近年、ビジネスシーンでも耳にすることが増えてきた「メタバース」という言葉。
メタバースは仮想空間、仮想現実などと訳され、コンピュータやインターネット上で提供されるもうひとつの世界、およびそこで提供されるサービスのことを指します。
従来は、主にゲームに活用されていたメタバースですが、新型コロナウィルスの感染拡大によりテレワークが普及したことで、ビジネスシーンにおいてもメタバースの活用が注目を集めています。
本記事では、「メタバースに興味はあるけど詳しくは知らない…」、「メタバースを活用したビジネスをやってみたい!」という方向けに、メタバースの概要や、サービス活用事例について解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
本記事を3分で解説している動画もございますので、時間のない方はぜひこちらの動画をご覧ください。
目次
|メタバースとは?

メタバースの語源は、超越した様子を意味する「メタ(meta)」と宇宙を意味する「ユニバース(universe)」を組み合わせた造語で、1992年に発行されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」の世界から名づけられました。
メタバースの空間はコンピューターグラフィック(CG)で表現された仮想空間です。
そのため、現実とはかけ離れた世界を構築することも可能です。
またインターネット上の世界ですので現実のような敷地の制限もなく理論上どこまでも大きな空間を作ることも可能です。
そうした現実を超越した(meta)どこまでも広がる空間(universe)を表した言葉です。
仮想空間の中でアバターと呼ばれる、インターネット上での自分の分身で世界に入り、遊んだり、会話をしたり、お買い物をしたり…と誰かとコミュニケーションをとることができる場所がメタバースです。
最近話題になった言葉なので、新しい概念だと誤解されがちなメタバースですが、実際には2000年代初めから既にある概念です。アメリカのリンデンラボ(Linden Lab)社が2003年にリリースした「Second Life」はメタバースの先駆けとしてインターネット上でのコミュニケーションや売買取引が行われており、日本での2006年ごろにブームとなりました。
そんなメタバースですが、「CGで作られた仮想空間ならば入るにはVRゴーグルが必須では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、多くのサービスはお手持ちのスマートフォンやPCなどのマルチデバイスからアクセスが可能です。VRゴーグルをお持ちであれば、「没入感」を味わうことができます。
また、メタバース空間へはアバターで入り、その姿でコミュニケーションを楽しむことができます。
「顔と顔を合わせるのはちょっと…」という方も安心して参加できるでしょう。
|メタバースとVRの違いは?

VRとはバーチャルリアリティ、「仮想現実」と訳されます。
まるで現実にいるかのように自由に動いたり活動したりすることのできる「技術」の総称を指します。
一方、メタバースというものは取引や会話ができる「仮想空間」を指します。
例えば、人気ゲームのマインクラフトやフォートナイトは現実にいるかのように錯覚させるものではありませんが、
仮想空間で交流ができるのでメタバースに分類されます。
VRは「現実のような体験をできる技術かどうか」、メタバースは「人々が交流できる仮想空間かどうか」に重点を置いた言葉になります。
そのため、両者は共存することもありVR技術を使ったメタバースも存在します。
|メタバースが注目を浴びている理由

