近年、VR(仮想現実)技術は急速に進歩し、様々な分野での活用が期待されています。
しかし、VRはまだまだ馴染みのない技術なので
「VRがすごいのはわかるけどビジネスへの活用方法がわからない…。」
「具体的な企業の導入事例を参考にしたい!」
という考えをお持ちの方も多いでしょう。
そこで本記事では、2024年最新のVRの導入事例を15種類ピックアップしました!
最後までお読みいただければ、最新のVR事情に詳しくなるだけでなく、ビジネスへの導入アイデアも思い浮かべられるようになるはずです。
VR技術の可能性は計り知れません。
今のうちからVRをビジネスに活用して来る時代に備えておきましょう!
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目次
|VRをビジネスに導入する時のポイント
具体的な企業のVR導入事例をみていく前に、まずはVRをビジネスに導入するときのポイントについてご紹介します。
VRをビジネスに導入するポイントは以下の3点です。
- どのVRプラットフォームを導入するか
- VR導入にかかる費用を負担できるか
- 継続的に運用できるか
それぞれについて、以下で詳しくみていきましょう。
①どのVRプラットフォームを導入するか
当たり前のことですが、VRをビジネスに導入する際には自社に最適なVRプラットフォームをまずは選定しなければなりません。
しかし、現段階でもVRプラットフォームの数は非常に多く、どのプラットフォームが最も自社に合っているのか専門知識がない人には少し難しいでしょう。
もちろん、個別のニーズによって選ぶべきプラットフォームは変わってきますが、最低限使用するVRデバイスの種類については理解しておいた方が無難です。
<VRデバイスの種類>
プラットフォームの種類 | 代表的なプラットフォーム | 特徴 |
PCベースのVR | Oculus Rift、HTC Vive、Valve Index | 高性能なPCを必要とし、高画質で高性能なVR体験が可能。主にエンタープライズ向けや高度なトレーニングシミュレーションに適している。 |
スタンドアロンVR | MetaQuest 2、Pico Neo 3 | PCや外部センサーを必要とせず、独立して動作するため、セットアップが簡単で持ち運びも容易。初めてのVR導入に適している。 |
モバイルVR | Samsung Gear VR、Google Daydream | スマホを利用して手軽にVR体験ができるが、性能や画質は他のプラットフォームに比べて劣る。手軽さを重視するプロジェクトや簡易なデモンストレーションに適している。 |
上表のように、VRデバイスと一口に言っても種類は様々なので、まずはどのタイプのVRデバイスを利用するかを考えましょう。
おすすめのVRプラットフォームについては以下の記事で詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてください。
②VR導入にかかる費用を負担できるか
VRをビジネスに導入する際、初期費用や運用コストをしっかりと把握し、予算内で実施可能かどうかを検討することが不可欠です。
以下は、VR製品やコンテンツを導入するのにかかる一般的な費用感です。
費用項目 | 費用 |
基本的なVR機器 | 数万円~数十万円 |
高性能なPCベースのVR機器 | 数十万円~数百万円 |
シンプルなVRコンテンツ開発 | 約100万円~ |
カスタマイズされたVRコンテンツ開発 | 数百万円~数千万円 |
なお、日本ではVR導入に対する補助金や税制優遇措置が利用可能です。
例えば、中小企業投資促進税制やIT導入補助金を利用することで、導入コストを大幅に削減できる場合があります。
他にも、ものづくり補助金などもVR技術を用いたプロジェクトに適用できるため、これらの制度を活用していくのも検討しておくべきです。
代表的なVRゴーグルの費用感
参考までに、2024年時点のVRゴーグルの費用感を以下にまとめました。
製品名 | 価格(税込) |
Meta Quest 2 | 39,600円〜 |
Meta Quest 3 | 74,800円〜 |
PSVR2(PlayStation VR) | 74,980円〜 |
PICO4 | 49,000円〜 |
VIVE Pro 2 | 103,400円 |
VALVE INDEX VRキット | 165,980円 |
(※値段は2024年4月時点のものです)
なお、上表に記載しているVRゴーグルは「一般ユーザー」向けです。企業向けのハイエンド製品になると価格が跳ね上がります。
レンタルサービスを利用できるサービスもあるので、ハイエンド製品の利用を検討する場合は各社の問合せフォームなどからメッセージを送りましょう。
③継続的に運用できるか
VRをビジネスに導入する際、初期投資だけでなく、継続的な運用が可能かどうかも重要な検討ポイントです。
運用においては、内部にVR技術に詳しい担当者を育成することが必要です。
社内研修や外部トレーニングを活用し、運用担当者が基本的な操作やトラブルシューティングを行えるようにしましょう。
また、VRコンテンツは一度作成して終わりではありません。
ビジネスの変化や新しい研修ニーズに対応するため、定期的にコンテンツを更新し続ける必要があります。
そのため、多くの人的リソースを割く必要があることには注意しておきましょう。
|VRはどのようなビジネスに活用できる?
