現在はAIやVRといった様々な新技術が世の中に浸透しつつあります。
技術の進歩するスピードは早いため、場合によっては日常的に使用されているけれどよく知らないという言葉もあるかもしれません。
「ARマーカー」という単語もそういったものの一つになっているのではないでしょうか?
拡張現実を意味するARと「マーカー」という身近な単語が組み合わさっていますが、一体どういったものであり、どういった仕組みで動いているのでしょうか。
本記事ではそんなARマーカーに関して、基本的な仕組みから活用方法までを解説します。
一読いただければARマーカーについて他人に説明できるようになるはず。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|そもそもARとはどんな技術?
ARとは、「Augmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)」の略で、日本語では拡張現実と呼ばれています。
現実世界にコンピューター生成の情報やオブジェクトを追加する技術です。
スマートフォンやタブレットなどのデバイスでARアプリを起動すると、カメラを通じて現実世界を見ることができ、それに重ねてデジタル情報が表示されます。
例えば、店舗に設置されたARアプリによって、商品の3Dモデルを見たり、詳しい説明や価格、口コミ情報を表示させたりすることができます。
また、AR技術は教育や医療、エンターテイメントなどの様々な分野でも利用されています。
ARは、現実世界とデジタル世界を融合させることで、より豊かな体験を提供することができます。
|ARマーカーとは?
ARマーカーとは、現実世界にデジタルコンテンツを投影させる技術を応用して生まれた「仮想の目印」です。
事前に設定したARマーカーをスマホカメラで投影することで、特定のARコンテンツの表示、再生が実現します。
デザイン性が高い点が特徴であり、写真やイラストといった様々なものをARマーカーとして設定可能。
スマホで読み取った後の動きも動画や画像、サイト遷移、スタンプカードなど様々な挙動が行えます。
時間帯によって出現させるコンテンツを変更させることもできるため、幅広く柔軟な訴求が実現するでしょう。
企業の広告やエンタメ、さらには本と連動させた学習コンテンツの提供など、様々な可能性が考えられる技術がARマーカーなのです。
|ARマーカーの仕組み
ARマーカーの仕組みは、ロケーションベース型とビジョンベース型があります。
ロケーションベース型のAR
GPSなどの端末による位置情報を利用して、建物の説明などの付加情報を表示する技術です。
加速度センサーや磁気センサーを利用して、デバイスの傾きや方角を測定し、画面上のどの位置に情報を表示させるかを決めます。
屋外での使用に適していますが、GPSの精度に左右されやすいという特徴があります。
道案内・地図アプリや天体観測アプリなどに利用されます。
ビジョンベース型
カメラで撮影された画像を解析し、周囲のオブジェクトを認識して、それらに対応する視覚情報を表示させる技術です。
また、マーカー型とマーカーレス型の2種類があります。
マーカー型ではカメラで、マーカーを読み込んでARを表示させることができ、特徴としては、マーカーを設置した場所に、正確にコンテンツを表示させることが可能です。
マーカーレス型は特定の画像を必要とせず、カメラで風景や物体を認識してARを表示させる方法です。
|ARマーカーの種類
AIマーカーには指定マーカー、フリーマーカー、マーカー不要のAR技術と3つの種類があります。
指定マーカー
四角い黒枠で囲むなど明確な特徴を備えており、モノクロ表示にすることで、解析・判定の精度を安定させることができます。
また、情報量が少なく処理速度が速いため、素早く正確なARコンテンツの表示が可能です。
一方で、デザイン面では、マーカーが目立ってしまいがちなのが課題となっています。
フリーマーカー
は、自由なデザインの画像をARマーカーとして使用する方法です。
イラストや写真、パターンなど、どのような画像でもARマーカーにできるため、デザインの自由度が非常に高くなっています。
ただし、登録した画像の精度や解析処理の速度によって、ARコンテンツの表示安定性が大きく変わるため、指定マーカーよりも安定性に欠ける可能性があります。
マーカー以外のAR技術
また、ARマーカー以外の情報をトリガーにしてARコンテンツを呼び出す方法もあります。
