本記事では、バーチャル空間、メタバース、VRなどを活用したビジネスに関心をお持ちの方にむけて、
・そもそもバーチャル空間とは何か
・バーチャル空間をビジネスに活用する方法や事例
・ビジネスにバーチャル空間を取り入れるメリット
などをご紹介します。
本記事をお読みになれば、自社サービスにバーチャル空間を導入するとどのようなことができるか?を検討できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
┃バーチャル空間(メタバース)とは?VRとの違いも解説
バーチャル空間とは、映像技術によって作られた仮想空間のことです。
ユーザーはスマホやパソコン、VRゴーグルを使ってバーチャル空間に参加し、活動します。
ユーザーは自分の肉体の代わりにアバターを操作し、その空間内でアクションを起こしたり、移動をしたりできます。
バーチャル空間という言葉に触れると、同時にVRという言葉も見かけることが多いと思います。
この二つの単語は、密接に結びついているため混同されることも多いですが、実は指している内容が違います。
バーチャル空間(メタバース)とは、その名の通り、インターネット上やゲームなどに存在している仮想空間自体をさす言葉です。
一方VRはバーチャルリアリティの略で、日本語では仮想現実という訳があてられています。
仮想空間上で、まるで現実にいるかのように自由に動いたり活動したりすることができる技術のことを指します。
つまりVRとは、バーチャル空間をユーザーが現実のように体験するための技術のことです。
┃ビジネスにおいてバーチャル空間の活用が注目される理由
ビジネスにおいてバーチャル空間がひときわ注目を集めるようになったのは、2020年のコロナ禍以降です。
多くの企業がリモートワークを強いられるなかで、「社員の表情や動きがわからない」、「周囲に人がいないと緊張感が持てない」など、働く上で様々な課題がうまれました。
そうした中で急速に普及したのが、バーチャルオフィスツールです。
仮想空間に社員同士でアクセスすれば、まるで本当にそこにいるかのような感覚でコミュニケーションが取れるため、
リモートワークにおける課題が軽減できるという利点があります。
そして、コロナ禍が一時的に落ち着きをみせ、問題なく出社できるというような時期が来ても、こうしたオフィスツールは利用され続けています。
リモートで働きつつ、まるでリアルなオフィスに出社しているような緊張感や、
スムーズなコミュニケーションを享受できるというバーチャルオフィスの魅力は、コロナ禍でなくとも大きなメリットです。
バーチャルオフィスだけではなく、展示会やイベントにおいても、
物理的に集まらずとも臨場感のある雰囲気で開催できるため、
バーチャル空間が多く活用されるようになっています。
┃バーチャル空間をビジネスに取り入れるメリット
これまでにご説明したバーチャル空間の特徴を踏まえて、
バーチャル空間をビジネスに取り入れるとどのようなメリットが得られるかをご説明していきます。
・現実世界では実現できない世界観が作れる
オフィスからイベント会場まで、現実世界で何らかの活動のための場所を用意しようとすると、物理的、法的に様々な制約が付きまといます。
しかしバーチャル空間なら、そうした制約を一切無視して、望み通りの世界をそのまま形にすることができます。
リアリティを追求したければ、現実に存在する場所を厳密に再現することもできますし、非日常的な空間を作りたければ、現実とは異なる物理法則を設定し、根本的にリアルな空間とは異なる世界にすることも可能です。
・場所や時間を問わない
バーチャル空間は、ユーザーが自分のデバイスでアクセスするものですので、
いつでもどこからでも参加することができます。
例えばバーチャルオフィスなら、一つの会社に全国、全世界から出社することができます。
移動が完全に省略できますので、イベント事業などにおいても、会場が遠方だから参加できないといったことが一切生じません。
このように、今まででは関われなかった人にも簡単にアプローチできるのも大きな利点です。
・ユーザーの行動データが蓄積しやすい
バーチャル空間においては、ユーザーの行動はシステムで取得することができますので、手軽に顧客の行動データを集めることが可能です。
例えばデパートを仮想空間上に用意した場合、買い物客一人一人の移動経路や、
一つの店舗への滞在時間などが完全に把握できます。
そのため、どのような導線を引けばより多くの店に立ち寄ってもらえるのか、
どの場所にどのような店を置けば収益が出やすいのか。といった分析を行うことができます。
┃バーチャル空間をビジネスに活用する方法や手段
ここでは、どのような事業分野でバーチャル空間を活用できるかをご紹介します。
利用顧客のメリットにも注目してご説明します。
・展示会や体験会、イベントを通じた商品PR
バーチャル空間で展示会や体験会、イベントを開催することで、よりユーザーがリアルにその商品を体感できるため、購入における不安を払拭することができます。
バーチャル空間上に商品の3Dモデルを用意することで、
オンラインでありながら実物大の商品を体験していただくことが可能です。
