近年リリースされているPCやアプリのゲームは、美しいグラフィックで実写さながらのクオリティで表現されており、その映像技術は日々進化しています。
このようなゲーム開発の大半は、世界的に有名なゲーム開発プラットフォームであるUnreal EngineとUnityで制作されています。
どちらも高性能な開発エンジンで多くのユーザーが利用しています。
そこで今回はUnreal EngineとUnityの違いについて、メリット・デメリット含め解説します。
目次
|Unreal Engineとは
Unreal Engineとは米国企業であるEpic Gamesによって開発されたゲーム制作のソフトウェアです。
ユニティ・テクノロジー社が開発した「Unity」と同様に代表的なゲーム開発エンジンであり、その特徴はさまざまで、ゲーム開発のみならず建築や自動車の3D設計、アニメーションなど幅広く利用されています。
とくにUnreal Engineで制作された3Dモデルは実写さながらの美しさであり、多くのユーザーから高い評価を獲得しているとともに、
世界的人気を誇る「Fortnite(フォートナイト)」や「ドラゴンクエストⅪ」など人気のゲームがUnreal Engineで開発されています。
一般公開もされており無料で利用できます。
特別なプログラミングの知識も必要なく気軽に利用できるのが魅力の一つです。
「3Dアニメーションを制作してみたい」「ゲーム開発に挑戦したい」このような方にUnreal Engineで制作してみることをおすすめします。
|Unreal Engineのメリット
Unreal Engineを使用するメリットについてご紹介します。
メリットは以下のとおりです。
- プログラミングが不要
- グラフィック性能が高い
- テンプレートがある
- エンジンコードが公開されている
プログラミングが不要
Unreal Engineを利用すればプログラミングの専門知識がなくてもゲーム開発ができます。
従来のゲーム開発ではプログラミング知識は必須のスキルでしたが、ブループリントビジュアルスクリプティングシステム(通称:ブループリント)と呼ばれる機能を利用すれば、ゲーム内の演出をプログラミングなしで実装できます。
演出のバリエーションも多様に用意されているため、開発チームを組んでいる場合でも特別にプログラマーを用意する必要もありません。
グラフィック性能が高い
Unreal Engineはリアルな映像世界が実現できる高いグラフィック性能を誇ります。
3Dモデルを高速にレンダリングする「Nanite」「Lumen」の機能により実写のような鮮明な映像を実現し、多くのクリエイターから高い支持を得ています。
初心者が特別なスキルがなくても、ハイクオリティな映像制作が可能な点は大きな魅力と言えるでしょう。
テンプレートがある
Unreal Engineにはゲームの基礎部分となるテンプレートが用意されています。
テンプレートは多種にわたり用意されているので、組み合わせを自由におこなえるとともに、初めてのゲーム開発でも安心かつ直感的に制作をすすめることができます。
テンプレートを利用しながらゲーム開発に取り組むことで、基礎部分を学びながら進めることができるので、ゲーム制作としてのスキルの上達も早くなるでしょう。
エンジンコードが公開されている
Unreal Engineは特定の条件のもとでエンジンコードが公開されています。
プログラミングに精通されている方にとって、内部でどのような処理がおこなわれているか理解したいこともあるでしょう。
またエラーが発生した場合、内部でなにがおこっているか把握することによって、早期にバグを発見し修正作業に取り組むことができます。
エンジンコードは公式ホームページで公開されているので気になる方は確認してみましょう。
|Unreal Engineのデメリット
プログラミング不要などのメリットも多いですが、Unreal Engineにもデメリットはあります。
デメリットは以下のとおりです。
- 高性能PCが必要
- 日本語の情報が少ない
高性能PCが必要
Unreal Engineは美しいグラフィックモデルを制作できますが、処理が重たくなりやすいので利用するには高性能のPCが必要です。
Unreal Engineの公式ホームページで推奨されているPCのスペックは以下のとおりです。
オペレーティング システム | Windows 10 64-bit |
プロセッサ | Quad-core Intel Intel または AMD、 2.5 GHz またはそれ以上のプロセッサ |
メモリ | 8 GB RAM |
ビデオカード/DirectX Version | DirectX 11 または DirectX 12 対応のグラフィック カー |
公式ホームページでの推奨スペックは最低限必要なラインで記載されています。
実際にどのような作業をするかにもよりますが、公式ホームページ推奨スペックを上回るゲーミングPCを選択しておくことをおすすめします。