VRは様々なビジネスに活用できる可能性を秘めていますが、以下のビジネス領域での利用が顕著です。
- ショッピング
- 教育
- エンタメ
- 建築・不動産
- トレーニング・研修
- 医療・介護
以下で、それぞれについて具体的に説明します。
ショッピング
VRはその性質上、ショッピングなどの購買体験を革新できる可能性を秘めています。
VRのショッピングでの活用例としては、主に以下のような事例が考えられます。
- 商品を手に取る感覚でショッピングを楽しむバーチャルストア
- 衣服やアクセサリーを試着し、購入前にフィット感やスタイルを確認する試着体験
- 家具や家電を自宅に配置した場合の見え方を確認し、購入の参考にするインテリアのシミュレーション
- AIがユーザーの好みに基づいた商品を提案し、より効率的なショッピング体験を提供するパーソナルショッピングアシスタント
- 家電やガジェットの機能を実際に試し、購入の判断をサポートする商品デモンストレーション
VR技術を活用したショッピングは、顧客の購買行動を大きく変える可能性を秘めており、企業にとっても大きなビジネスチャンスといえます。
教育
教育分野では、学習効率の向上、インターネット空間上での仮想スクールなどにVRが活用されています。
主な活用方法としては以下の通りです。
- 歴史的な出来事や科学的現象を体験しながら学ぶことができるバーチャルトリップ
- 仮想空間での実験やシミュレーションを通じて、物理や化学の原理を深く理解する実験シミュレーション
- 遠隔地からでもリアルタイムで参加できるインタラクティブな仮想教室
- 言語学習において、ネイティブスピーカーと仮想的に会話練習ができる言語学習アプリケーション
- 特定のスキルや手技を練習するための専門的なトレーニングプログラム
VR技術を活用した教育は、従来の学習方法を超えた新しい学びの形を提供し、学習者にとっても教師にとっても大きなメリットをもたらします。
エンターテインメント
エンターテインメント分野では、没入感の高い体験を提供するためにVRが活用されています。
主な活用方法としては、以下の通りです。
- ユーザーが自らの動きでゲームの世界に入り込み、リアルなアクションを体験できるVRゲーム
- Vtuberが仮想空間でファンとリアルタイムで交流し、ライブ配信やイベントを楽しむ動画配信イベント
- コンサートやスポーツイベントを最前列で観覧しているかのような臨場感を味わえるVRライブイベント
- 仮想空間で友人や他のユーザーと交流しながら楽しむソーシャルVRプラットフォーム
- 映画やドラマを360度の視点で視聴し、まるで作品の中にいるような体験ができるVR映画
VR技術を活用したエンターテインメントは、従来の楽しみ方を一新し、ユーザーに新たな感動や興奮をもたらします。
また、エンターテインメント業界にとっても、革新的なビジネスモデルを構築するチャンスといえるでしょう。
建築・不動産
建築・不動産分野では、設計や販売プロセスを革新するためにVRが活用されています。特にデジタルツイン技術を用いたVRの活用は要注目です。
主な活用方法としては、以下の通りです。
- 建築物の完成前に仮想空間でモデルを確認し、デザインやレイアウトをリアルタイムで調整できる建築設計シミュレーション
- 購入希望者が物件を実際に訪れることなく、仮想ツアーで詳細な内覧を行うことができるバーチャル内覧
- 既存の建物やインフラのデジタルツインを作成し、メンテナンスや修繕の計画を効率的に行う建物管理
- 都市開発プロジェクトにおいて、街全体のデジタルツインを利用して、交通や環境への影響をシミュレーションする都市計画
- 賃貸物件のリース契約前に、テナントがオフィスや店舗の仮想レイアウトを試すことができる仮想空間デザイン
VR技術を活用した建築・不動産ソリューションは、プロジェクトの効率性を高めるだけでなく、顧客に対してもより魅力的で納得のいく提案を行うことができます。
また、デジタルツインの技術を活用することでリアルタイムのデータと連携し、より精度の高い管理と運用が可能になります。
トレーニング・研修
トレーニングや研修分野では、実践的で効果的な学習を提供するためにVRが活用されています。
主な活用方法としては、以下の通りです。
