デジタル世界の次なる進化形、「メタバース」についてご存知でしょうか?近年では、Facebookが社名をMetaに変更したことが大きな話題になりました。
メタバースとは、オンライン上で展開される仮想世界や仮想空間のことで、ビジネスシーンでもますます話題になっています。
ただ、その意味や活用方法についてはまだまだ曖昧な部分が多いかもしれません。
この記事では、メタバースについて網羅的に分かりやすく解説していきます。
ぜひ最後までご覧いただき、新たな世界の魅力に迫っていきましょう。
|メタバースとは

「メタバース」とは、その造語が示す通り、「超越した宇宙」という意味を持つ概念です。
この言葉は、「メタ」が「超越した」や「高次の」という意味を含み、「バース」が「ユニバース(宇宙)」を指すことから形成されています。
一般的には抽象的で理解しづらい概念ですが、例えばコロナ禍で人々を楽しませた「あつまれ どうぶつの森」を思い浮かべると、少しイメージしやすくなるかもしれません。
このゲームは、個性豊かな動物たちと新たな住民としてプレイヤーが暮らす、ひとつのメタバースです。
つまり、メタバースとは、現実世界に存在しながらも、オンライン上で実際の世界と同じような体験や交流が可能な3次元の仮想空間を指しています。
ここでは、人々は自身のアバターを通じて新たな世界を探索し、創造し、共有することができるのです。
|メタバースの歴史
メタバースはとても新しい概念のように感じる方が多いと思いますが、実は構想自体は数十年前から存在していたものでした。
メタバースに関しての歴史的な出来事を振り返ってみましょう。
1990年代:メタバースの構想の誕生
1992年にニール・スティーヴンスン氏によって発表されたSF小説『スノウ・クラッシュ』は、初めて「メタバース」という概念を提案しました。
この言葉は、「meta」(超越)と「universe」(世界)から派生しています。
この作品を通じて、メタバースの概念は広く認知され、技術の進歩に伴い現実世界と仮想世界の統合がますます注目を浴びるようになりました。
2000年代:世界初のメタバース空間が誕生
2000年代には、世界初のメタバースとしてリンデンラボ社によって「セカンドライフ」がリリースされました。
この仮想空間では、アバター用のアイテムを作成し、作成したアイテムは、仮想通貨「リンデンドル」を使って売買が行われました。
法定通貨でリンデンドルが購入できるため、仮想空間上で経済活動が実現した世界初の事例と言えます。
2020年代:メタバースブームの到来
2020年代には、関連技術の急速な発展により、数多くのメタバースが誕生しました。
新たなハードウェアやソフトウェアの開発、VRやAR技術の進化、ブロックチェーンの活用などが進んだことで、今までにないリアルで没入感のある仮想の世界が実現しました。
これにより、ユーザーは仮想世界での多種多様な人々との交流を楽しむことができるようになりました。
さまざまな業界でメタバースが利用され、教育、エンターテイメント、ビジネスなどの領域で活気を生み出しました。
|メタバースとVRの違い

VR(Virtual Reality)とは、360度の立体映像や音響体験ができる仮想現実の技術を指します。
VRゴーグルやヘッドセットを使用することで、没入感のある仮想空間を楽しむことができます。
一方で、メタバースは特別なデバイスを必要としない3次元の仮想空間であり、パソコンやスマートフォンから直接アクセスできるサービスです。
メタバースでは、仮想の世界で他のユーザーと交流したり、アバターを使って自分自身を表現したりすることが可能です。
VRは主に視覚や聴覚を刺激することに焦点を当てているのに対し、メタバースは独自の仮想空間を作り出し、そこでさまざまな活動や交流を楽しむことを目的としているのです。
|メタバースの活用分野
具体的にメタバースはどのような分野で活用されているのでしょうか。
今回はゲーム、ビジネス、ショッピング、イベント・ライブ、不動産の5つの分野をそれぞれ解説していきます。
ゲーム
ゲームはメタバースの活用分野の中でも、特に注目されている一つです。
三次元の仮想空間ゲームでは、現実感と没入感のあるプレイ体験が可能です。
また、大勢のユーザーが同時にゲームに参加出来るという特徴があります。
代表的なゲームとしてはThe SandboxやDecentralandが有名です。
プレイヤーは自分のアバターを操作し、メタバース内を自由に動き回り、他のプレイヤーとの交流を楽しむことができます。
また、ライブコンサートやイベントなど、リアルタイムの体験ができるゲームや、キャラクターやアイテムがNFTとして取引されるゲームも増えています。
ビジネス
