「メタバースという言葉は知っているけど、どんなものか説明できない・・・」
「社内でメタバースに取り組もう!と決まったけど、具体的になにができる?」
このような悩みを抱えていないでしょうか。
米国のFacebook社が社名を「Meta」に変更したことで火付け役となり、メタバースは世界から大きな注目を集めています。
日本国内でも、一部ゲームに取り入れられていた技術ですが、
近年ではバーチャルオフィスなどビジネスに応用する動きが活発化しています。
メタバースは新たなビジネスモデルとしても注目されており、多くのIT企業が市場へ参入しています。
本記事では、メタバースがどういったものなのか?
どのようなことが実現できるのか?
技術詳細や仕組み、背景を交えて詳しく解説していきます。
目次
|メタバースとは
メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間で、人々が交流やサービスを楽しむ場所です。
メタバースは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術を活用することで、仮想空間に自分がいるかのような感覚を人々と共有できるようになります。
メタバースは、アバターと呼ばれる自分自身の分身を作り出し、他のアバターたちと交流したり、買い物や仕事などをすることができます。
ただし、メタバースの概念は新しく、共通認識が曖昧で方針の具体性・明確な定義が存在しません。
そのため、さまざまな企業が「メタバース事業」という大きな括りで仮の定義を設け、メタバースの方向性を探っている段階です。
|メタバースにおける国内の動き
最近では、大手企業がメタバース事業への投資を含む参入宣言、
メタバース協会の発足など国内でメタバースに関するニュースが増えてきました。
実際に、2021年12月に行われた「バーチャルマーケット2021」というイベントにて、大手アパレル雑貨セレクトショップのBEAMSがバーチャル空間上に店舗を出店しました。
メタバース空間上で使用できる限定アバターや、リアル商品を販売し、総勢44名の社員がアバターを身振り手振りで動かし表現しながら、接客を行いました。
さらに、バーチャル店舗用のSNSを設けて積極的に発信を行い、
バーチャル上で接客を行ったスタッフのいるリアル店舗にお客さまが来店しリアルなコミュニケーションが生まれるなど、バーチャルとリアルを組み合わせた事例があります。
2021年12月には、「一般社団法人日本メタバース協会」が発足されました。
メタバース技術や関連サービスの普及、メタバース技術に関する健全なビジネス環境の整備を進めるメタバースの業界団体です。
具体的には、内外の情報を収集し、また情報を発信する起点となり、
メタバースに関係する企業や個人が会員となり、
情報交換や協力でシナジーを生み、日本がメタバース先進国となることを目指すとしています。
|メタバースの海外の状況
海外では、メタバースを活用する動きが活発化しています。
メタバースの浸透は、日本と比べると圧倒的に海外の方が早く、多くのひとがゲームなどを通して、身近に感じている傾向にあります。
旧Facebook社は、メタバースのイメージを強くアピールする目的で「メタ・プラットフォームズ」に変更しています。
メタバースによる収益はまだ生まれていませんが、
メタ社では1兆ドル(日本円で約120兆円)ものビジネスチャンスを見込んでおり、
長期的な投資を行うとされています。
Microsoft Teamsは現在、チャットやビデオ会議を行うツールとして知られていますが、メタバース仕様として3Dアバターを導入予定です。
3Dアバターによってビデオ会議での存在感を高め、共有意識を持ち関わりを深めることを目的としています。
中国のIT企業テンセントは2022年1月、日本企業向けにメタバースのスタートアップ企業を展開することを発表しました。
支援事業は、テンセントの日本法人であるテンセントジャパンを通して展開予定となっており、ゲームや電子商取引など用途に合わせた仮想空間の構築から、
アバター作成、コンテンツの配信までと多岐にわたり支援をしていくとされています。
中国ではすでに多数の実績があり、これまで地方自治体や大手保険会社などが利用しています。
その他にも、観光のための仮想空間構築や、販売を行うためのアバター作成など様々な分野での支援を行ってきました。
|メタバースに使われる7つの技術
メタバースは、多くのテクノロジーが活用されているのをご存知でしょうか?