- 仮想空間での業務シミュレーションを通じて、従業員が現場の作業手順や安全対策を学ぶことができる安全訓練
- 医療従事者が手術や診察の技術を仮想的に練習し、実際の現場でのスキルを向上させる医療トレーニング
- 新入社員が企業のルールや業務プロセスをVRで体験しながら学ぶことができる新入社員研修
- 高度な機械操作や設備管理のスキルを、実際の設備を使わずに学習できる機械操作訓練
- マネジメントスキルやリーダーシップを、シナリオベースのVRトレーニングで体験しながら習得するリーダーシップ研修
VR技術を活用したトレーニングや研修は、従業員が実際の業務環境に近い状況で学習できるため、効果的で安全な学習を実現可能です。
また、研修内容を繰り返し利用することでコストの削減や学習効率の向上も期待できます。
企業にとっても、従業員のスキルアップや安全管理の強化に役立つ重要なツールとなるでしょう。
医療・介護
医療・介護分野では、治療やケアの質を向上させるためにVRが活用されています。
主な活用方法としては、以下の通りです。
- 外科手術のシミュレーションを通じて、医師が手術技術を向上させることができる外科トレーニング
- 患者が痛みや不安を軽減するためにリラクゼーション体験を提供するVR治療
- 認知症患者が過去の記憶を再現することで、精神的な安定を促す回想療法
- リハビリテーション患者が仮想空間で運動や動作を練習し、機能回復を図るVRリハビリテーション
- 介護スタッフが現場のシチュエーションを仮想的に体験しながらスキルを習得する介護トレーニング
これらのVR技術を活用した医療・介護ソリューションは、患者や利用者に対する治療やケアの質を高めるだけでなく、医療従事者や介護スタッフのスキル向上にも大いに役立ちます。
また、現場での実践的なトレーニングを仮想空間で行うことで、安全かつ効率的にスキルを習得することが可能です。
|<H2>【不動産業界】注目のVR導入事例3選
このように、さまざまなビジネスに活用できるVRですが、実際の企業の活用事例を見ないことにはなかなかイメージがつかないと思います。
ここからは、実際の企業のVR活用事例を業界別にいくつか見ていきましょう。
まずは、不動産業界での導入事例です。
①VR動画を利用した内覧サービス|積水ハウス
出典:積水ハウス 公式HP
積水ハウス株式会社は、日本を代表する住宅メーカーであり、注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅、リフォームなど幅広い事業を展開しています。
積水ハウスは「バーチャル住まいづくり」というサービスを展開しており、VR技術を活用して住宅設計の新しい体験を顧客に提供しています。
本サービスでは、顧客が住宅を建てる前に仮想空間を通じて設計プランを視覚的に確認することが可能です。
展示場では360度VR体験を提供しており、顧客は自分の理想の家のプランをリアルに体感できます。
また、「おうちで住まいづくり」というオンラインサービスも展開しており、VRを通じて自宅からでも設計相談やプラン確認ができます。
VR技術の活用により、積水ハウスでは顧客体験が向上し、営業効率が改善されるだけでなく、企業の競争力も強化されたとのことです。
②業務支援システム「いえらぶCLOUD」にVR内見機能を追加|いえらぶGROUP
出典:いえらぶCLOUD 公式HP
いえらぶGROUPは、2008年に設立された不動産業界向けのITサービス企業です。
同社は、不動産会社の業務を効率化するためのクラウドサービス「いえらぶCLOUD」を提供しており、全国で12,000社以上の不動産会社が利用しています。
いえらぶGROUPは、「いえらぶCLOUD」にVR機能を導入することで、不動産業界における内見のプロセスを革新しています。
いえらぶCLOUDのVRコンテンツ作成機能は、パノラマ画像を撮影し、クラウド上にアップロードするだけで簡単にVRコンテンツを作成可能です。
これにより、不動産会社は物件情報とVRを一元管理し、集客や接客に活用することができるので成約率・業務効率の改善が見込めます。
この取り組みは、不動産業界の未来を切り拓く一歩として、他の企業にとっても参考になるモデルケースといえるでしょう。
③家にいながら内覧できる「LIVRA WORLD」|岡田工業株式会社
出典:LIVRA WORLD 公式HP