ビジネス分野においては、「Horizon Workrooms」というMeta社が提供するバーチャルオフィスのサービスを例に挙げてみましょう。
Horizon Workroomsでは、アバターを使ってリモート会議を行うことができ、自宅にいながら、同僚たちとまるで同じ場所にいるかのような体験ができるのです。
さらに、VRヘッドセットを使用すれば、自分のコンピュータを操作したり、バーチャルオフィスに設置されたホワイトボードにアイデアを書き込んで他のメンバーと共有することも可能です。
これまでのビデオ会議では実現しづらかった「臨場感のあるコミュニケーション」が実現できるため、メタバースを採用する企業も増えています。
ショッピング
ショッピング分野では具体的な活用方法として、主に2つの例が挙げられます。
バーチャルショップ
バーチャルショップは、VR技術を活用して3Dの中で仮想の店舗を作り、Web上でショッピング体験を提供するコンテンツです。
ユーザーは仮想空間内でディスプレイされた商品を見たり、購入したりすることができます。
メタバースEC
メタバースECは、メタバース内でオンラインショッピングをすることを言います。ユーザーは自身のアバターを操作しながら仮想空間内の店舗を巡り、商品を選んだり購入したりすることができます。
メタバースを活用したショッピングは、個性的な商品展示や仮想空間内での交流も加わり、新たな消費者体験を生み出しています。
イベント・ライブ
また、イベントやライブなどでも革新的な活用がされています。
メタバースは、イベントやライブなどを開催する際、人々が仮想的に集まり、交流する場を提供しています。
この仮想空間では、地理的な制約を超えて多くの人々が一つの場所で交流できるため、国際交流も可能です。
実際に、人気シンガーソングライターの米津玄師さんが2020年8月に『フォートナイト』というメタバースゲーム内で行うなど、有名なミュージシャンや企業がメタバース内でライブやイベントを開催し、ファンや参加者と直接交流しています。
メタバースは新たな形態のエンターテイメントとなり、世界中の人々が繋がり、共有しながら楽しむことができます。
不動産
LAND(土地)とは、メタバース内での特定の領域や区画を指します。
この土地はデジタルデータ(NFT)として販売され、NFTマーケットプレイスで取引されています。
LAND(土地)にはさまざまな使い道があります。主な活用方法は以下の5つです。
・限定イベントへの参加
・メタバース上でイベント開催
・自身の土地の貸し出し
・ガバナンスへの参加
・広告塔としての利用
このように、メタバースの土地は現実世界と同様に不動産の売買が可能であり、多様な活動やビジネスの展開が行われています。
LAND(土地)の取引は新たな不動産市場を切り開く可能性を秘めています。
|メタバースのメリット
さまざまな分野で活用されているメタバースですが、具体的に私たちにとってどんなメリットがあるのでしょうか。
ここではメタバースのメリットを3つご紹介します。
非日常的な体験ができる
メタバースの最大のメリットは、非日常的な体験ができることです。
VRを使えば、現実世界では味わえない仮想空間で活動できます。
メタバースでは、現実世界と同じように空間を探索したり、ショッピングを楽しむことも可能です。
また、メタバース空間では自分で作品を作成し、取引することもできます。
自由な表現力によって、楽しみ方は無限に広がります。
現実の制約を受けることなく、「自分がしたいこと、なりたいもの」を実現し、夢のような体験を味わえます。
例えば、宇宙飛行士になったり、過去の自分や動物になったりすることも可能です。
また、メタバースを通して、現実世界でも役立てられる経験を得ることもできてしまいます。
自由度の高いオンラインコミュニケーションが可能になる
メタバースの中では、リアルな対面感覚で会話ができます。
音声だけでなく、アバターの身振りや手振りなどの動きも使って意思疎通ができるため、まるで実際に会って話しているかのような感覚を味わえます。
ZoomなどのWeb会議システムでは、一方的に話す形式が主体であり、受け身の時間が多くなりがちです。それに対し、メタバースでは全員が自由に会話できます。
グループ構成も柔軟に変更できるため、参加者同士が自発的にコミュニケーションを取りやすくなります。
その結果、オンラインコミュニケーションの幅が広がり、リアルな会話体験が可能になります。
新たなビジネスを展開できる
メタバースは新たなビジネスを展開できるきっかけになるかもしれません。
例えば、ネットショッピングや不動産など、新たなビジネスを創出することができます。
オンライン上でのビジネスとしては、特にネットショッピングが注目されています。
メタバースをうまく活用することで、オンラインショッピングがリアルな店舗体験に近づきます。
