近年メタバースなどで話題に上がることも多い「VR」ですが、フィットネスやトレーニングの領域にも利用され始めていることはご存じでしょうか。
VRトレーニングにはさまざまな種類のサービスが展開されており、自宅にいながら効果的に楽しくトレーニングを続けることが可能です。
そこでこの記事では、VRトレーニングのメリットやおすすめのマシン、またその将来性について解説していきます。
目次
|VRトレーニングとは
VRトレーニングは、VR(仮想現実)の技術を利用したトレーニングのことです。
専用のゴーグルなどを装着することで、リアルな仮想空間に没入しながら運動をすることができます。
VRトレーニングには自宅で1人で行うものからジムなどで複数人での体験を前提にしているものまでさまざまな種類がありますが、いずれも少ないスペース・限られた機材だけで数多くのシチュエーションでのトレーニングが可能です。
また、VRトレーニングでは脳の運動筋肉を動かす部位がより活発にはたらき、運動効率が上がるともいわれています。
近年のVR技術は急速に進化しており、仮想空間でもリアルな環境に近いトレーニングが可能になりつつあるのです。
その上で実際に屋外で行う運動よりも安全性が高く、またコンピュータの利用を前提としているためトレーニング内容の記録や分析を容易に行うことができるのも大きな特徴の一つとなっています。
|VRトレーニングのメリット
それでは、VRトレーニングには具体的にどのような利点があるのでしょうか。
ここではVRを利用することで実際の運動よりも享受できるメリットについて、大きく3点に分けて紹介していきます。
楽しく続けられる
1つ目のメリットは、楽しく続けられるという点です。
VRトレーニングはゲームの世界のなかで運動をすることができるため、飽きにくく楽しみながらフィットネスを行うことができます。
これまでのトレーニングとしてよく挙げられるランニングマシンやエアロバイクといった機器は、歩く・走る・漕ぐといったシンプルな有酸素運動を効率よく行うことができる反面、どうしても単調なトレーニングとなってしまい続けにくいというデメリットがありました。
しかし、VRトレーニングではゲームを通じて運動することが前提となっているものも多く、トレーニングを意識せずともゲームを楽しむなかで気づいたら汗だくになるほど運動をしていたといったことも珍しくないのです。
集中して行える
2つ目のメリットとして、集中して行えるという点が挙げられます。
VR機器を装着すると視覚や聴覚がゲームの世界に入り込むため、与えられたトレーニングのタスクを集中してこなすことが可能です。
VRでは視界が360度ジャックされて一つのゲームなどに集中できるよう設計されているため、その没入感は現実の世界よりも強いともいわれています。
これまでの現実のトレーニングは、運動はつらいものであるということも相まって「我慢して行う」と考えながら自制心を保ちつつ行っている人も少なくありませんでした。
しかしVRトレーニングではその没入感やゲームという非日常の世界観に入り込めることから、集中して運動を続けることが可能なのです。
達成感を得られる
VRトレーニングの3つ目のメリットは、達成感を得られることです。
ゲームなどの要素が含まれることの多いVRトレーニングは、ステージクリアなど一定の運動量ごとに目標が設定されていることも多くあります。
このように分かりやすく達成感を得ることができる環境でトレーニングを行うことで、成功体験を重ねて無理なく運動を続けることが可能なのです。
また、VR機器はコンピュータやソフトウェアを利用することが前提となっている運動方法であるため、トレーニングの記録が残りやすいという特徴もあります。
これまでの自分のトレーニング履歴が可視化されることも達成感に繋がりやすく、モチベーションを保ちやすいといえます。
|VRトレーニングができるおすすめマシン
それでは、実際にVRトレーニングを行うには具体的にどのような方法があるのでしょうか。
VRトレーニングはハードウェア・ソフトウェアともにさまざまな種類が開発されており、自分に合ったものを選択することでより効率よく運動を続けることが可能です。
ここでは、とくによく利用されるVRトレーニングマシンを8つご紹介していきます。
Holofit
「Holofit」は、Holodia社が開発しているVRエクササイズマシンです。
「ローイングマシン」というボートを漕ぐ運動ができるトレーニングマシンとVRを組み合わせ、さまざまなシチュエーションで楽しくボートを漕ぎながら運動ができます。
トレーニングコースには「南国の海辺」「古代バビロニア」「南極」「ブラックホール」など、現実では訪れることが難しい場所までバリエーション豊かに設計されており、観光気分で飽きずにトレーニングを続けることが可能です。
また、レース形式で友人と複数人プレイができることも特徴の一つです。
現実のトレーニングは一人で行うことが多く自分自身でモチベーションを維持しなければなりませんが、友人と一緒に楽しみながらプレイすれば無理なく続けることができます。
ICAROS
続いては、ドイツのICAROS社が開発している「ICAROS」というVRフィットネスマシンです。
ICAROSはVR空間上で空中を飛行できるシンプルなゲームですが、四つん這いの体制で装置に乗り体幹トレーニングを行いながらプレイする必要があるため、その運動量は相当なものとなっています。
ICAROSはもともとVR体験施設などを運営する企業向けに提供されていましたが、個人で利用したいという要望も多く出たため、よりコンパクトで家でも利用しやすい「ICAROS Home」も開発されました。
また治療やリハビリを行うための「ICAROS Health」も開催されており、幅広い層に指示を受けているVRトレーニングマシンとなっています。
THE TRIP
「THE TRIP」は、LES MILLS社が開発した自転車トレーニングを体感できるVRマシンです。
自転車をよりスピーディに漕ぐことができるためのトレーニングを、VR空間で非日常的な映像を見ながら楽しく行うことができます。