岡田工業株式会社は、住宅建築を中心に事業を展開し、高品質な住宅の提案に長けている老舗企業です。
近年では、デジタル技術を積極的に取り入れ、バーチャルリアリティ(VR)を活用した新しいサービスの提供を始めています。
そのVRサービスの名称はバーチャル住宅展示場「LIVRA WORLD」です。
「LIVRA WORLD」は、顧客が自宅にいながらにして様々なモデルハウスをVRで内覧できるサービスです。
24時間365日、どこからでもアクセス可能で、リアルな住宅展示場と比較して建設や運営にかかる多額の費用を節約できます。
コスト削減、顧客体験の向上、新たな集客方法の提供という点で大きな成果を上げており、業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)のモデルケースといえるでしょう。
|【製造業】注目のVR導入事例3選
続いて、製造業のVR導入事例について見ていきましょう。
日本の製造業では、少子高齢化による人員不足が深刻な問題となっており、その解決策としてVRが主に活用されています。
①作業手順書をVRで確認「mcframe MOTION VR-learning」|ビジネスエンジニアリング株式会社
出典:mcframe MOTION VR-learning 公式HP
mcframe MOTIONは、ビジネスエンジニアリング株式会社(B-EN-G)が提供するVR学習システムです。
mcframe MOTION VR-learningは、製造業、建設業、物流業、医療機関などの業界向けに特化したVRトレーニングソリューションです。
VR-learningは、現場作業のトレーニングを臨場感ある形で行うためのシステムで、企業が自社で簡単にVR教材を作成できるように設計されています。
例えば、建設現場では高所作業の安全学習や重機の死角確認体験、製造業では生産ラインの標準化や熟練者のノウハウ共有、医療現場では医療機器の取り扱い学習や判断力の養成などに活用することが可能です。
高危険度の作業や特別な設備が必要なトレーニングも、VRを使うことで安全に何度でも実施できるので、事故やミスのリスクを低減し、従業員の安全意識を効率的に高めることができます。
②リモートで現場監督が可能に「リモート現場マネジメント 360」|NEC
出典:NEC ソリューションイノベータ 公式HP
NEC(日本電気株式会社)は、情報通信技術(ICT)を提供するグローバル企業であり、企業や政府機関向けに様々なソリューションを提供しています。
VR領域にも積極的に参入しており、その中でも「リモート現場マネジメント 360」は業界内外から高い評価を得ています。
「リモート現場マネジメント 360」とは、360度カメラを用いて、遠隔地からリアルタイムに現場の状況を確認し、管理するソリューションです。
閲覧者は、自宅やオフィスから現場の360度映像を自由に視点を変更しながら確認でき、現場の状況を詳細に把握することが可能で、現場監査、施工管理、工場視察、店舗の陳列や接客指導など、様々な業務で活用されています。
NECの「リモート現場マネジメント 360」は、さまざまな業界における現場管理の効率化と安全性向上に貢献する優れたソリューションであり、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速しています。
③仮想空間に製造ラインを構築「IoTコンパス」|日立製作所
出典:日立製作所 IoTコンパス 公式HP
日立製作所は、日本を代表する総合電機メーカーであり、情報通信技術(ICT)、社会インフラ、電力、産業システムなど、広範な分野でソリューションを提供しています。
日立は長年にわたり、技術革新を通じて社会の発展に寄与しており、近年ではデジタルトランスフォーメーション(DX)にも注力しています。
その一環として挙げられるのが「IoTコンパス」というデジタルツインソリューションです。
IoTコンパスは、生産設備の稼働状況や品質情報、在庫管理などのOT(Operational Technology)データおよびITデータを統合し、デジタル空間に再現します。
これにより、複数の生産現場に散在するデータをリアルタイムで把握し、効率的な生産管理が可能となります。