空間認識をトリガーにするARは、カメラで撮影された現実世界の空間全体から情報を解析し、広さ、奥行き、高低差などを認識して、その範囲内にARコンテンツを表示します。
また、立体物や位置情報をトリガーにするARもあります。
|QRコードとARマーカーの違い
QRコードとARマーカーは、どちらも画像認識技術を利用して情報を伝達することができますが、いくつかの違いがあります。
QRコードは規則に従った白黒のドットパターンで構成され、カメラをかざすとURLリンクでWebサイトにアクセスできるといった、テキスト情報を記憶することが主な目的です。
一方、ARマーカーは写真やイラスト、人の顔などの色味を含んだ画像であり、3Dオブジェクトや動画を表示することができます。
QRコードはデバイスのデフォルトのカメラで読み取れますが、ARマーカーは専用アプリのダウンロードが必要なケースが多いです。
両者は似たような技術ですが、それぞれ異なる特徴を持っており、用途によって使い分けが必要になります。
|ARマーカーの応用事例
ARマーカーは、教育分野や広告業界、観光業界、イベント分野などで幅広く活用されており、より詳細でリアルな体験を提供することができます。
ここでは、ARマーカーの応用事例について詳しく解説します。
地図アプリ
地図アプリでは、歩いているときにマップの経路表示をする際、カメラで周囲の風景を取り込み、矢印などの経路情報をカメラ映像上に重ねて表示することができます。
現実世界を見ながら経路を追うことができ、とてもわかりやすいという利点があり、ランドマークなどの周辺情報も表示可能で、周囲の状況を把握することができます。
また、他のユーザーと自分の居場所を共有することも可能です。
友人が位置情報を共有すると、画面上に自分の場所から友人がいる場所までの距離と方向が表示されるため、お互いの位置を把握しやすくなります。
地下鉄の研修用アプリ
地下鉄事業では、維持管理技能の研修にアプリが利用されています。
検査業務用のタブレットアプリケーションの機能を拡張したもので、トンネルや橋りょうなどの変状を仮想的に表示することができます。
検査業務用iPad専用アプリケーションを用いた実際の検査業務と同じ手法・手順で、維持管理技能の模擬体験が可能となり、研修生の理解度向上や安全かつ時間的制約を受けない、より効果的な研修が行えるようになっています。
また、模擬トンネルは壁面自体をマーカーとして認識する技術を開発・活用しており、一般的に必要となる AR マーカーの貼付けや取替えが不要となっています。
この技術は、設備の制約等により AR マーカーの貼付けが困難であり、かつ映し出す対象が広範囲な環境における拡張現実の利用を加速させることにつながります。
教科書の立体化アプリ
教科書ARとは、教育分野で注目されているAR技術を活用し、教科書に書かれた図形や物体を3次元的に表現するものです。
従来の平面的な図解では、実際の形状や立体的な構造を正確に理解することが難しく、学習に時間がかかったり、イメージしにくいという問題がありました。
教科書ARでは、教科書に印刷された特定のマーカーを読み込むことで、スマートフォンやタブレット上に立体的な図形が表示されます。
これにより、生徒たちは立体図形や物体を実際に見ることができ、より効果的な学習が可能になります。
また、教科書ARは、学校の授業だけでなく、家庭での自主学習にも活用されています。
作品をマーカーにするアプリ
作品をマーカーとするARアプリは、美術館や展示会などで活用されています。
美術館の展示室に設置された端末を使うことで、作品自体がマーカーとなり、スマートフォンやタブレットで作品を見ることができます。
このアプリによって、通常の展示方法では見ることができなかった作品の詳細や背景、制作過程などを観ることができるようになります。
また、このアプリでは、作品に関連する情報を提供するだけでなく、オーディオガイド機能やキュレーターが作品についての解説をする機能もあります。
これによって、作品をより深く理解することができるだけでなく、展示会の体験も一層充実したものになるでしょう。
名刺情報を表示させるアプリ
名刺にARマーカーを使用することで、名刺の表面に記載されている情報に限らず、さまざまな情報を付加することができます。
例えば、名刺の表面に表示されたARマーカーをスマートフォンのカメラで読み取ることで、名刺の持ち主のプロフィールやポートフォリオなどの情報を表示することができます。
名刺にARマーカーを使用することで、従来の名刺の情報量を超えた新しいコミュニケーション手段が生まれ、印象的な名刺交換ができるようになります。
