない形状のロボットの開発には人の力だけでは限界があったでしょう。

しかしジェネレーティブAIを活用したことで、強度やコスト、製造における複雑さなどの条件をクリアすることができました。

これにより、各種部品を3Dプリントで製造できるように設計することに成功しています。

医薬品開発

医薬品の開発にジェネレーティブAIが活用された事例もあります。

医薬品の開発には多大な時間とコストがかかるため、より効率的かつスピーディーな開発プロセスが求められる分野といえるでしょう。

医薬品の候補になる化合物を最適化させるのは、多くの研究と実験を繰り返していかなければなりません。

最適化された後の臨床試験なども含めると、市販されるまでに10年以上の期間が必要です。

ジェネレーティブAIを活用することで、研究時点でさまざまなパターンを検証できるようになり、臨床試験の成功確率をあげることができるようになりました。

これにより数億円規模の費用削減につながることが見込まれます。

ジェネレーティブAIを医薬品開発に活用することは、開発プロセスの効率化や費用削減、新しい医薬品の発見など、多くのメリットが期待されます。

人材育成

人材育成においてもジェネレーティブAIを活用することができるでしょう。

たとえばジェネレーティブAIを活用したe-Learningの導入が考えられます。

社員ごとのスキルや知識に合わせたカリキュラムを生成することで、内容や目的に合わせて必要なことを効率的に学ぶことができます。

これにより社員のスキルアップや業務の効率化が期待できます。

業務が効率化し、時間に余裕ができれば社員どうしのコミュニケーションにあてられる時間も増やすことができますね。

業務を効率化したうえでコミュニケーションも活発になれば、企業にとっては費用対効果も高いのではないでしょうか。

|ジェネレーティブAIの課題

ここまでジェネレーティブAIの有用性について解説してきました。

さまざまな分野で活用されていますが、ジェネレーティブAIが悪用される危険性があることも忘れてはいけません。

具体的には、詐欺や不正、なりすましなどに悪用される可能性があります。

とくにフェイクニュースには注意しなければなりません。

著名人の顔を生成し、あたかもほんとうに話しているような動画を作成することはジェネレーティブAIの力を借りれば簡単です。

SNSが普及した現代では、その動画はすぐに拡散され混乱を招くことになるでしょう。

生成の精度がますます上がってきていることもあり、見分けることは困難です。

ジェネレーティブAIは新しいデザインを生成してくれる画期的な技術です。

しかし、活用されるか悪用されるかはあくまで人間に依存するため、扱う人間の倫理観やリテラシーが重要になります。

企業や国はもちろんのこと、個人においても利用する際には、そういった不正や悪意があることを理解したうえで備えておく必要があります。

|まとめ

いかがでしたでしょうか。

ジェネレーティブAIはすでにさまざま分野で活用されており、効果が実証されていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

人のクリエイティブな活動を補助してくれるものとしてジェネレーティブAIを活用していけば、多くの分野にメリットがもたらされます。

今後もさらなる進化を続け、市場の生産性の向上に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。

冒頭に紹介した、「Stable Diffusion」や「Midjourney」、「ChatGPT」などは簡単に利用できるため、まだ試したことがない方は一度体感されてみてはいかがでしょうか。