Unreal Engineは完全無料で利用できるゲーム制作ソフトです。
レベルの高いソフトであることから、ゲーム制作に留まらず幅広い業種においても活用の幅を広げており注目を集めています。
しかし、Unreal Engineの知名度はまだ高いとはいえず、情報の取得に手間取っている方は多いかもしれません。
本記事では、Unreal Engineについての基本的な概要から活用事例について、幅広く解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|Unreal Engineとは
Unreal Engineとは、アメリカのEpic Games社が開発したソフトウェアであり、業界内では「Unity」と並ぶスタンダードなゲームエンジンです。
ゲーム開発だけではなく、建築や自動車設計のほか、映画、アニメーション、テレビ番組制作など、幅広い分野において活用されています。
名称の一部である「Unreal」とは、元々Epic GamesがリリースしたPC向けFPSゲームのタイトル。
そして、Unreal EngineはそのFPSゲームを制作するために作られたミドルウェアをライセンス販売したことが始まりです。
1998年にUnreal Engine1が発表され、2022年4月には最新バージョンとなるUnreal Engine5がリリースされています。
Unreal EngineとUnityの違い
Unreal EngineとUnityの一番の違いは、「利用コスト」があげられます。
Unreal Engineは全ての機能が無料で利用できますが、Unityの一部機能は有料となっています。
また、Unreal Engineは3DやVRゲームの開発を得意としている一方、Unityは2Dゲーム開発を得意としています。
言語に関してもUnreal Engineは「C++」、Unityは「C#」が一般的など、若干の違いがあるので注意が必要です。
|Unreal Engineでできること
Unreal Engineで実現できることについて、以下の項目に沿って解説していきます。
- 3Dゲームの制作
- 3Dワールドの構築
- 3D/2Dキャラクター制作
- 3Dアニメーションの編集
3Dゲームの制作
前述した通り、Unreal EngineはもともとPC向けFPSゲームを制作するために作られたミドルウェアです。
そのため、3Dゲームの制作は最も得意な分野といっても過言ではないでしょう。
ゲーム制作と聞くとプログラミングなどの専門知識が必要と思われますが、「ブループリント」というツールを利用すればコード入力無しでゲームシステムを構築できます。
ブループリントではゲームに必要な機能や動作が事前に設定されているため、任意の演出を誰でも簡単に実装できるのです。
バリエーションも豊富に用意されているので、幅広いアクションに対応しています。
プログラミング知識を必要とすることなく、思い通りのゲーム制作が実現できるでしょう。
3Dワールドの構築
Unreal Engineを利用すれば、3Dワールドの構築も可能です。
ゲームが展開するフィールド全体のことであり、キャラクターが実際に動く世界を作るということですが、「ランドスケープツール」を利用することで簡単に作成できるのです。
このツールは現実世界に存在する要素である山や谷、洞窟といった自然の造形を再現可能。
さらに「グラスツール」では草木や森を表現、「ウォーターシステム」では海や河川を創り上げることも可能です。
コントローラーを利用して自然な動きを表現できますので、非常にリアルな世界観を構築できるでしょう。
さらに、作り上げた世界を崩壊させる「Chaos」という機能もあります。
幅広い世界観を、容易に構築することが可能です。
2D/3Dのキャラクター制作
Unreal Engineには「メタヒューマン」というツールが搭載されています。
こちらを利用すれば、まるで実写のようにリアルな3Dキャラクターが簡単に制作できます。
基本的な造形はデータベースの中にあるサンプルから選択してカスタマイズできますので、デザインに自信が無い人でも簡単に複数キャラクターを創造できるでしょう。
体型や肌色、髪の毛といった大まかな要素だけではなく、目や歯といった顔の細かい部分や化粧などを指定できます。
さらに想像上の生き物の毛皮も再現できますので、人間以外のキャラクターも容易に制作可能です。
このように、2Dキャラクターだけではなくレベルの高い3Dキャラクターが容易に制作できることは、ゲームを構築する上で重要な要素になります。
3Dアニメーションの編集
現在のゲームではアニメーションも重要な要素の一つとなっています。