日本語の情報が少ない
Unreal Engineは米国企業が開発したプラットフォームだからということもあり、公式サイトやチュートリアル動画は英語で表記されているため日本語の情報収集は困難です。
企業や個人ブログでもUnreal Engineについての記事は公開されてますが、そこまで多くありません。
自分が必要な情報を収集するにはある程度の語学力は必須です。
とは言え英語が苦手な方もいますので、Google翻訳やDeepLなどの翻訳機能を利用しながら少しずつ理解を深めていきましょう。
|Unityとは
Unityとは米国企業であるユニティ・テクノロジー社が開発したゲーム開発ソフトウェアです。
2005年にリリースされて2Dや3Dモデルのゲーム開発を手軽に開発ができるとして多くのエンジニアが利用しており、同じゲーム開発プラットフォームであるUnreal Engineと並び世界的なシェアを誇ります。
基礎的な部分はプログラミング知識がなくてもモデル制作は可能ですが、より細部までこだわった制作をしたい場合は「JavaScript」「C♯」「Boo」などのプログラミング言語を使用すれば可能です。
多くの外部プラットフォームとの連携に対応しており、WindowsやMacはもちろんのことスマホのiOSやAndroidにも対応しています。
世界的に有名な「ポケモンGO」「ドラゴンクエスト」「スーパーマリオラン」などのアプリ開発もUnityが利用されています。
初心者から上級者まで幅広く利用されており、自分のレベルに合ったゲーム開発をすることができます。
|Unityのメリット
Unityのメリットについてご紹介します。
詳細は以下のとおりです。
- エディタが軽い
- 日本語の情報が多い
- 多くのプラットフォームに対応している
- アセットが充実
エディタが軽い
ゲーム開発エンジンは多量な情報を処理するために高機能なスペックのPCが必要です。
しかしUnityはエディタが軽く、ゲーミングPCのような高スペックPCは必要ありません。
WIindowsやMacのどちらにも対応しているので汎用性もよく、ゲーム開発初心者の方でも気軽に利用することができます。
高性能PCを購入する余裕がない方はUnityから始めることをおすすめします。
日本語の情報が多い
Unityは日本国内で多くのユーザーに利用されていることもあり、日本語での情報収集がしやすいのが魅力の一つです。
同じ人気のゲーム開発エンジンであるUnreal Engineでは、英語表記の記事や音声メディアが多く、ある程度の語学力が必要ですが、Unityでは日本語のチュートリアル動画や記事が公開されているので初心者でも抵抗なく扱うことができます。
情報収集がしやすいのでスキルの上達も早くなるでしょう。
多くのプラットフォームに対応している
UnityではWindowsやMacはもちろんのことモバイルやVR機器、デスクトップなど合わせて24のプラットフォームとの連携に対応しています。
多くの作品がUnityにより生み出されており、あらゆる端末と連携しゲームを楽しむことができます。
自身で制作したキャラクターやパーツをさまざまなプラットフォームで楽しむことができるのは大きな魅力の一つです。
アセットが充実
アセットとはゲーム内で使用できる素材や部品のことです。
Unityでは公式ストアでさまざまなアセットが利用できます。
同じゲーム開発エンジンであるUnreal Engineでも公式ストアで利用可能ですが、Unityの方が利用可能な数が多いのが特徴です。
初心者の方がいきなり3Dモデルを制作するのはハードルが高いので、アセットを組み合わせての制作から始めるのがおすすめです。
アセットは一部有料ですが無料で利用できるものも多数あるので、うまく活用してみましょう。
|Unityのデメリット
Unityのデメリットについてご紹介します。
詳細は以下のとおりです。
- 起動が遅い
- 編集画面が英語
起動が遅い
Unityは起動が遅いと言われています。
要因はさまざまですが、おもに画像の使用枚数が影響しています。
Unityは画像を各プラットフォームと連携する際に、連携先に見合った画像形式に変換されるので処理に時間がかかるためです。
また上記Unityのメリットでもご紹介したアセットが充実している分ファイルの容量を圧迫していることも影響しています。
不要なパッケージを削除したりキャッシュサーバーを有効にするなど対策しながら使用しましょう。
編集画面が英語
Unityはエディタの編集画面の言語が英語で表記されています。
検索すれば理解できる英単語で構成されていますが、都度調べながらの開発作業は効率がわるくなります。
気になる方は日本語化できるプラグインである「Unity Hub」をインストールしてみましょう。
日本語モジュールを追加することによって日本語表記になりますので、気になる方は設定しておくことをおすすめします。
|Unreal EngineとUnityの違いは?
