本記事ではメタバース事業に実際に取り組んでいる企業と、

その活動について解説していきます。

メタバースについて、

・どんな企業が取り組んでいるのか?

・何を目標に取り組んでいるのか?

・具体的にはどんなことをやっているのか?

これらの観点から各企業のメタバースに対する取り組み方を見ていきましょう。

この記事を読めば、あなたもメタバース事業でこれから活躍していく企業を網羅することができるでしょう。

 

|メタバースとは?

メタバース(Metaverse)とは、アメリカのSF作家ニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)による1992年の小説「スノウ・クラッシュ(Snow Crash)」で登場する、インターネット上の仮想空間の事です。

そこからインターネット上につくられた仮想空間のことを指すようになりました。

メタバースは「meta(超えた)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。

現在、メタバースははっきりと定義されたものはありませんが、

オンライン上に現実とは別の新しい空間や現実世界と仮想世界を融合した空間を指すことが多いです。

また、アクセス数が無制限かつ経済圏をもつこともあります。

メタバース上では自身の分身となるアバターで他のユーザーと交流やコンテンツを楽しむことができます。

最近特にメタバースという言葉が有名になった出来事として、

GAFAの企業の1つであるFacebookがMetaに社名変更を行い、

メタバースに本格参戦することを表明したことがあります。

 

|メタバースの経済規模

メタバースの特徴として、仮想世界の中で国境などの壁を越えてあらゆる人とアバターを通してリアルな交流やコミュニケーションを行うことができ、次世代のSNSとして注目されています。

加えて、現在のSNSにない特徴としてアバターが身にまとうデジタルの服などのアイテムから、VRのゲーム、

イベントやコンサートなどのエンターテインメント、

オンライン学習、Eコマースの商品など様々な消費が仮想空間内で行われます。

デジタル商品の資産価値を担保するNFT(非代替性トークン)という証明書を活用することで、

メタバース内で所有されるデジタルの芸術作品や、不動産などの高額な商品が、現実世界と同じように取引できるようになります。

まだまだ技術開発の面での改善や、法による環境整備など

対応すべき課題も多く残っていますが、

2020年で約5兆5千億円とみられている

メタバースの関連市場は2028年には100兆円規模へ拡大するとの見方もあります。

 

 

|海外企業のメタバースへの取り組み

ここからは、Metaをはじめとする海外の企業が、どのようなアプローチでメタバースに取り組んでいるのかをご紹介します。

誰もがよく知るコンテンツや企業も続々とメタバース業界に参入しています。

・旧フェイスブック現Meta

Metaの前身であるFacebookは2021年10月28日に社名を「Meta」に変更し、メタバース事業に今後注力していくことを発表しました。

この出来事は日本でもニュースとして多くのメディアに取り上げられ、メタバースについてより多くの人が認知するきっかけとなりました。

すでにMetaはVRヘッドセットのOculus Questシリーズを販売しており、既存のサービスに加えてこのヘッドセットを活用した「Horizon Worlds」と呼ばれるプラットフォームに多くのユーザーを集めることを目指しています。

このプラットフォームでは自らのアバターを通じて、

他ユーザーと交流したり、自分のワールドも作成可能したりがものとなっており、

会議などのビジネス用途での使用も想定されたものになっています。

現在はテスト段階ではありますが、プラットフォーム内に経済圏を構築するためにクリエイターが仮想アイテムを販売できる機能を実装する取り組みを行うと発表されています。

 

 

・マイクロソフト

マイクロソフトもメタバース事業にかなり早い段階から注目しており、2014年にゲーム会社であるマインクラフトを買収しました。

マインクラフトはサンドボックス(箱庭)ゲームというジャンルに属するゲームとなっており、

プレイヤーがブロックを用いたオリジナルの建築や広大な世界を冒険して楽しむことができます。

大型コンテンツやアパレルなどとのコラボも行われており、

カルフォルニアディズニーを再現したワールドやLACOSTEとマインクラフトのリアルコラボのタイミングでのワールド解放などが行われました。

最近では、今年1月マイクロソフト社は690億ドル(約8兆円)規模のCall of Dutyなどを制作したアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)買収し、さらなる強化を図っています。

