近年、急速なテクノロジーの進化により、ビジネスの世界も大きな変革を遂げています。
その中でも、国内外問わず、メタバースが注目を集めています。
メタバースとは、仮想現実と現実世界が交わる新たな次元を指し、その可能性はますます広がっています。
本記事では、ビジネス領域において、メタバースがどのように活用されているのか?実際の事例をもとにわかりやすく解説します。
また、メタバースが注目されている背景やどのように活用できるのかも紹介しますので、是非最後までご覧ください。
|そもそもメタバースとは
「メタバース(Metaverse)」は、「meta」(超越的な、高次の)と「universe」(宇宙、世界)の合成語であり、仮想現実技術によって作り出された仮想空間上の架空の世界を指します。
メタバースの歴史は比較的新しく、1992年にSF作家のニール・スティーヴンスンが小説「スノウ・クラッシュ」で、仮想空間での社会やビジネスが描かれました。
その後、第一次ドットコムバブルの時期には「セカンドライフ」という仮想世界が登場し、ビジネスの可能性を模索する動きが見られましたが、利用者数はピーク時で100万人程度に留まりました。
しかし、最近では仮想現実技術の進化やブロックチェーン技術の発展によって、メタバースの構築や運営が容易になり、ビジネスの場でも注目を集めています。
さらに、新型コロナウイルスの影響によってオンライン上でのコミュニケーションやビジネスが求められるようになり、メタバースの重要性が高まっています。
今後、VR技術やブロックチェーン技術の発展によって、メタバースがますます拡大し、ビジネスの世界に大きな影響を与えることが期待されています。
メタバースについては、下記記事をご覧ください。
|メタバースが注目されている理由
メタバースは、現実世界と仮想世界が融合した新たな世界を提供し、没入型の体験を可能にします。
ユーザーは自身が別の次元に存在しているかのような感覚を味わい、これまでにない魅力的な体験が可能となり注目を集めています。
さらに、地理的な距離や言語の壁を越えて、リッチなコミュニケーションが可能という点も魅力的です。
メタバースを通じて新たなネットワークを構築し、より広範な顧客にアプローチすることが可能になり、新規顧客開拓が期待できるでしょう。
従来のビジネスモデルを超えた新たな収益源やビジネスチャンスを生み出す可能性があるため、メタバースを活用したビジネスを検討する企業が増えています。
仮想空間内での広告や商品販売、仮想通貨を用いた経済活動など、多岐にわたるビジネスモデルが考えられています。
さらなるテクノロジーの進化により、より高品質でリアルな体験が可能となり、メタバースの魅力が一層高まるでしょう。
|メタバースの活用シーン
ここでは、ビジネスにおけるメタバースの活用シーンを紹介します。
ライブやイベント
メタバースを活用すれば、アバターを使用して、仮想環境でライブやイベントを開催することができます。
先述したように、感染症のパンデミックなどが起こると、ライブやイベントは中止しなければならない状況となることもあります。
そのため、メタバースを活用しようとする動きが試みられています。
例えば、「FUJI ROCK FESTIVAL ’19」という2019年に開催されたイベントでは、現地に行けない方などを対象に、会場をメタバースを活用して再現する試みが行われています。
また、日本の4人組ロックバンド「RADWIMPS」も、2021年にバーチャルライブを開催しています。
このように、メタバースを活用すれば、どこからでもイベントやライブに参加することができます。
ショッピング
メタバースを活用して、電子商取引などのサービスを提供する仕組みを構築することで、仮想空間でショッピングを行うことができます。
ユーザーは、アバターを使用して、ショッピングを楽しめるため、バーチャル化された商品を見たり、試着したりしたうえで、商品を購入することが可能です。
例えば、凸版印刷社の提供している「Metapa(メタパ)」というアプリを使用すれば、仮想空間で友人や家族などと買い物ができます。
また、店員と会話することもできるため、リアルに近いショッピングを楽しむことが可能です。
このように、メタバースにより、普段出かけない人でも、気軽にショッピングを楽しめるため、売上の拡大が期待できるかもしれません。
会議や共同作業