現在では既にビッグデータ時代に突入しているといえますが、大量のデータをどう管理し、どのように業務に活用していくのかは製造業の長年の課題でした。
IoTコンパスはそういった企業の課題を解決し得る非常に画期的なソリューションといえるでしょう。
|【医療・介護】注目のVR導入事例3選
続いて、医療や介護業界の注目のVR導入事例について見ていきましょう。
医療・介護業界では、主に患者の医療体験の向上や、医療系職員の業務状況の改善、医療全体のクオリティの向上にVR技術が利用されています。
①医療福祉に特化したVR総合プラットフォーム「JOLLYGOOD+」|ジョリーグッド
出典:JOLLYGOOD+ 公式HP
株式会社ジョリーグッドは、VR技術を活用した医療・福祉分野の総合プラットフォームを提供する企業です。
医療教育、介護教育、デジタル治療など、医療福祉に特化したVRソリューションを展開しており、特に「JOLLYGOOD+」というプラットフォームは数々の賞も受賞するなど、非常に評価が高いです。
ジョリーグッドの「JOLLYGOOD+」は、医療および福祉分野に特化したVRプラットフォームで、300以上の医療VRコンテンツが定額で利用し放題です。
VRコンテンツは、医療従事者が実際の現場で必要なスキルを高めるために設計されており、医療現場でのコミュニケーション能力や対応力の向上が期待できます。
また、遠隔地からも利用可能なので多拠点での教育や訓練の際に非常に便利です。
利用料金などに関しては、公式サイトよりご確認ください。
②救急医療の現場の臨場感を再現「EVR」|ビーライズ
出典:ビーライズ 公式HP
株式会社ビーライズは、2012年に設立された広島県に本社を構えるテクノロジーカンパニーです。
ビーライズは「デジタルで明日を変えよう」をビジョンに掲げ、XR(Extended Reality)領域でバーチャルワールドを活用した革新的なサービスを提供しています。
医療VR分野にも進出しており、同社の「EVR」という救命救急医療に特化したVRシミュレーターは、救急医療の現場を精細な3DCGで再現し、医学生や研修医に臨場感あふれるトレーニングをさせることができます。
また、EVRには医師が自由に患者の症例を作成できる機能があり、シミュレーション中に表示されるテキスト、画像、動画、音声データを簡単に入れ替えることも可能です。
これにより、研修内容を個別にカスタマイズし、教育の質を向上させることができます。
救急医療というのは事前に教育するのが難しく、今までは現場で身体を使って覚えるしかありませんでした。
しかし、これからはEVRのようなVRソリューションが登場することで、救急救命の現場の医療従事者の参入障壁が下がることになるかもしれません。
③認知症治療をVRで改善「VR Angle Shift」|シルバーウッド
出典:VR Angle Shift 公式HP
株式会社シルバーウッドは、高齢者向け住宅「銀木犀」を運営しながら、VR技術を活用して介護や医療に特化した教育プログラムを提供する企業です。
同社では、認知症を持つ高齢者との暮らしから得た知見を活かし、VRを用いて他者の視点を体験することで理解を深める「VR Angle Shift」というプラットフォームを展開しています。
「VR Angle Shift」は、認知症や発達障害など、様々な状況をVRで一人称視点から体験できるプログラムです。
これにより、介護スタッフや医療従事者、一般の人々が当事者の視点に立ち、より深い理解と共感を得ることが可能です。
特に、「VR認知症」というプログラムは認知症の中核症状を体験することで、認知症患者の行動や感情を理解しやすくするものとして業界内で高く評価されています。
日本は2060年までに人口の約4割が65歳以上となる世界でも異例の超高齢化社会を迎えるとも予測されており、認知症に対する解決策は必ず必要になってくるはずです。
医療的アプローチではなく、こういったITの力を使った新しいアプローチも、今後の日本のためには必要になってくるでしょう。
|【教育】注目のVR導入事例3選
続いて、教育業界のVR導入事例について見ていきましょう。
教育業界では、教育水準の向上、地方による教育格差の是正、いじめや不登校といった学内トラブルの解決などにVRが活用されています。
①VRで英語学習を効率的に「スマート・チューター」|PlusOne, Inc.