 

また、2021年11月には「Mesh for Microsoft Teams」を発表しました。

現在の「Teams」のサービスを拡張し、

仮想空間で会議・交流ができるサービスとして2022年にサービスを開始します。

メタバースへの接続デバイスもMeta同様に販売しています。

Oculus Questが完全な仮想空間の中でのコンテンツを利用するVR(仮想現実)に対して、

HoloLensは現実世界と仮想空間を重ね合わせたコンテンツを利用するMR(複合現実)と呼ばれる世界を利用するデバイスとして販売しています。

 

・エヌビディア

アメリカの半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は、

2022年1月4日、メタバース向けコンテンツを制作するアーティストやクリエイターに同社のソフトウエアを無償提供すると発表しました。

また、アーティストが制作したコンテンツをメタバース上に販売できるよう複数のマーケットプレイス運営会社とテクニカル分野の提携で合意したと明らかにしました。

日本ではPCのGPUなどで知られる企業ですが、

現在主力半導体のようなコンピューターグラフィックスに大きく依存している状態を脱却するための施策となっています。

2前年の11月には「オムニバース」の無償版をアーティストに提供することを発表しています。

 

・ナイアンティック

Pokémon GoやPikmin BloomなどのAR(拡張現実)を利用したゲームを提供している企業です。

NianticはCoatueから3億ドル(約344億円)を調達し、サンフランシスコを拠点とし、Googleからスピンアウトしたこのスタートアップとして、この資金を使って「現実世界のメタバース」と呼ばれるものを構築する予定となっています。

VR(仮想現実)を進めるMetaやMR(複合現実)に力を入れるマイクロソフトとは異なり、

NianticはAR(拡張現実)が現実生活を豊かにし、メタバースを発展させる「現実世界のメタバース」と考えています。

完全に仮想空間内でのメタバース利用を行うのではなく、

外の世界に近づける技術開発を行いたいという構想です。

その一環として、2021年11月初めにAR開発キット(ARDK)「Lightship」を発表し、

ゲーム開発エンジン「Unity」の知識があれば誰でも無料で利用できます。

 

・アリババ

アリババグループは中国のIT系の大企業であり、企業間電子商取引のオンライン・マーケットの運営などを行っています。

クラウドコンピューティングサービスを提供しているアリババクラウドは、2021年12月23日に企業のメタバース構築支援のソリューションを提供開始しました。

JP GAMESのメタバース空間構築技術フレーム「PEGASUS WORLD KIT」と技術連携し、

アリババクラウドが有する最新技術とJP GAMESのメタバース空間構築技術を活用し、

法人のお客様がデジタルワールドで新しいビジネスを開拓できるようなソリューションを共同で開発し提供していくことが発表されました。

活用例として、没入感のあるオンラインショッピングスペース、仮想空間での音楽コンサートや展示会、3Dの物件見学ツアー、バーチャルフィギュアが登場する壮大なロールプレイングイベントなどがあげられ、これらイベントの容易な展開を目指しています。

提携先のJP GAMESは、「ファイナルファンタジーXV」でディレクターを務めた田畑端が立ち上げたゲーム開発スタジオで2021年6月に世界初パラリンピック公式ゲーム「The Pegasus Dream Tour」を配信し、

仮想空間におけるユーザーである「アバター」がパラリンピックを体験できるオンライン仮想街「ペガサスシティ」の提供、

ANA NEO株式会社が開発および運営を進めるバーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」でも、

JP GAMESのPEGASUS WORLD KITが導入されています。

 

 