メタバースを活用すれば、テレワークをこれまで以上に快適に実施することができます。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、Web会議システムが登場し、テレワークを実施する際に役立っていますが、まだまだ課題があります。
例えば、同じ空間を共有している感覚が薄いことや、相手の表情がわかりづらいことなどが挙げられます。
メタバース技術を活用すれば、自社のオリジナルの会議室を作り、実際の会議を再現できるため、対面に限りなく近い感覚でミーティングを行うことが可能です。
また、リアルの世界での身振りをそのまま表現することも可能です。
例えば、仮想空間でプロジェクトメンバーと話し合いながら、共同作業を行うことができます。
このように、メタバースにより、会議や共同作業を仮想空間上で行うことで、これまで以上に業務生産性の向上や、テレワークの推進が期待できます。
投資や資産運用
メタバースを活用すれば、仮想通貨を使用して、土地の売買や賃借により、収益を得ることができます。
そのため、仮想通貨を利用した投資など、資産運用にも利用可能です。
例えば、CryptoPunks(クリプトパンク)というデジタルキャラクター画像から構成されるデジタルアートが高額で取引された事例があります。
「CryptoPunk 7804」というデジタル画像は、2021年3月に約750万ドルで取引されたという実績があります。
このように、NFT技術の発展の影響もあり、メタバースで仮想通貨を使用して、商品売買を行い、個人でも資産運用が可能です。
|国内外のメタバース最新活用事例
ここからは、国内外のメタバース活用事例を紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
【国内】メタバース役所(桑名市)
出典:https://www.dnp.co.jp/news/detail/20171384_1587.html
三重県桑名市は、大日本印刷株式会社と共同で「メタバース役所」の実証実験を開始しました。
これは、年金や介護などの行政サービスをオンラインのメタバース空間で受けられるようにする取り組みです。
市民は、自分の分身であるアバターを通して「メタバース役所」を訪れ、各種電子申請や住民相談、交流活動などのサービスを利用できます。
これにより以下のメリットがあります。
・時間や場所に関係なく自宅から行政手続きが可能
・匿名性が保たれた相談しやすい環境の提供
・会場設営など不要で交流会イベントを手軽に開催
メタバース空間での行政サービスの提供は、市民の利便性向上につながる画期的な取り組みといえるでしょう。
なお、この取り組みに関連し、弊社も一部協力させていただきました。
詳しくは以下の記事をご覧くださいませ。
【国内】メタバースヨコスカ(横須賀市)
出典:https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2150/2720231027metaverse.html
横須賀市は、観光振興を目的とした仮想空間「メタバースヨコスカ」を公開しています。
市の人気観光スポットであるドブ板通りと三笠公園をメタバースプラットフォームVRchat上に再現しました。
この仮想空間内には、「よこすか海軍カレー」などの市の名物をアイテム化して配置し、来訪者に横須賀の魅力を体感してもらえるようにしています。
さらに、アバター用の「スカジャン」を無料配布するなど、ユニークな方法で市の特色をアピール。
オープンしてから約2ヶ月で、スカジャンの3Dアイテムが1万ダウンロードを記録するなど、非常に人気を博しています。
詳しくは以下の記事で詳しく解説しています。
【国内】バーチャルハローワーク(大阪労働局)
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-hellowork/kanren/virtualwakamono.top.html
大阪労働局は、クラスター社と共同で、メタバース上に「バーチャルわかものハローワーク」を開設しました。
若者の完全失業率が高止まりしている中、メタバース上で就労支援を行うことで、ハローワークの利用ハードルを下げ、就職相談のきっかけを作りたい考えです。
このバーチャルハローワークでは、アバターを使って匿名性を保ちながら、職員への就職相談やセミナー動画の視聴、企業説明会への参加などが可能です。
開設から約1ヶ月で、新規訪問者は978人、総入場者は延べ4,127人に上り、利用者同士の交流の場としても機能しています。