ショップ側との会話が可能であり、値段交渉も行えます。実際に店舗にいるかのような感覚で商品を選び、購入することができます。
さらに、メタバース空間では自分自身がクリエイターとして活動し、作品を制作して販売することも可能です。
これにより、クリエイティブな活動の幅が広がり、新たなビジネスの可能性が広がるでしょう。
|メタバースの5つのリスク
魅力的なメリットを持つメタバースですが、一方でメタバースのリスクについても知っておく必要があります。
ここからはメタバースのリスクを5つ、それぞれわかりやすく解説していきます。
乗っ取り・なりすまし
メタバースでは、アカウントを正しく管理しなければ、攻撃者が正規の利用者のふりをしてサービスを利用するリスクがあります。
乗っ取りやなりすましを防ぐためには、強力なパスワードを設定し、定期的に変更することが重要です。
さらに、二段階認証などのセキュリティ設定を有効に活用しましょう。
また、不審なメッセージやURLが送られてきた場合は、詐欺やフィッシングの可能性があるため、慎重に対処する必要があります。
正規の利用者であることを確認するために、公式な情報源や信頼できる連絡先を利用しましょう。
安全なメタバースの利用には、常に警戒心を持ち、セキュリティ対策を徹底することが不可欠です。
メタバースへの依存
メタバースの世界は非常に魅力的ですが、その分過度な依存が懸念されています。
魅了される仮想世界に没頭しすぎると、現実世界の生活に支障をきたす可能性があります。
メタバースの利用時間を事前に計画し、日常生活や責任を果たすために適切な範囲で利用することが重要です。
バランスを保ちながら楽しむことで、メタバースの利点を最大限に生かし、健全な生活を維持できます。
自己管理と意識的な時間の使い方が、メタバースへの依存を抑えるための有効な方法となります。
重要な活動や人間関係にも十分な時間を割くことを心掛け、メタバースが豊かな体験や交流の一部として機能するようにしましょう。
デバイスの負担
VRデバイスを使用すると、メタバースへの没入感は高まりますが、デバイスの重量が首や肩に負担をかけ、視力にも影響を及ぼす可能性があります。
適度な休憩を取りながら無理のない範囲で使用しましょう。
長時間の連続使用は身体への負担を増やすことにつながりますので注意が必要です。
また、姿勢にも注意を払いましょう。デバイスを使用する際には、適切な位置に調整し、首や肩への負担を軽減するよう心掛けましょう。
デバイスの負担を最小限に抑えつつ、健康な状態でメタバースを楽しむために、適切なケアとバランスの取れた使用が大切です。
仮想通貨の価格変動
メタバースにおける取引や経済活動では、仮想通貨が広く使用されていますが、その価格は大きく変動する可能性があります。
稼いだ仮想通貨は、暴落や高騰といったリスクにさらされることがあります。
市場の需給や投資家の心理などの要素によって価格は変動するため、予測困難な状況もあります。
仮想通貨を取引する際には、価格変動のリスクを十分に認識し、慎重な判断を行いましょう。
投資の観点からも、リスクマネジメントや適切な情報収集は必須です。
自身の経済状況や投資目的に合ったリスク管理を行い、安定した取引を心がけましょう。
個人情報の漏洩
メタバースではコミュニケーションや交流が活発に行われますが、個人情報の漏洩リスクに注意が必要です。
他のユーザーとの交流において、本名や住所などの個人情報を伝えることは避けるべきです。
これらの情報は悪意のあるユーザーやハッカーによって悪用される可能性があります。
プライバシーを守るためには、匿名性を保ちながらコミュニケーションを楽しむことが重要です。
ニックネームや仮想的なアイデンティティを使用し、個人情報の開示には注意しましょう。
また、セキュリティ意識の高いパスワードを使用し、アカウント情報を適切に管理することも大切です。
自身のプライバシーを守りながら、安全なメタバース体験を享受しましょう。
|まとめ
本記事では、メタバースについてその意味や活用分野、そして潜在するリスクについて分かりやすく解説してきました。
メタバースは現実世界を超えた新たな体験や交流が可能な空間です。
ゲームやエンターテイメント、教育やビジネスなど、多岐にわたる分野で活用されていて可能性は無限大です。
しかし一方で、アカウント乗っ取り、過度な依存、デバイスの負担、仮想通貨の価格変動、そして個人情報の漏洩など、リスクも存在します。
事前にセキュリティ対策や利用時間の管理、デバイスの適切な使い方、個人情報の保護などを意識し、リスクを軽減することが大切です。
安全かつ楽しい体験をするために、知識を深めて賢く活用しましょう。
その上でこの新たな世界に飛び込み、魅力的な体験を追求してみましょう。