また、そうした3Dモデルは現実の物体よりはるかに自由に取り扱うことができますので、現実では不可能な商品紹介の手法をとることもできます。
例えば家具製品を紹介するとき、お客様が自分の好みの家具を複数選んで自由に部屋に配置するなど、実物の商品では難しい体験を提供することも可能です。
こうした活用方法が特に注目されているのは、観光業や自動車業などの分野です。
なぜならこうした分野では、この商品を買えばこのような経験ができます、といったアピールによってユーザーの購買意欲を高めることが重要になるので、
バーチャル空間上で、リアリティのある体験をしてもらうことが非常に有効であるからです。
・研修や技術訓練のためのシミュレーション
バーチャル空間で、企業研修やトレーニングを行うことも可能です。
特に、医療や機器製造などの現場では、VR技術を活用したシミュレーションが注目を集めています。
オンライン上であっても、単純にマニュアルを読み合わせるのではなく、
実際に手を動かしたり機器を操作する感覚を体験することができるからです。
バーチャル空間上に現場を厳密に再現すれば、本番さながらの環境でトレーニングができるため、精度の高い研修を行うことができます。
また、現実の資材を消費せずに何度でも作業手順の説明、確認などを行うことができます。
また、工場内の危険な場所の研修をバーチャル空間上で行えば、事故の可能性を排除できますので、危機管理の上でもメリットがあります。
また、仮想空間におけるユーザーの身体であるアバターは、物体を透過したり、
非表示にすることもできますので、本来なら少人数しか収容できないような場所に多くの人を集めて、一括で説明を行うこともできます。
・会議や商談、プレゼンテーション
すでに多くの企業が、バーチャルオフィスツールを取り入れ始めています。
リモートワークでも、まるで一緒にいるかのような感覚で会議ができるのが利点です。
また、こうしたサービスはプレゼンや商談でも活用できます。
アバターを用意すれば、オンラインでありながら全身のジェスチャーを使って思いを伝えたり、表情を使って反応を伝えたりすることもできます。
バーチャル空間上にホワイトボードを置いて文字を書いたり、ディスプレイを設置し、そこにプレゼン資料を表示したりと、実際に対面でプレゼンテーションを行っているかのような視線の動きを作ることもでき、ビデオ会議よりもストレスフリーな場を作ることができます。
・オンラインショッピング
バーチャル空間上にお店を設計すれば、オンラインショッピングでありながら、
リアル店舗へ買い物をいくメリットや楽しさも兼ね備えた体験を提供できます。
例えば、実際に商品の3Dモデルを手に取ってみて、様々な角度から眺めてみることができるので、実物がわからず購入に不安を覚えるというオンラインショッピングのデメリットが払拭できます。
さらに、お店を歩いていたら事前に買うつもりのない商品も手に取ってしまった、というような、本来オンラインショッピングでは起きないような体験も可能です。
また、実際に店員とアバター同士でコミュニケーションを取りながらショッピングするという形にすることもできます。
さらに、現実よりも商品の体験がスムーズにできる場合もあります。例えばアパレルブランドのお店では、服を選択するだけでアバターが一瞬で着替えることができます。一回の試着にかかる時間を短縮できますので、より多くの服を試すことが可能になります。
・広告
バーチャル空間上の店舗や街並みに、街頭広告のような形で広告を配置することができます。
従来の動画広告は、動画視聴者が映像コンテンツを視聴しているところに割り込んで表示するというものが多いですが、こうしたバーチャル空間上の広告は、見る側に「割り込まれた」と感じさせることがなく、実際に街頭広告を見せるような形で自然に興味を引くことができます。
空中に直接看板を浮かべる、文字を流すなど、バーチャル空間ならではの演出が可能です。
他にも、ユーザーが空間内に入り込んでいることを利用して、360度全周から眺めることのできる動画広告を流すこともできます。
さらに、ユーザーが広告に興味を持ったら、そのバーチャル空間上で商品を即座に体験できるという導線を引くこともできます。
例えば、バーチャルな街並みを歩いて車の広告をクリックすると、即座にその街並みで試乗できる、といった利用法が考えられます。
┃バーチャル空間をビジネスに活用する上での問題点
経済産業省は、仮想空間をビジネスを活用することで起こりうる問題は主に12種類あるとしています。
ここでは、12種類の問題類型と、それぞれの問題類型で起こりうる法的リスクをご紹介します。
1、仮想オブジェクトに対する権利の保護
現行法では想定されていない権利に関する訴訟が発生し得る
2 、仮想空間内における権利の侵害
不正競争防止法違反の可能性がある
不法行為責任に基づく損害賠償請求の可能性がある
3 、違法情報・有害情報の流通
不法行為責任に基づく損害賠償請求の可能性がある
プロバイダ責任制限法に基づき事業者が免責されないケースがある
4 、チート行為
適切な利用規約が締結されていない場合、チートに対応できない恐れがある
5 、リアルマネートレード(RMT)