この取組みは、国内で初の試みであり、メタバースを活用した新たな就労支援の形として注目されています。
【国内】METAドンキ(ドン・キホーテ)
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000110582.html
ドン・キホーテは、メタバース上に「METAドンキ」を3日間限定オープンしました。
このメタバースは、ブラウザ版仮想空間プラットフォーム「DOOR」に構築され、PCやスマートフォンなど、多くのデバイスから参加できます。
METAドンキでは、限定イベントへの参加や、従業員と同じユニフォーム「ドンポロ」を着用したり、キャラクターと写真撮影など、バーチャル空間ならではの体験が満載です。
店舗というよりは、アミューズメントに近いサービスを提供するメタバースと言えます。
これにより、新しい顧客へのリーチとエンゲージメントを獲得し、実ビジネスとの相乗効果を期待しています。
現在のメタバースはまだ発展途上ですが、ドンキのこの取り組みは、メタバースをより身近なものにし、新しい顧客体験を創出するための一歩となるでしょう。
バーチャルカラオケボックス(カヤック)
出典:https://www.kayac.com/news/2023/10/metaverse
カヤックとカヤックアキバスタジオは、バーチャルカラオケボックス「カラオケボックスαU」を期間限定でオープンしました。
このバーチャルカラオケボックスでは、JOYSOUNDの人気楽曲100曲を歌うことができ、キーの調整や音程チェック、採点機能も搭載されています。
アバター同士で歌を楽しみ、スコアを競い合うなど、ユーザー間の交流を促進します。
バーチャルカラオケボックスは、メタバースの匿名性により初対面でもコミュニケーションが生まれやすいため、同じ趣味を持つ人同士をつなぐ新たな出会いの手段となり得るでしょう。
【国内】恋愛メタバース「Memotia(メモティア)」(Flamers)
出典:https://memotia.com/
株式会社Flamersは、恋愛メタバース「Memotia(メモティア)」を提供しています。
Memotiaとは、一言で言えば、メタバース版マッチングアプリです。
従来のマッチングアプリでは、チャットなどテキストベースのコミュニケーションからスタートしますが、Memotiaではアバターを介しての会話からスタートします。
マッチングが成立すると、仮想空間内のさまざまな場所でデートしながら、少しずつ関係を深められます。
会話をサポートする仕組みも用意されており、自然と会話が続くような仮想空間ならではの工夫がされているのが特徴。
例えば、「話題サイコロ」を振ってテーマトークをするゲームなど、デジタルな仮想空間なら自然な流れで入ることができます。
なお、「Memotia(メモティア)」は、2024年2月にサービス名が変更されており、以前は、「Memoria(メモリア)」のサービス名で展開していました。
Memotiaについての詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
【国内】NEXCO東日本 ハイウェイワールド(NEXCO東日本)
出典:https://www.e-nexco.co.jp/pressroom/head_office/2023/1019/00013054.html
NEXCO東日本とREALITY XR cloud株式会社は、スマートフォン向けメタバース「REALITY」上に、「NEXCO東日本 ハイウェイワールド」をオープンしました。
この企画は、2023年の11月に行われた1ヶ月間の期間限定イベントで、仮想空間上に高速道路やサービスエリアを再現したもので、オープンカーでドライブを楽しんだり、各地のSAを散策したりできます。
イベント期間中は、リアルのSAとも連携し、デジタルサイネージにアバター画像を映したり、等身大パネルを設置したり、現地イベントとのコラボレーションも行われました。
これは、メタバース上で高速道路空間を再現する初の試みであり、新しい形の高速道路体験を提供するものとして注目されています。
【海外】メタバース会議「Mesh」(マイクロソフト)
出典:https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1563640.html