ここまでUnreal EngineとUnityのメリット・デメリットについてご紹介しました。
ここからは下記項目ごとの違いについてご紹介します。
開発ジャンル
Unreal EngineとUnityの得意な開発ジャンルの違いは以下のとおりです。
Unreal Engine:3DゲームまたはVR
Unity:2Dゲームやスマホ向けゲーム
Unreal Engineは美しいグラフィックが魅力なので3Dの立体的な世界観が表現できるゲーム開発に適しています。
有名なゲームとして「フォートナイト」「ドラゴンクエストⅪ」などはUnreal Engineで制作されています。
一方でUnityはアセットなどの機能がデフォルトで用意されているので、ゲーム内の機能を豊富にしたい場合や2Dゲーム、スマホのアプリゲーム開発に適しています。
有名なゲームとして「原神」「ポケモンGO」などはUnityで制作されています。
自身が開発したいジャンルによってどちらのプラットフォームを使用するか検討してみましょう。
プログラミング
Unreal EngineとUnityでは使用しているプログラミング言語が異なります。
Unreal Engineは「C++」という言語を使用しています。
これに加えてブループリントというビジュアルスクリプトを使用しているので、直感的な操作でノーコードでゲーム制作を進めることができます。
一方でUnityは「C#」という言語を使用しており、スクリプトと呼ばれるプログラムを作成することでゲーム制作を進めることができます。
どちらも専門的知識で習得は簡単ではありませんが、一般的には「C#」の方が情報商材も多く、初心者にとって学びやすいと言われています。
しかしUnreal Engineではプラグミングをおこなわなくてもゲーム制作は可能なので、「C++」から始めても問題はありません。
プラットフォーム
Unreal EngineとUnityで対応しているプラットフォームの違いは以下のとおりです。
プラットフォーム | Unreal Engine | Unity |
iOS | ○ | ○ |
Android | ○ | ○ |
VR | ○ | ○ |
Linux | ○ | ○ |
Windows PC | ○ | ○ |
Mac OS X | ○ | ○ |
SteamOS | ○ | ○ |
HTML5 | ○ | × |
Xbox One | ○ | ○ |
PS4&5 | ○ | ○ |
Windows Phone 8 | × | ○ |
Tizen | × | ○ |
Android TV and Samsung Smart TV | × | ○ |
Web Player | × | ○ |
WebGL | × | ○ |
PlayStation Vita | × | ○ |
Nintendo Switch | ○ | ○ |
主要なプラットフォームはどちらでも対応しています。
一部Unityしか対応していないものもありますので、自身が開発を進めたいプラットフォームに対応しているか確認しておきましょう。
利用料金
Unreal EngineとUnityは基本的に無料で利用できますが、一定の条件で利用料金が発生します。
発生条件は以下のとおりです。
Unreal Engine:開発したゲームで100万ドルの収益が発生した場合、年間約5万円利用料が必要
Unity:有料版を申し込んだ場合
Unreal Engineは開発したゲームで収益が100万ドル以上発生した場合、ロイヤリティーとして5%の利用料金が発生する仕組みです。
一方でUnityは数種類のプランから選択が可能であり、「Student」「Personal」は無料版で「Plus」「Pro」「Enterprise」は有料版になります。
一部機能は有料版でしか使用できないようになっており、開発チームを組んで進めていく場合は有料版を選択することをおすすめします。
将来性
Unreal EngineとUnityは世界的に有名なゲーム開発エンジンであり、多くのユーザーに利用されています。
上記で解説したとおり得意分野はそれぞれ異なりますが、ゲーム人口は今後も増え続けると見込まれているため、ゲーム開発は益々発展していくでしょう。
とくに美しいグラフィックである3Dモデルを生かしたゲームやVRは今後更なる発展が見込まれるため、Unreal Engineのユーザーは増加傾向になります。
しかしUnityでしかできないこともあるため、Unityのみが衰退していくこともありません。
シェア率については得意分野を生かした結果となっています。
PCゲームではUnreal Engineがトップシェア、アプリゲームではUnityがトップシェア、全体的にはUnityの使用人口割合が高いです。
|まとめ
Unreal EngineとUnityの違いについて解説してきました。
おもな違いについて以下にまとめます。
- Unreal Engineは3DモデルのゲームやVR開発、Unityはアプリゲーム開発に適している
- Unreal Engineはノーコードでゲーム開発ができ、Unityはゲーム開発にプログラミングが必要
- 主要な外部プラットフォームはどちらも対応している
- どちらも無料で利用できるが、一定条件により有料になる
- ゲーム開発は今後も需要が見込まれ、どちらの開発エンジンのユーザーも増加傾向にある
それぞれの開発エンジンにはメリット・デメリットがあります。
自身がゲーム開発したいジャンルや目指したいキャリア、予算なども考慮しどちらの開発エンジンを利用するか検討しましょう。