・テンセント

Tencentはアリババ同様に中国の巨大IT企業です。

Tencentは中国のインターネット業界で全体的に取り締まりが強化されており、メタバースの成長を妨げるのではとの見方があります。

しかし、近年の中国内でのメタバースへの関心の高まりもあり、実現時期には明らかにしていませんでしたが、取り組みについては認めています。

一方、日本におけるテンセントジャパンは、2022年1月25日に日本企業向けのオンラインイベント「Tencent Cloud Day」にて、

日本国内で提供予定の新サービスを発表しました。

これからメタバース事業への参入を検討している企業に向けたAR・VR関連のサービスとなっています。

接客やMC、ガイドなどを行ってくれる「バーチャル人間」というサービスがあります。オーダーメイドでリアルな人間の見た目を作成することができ、日本語にも対応しています。

「AR・VRクラウドレンダリング」はAR・VRコンテンツをエンドユーザーに高速で配信できるクラウドレンダリングサービスです。

ゲームだけではなく、バーチャルな展示会や文化博覧会といったコンテンツを幅広いユーザーに提供可能です。

「3Dサイネージ技術」は、デバイスを使わず、裸眼で楽しめる3D画像をエンドユーザーに提供するサービスです。

映像では深センの会場で中国の紫禁城の文化遺産を3D画像で楽しめる展示会の様子が紹介されました。

テンセントクラウドの技術により、3D画像を高解像度で拡大して

細部までじっくりと見られるというものになっています。

 

 

・ディズニー

The Walt Disney Company(Disney)がメタバース戦略を統括する幹部を任命しました。

これによって本格的にメタバース事業に参入していく動きが見られそうです。

また、ディズニー・エンタープライズの新テクノロジー、「バーチャルワールド・シミュレーター」に対し、米特許当局からの承認が下り、

テーマパークでのメタバース導入などを目指すような動きもあります。

プロジェクション装置やトラッキングシステムなどの技術により、

実在する施設内でバーチャル効果を取り入れた演出などが可能になり、テーマパーク内を歩き回る来場客などに楽しんでもらうことが可能になります。

 

・ナイキ

ファッション業界からもメタバースに参入しています。

メタバースの最古参と言われているオンラインゲームの「ロブロックス(Roblox)」に「NIKELAND」を開設しました。

ロブロックスでは、他のユーザーが上げたワールドに入って楽しむことができ、

ナイキはその中の1つとして「NIKELAND」を開設しました。

ワールド内では、ナイキの本社から着想を得てデザインされ、

鬼ごっこやドッジボール、「ザ・フロア イズ ラバ(床が溶岩だ)」といったさまざまなゲームを提供しており、

ロブロックススタジオでミニゲームを自作すること可能となっています。

また、デジタルショールームでは、Air Force 1(エア フォース 1)やBlazer(ブレーザー)など自身のアバターが着用できるナイキのアイテムが用意され、

このほかモバイル機器に内蔵された加速度センサーを使用することで、走り幅跳びなどの現実の動きを仮想現実のプレーに反映できます。

 

 

|日本企業のメタバースへの取り組み

これまでは海外企業のメタバースへの取り組みをご紹介してきました。

実は日本企業も少しずつメタバースへの取り組みを行っています。

ここからは、日本企業におけるメタバース事業の最前線を見ていきましょう。

 

・ソニー

スポーツの判定を支援するカメラシステム「ホークアイ」を活用したスポーツの新たな映像サービスが発表されています。

ライブ映像で捉えた動きを、高度なAI認識や画像処理でデータに変換し、

そのデータから3次元コンテンツをリアルタイムで生成。

自分のアバターを作ったファンが仮想空間で交流し、

楽しめるといったサービスが提供される見通しとなっています。

ゲーム事業などを長年行ってきたノウハウなどから、

エンタメ業界に強いソニーグループはメタバースの進歩の恩恵を受ける企業の一つと言えるでしょう。

 