マイクロソフトは、没入型のメタバース会議システム「Microsoft Mesh」の提供を開始しました。
これは「Microsoft Teams」の新機能であり、一部の企業・団体にはすでに大々的に導入されています。
Microsoft Meshは、会議室や懇親会などを目的とした3D没入型の空間を提供するものです。
メンバーはアバターで参加し、空間オーディオにより少人数のディスカッションにも対応。
Teamsの機能として、共有コンテンツへのアクセスや、チャット、ライブリアクションなどを利用できます。
Microsoft365との連携により、生産性の高いワークフローを仮想空間に構築できるでしょう。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
【海外】産業用メタバース(NVIDIA)
出典:https://www.youtube.com/@NVIDIAOmniverse
NVIDIAは、企業向けに業務効率化を目的としたメタバース構築プラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を提供しています。
NVIDIA Omniverseが提供する主な機能は2つあります。
1つ目は、3Dデザインのコラボレーション空間の利用です。
これにより、複数の部門や企業が同じ3D空間上で設計やデザインの作業を行うことができ、コミュニケーションの円滑化と作業効率の向上が期待できます。
2つ目は、製品や製造ラインなどのデジタルツインの構築とシミュレーションです。
現実世界の物理的なモノやプロセスをデジタル空間上に再現し、各種シミュレーションを行うことで、設計の最適化や生産性の向上につなげることができます。
NVIDIA Omniverseは2020年のリリース以来、BMWやAmazonなどの大手企業を含む700社以上、15万人以上のユーザーに利用されています。
Omniverseの詳細情報は以下の記事をご覧ください。
【海外】仮想ビール醸造所(ハイネケン)
出典:https://youtu.be/-9-lhuSkiMs?si=ovuyjqVuB16lsbca
オランダのビールブランド「ハイネケン」は、メタバース上の醸造所でバーチャルビール「Heineken Silver」を新たに開発したと冗談まじりに発表しました。
ハイネケンは、次世代のブロックチェーン型のメタバース「Decentraland」上に、ビール醸造所を公開し、話題を作ることで新たな顧客層へリーチすることが狙いとしてあるのでしょう。
ハイネケンのグローバルヘッドBram Westenbrink氏は、「ハイネケンのバーチャルビールは皮肉的な冗談です。現実世界で一番楽しめるプロダクトで、さまざまな人やブランドが興味のあるメタバースに飛び込み、ファンに楽しんでもらうアイデアなのです」とコメントしています。
この取り組みは、メタバースというトレンドに合わせた新しいマーケティング手法の一つと言えるでしょう。
ハイネケンは、メタバース空間でも自社ブランドの存在感を示すことで、ファンとのつながりを強化しようとしています。
|メタバース普及への課題
メタバースが今後普及していくためには、法整備が課題とされています。
現在施行されている法律では、仮想空間でのビジネスを想定していません。
例えば、所有権は、物理的にあるものに限定されています。
そのため、メタバースを活用した仮想空間で、商品売買のトラブルが生じたとき、法的に対応することが難しいでしょう。
そこで近年では、日本のメタバースの発展に向けて、法整備を推進するために、2021年11月にKDDI社・東急社・みずほリサーチ&テクノロジーズ社・渋谷未来デザイン社は、バーチャルシティコンソーシアムという団体を発足しています。
このように、メタバースの普及には、法整備が課題とされています。
法整備が進められれば、安心してメタバースの空間を利用することができ、市場の拡大が期待できるかもしれません。
|まとめ
いかがでしたか?
本記事では、ビジネス領域において、メタバースがどのように活用されているのか?実際の事例をもとにわかりやすく解説しました。
メタバースの活用事例には、日本と海外の企業でさまざまなものがあります。
メタバースでできることは数多くあり、今後、法整備が進めばさらに普及が進むことが期待できるでしょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!