メタバースが注目を浴びている理由として、新型コロナウイルスの流行は外せないでしょう。
2020年のコロナ禍以降、日本全国で外出自粛ムードが広まり、リモートワークが浸透していきました。
しかし、急激な変化を強いられたこともあり、今までの対面を中心としたやり方とは全く違う働き方に戸惑う方も多くいました。
解決策として注目されたのがメタバースです。
まるで本当にそこにいるかのような感覚で社員同士のやりとりができるため、リモートワークにおけるコミュニケーションのストレスを軽減することができます。
つまり、リモートでありつつリアルなオフィスに出社するメリットも享受できることから急速に普及しているのです。
こうして今までは娯楽のひとつとしてとらえられていたメタバースですが、ビジネスシーンでも受け入れられるようになったのです。
娯楽の面でも外出ができなくなったため、家でも楽しめるサービスとして需要が高まっています。
自宅からコミックマーケットに参加したり、ライブを楽しめたり、
美術鑑賞をしたり…といった進化をとげています。
また、より多くの方の注目を集めた出来事としてFacebook社の社名変更が挙げられ、その他多くの世界的企業がメタバースへの参入を始めています。
Withコロナの風潮が高まり、大規模なリアルイベントの開催も増えてきていますが、マスク着用必須や大声での会話禁止などまだまだ制限がある中で、メタバースを利用してのイベントの需要は引き続きあると考えられます。
|メタバースがもたらす効果
メタバースを用いることで、様々な効果が期待できます。
経済コンサルティング会社Analysis Groupは、「The Potential Global Economic Impact of the Metaverse(メタバースがもたらす世界経済への影響)」というレポートを公開し、その中でメタバースが世界のGDPに対し3兆ドル(約390兆円)の規模で寄与する可能性があると発表しました。
では具体的にどのような効果があるのでしょうか。
ここからは、わかりやすくメリット・デメリットに分けて解説します。
メリット
まずは、メリットから解説します。
制約に縛られない
メタバースを用いるメリットの1つめが、制約に縛られないという点です。
自由度の高いメタバースでは、現実世界では実現不可能な仮想世界を創り出すことができたり、家にいながらバーチャルオフィスやイベントに参加することができます。
また、身体的なハンデを受けずにイベントに参加できる点は非常に高く評価されています。
メタバースを取り入れることで、移動距離やコストを削減することが可能になります。
コミュニケーションの向上
メタバースを用いるメリットの2つめが、コミュニケーションの向上という点です。
コロナ渦で一気に主流となったテレワークにおいても、メタバースを利用することで、テレビ電話会議ツールよりもはるかにスムーズで且つ現実とさほど変わらないコミュニケーションをとることができます。
メタバース空間内に、バーチャルオフィスを作り、自分の分身となるアバターが仕事をします。
その中では、ボディーランゲージを使っての双方からのコミュニケーションが可能になったり、アバターによる表情の再現度も高いので、リアルに限りなく近い快適なコミュニケーションが実現できます。
デメリット
ここからは、デメリットを紹介します。
現実世界に帰ってこられなくなる
メタバースの世界は、VRゴーグルをかけることで視界が360度仮想世界になり、没入感のある空間になります。
現実世界の嫌な制約から解放され、メタバースの内の理想的な世界に浸ってしまい、抜け出せなくなる可能性があるので注意しましょう。
|メタバースを利用したサービスにはどんなものがある?
さて、そんなメタバース空間を利用したサービスにはどんなものがあるでしょうか。
ビジネス分野の事例
ビジネス向けサービスとしては展示会やイベント、研修にトレーニング、商談や商品PR、広告など既にあらゆる分野に活用されています。
メタバース空間ならば場所や時間を問わずすぐに参加できますので、全国からの集客が期待でき、商談の機会を逃がさずに最大化することができます。
シーン別に分けていくつかご紹介していきます。
バーチャルイベント
バーチャルイベントとは、オンラインの仮想空間内で行うイベントです。
メタバースにおけるバーチャルイベントは、従来のオンラインイベントよりも圧倒的な臨場感でイベントを実施できます。
アバターで仮想空間内のイベント会場に入場し、椅子に座って登壇者の話を聞く講演会を開催したり、エリア内でグループに分かれて意見交換を行う座談会を開催したりできます。
オンライン上でまるでその場にいるかのような体験ができるため、対面イベントとオンラインイベントのメリットを併せ持ったイベントを提供できるでしょう。
バーチャルショップ
バーチャルショップとは、オンラインの仮想空間内に作られた店舗です。
リアルの店舗と同様に、物品やサービスの購入ができます。
バーチャルマーケットイベントVketで展開しているBeams Japanなどのバーチャルショップは話題となりました。
バーチャルショップをメタバース空間内に構築すると、アバターで自由に店舗を動き回ることはもちろん、アバターの店舗スタッフの接客を受けたり商品や商品情報を調べたりすることも可能です。
バーチャルオフィス
メタバースのビジネスにおける利用で注目されているものが、仮想空間のオフィスにアバターで出社し、同僚とコミュニケーションや業務を行えるバーチャルオフィスです。
2021年にFacebook(現・Meta)が公開した「Horizon Workrooms」は、現実世界と仮想世界をよりシームレスに繋ぐことを意識したバーチャルオフィスです。
Meta独自の空間オーディオテクノロジーにより、話しかけられている方向や距離が分かるようになっています。
バーチャルでありながら自然な会話を実現しているため、実際に同じ空間にいるかのように感じられ、ストレスなく業務に取り組めます。

出典:https://www.oculus.com/workrooms/
消費者向けサービスとしても、ゲームやファン交流イベント、クリエイター向けの展示会などが開催されています。
アメリカのゲーム会社Epic Gamesが提供するオープンワールドFPSゲーム「フォートナイト」では、すでにメタバースの一部が構築されており、ゲーム内の「パーティーロイヤル」と呼ばれるモードではバトル要素が排除され、ユーザーはミニゲームで遊んだりフレンドとの交流を楽しんだりできます。
ミュージシャンの米津玄師さんや星野源さんがここでバーチャルライブを行ったことで日本でも話題になりました。
その他にも実際の観光スポットを事前確認に使ったり、VRやAR(拡張現実)と組み合わせることで試着ができ、オンラインショッピングのデメリットを払拭できるでしょう。
|メタバース空間を利用したサービスやツールの事例
ここからは実際のサービス事例を交えながら紹介していきます。
oVice

出典:https://www.oculus.com/workrooms/
二次元の仮想空間に入り、音声のやり取りをするオフィスツールです。マイクをオンにすると同じ空間にいる人全員に声が届くのではなく、近くにいる方にのみ声を届けることができます。
話しかけたい人が遠くにいる場合は自分のアイコンをその人のところにまで移動し話しかけます。
現実空間のオフィスにおける、話したい人を探して、近づいて話しかけるという動作をオンラインで実現しています。
業務中は常に仮想空間内に入っておいて、特定の人に相談があるときにサッと話しかける使い方がおススメです。
Mesh for Microsoft Teams