・キャノン

キャノンはデジタルカメラで撮影した人物を3次元で仮想空間に再現できるアプリの開発を進めていると発表しました。

マイクロソフトとの協力で製品開発を進めています。

このサービスは「AMLOS」という名前であり、

カメラ1台で同じ会議室にいるかのような臨場感の高いオンライン会議を実現できるコラボレーションミーティングソリューションとなっています。

1台のカメラをミーティングルームに置くだけで、複数のビューを離れたユーザーに届けられるシンプルさが売りとなっており、

静止画として会議を切り取ってズームして確認するなども可能となっています。

 

・パナソニック

パナソニックは、2018年4月に完全子会社化したシフトールを通じて、メタバース向けのVR機器3製品を今年の夏までに発売すると発表しました。

眼鏡型のVRヘッドセット「MeganeX(メガーヌエックス)」(販売予定価格は10万円未満)は、米国のKopinと協業し、LightningマイクロOLEDディスプレイと、Pancakeレンズを搭載し、高精細な映像を映し出します。

 

「Pebble Feel(ペブルフィール)」(販売予定価格は2万円前後)は、手のひらサイズの冷熱装置で、同装置を付けた専用シャツを着ると、首元が熱くなったり冷たくなったりし、

仮想空間での体験を現実により近づけられるだけでなく、

パーソナルエアコンとしても活用できます。

 

「mutalk(ミュートーク)」(販売予定価格は2万円前後)は、

口に装着すると音漏れを少なくできるマイクとなっており、

メタバース内で会話を楽しむだけでなく、

ビジネスでのテレビ会議をし始める際に、自分の声が外に響くことを防ぎます。

 

 

・リコー

リコーは2021年12月にリコーと鹿島が、建設現場で周囲360度を映し出せるライブ映像の中に、何人もの関係者が遠隔参加して現場の状況把握や相互の打ち合わせができるシステムを、新潟県長岡市の水路工事現場などで導入したと発表し大いに注目されました。

この導入は、「リコーバーチャルワークプレイス」を導入した取り組みで、製造業やBtoB(法人向け)ビジネスで使える産業用メタバースの事例の1つであり、ユーザーの任意の空間をVR上で再現し、各自がVRヘッドセットを使ってその空間に一堂に会することが可能なソリューションとなっています。

人の存在感、自然な操作、2次元・3次元の情報の共有、質の高いビジュアル、各種データとの連携を活かし、バーチャルなワークプレイス上で、物理的に離れた場所にいる人と自然で自由なコミュニケーションを行う、新しい働き方「リアルよりも便利に働ける世界」を実現するためにサービスを提供しています。

 

 

・KDDI

KDDIはメタバース用プラットフォーム「VIRTUAL CITY」を提供することを発表しました。

今春に発表され大都市へ順次拡大して予定になっています。

具体的な内容として、バーチャル空間とリアル空間を連動させるプラットフォームとなっており、

実店舗と連動してバーチャルセレクトショップを開設、自宅に実際に商品が届くショッピングを楽しむことができるものとなっています。

また、バーチャル空間で路上ライブが行われてミュージシャンが仮想空間内で演奏する様子をAR対応のデバイスで楽しむことができます。

現実側のライブ観客はバーチャル側にもアバターとして反映されます。現状は、cluster上においてバーチャル渋谷を解放し、様々なイベントを開催しています。

 

|まとめ

今回は企業がどのようにメタバース事業に取り組んでいるのかを海外と国内に分けて見てきました。

一言にメタバースといっても企業によってコンセプトや捉え方も異なり、多種多様なメタバースが生み出されていることが分かります。

このようにメタバースはとても自由なものであり、創造力次第で無限に広がる可能性を持っています。

今回取り上げた企業の中にも多くのコンテンツが現在進行形であり、

まだまだ発展していくのはこれからです。

皆さんも自分に合ったメタバースを遊んだり、活用したりしてみてはいかかでしょうか。