近年、教育現場でも注目されているVR(仮想現実)技術。

従来の教科書や授業では限界があった、実際に現地に行くことが困難な場所や、危険な実験・実習などを、VRを活用することで、よりリアルな体験ができるようになり、学習の効果を高めることができます。

本記事では、VRの教育活用のメリットや導入事例、教育コンテンツについて紹介します。

VR技術の進化により、ますます教育現場での活用が期待される中、この機会にぜひ知識を深めてみてください。

|VR教育とは?

VR教育とは、VR技術を活用して、学生たちが現実の場所や状況に立ち会っているかのような体験をすることができる、新しい学習形態です。

VR技術は、人工的に作り出された3DCGのコンピューターグラフィックスや音声、触覚などの情報を用いた視覚技術のことを指します。

例えば、歴史の授業で、学生たちは実際にその場所に行くことができない歴史的建造物や遺跡を、VR技術を用いて仮想現実空間で訪れることができます。

また、科学の実験では、危険な実験を実際に行うことができない場合に、VR技術を使用して、仮想現実空間で安全に実験を行うことができます。

このように、VR技術を教育に活用することで、学生たちは従来の教科書や授業では体験できなかったよりリアルな体験をすることができます。

また、学生たちは自分自身で操作し、体験することで、より深い理解を得ることができ、学習効果が高まります。

さらに危険な実験や実習を安全に行ったり、遠い場所にいる人々と交流することができるなど、教育の幅を広げることもできます。

また、VR技術は、より身近な存在となっており、今後ますます教育分野での活用が期待されています。

|VR教育によるメリットや効果

ここからは、VRを活用した教育で得られる効果やメリットについて、4つの観点から紹介します。

体験型学習

VRを活用した教育での最大のメリットは、体験型学習が可能になることです。

体験型学習とは、学習者が自ら体験することによって学びを深める学習方法のことです。

体験型学習では、記憶力の向上、知識の定着、創造力の育成、問題解決力の向上、コミュニケーション能力の向上など、教育に必要な様々な要素があります。

それぞれ紹介します。

記憶力の向上:VR空間での体験は、印象的でリアルなものとなるため、学生はより深く理解し、より長期間にわたって記憶することができます。

知識の定着:VR空間での体験は、より実践的な知識を身に付けることができ、より深い理解を得ることができます。

創造力の育成:VR空間では、自由自在に自分で操作することができ、自分で新しい発見をすることができます。これにより、学生の創造力や想像力を育成することができます。

問題解決力の向上:VR空間では、シミュレーションやシナリオを用いて、問題解決の訓練をすることができます。これにより、学生の問題解決力を向上させることができます。

コミュニケーション能力の向上:VR空間では、遠隔地の人々との仮想会議や交流が可能です。これにより、学生のコミュニケーション能力を向上させることができます。

以上のように、VRを活用した教育では、学生たちがより身近な体験をすることができ、より深い理解と学習効果を得ることが期待できます。

遠隔授業の実現

VRを活用した教育におけるもう一つの大きなメリットは、遠隔授業の実現が可能になることです。

具体的には、以下のようなメリットや効果が得られます。

場所や時間に制約されない学習:VR空間を用いた遠隔授業では、学生たちは教室に行く必要がなく、自分の都合の良い時間に学習を行うことができます。

これにより、地理的な制約や時間的な制約を受けることなく、学習することができます。

参加者の増加:遠隔授業によって、参加者が増加することができます。

たとえば、地理的な制約があって参加できなかった人や、身体的な制約があって学校に行くことができなかった人でも、遠隔授業に参加することができます。

以上のように、VRを活用した遠隔授業には、場所や時間に制約されず、多くの人々が教育に参加することができるようになります。

学びの質を向上

VRを活用した教育における3つめのメリットは、学びの質を向上させることができることです。

現実にはできない体験が可能になる:VR空間を用いた教育では、現実では実現できないような体験を仮想世界で再現することができます。たとえば、生物学の授業で、内臓の構造を自分の目で確認したり、歴史の授業で、過去の出来事をリアルに体験したりすることができます。これによって、学生たちは、自分の目で見たことや自分で体験したことを通じて、より深く理解することができます。

記憶の定着につながる:VR空間を用いた教育は、従来の講義形式に比べて、記憶の定着につながります。これは、体験を通じて学ぶことができるためです。たとえば、地理の授業で、仮想世界に学びたい場所を再現することで、その場所に行ったことがあるという経験を持つことができ、その場所の地形や風景をより深く理解することができます。

モチベーションの向上:VR空間を用いた教育は、学習者のモチベーションを向上させることができます。これは、VR空間が非常に鮮明で、リアルな体験をすることができるためです。また、自分で操作することができるため、自分自身で学びを進めることができます。

場所・時間を問わずに何度でも学習できる

VRを活用した教育では、学習者が場所や時間にとらわれずに何度でも学習を繰り返すことができます。

自分のペースで学習できる:VRを活用した教育では、学習者が自分のペースで学習できます。自分の理解度に合わせて、何度でも同じコンテンツを学習することができるため、理解が浅い部分やわからない部分を繰り返し学習し、徹底的に理解することができます。

学習の効率化が可能:場所や時間にとらわれない学習は、学習の効率化にもつながります。通学や通勤の時間を有効活用することができるため、時間のロスが少なくなります。また、学習者が自宅や職場などで学習できるため、移動時間や交通費の削減も期待できます。