出典:https://docs.microsoft.com/ja-jp/mesh/overview
マイクロソフト社が提供しているビデオ通話ツールの「Microsoft Teams」はご存じの方が多いでしょう。
Teamsがリモートワークのコミュニケーション不足の緩和し、会議への積極的な参加を促すために新たな機能を携えたのが「Mesh for Microsoft Teams」です。
通常のビデオ通話ツールでは会議に参加する際、カメラをオンにして自分の顔を映して参加するものがほとんどですが、Mesh for Microsoft Teamsは自分で作成したアバターで参加することができます。
この機能により静止画やアイコンによって参加する人を減らし、活発なコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
Microsoft社はこのサービスをメタバースの入り口と位置づけ「2億5,000万のユーザーにリモートワークやハイブリットワークの新しいアプローチを示す」としています。
REV WORLDS

出典:https://www.mistore.jp/shopping/feature/shops_f3/vrinfo_sp.html
仮想空間に都市を再現し、その中でコミュニケーションを取ることを目的としたスマートフォン向けメタバースプラットフォームです。
東京ドームや漫画「刃牙」シリーズに登場する地下格闘技場、伊勢丹新宿店などをバーチャルで再現しています。
特にバーチャル伊勢丹新宿店では仮想空間内でショッピングが楽しめるなど、実際の店頭スタイリストさんをCG化し、不定期にオンライン接客をしてもらうサービスも展開しています。
地方にお住みの方や「刃牙」シリーズのファンの方は一度体験してみてはいかがでしょうか。
NIKELAND(ナイキランド)

出典:https://nike.jp/nikebiz/news/2021/11/22/4956/
こちらはNIKEが展開している「ナイキランド」というサービスです。ナイキランドでは鬼ごっこやドッチボールなどの体を動かすあそびを楽しめます。
スマートフォンなどのモバイル端末が搭載している加速度センサーを通じ、現実のプレイヤーの動きをゲームにも反映することができます。
また、こうしたミニゲームを自作することも可能です。
アバターのカスタマイズも特徴的でナイキが提供しているスニーカーや洋服などのアパレル製品をアバターに着せることができます。
なかなか外で遊ぶ場所や機会がないというお子様におすすめのサービスです。
REALITY

出典:https://reality.inc/
スマートフォン向けバーチャル配信アプリです。
自分好みのアバターを作成し顔を出さずに24時間いつでもライブ配信をすることができます。
またスマートフォンのインカメラで配信者の表情を読み取ることで、アバターの顔もリアルタイムに動かすことができます。
ユーザー同士もチャット機能を用いて交流でき、バーチャルコミュニティを楽しむことができます。
「配信に興味があるけど顔出しは抵抗がある…」「推しの配信者をファン同士で語り合いたい!」という方におススメです。
FORTNITE(フォートナイト)

出典:https://www.epicgames.com/fortnite/ja/home
こちらは上で簡単に紹介した、世界的人気を誇るゲームである「フォートナイト」です。
フォートナイトといえばZ世代に爆発的な人気を博している最大100名の無料バトルロワイアルゲームです。
しかしそれだけではなく、実はライブやコミュニケーションを取るために集まる場所として活用されています。
特にライブでは一時同時接続者数1230万人を突破するなど大きな盛り上がりを見せています。
フォートナイトでは自分でゲームやワールドをデザインする機能があります。
中には「パーティワールド」と呼ばれる戦闘ではなく交流や自己表現を重視したワールドを作成でき、その中でコミュニケーションをとることが可能です。
今では「フォートナイトをプレイするために集まる」から「とりあえずフォートナイトに集まる」サービスに変わっています。
新時代のSNSになりえるサービスであるフォートナイトに今後も注目です。
バーチャル渋谷

出典:https://vcity.au5g.jp/shibuya
バーチャル渋谷とは渋谷区から公認を得ている配信プラットフォームです。
「cluster」というアプリからVRゴーグルに加え、スマートフォン、PCからアクセスが可能です。
現実の渋谷がまるまる再現されたというよりはややサイバーチックに表現された空間ではさまざまなイベントが開催されました。
2020、2021年のハロウィンには新型コロナウイルスの影響でバーチャル渋谷にて音楽フェスが行われました。
きゃりーぱみゅぱみゅやBiSHといったアーティストの他、お笑い芸人や世界各国から名だたるDJが参加しました。
その他にも、サッカー観戦やクリスマスイベントなどを開催しています。
|まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事ではメタバースについての解説、実際の活用事例についてご紹介しました。
新時代のコミュニケーションツールとして注目されているメタバースですが、まだまだ発展途上です。
しかし、世界的大企業の大型投資が始まり、より開発のスピードが加速していくでしょう。
今後もメタバース関連の動向を注視していきます。