THE TRIPは、ほかの多くのVRトレーニングとは異なりVRゴーグルを装着せずに運動をできることが大きな特徴です。
VRゴーグルによる没入感はトレーニングをする上でさまざまなメリットがあるものの、激しい運動はしにくいという欠点もあります。
しかしTHE TRIPでは前方120度を幅12メートル・高さ2.7メートルの巨大スクリーンが囲うように設置されることで、ゴーグルなしでも没入感の高い体験を可能にしました。
LES MILLS社はVRに限らずサイクルトレーニングを効率よく行えるプログラムを提供しており、THE TRIPにもその知見をいかんなく発揮しています。
THE TRIPは単なる自転車ゲームではなく、身体への負荷やトレーニング性が綿密に計算されたプログラムという側面があるのです。
短時間で効率よく安全に自転車のトレーニングを行いたいという方には大変おすすめできるVRマシンであるといえます。
Beat Saber
「Beat Saber」は、チェコのBeat Gamesによって開発されたVR音楽ゲームです。
音楽ゲームというジャンルはこれまでもKONAMI社の「Dance Dance Revolution」や「DANCERUSH STARDOM」など身体を動かすことを前提にしたものが開発されてきましたが、いずれも大掛かりな装置が必要でゲームセンターなどの施設でしか体験できないものでした。
一方でBeat Saberは、VRゴーグルとコントローラーがあれば自宅でも存分に身体を動かしながらプレイできる音楽ゲームとなっています。
音楽に合わせて飛んでくるキューブを次々に斬っていくというシンプルなゲーム性ですが、難易度の高いものは腕を動かし続けなければならずとてもハードなトレーニングになります。
BOXVR
続いて紹介するのは、FitXRが開発するVRボクシングゲーム「BOXVR」です。
先述したBeat Saberと同じくVRゴーグルによって没入感ある映像を見ながら腕を動かしてプレイするゲームですが、ボクシングを題材にしていることもあり大変疲労感のあるハードなゲーム性となっています。
BOXVRの特徴は、腕を動かすだけでなく要所要所でスクワット動作が必要になる場面が出てくる点です。
「パンチ、スクワット、パンチ、スクワット」などテンポ良く手と足を動かし続けなければならない箇所もあり、続けることで強力なトレーニング効果を得られます。
VRでもしっかりと運動をしたいという方に、とくにおすすめできるゲームといえるでしょう。
Creed: Rise to Glory VR
「Creed: Rise to Glory VR」は、BOXVRと同じくボクシングを題材としたゲームですが、より実践的な試合を楽しむことができるという特徴があります。
このゲームは名作映画「ロッキー」シリーズの続編にあたる「クリード チャンプを継ぐ男」をもとにしたゲームとなっており、主人公のクリードの目線でボクシングの試合を体験することが可能です。
プレイ方法はとてもシンプルですが、身体を動かして相手の攻撃を避けつつパンチを入れるという実際のボクシングに近い体験をリアルに楽しむことができます。
激しく身体を動かす必要があるためとても体力を使いますが、ボクシングファンや「ロッキー」ファンは夢中になってトレーニングできるゲームです。
Dance Central
「Dance Central」は、Harmonix Music Systemsによって開発されたVR音楽ゲームです。
以前Xboxで発売されたゲーム作品のVRバージョンとなっており、ダンスをしながら全身を使ってトレーニングをすることができます。
このゲームでは「クラブでダンスをする」という設定があり、自分が踊りたい相手のキャラクターを選択して振り付けを真似ながらプレイするという内容です。
腕を振る・ステップを踏むといった体全体を動かすゲーム性で十分な運動になる上に、うまくプレイできると会場が盛り上がるといった達成感も味わいやすい作品となっています。
Supernatural
「Supernatural」は、大自然などさまざまなシチュエーションのなかで飛んでくるボールを次々に両手のバットで打っていくという、先述したBeat Saberに似た内容のVRゲームです。
スクワット要素もあるため、全身を使った運動を効率よく行うことができます。
Supernaturalの最大の特徴は、スマートフォンやスマートウォッチと連動して心拍数の計測ができるという点です。
VRゲームはゲーム内容に集中することで無意識に激しい運動をできますが、Supernaturalでは自分の身体状況もデータとして確認することができるためよりモチベーションを保ちやすくなっています。
|VRトレーニングの将来
ここまで紹介してきたように、VRトレーニングの分野ではさまざまなハードウェア・ソフトウェアがすでに開発されています。
それでは今後、VRトレーニングはどのように進化していくのでしょうか。
現在、VRトレーニングの大きな課題の一つとしてヘッドセットの大きさが挙げられます。
視界全体を覆うために大掛かりな機器を頭につける必要があるため、運動に不向きなのです。
しかし今後、より小型で没入感のあるデバイスが開発されれば、VRのフィットネス分野の進化はさらに高スピードで進んでいくでしょう。
身体を動かすことは健康的な生活にとってとても大切ですが、トレーニングを苦痛と考えてしまう人も少なくありません。
運動をゲーム感覚でより身近で気楽に行えるようにするVRトレーニングは、現代人の運動不足を解消できる大きな足がかりとなるでしょう。
|まとめ
高い没入感と楽しいゲーム性などから、多くのメリットがあるVRトレーニング。
現在もハード・ソフトともにさまざまな製品の開発が続けられています。
コロナ禍における運動不足の反動でフィットネス業界そのものが伸びているという現状も鑑みると、今後のVRテクノロジーの発展とともにさらに広がりを見せていく分野といえます。
皆さんも、楽しく続けられる運動としてVRトレーニングを取り入れてみてはいかがでしょうか。