学習内容の定着が促進される:VRを活用した教育では、身体的な体験を通じて学習が行われるため、学習内容がより深く定着する可能性があります。また、繰り返し学習することで、学習内容が脳に定着しやすくなるという効果もあります。

|VR教育の事例

ここでは、実際にVRを活用した教育事例を紹介します。

Bronx Latin School

米国、ニューヨークのBronx Latin Schoolでは、社会科の授業でVRを活用しました。

Googleが提供している学校向けのVR見学旅行コンテンツ「Google Expeditions」を採用し、アステカ帝国の都市テノチティトランや、ローマ帝国のコロッセウムを再現したバーチャル空間を利用して授業を行いました。

zSpace

zSpaceは、教育現場でのVR活用を専門とする企業で、教育用のVRシステムを提供しています。

この仮想空間では、生物学や物理学などの科目を学ぶことができ、例えば、生物学の授業では、3Dの人体モデルを操作することができ、身体の内部構造をより深く理解することができます。

また、物理学の授業では、現実では危険な実験を安全に行うことができます。

NTTコミュニケーションズ

出典:https://www.ntt.com/business/lp/5g/testmark/002.html

NTTコミュニケーションズは、5Gを活用した高精細VR教育コンテンツを遠隔講義で提供しました。

この講義では、三山時代の今帰仁城を再現した4KVRコンテンツを、5G通信を用いて生徒たちに配信しました。

このように、生徒たちはまるで歴史の現場にいるかのような臨場感を体験でき、石碑を読んだり案内板を見るだけでなく、VRを使用することで、当時の情景をより鮮明に想像することができます。

| VR教育コンテンツ

ここからは、実際にVRを教育に活用するためのコンテンツを紹介します。

emou

「emou」とは、ジョリーグッドが提供する発達障がい支援サービスです。

従来のソーシャルスキルトレーニングでは、訓練する人が自分自身としてその場面を捉えることが難しく、場面をイメージするだけで限界がありました。

しかし、「emou」では、VR技術を使用して、よりリアルな場面体験が可能になりました。

これにより、自分自身の体験だと認識することができ、体験を通じて、気づきや学びを得ることができます。

「emou」は、小学校低学年から高校生までのライフステージに合わせたコンテンツが豊富であり、また就労支援にも対応しています。

そのため、支援対象者の年齢や支援目的に合わせて利用できる効果的なVR教育コンテンツと言えるでしょう。

Lifeliqe

Lifeliqeは、VR技術を駆使し、インタラクティブな学習体験を提供するアメリカのスタートアップ企業です。

同社の提供する学習プラットフォームは、恐竜のスケールを実感したり、宇宙遊泳を体験したり、身体の仕組みを3Dで学ぶことができるなど、様々な分野にわたる学習コンテンツを提供しています。

Lifeliqeが提供する学習体験は、通常の教科書の読み込みに比べて、より身近で身体的、視覚的な体験を通じて学ぶことができるため、学生たちにとって非常に魅力的な学習手段となっています。

| VR教育の課題

「VR教育の課題」として、まず最も大きな課題はコストです。

VRゴーグルやソフト、タブレットなどを人数分用意するには多額の費用がかかるため、VR教育をすべての学校で本格的に行うことはまだ現実的ではありません。

この課題を解決するためには、VR教育の普及に向けた政策的な取り組みや、低コストなVR教材の開発などが必要とされます。

また、一般的なVRゴーグルの使用は13歳くらいからが適性だとされています。

小さな子どもが大人向けのVRゴーグルを使用すると、視力に影響がある可能性があるため、小学生も安心して扱えるようなゴーグルの開発も、VR教育を本格化させるための課題の1つです。

さらに、VRは視覚からさまざまな情報を伝達するため、子どもの興味・関心を引き学習への意欲を高めることができます。

しかし、暗記系においてVR教育の効果が十分であるかどうかはまだわかりません。

VR教育を本格化させるには、その習熟度についてもより一層注目し、習熟度アップのための工夫をしていく必要があります。

このような課題を克服することで、より多くの学校でVR教育が活用され、子どもたちの学びの幅が広がることが期待されます。

| VR教育の将来性

VR教育の将来性について、教育現場におけるVRの活用は著しく進んでおり、特別支援学級向けのコンテンツやVR修学旅行、英会話学習サービスなど多岐にわたります。

また、危険な避難訓練なども、VRを用いることでよりリアルに体験できるなど、すでに幅広い活用がなされています。

たとえば、学校にいながら校外学習を可能にすることや、身体の内部の様子をVRでリアルに観察することなど、その使い道はさまざまです。

将来的には、より多くの学生がより効果的に学べるよう、VR技術の進化や教育現場の環境整備が進められることが必要になるでしょう。

|まとめ

いかがでしたか?

本記事では、VRの教育活用のメリットや導入事例、教育コンテンツについて紹介しました。

現在、VR教育は特別支援学級や修学旅行、英会話学習などに活用されており、今後は主要5教科の学習にも広がっていくことが期待されます。

しかし、コストや習熟度の課題が残されているため、本格的に学校教育に導入されるにはまだ時間がかかるかもしれません。

それでも、VRを活用した学習は、より身近な未来に実現する可能性が高いと言えます。

引き続き今後もVR教育の動向を追っていきます!

では、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!