Unreal Engineでは、そんな3Dアニメーションの編集も容易に可能です。
「シーケンサー」というツールを利用することで、キャラクターの動きをカメラで撮影するように記録でき、それらの素材をムービーとして編集できるのです。
通常の動画編集のように、カットからライティング、レンダリングやポストエフェクトまでをワンストップで行えます。
BGMや効果音を加えることで、迫力あるムービー作成が実現できるのです。
自身で創造したキャラクターを自由自在に動かして、ハイクオリティなアニメーションを作り出す体験はUnreal Engineならではといえるでしょう。
|Unreal Engineの特徴5選
Unreal Engineでは専門知識を必要とすることなく、レベルの高いゲーム作成が可能です。
こちらでは、さらに詳しい特徴について5つの項目に分けてお伝えします。
無料で使える
2023年現在、Unreal Engineは全ての機能を無料で利用できます。
2014年にリリースされたUnreal Engine4の発売当初は、サブスクリプション形式が採用されていましたが、2015年以降は基本無料へと変更されました。
登録や利用にあたって料金は発生しないシステムですので、誰でも簡単にUnreal Engineを試すことができます。
これは学生や個人でのゲーム開発を志すクリエイターにとっては素晴らしいシステムだといえるでしょう。
ただし、Unreal Engineを利用して制作したゲームやアプリが、総収入で100万ドル(約1億3千万円)を超える場合に限り、5%のロイヤリティを支払う必要があります。
プログラミング無しでゲーム制作ができる
ゲームを作るには専門性の高いプログラミング知識が必要でしたが、Unreal Engineを利用することで誰でも簡単にゲーム制作が可能となりました。
その理由は前述した「ブループリント」機能が実装されているからであり、直感的なゲーム構築が実現しています。
この手法はビジュアルスクリプティングと呼ばれており、グラフで行うプログラミングを指します。
ブループリントの選択肢に存在しない動作を追加したい場合は、プログラミング言語である「C++」を利用する必要があります。
しかし、基本的にゲームで必要となる機能はブループリントに含まれています。
そのため、プログラミング知識を持っていなくても、レベルの高いゲーム作成が可能となるのです。
美しいグラフィックのゲーム制作ができる
近年のゲームは現実世界と見比べても、どちらがゲームか判別できないほど美しいグラフィックを持っています。
一見すると高度な知識を必要としそうですが、Unreal Engineでは数多く存在するゲームエンジンの中でもトップレベルのグラフィックを作成できます。
現実世界に近い3DCGはもちろん、アニメのようにデフォルメされたデザインにも対応しているため、幅広い表現が可能です。
また、光の表現や物体の再現性といったグラフィック性能が優れており、光の照り返しなどの複雑な処理もUnreal Engineが自動処理します。
高品質のグラフィックを簡単に実現できることは、開発者の負担を軽減し作成時間の削減に繋がるでしょう。
様々なプラットフォームへ対応している
現在は様々なプラットフォームが各企業から提供されているため、制作を検討する方の環境も多岐に及びます。
ゲームを開発したいと考えた時に、自身が所有するプラットフォームとゲームエンジンの互換性がないとなると、無駄な出費が発生してしまいます。
しかし、Unreal Engineは複数のプラットフォームに対応しているため、ほとんどのユーザーが所有する環境に導入できるでしょう。
WindowsやMacはもちろん、Linux、iOS、Android、PlayStation、Xbox、Nintendo Switchなどに対応しています。
このようにどんな環境にも柔軟に対応できる点も、Unreal Engineが注目される理由の一つなのです。
制作したゲームを公開、販売できる
せっかく制作したゲームですので、個人で遊ぶだけでは勿体ないと感じるはずです。
当然ですが、多くの人々に遊んで欲しいと思うのがクリエイターとしての気持ちでしょう。
Unreal Engineで制作したゲームは公開、販売することが可能です。
公開できる媒体についてもSteam、Epic GamesストアやGoogle Playストア、App Storeなど幅広く対応しています。
自分のペースで自由にゲーム制作が可能であり、最終的には世界中に公開できることは大きな魅力です。
今後大きなゲーム開発に関わりたいと考える人であれば、公開したゲームは実績の一つとして強力でしょう。