ブロックチェーン、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、AI知能、3D構築、IoT、高速通信技術の7つの最新技術が駆使され、構築されています。
最新技術を搭載しているため、まだまだ発展途上である一方でこれから発展していく可能性が高いとされています。
ここからは、メタバースに使われる7つの最新技術について詳しく解説していきます。
ブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術は、デジタル上の取引データを「ブロック」という単位で記録し、「チェーン」のように繋いで保管する技術のことです。
ブロックチェーンでは、データを複数人のユーザーで共同管理し、情報をコンピューターに分散して保存しています。
そのため、不正なデータの改ざんがあった場合でも他のユーザーが気付ける仕組みになっています。
ブロックチェーンをメタバースに取り入れるメリットは、
デジタルデータの正当性・透明性を担保することができることです。
ブロックチェーンとメタバースを組み合わせることで安全にデジタル上で取引することが可能になったり、デジタル商品の不正コピーを防げるので収益化もしやすくなります。
また、メタバースの世界では、NFT(非代替性トークン)という形で
実際に商品を購入することができます。
AR技術
AR(拡張現実)は、「Augmented Reality」の略称で、現実世界にバーチャル映像を重ねることができます。
例えば、現実世界で自分の部屋にアニメやゲームのキャラクターをバーチャルで映し出し、あたかもそこにキャラクターが存在しているような体験ができます。
カメラ付きのスマホやデジタル機器であれば、ほぼすべての端末で利用することができます。
また、ARの仕組みはメタバースの初期モデルとも言われています。
架空の映像を取り込んだデジタル世界とリアルを融合した新たな世界を作り出すARは、私たちに没入感のある刺激的な3D体験を与えてくれます。
このような技術が私たちのメタバースへの入り口とされています。
VR技術
VR(仮想現実)は、「Virtual Reality」の略称で、リモコン操作により、自分の動きがそのままゲーム内のアバターに反映されます。
例えば、専用のコントローラーを操作しながら現実世界で手を挙げると、メタバース空間内のアバターも同じように手を挙げる動作をします。
VRの世界へ入り込むには、VRのシステムやアプリ、VRゴーグル、その他コントローラーなどが必要です。
VRはメタバースと同様に完全にデジタル上の仮想空間を作り出すため、メタバース=VRと言われることが多いです。
また、VRもAR同様にメタバースの初期モデルと言われています。
VRの技術が成熟すれば、VR機器による物理的なシミュレーションを伴うメタバース体験の拡大も可能になります。
AI
AI(人工知能)は、すでに私たちの生活に広く応用されています。
大きな特徴としては、大量データを高速で処理することができます。
機械学習技術を持っているのでAIアルゴリズムは、過去データを反復しながら自動で学習し、独自のアウトプットを導きだすことが可能です。
例えば、メタバース内で様々なシナリオでノンプレイヤーキャラクターにAIを適用することができます。
3D技術
3D自体は新しい技術ではありませんが、メタバース内で現実世界により近いものを表現するために必要な技術です。
メタバースの課題のひとつは、私たちの現実世界に限りなく近い形で見えるデジタル環境を作ることです。
不動産業界では、新型コロナウイルス件戦対策のため、
実際の物件見学ではなく、3Dモデルで構築したオンラインバーチャル物件見学を行いました。
特殊な3Dカメラを使用し、建物や物理的な場所、物体の正確な3Dフォトリアリスティックモデルをレンダリングすることで、現実世界をオンライン化することができます。
現実世界に実在しているものを、デジタル空間でリアルに表現したものをデジタルツインと呼びます。
IoT
IoTとは「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」と訳されています。
メタバースの世界では、各機器をインターネットへ接続することが前提になるため、「IoT技術」が必要になります。
IoT機器で現実世界にある情報を集め、そのデータを元に仮想空間での再現性を高めることも可能です。
通信技術
仮想空間上では、タイムラグのない安定した通信を行うため、通信技術の進化も求められます。
自宅でメタバースを充分に楽しむためには、高品質な光回線や、5Gによる超高速・大容量な通信が求められるでしょう。
|メタバースが注目される3つの理由と背景を解説
ここからは、なぜここまでメタバースが注目を集めているのか?