出典:スマート・チューター 公式HP
PlusOne, Inc.は、アメリカ・カリフォルニアに本社を置く企業で、VRおよびAI技術を活用した教育コンテンツの企画、開発、販売を行っています。
同社の主力製品「スマート・チューター(Smart Tutor)」は、VR空間で英会話トレーニングを行う次世代型の教育ツールです。
ユーザーはVRヘッドセットを装着し、AIを搭載した仮想人物「ホロサピエンス(Holosapiens)」と対話することで、実践的な英会話スキルを磨くことができます。
本システムは、ビジネスマンの個人顧客を主なターゲットとしていますが、教育機関や法人向けのプログラムも提供されているので教育的価値も非常に高いです。
日本は英語能力指数ランキングで87位であり、英語への対応力が今後の課題の一つとされています。
日本語と英語では文法やイントネーションなどがかなり違うので、こういったVR体験型の英語学習プラットフォームというのは、今後の日本では大きくシェアを伸ばすかもしれません。
②完全体験型VR研修サービス「VR×E-Learning」|株式会社Grune
出典:株式会社Grune 公式HP
株式会社Gruneは、福島県南相馬市に本社を置く、最先端のVR技術とe-ラーニングを融合した研修プログラムを提供する企業です。
2016年に設立され、デジタル技術を駆使して多様な教育ソリューションを展開しています。
同社の「VR×E-Learning」は、フルCGで構築された没入型の研修プログラムです。
本プログラムでは、従来の360度動画とは異なり、参加者が仮想空間内を自由に歩き回り、オブジェクトを操作することで実際の作業環境をリアルに体験できます。
ゲーミフィケーション要素を取り入れており、タイムアタック機能や進捗管理機能などのユニークな機能が特徴の一つです。
ゲーミフィケーション要素の導入により、受講者の進捗状況やスコアが可視化され、目標設定が明確になります。
そのため、学習のモチベーションを維持しやすくなる効果が見込まれます。
新型コロナが流行して以降、日本の医療従事者の業務は日に日に逼迫している状況です。
こういった新しい取り組みによって、医療従事者を目指す若者の数が増えていけば、日本の医療業界の過酷な労働の問題も改善に繋がっていくことでしょう。
③勉強はVRで行う時代に「VR studyゴーグル」|ベネッセグループ
出典:進研ゼミ中学講座 公式HP
株式会社ベネッセコーポレーションは、日本を代表する教育企業であり、通信教育「進研ゼミ」を中心に、幅広い教育サービスを提供しています。
ベネッセグループは教育事業にいち早くVR技術を導入しており、「VR studyゴーグル」を使った新しい学習法「ハイリコム学習」を展開中です。
この学習法は、小学校6年生向けの「進研ゼミ中学準備講座」から開始され、2022年12月25日よりコンテンツの配信が始まりました。
従来の学習では、例えば宇宙の天体の動きや物質の化学反応の仕組みなどは自分で想像しながら理解するしかありませんでした。
しかし、VRゴーグルを利用した学習法では、こういった複雑な分野の学習項目を視覚的に理解することが可能です。
また、英語学習に関しても話者の口の動きなどをジェスチャーも交えながら確認できるので、学習効率が飛躍的に向上します。
こうした取り組みにより、ベネッセは日本の教育水準の全体的な向上に寄与しています。
|【ショッピング】注目のVR導入事例3選
最後に紹介するのは、シッピング領域におけるVRの導入事例です。
近年では、ECサイトなどもスマホ一つで作れるようなアプリも多くリリースされており、ショッピング業界の競争はさらに加速しつつあります。
他社との差別化を図るためにも、VRによるショッピング体験の向上はもはや欠かせないものになっているといえるかもしれません。
①接客をアバターで行う「AVACOM」|ローソン
出典:ローソン研究所 公式HP
株式会社ローソンは、日本全国に店舗を展開する3大コンビニエンスストアチェーンの一つです。
近年では、デジタル技術を活用した革新的な取り組みを積極的に行っています。
その取り組みの一つとして話題になったのが、アバター技術を活用した「AVACOM」サービスです。
本サービスは、未来型店舗「グリーンローソン」にて初めて導入されました。
具体的には、遠隔地の従業員がアバターとして接客を行い、セルフレジのサポートや新商品の説明、エンタテインメントの提供などが可能となります。