適切な利用規約が締結されていない場合、RMTに対応できない恐れがある
6 、青少年の利用トラブル
出会い系サイト規制法に抵触する可能性がある
7、 ARゲーム利用による交通事故やトラブル
現行法上対応できないトラブルに対する訴訟が発生する可能性がある
8、 マネーロンダリングや詐欺 犯罪収益移転防止法の強化への対応が求められる
プラットフォーマーの善管注意義務が発生する場合がある
9、 情報セキュリティ問題
個人情報保護法に抵触する恐れがある
不法行為責任に基づく損害賠償請求の可能性がある
10、個人間取引プラットフォームにおけるトラブル
プラットフォーマーの債務が拡大する可能性がある
11 、越境ビジネスにおける法の適用に関わる問題
紛争解決時に適用される法律等へ影響がある
12、独占禁止法に関わる問題
独占禁止法に抵触する恐れがある
出典:https://is.gd/faVwkK
┃バーチャル空間を利用したサービス展開をする企業の事例
バーチャル空間やアバターを活用したビジネスといっても、業界や企業によって多種多様なアプローチがあります。ここではサービス実例をいくつかご紹介します。
・oVice
会話に特化したバーチャル空間オフィスツールです。
仮想のオフィスに複数人で集まって、用件があるときはすぐに相手に近づいて会話を始められるというサービスです。
このサービスの特徴は、非常にシンプルな見た目です。
バーチャルオフィスといっても、その空間は部屋を真上から見下ろすかのような平面で表示されていて、z軸がありません。
アバターにあたるものも円形のアイコンです。
ユーザーのアイコン同士の距離が離れていれば声が聞こえず、近ければ聞こえるという仕組みになっています。
ユーザーは、自分のアイコンをマウスで動かしてほかの人のアイコンに近づけることで、会話を始めることができます。
現実空間のオフィスにおける、話したい人を探して、近づいて話しかけるという動作を、非常に簡潔な画面と操作で再現しています。
・Mesh for Microsoft Teams
oViceと同じくバーチャル空間に集まって会議をするためのサービスですが、
こちらは3Dの空間に人型のアバターで参加します。
空間に写真やホワイトボードを配置することができ、
現実のオフィスで話し合っているかのような感覚でミーティングを行うことができます。
加えて、オンラインでのコミュニケーションでも、直接対面しているかのような感情のやり取りも行えるような工夫が凝らされています。
例えば、ユーザーが話す声に反応してアバターが手を動かしたり、顔の表情を変えたりするなど、感情表現の動作を行うようになっています。
また、いずれはカメラ付きのデバイスによって口の動きやまばたきなどを直接アバターの動きに反映させることで、さらに表情豊かなコミュニケーションを目指しています。
・REV WORLDS
バーチャル空間上でコミュニケーションやショッピングを楽しめるサービスです。
新宿をモデルにしたバーチャル空間上の街を歩きながら、友人との交流を行うことができます。
チャット機能でコミュニケーションをとったり、エモート機能で感情表現を行うことが可能です。
伊勢丹新宿店をバーチャルな新宿に再現しており、店内を歩きながらショッピングをすることもできます。
販売されている商品は、実際に伊勢丹で取り扱われているものを3DCGで表現したもので、現地の店舗で買い物するのと近い体験をすることができます。
・NIKELAND
ナイキ本社をイメージしたワールドで、ユーザーは鬼ごっこやドッヂボールなどのレクリエーションを楽しめます。
ユーザーのアバターは、実在するナイキブランドのウェアやシューズを装備することができます。
自社製品の宣伝をバーチャル空間上で自然に宣伝している好例といえます。
また、スマホなどのデバイスに内蔵された加速度センサーで、ユーザーの現実世界での走り方をアバターの走り方に反映させるなど、スポーツブランドらしさをサービスで表現しているのも特徴です。
・REALITY
ユーザーがアバターを使ってライブ配信できるサービスです。
アバターでバーチャル空間を自由に動き回れるわけではありませんが、目の動きや表情の変化をトラッキングし、アバターの顔に反映させることができます。
そのため、自分の素顔をインターネットに載せることなく、表情による感情表現をすることができるのが特徴です。
また、アバターの顔立ちや髪型、服装などをユーザーの好みに合わせて細かくカスタマイズすることができます。
┃まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
本記事では、バーチャル空間をビジネスに活用した際のメリットや、実際にどのような事業に活用されているのかといったことをご紹介しました。
バーチャル空間の活用事例が非常に多様であることがお判りいただけたかと思います。
人の行う活動は、ビジネスから娯楽に至るまで、必ずその活動を行う空間を必要とします。
だからこそ、バーチャル空間に関する技術はありとあらゆる分野で活用できる可能性を持っています。
この記事をお読みになった皆様もぜひ、バーチャル空間を活用したビジネスを検討してみてはいかがでしょうか?