・ブロックチェーン技術により安全に経済活動が行える
・コロナウィルスによる対面の制限を緩和するコミュニケーションが行える
・仮想通貨・NFT業界での一時的なバブルが影響している
以上3つの理由とその背景を解説していきます。
ブロックチェーン技術により安全に経済活動が行える
ブロックチェーンの技術は、なんらかの取引データをブロックごとに時系列で記録し、取引履歴をみんなで共有することで改ざんが不可能な状態で安全に取引データを保持する仕組みのことを指します。
メタバースとブロックチェーンがなぜ注目されているのかについては、
ブロックチェーンがデータに「資産性」を持たせることが大きく関わっています。
メタバースの世界では、ゲーム内のアイテムや土地などをNFT化し、
売却することでユーザーは収益を得ることが可能です。
収益化を求めてユーザーが集まり、NFTを構築することで
提供元であるプロジェクトのトークン価値があがり、それだけでも充分に経済が活気的になります。
コロナウィルスによる対面の制限を緩和するコミュニケーションが行える
コロナ禍は、メタバース・仮想通貨業界に大きな影響を与えたと言えます。
緊急事態宣言や、感染拡大防止のため家で過ごす時間が増え、外で人と会う機会が減ることで、今ではオンライン飲み会やリモートワークが当たり前になりました。
そこで新しいコミュニケーションの手段として、メタバースに注目が集まります。
遠く離れた友人同士でメタバースの世界で集まって会話をしたり、一緒にゲームをしたり、ライブや買い物をするといった第二の現実世界に浸ることが可能になります。
もし、新型コロナウイルスが流行していなければ、メタバースの流行は、もう少し遅かったかもしれません。
仮想通貨・NFT業界での一時的なバブルが影響している
仮想通貨は、2018年頃から日本でも知名度があり、トレーダーが増えてきました。
近年では、単純な投資だけではなく、一般ユーザーによるNFT作成で注目を集めており、NFTアートなど一部バブル状態が起きています。
さらに現在では、メタバースゲームでNFTが活用されていて、
Axie Infinity(アクシーインフィニティ)が有名なタイトルです。
空想の生き物を育て、繁殖、戦闘、取引することで収益を得ることができます。
メタバースが注目されている理由の一つとして、このような仮想通貨バブルの影響があります。
|メタバースでどんなことができるのか?企業と利用事例を紹介!
ゲーム分野で先行しているメタバースの取り組みは、ビジネス展示会や不動産など様々な分野で新規ビジネスとして活用されています。
ここからは、実際のメタバース利用事例を3つご紹介します。
monoAI technology株式会社の「XR CLOUD」
monoAI technology社のメタバースプラットフォームは、独自の大規模同時接続通信技術が特徴で、100名を超えるビジネスカンファレンスや、展示会、音楽ライブイベントなど、分野問わず利用できます。
マルチデバイス対応で、スマホやPCなど場所を選ばずにメタバース空間に参加することが可能となっています。
大和ハウス工業の「メタバース展示場」
出典:https://japan.cnet.com/article/35186575/
大和ハウス工業社のメタバース展示場は、戸建て住宅展示場が、リアルにメタバース空間に再現されています。
アバターとして家の中に入り、自由にお部屋見学をすることができます。
アバター同士で会話ができたり、見学者が床や壁紙・天井等の色や素材、インテリアなどを瞬時に切り替えて、イメージを検討することもできます。
Nikeの「NIKELAND」
出典:https://chizaizukan.com/news/1LcDtG6f849IzReyfcpiyR/
2021年11月には、オンラインゲーム「Roblox」内に、ナイキのバーチャルテーマパークとも言える、「NIKELAND」を開設しています。
ユーザーは、鬼ごっこやドッジボールといったゲームを楽しむことができます。また、ゲーム内のアバターで着用が可能なナイキとのコラボ製品を購入することができます。
さらに、2022年2月にはNBAのスター選手であるレブロンジェームス氏が「NIKELAND」を訪れバスケについてお話したり、メタバース空間を通じてユーザーとのコミュニケーション活性化に繋げました。
|メタバースの懸念点
メタバースの世界は、多くの可能性を秘めており想像するだけでワクワクします!
ただ、現状ではメタバースの壮大な世界観を充分に満喫するために充分な環境やデバイスを整えることが難しいことも否めません。
せっかくの没入感を楽しめるVR機器を購入しても、長時間装着することが大変で、「これならPCでいいじゃないか・・・」とVR機器が埃をかぶっているなんてことになりそうです。
メタバースの利用が進むには、VR機器の軽量化や通信技術の発展が必要になってくるでしょう。
|まとめ
いかがでしょうか?
メタバースに必要な技術や、実際の利用について解説してきました。
メタバースによって、これまでにない体験が可能になり、あらゆる領域でさらに活発になっていくと考えられます。
デジタル世界であると同時に、もう一つの新たな世界である「メタバース」。
テクノロジーの進化によって、今後さらに身近なものとなっていくでしょう。