アバター技術を活用することで、遠隔地にいる従業員がローソン店舗で働くことが可能になり、特に人手不足や深夜の就労対策として活用していく予定とのことです。
最近のコンビニでは外国人労働者の採用も目立ってきており、人手不足感が否めません。
こういったアバター型接客サービスは、未来の日本では当たり前のように採用されるでしょう。
②仮想ショッピングモールが誰でも作れる「メタパ」|TOPPAN印刷(凸版)
出典:TOPPAN Biz 公式HP
TOPPAN(凸版)印刷株式会社といえば、印刷業界の最大手企業というイメージが強いですが、デジタルソリューションやメタバース事業にも積極的に取り組んでいます。
TOPPAN印刷は、メタバースプラットフォーム「メタパ(Metapa)」を開発し、仮想空間上でのショッピング体験を実現しました。
「メタパ」は特別な機器を必要とせず、スマホから手軽にアクセスできる点が特徴です。
仮想空間内に複数の店舗を構築し、ショッピングモールのような体験をユーザーに提供します。
メタパではアバターを使ってユーザー同士や店員とコミュニケーションが取れるため、対面の接客に近い体験が可能です。
例えば、店舗での商品説明や新商品の紹介、キャンペーン情報などをリアルタイムでPRできます。
TOPPAN印刷は25年以上前からVR事業に注力しており、メタパ以外にも多角的なメタバース戦略を実践しており、日本のVR市場においては既に確固たる地位を築いているといえるでしょう。
③実店舗をVRで再現「EC-Orange VR」|エスキュービズム
出典:エスキュービスム 公式HP
株式会社エスキュービズムは、2006年に設立された企業で、EC・オムニチャネルパッケージやIoT製品の開発および販売を行っています。
エスキュービズムは、共同印刷株式会社とタッグ株式会社とともに、バーチャルコマースを実現するパッケージシステム「EC-Orange VR」を共同開発しました。
本システムは、エスキュービズムの既存のECサイト構築パッケージ「EC-Orange」を基盤とし、VR技術を組み合わせたものです。
「EC-Orange VR」では、実店舗の購買体験をブラウザ上で再現し、ユーザーが仮想空間で商品を選んで購入することができます。
バーチャル空間上でのサイネージ、動画配信、クーポン配信、ゲーム要素の導入も予定しており、実店舗では実現しにくい様々な機能が利用可能です。
|VRは結局いつ流行る?将来性について
ここまで、VRビジネスの導入事例についてご紹介してきました。
しかし、2024年時点ではVRはお世辞にも流行っているとはいえない状況です。VRをビジネスに導入しても、将来的にビジネスが破綻してしまえば元も子もありません。
では果たして、VRは確実に今後流行するのでしょうか?
結論からいうと、100%とは言えませんが非常に高い確率でVRは今後流行するでしょう。
参考までに、2024年の世界のVR市場は前年比46.4%の成長を記録しており、810万台から1186万台に増加しています。
また、国内市場もPSVR2やQuest 3の好調な売れ行きにより、前年比67.4%増の56.6万台に達しました。
これらのデータは、VR技術が既に市場で確固たる地位を築きつつあることを示しています。
さらに、VRの認知度も年々高まりつつあり、現在利用者の多くが継続利用を希望しています。
以上のことからもわかるように、VR市場は今後も大きく成長し、多様な産業や日常生活での利用が拡大することになるでしょう。
|VRを導入してビジネスを加速しよう!
本記事では、VRをビジネスに導入するポイントと各業界のVR導入事例を15選ご紹介しました。
VRは2024年時点では広く普及しているとは言えないものの、非常に高い確率で今後流行することが予測されます。
現在の市場動向や認知度の高さ、ガートナーのハイプサイクルに基づく成長予測から、2030年頃にはVRが広く普及し、多様なビジネスや日常生活に浸透すると考えられます。
今後は、VR技術がさらに進化し、コストが低下することで、一般消費者や中小企業にも広がっていくことになるでしょう。
しかし、その時には既に「VRをビジネスに取り入れるなんて当たり前」と言われる時代になっているかもしれません。
来るべき時代に備えるためにも、本記事の情報を参考にビジネスを加速させましょう!
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それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!