さらにAR名刺の利点は、名刺交換のインパクトがある点です。
渡した相手に強い印象を与えるため、忘れられない名刺交換を演出することができます。
カタログ・商品表示用アプリ
カタログやパンフレット、チラシにARマーカーを掲載することで、商品やサービスの仕様や機能をより直感的に理解してもらうことができます。
AR技術を活用したカタログは、商品やサービスを実際に手に取ることなく、その魅力や機能を立体的に理解することができるため、購買意欲を高めることが期待できます。
たとえば、インテリアのカタログにARマーカーを掲載する場合、カタログからスマートフォンのカメラでARマーカーを読み込むと、カタログに掲載されている家具やインテリアが、実際の部屋の様子に合わせてリアルに配置されるようになります。
これにより、静止画や文章だけでは伝えきれない情報をAR技術を活用して伝えることができます。
|ARマーカーは様々な活用方法が可能
ARマーカーはその汎用性の高さから、様々な活用方法が可能となっています。
例えば、QRコードを名刺やポスターに表記させるという手法は一般的に行われてきた方法です。
こちらをARマーカーに変更すれば、公式サイトへの遷移だけではなく、企業からのメッセージ動画の再生、音声での挨拶といったより踏み込んだ内容をユーザーへ伝えられます。
単なるテキストだけでは伝わらない情報を瞬時に提供することで、読み込んだ相手へ強いインパクトを残せるでしょう。
また、ポスターなどの二次元だけではなくARマーカーは三次元の物体にも付与させることが可能。
そのため、販売する商品を読み取ってもらうことで説明文の表示、製造過程の再生、さらには説明書といった様々な情報を瞬時に提供できます。
特定のものを読み取らなけらば再生されないコンテンツを気軽に提供できるため、ユーザーに対して特別感を与えることも可能。
スタンプラリーのように街中のコンテンツにARマーカーを設定することで、イベント時の楽しみといったものを提供できるでしょう。
さらに街中をユーザーが動き回ることで、町おこしといったものに繋がることも考えられます。
|ARマーカーのメリット・課題点
ARマーカーにもメリットとデメリットがあります。
ここではロケーションベース型と、ビジョンベース型の種類別に分けてご紹介します。
ARマーカーのメリット
ロケーションベース型ARは、現実世界とデジタル情報を融合することができます。
これにより、例えば歴史的な建物や観光地などの場所で、歴史や文化に関する情報を提供することが可能です。
また、店舗やイベント会場などの場所において、広告やマーケティングに活用することができます。
ビジョンベース型ARは、カメラを利用して実世界の映像を認識するため、高い精度でARオブジェクトを配置することができます。
また、ARオブジェクトが画像にピッタリと合わせて表示されるため、現実感が高くなります。
ARオブジェクトの配置に必要な情報が画像に含まれているため、ロケーションベース型ARと比較して、開発が容易であると言えます。
ARマーカーの課題点
ロケーションベース型ARは、ユーザーの位置情報を利用するため、建物内や都市部などの信号の届きにくい場所では、GPSの精度が低下することがあります。
また、GPSなどのハードウェアを使用するため、デバイスのバッテリー消費が激しくなり、高品質のグラフィックスや動画などを含むARアプリの場合、通信量が急増することがあります。
ビジョンベース型ARは、実世界の映像を認識するため、環境によってはARオブジェクトの配置が困難になることがあります。
たとえば、光の強さや色温度、物体の形状や色などがARオブジェクトの認識精度に影響を与えることがあります。
また、カメラを利用して実世界の映像を認識するため、個人のプライバシーに関する問題が生じる可能性があります。
特に、ARオブジェクトが認識される際に、周囲の人々の映像も一緒に取得される場合があります。
|まとめ
今回はARマーカーの概要、応用事例、仕組みやメリット、デメリットについて解説しました。
ARマーカーを活用することで、より詳細でリアルなコンテンツや体験が提供できるため、ビジネスのマーケティングにも応用されています。
今後も、AR技術の発展に伴い、ARマーカーは、広告やエンターテイメント、教育などの分野で活用され、今後ますます普及が進み、応用範囲が広がっていくことが期待されます。
ぜひARマーカーについて、本記事で理解を深めることができれば幸いです。