もちろん、販売数が伸びれば大きな収益になることも考えられます。
|Unreal Engineで作られたゲーム5選
それでは、実際にUnreal Engineを利用して作られたゲームを5つ紹介します。
どれも人気のあるゲームばかりですので、プレイしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
Fortnite
「Fortnite」は、Unreal Engineの提供会社であるアメリカのEpic Games社がリリースしたオンラインゲームです。
世界的にも大きな人気があり、大人から子どもまで幅広い年代が楽しめるプレイモードが特徴。
多くのプレイヤーを相手に最後まで生き残ることを目的とする「バトルロイヤル」や、移動能力と武器の扱いが試される「ゼロビルド」、チームで勝利を目指す「世界を救え」など、飽きることなく楽しめるゲームです。
ストリートファイターV
PlayStation4やパソコン向けタイトルとして2016年に発売されたストリートファイターVも、Unreal Engineを利用して作られました。
多くのファンに愛されるシリーズの新作を出すにあたって最新、最高の技術を採用する必要があったため、Unreal Engineが採用されたとカプコンは語っています。
世界中で人気の格闘ゲームですが、2023年にはシリーズ6作目の販売が予定されています。
こちらの開発についても大きな注目が集まるでしょう。
PUBG
「PUBG」はオンライン上で複数のプレイヤー同士が対戦する、バトルロイヤルタイプのシューティングゲームです。
孤島や砂漠、密林、荒野など多種多様なマップが存在しており、フィールド上にも数多くの建造物が配置されています。
キャラクターを育成する要素は取り入れられておらず、純粋に自分のプレイスキルと戦術を活かして戦うゲーム性が人気を集めています。
300万人を超える同時接続数を記録するなど、世界で5番目に売れたゲームソフトとしても知られています。
二ノ国:Cross Worlds
「二ノ国:Cross Worlds」は、ゲーム制作会社のレベルファイブとアニメ制作会社スタジオジブリが制作したゲームシリーズであり、高品質のアニメーションが特徴。
グラフィックの元となるアートワークをジブリが担当し、アニメーション部分ではUnreal Engineの「シーケンサー」と「ブループリント」が活用されています。
RPGゲームであり、世界中のプレイヤーと交流しながらプレイを楽しめます。
ドラゴンボールZ カカロット
2020年に発売された「ドラゴンボールZ カカロット」は、Unreal Engine4をゲームエンジンとして採用し開発されました。
人気アニメであるドラゴンボールZの世界観が、ゲームでも忠実に再現されており、魅力的なキャラクターが表情豊かに動き回ります。
重要な戦闘シーンをゲーム上で体験できることから、原作ファンの間で高い評価を得ています。
サブストーリーの存在など、プレイヤーが楽しめる要素も数多く存在しているゲームです。
|Unreal Engineの活用事例
Unreal Engineは単にゲーム制作に利用されるだけではありません。
質の高い3Dデザインが実現できることから、様々な業界においても活用されているのです。
宇宙開発
宇宙開発で有名なアメリカ航空宇宙局、通称「NASA」においてもUnreal Engineは活用されています。
「Mars 2030 Editor」では、誰でも火星探検を体験できるための仮想空間をUnreal Engineによって構築しています。
この仮想空間を利用してプレイヤーは実際に火星を歩くことや、火星探査車を運転するなどの疑似体験が可能です。
他にも仮想空間で宇宙を再現し、実際の宇宙飛行士の訓練に役立てています。
NASAは最先端技術のシステム導入に積極的な姿勢をみせており、宇宙空間の探索訓練は基本的にゲームのようなものであると語っています。
日々の訓練目標を達成しやすい要素が搭載されているUnreal Engineは、今後の宇宙開発に大きく役立つことが考えられるでしょう。
建築
建築業界では、Unreal Engineをベースとした3DビジュアライゼーションソフトウェアであるTwinmotionが活用されています。
VRコンテンツやシミュレータの制作、開発を手掛ける株式会社キャドセンターでは、このTwinmotionとUnreal Engineを利用することで、不動産PRを目的としたビジュアライゼーション作成や、都市計画を実現するための3D都市を構築しています。
さらに、不動産の内見をデジタルジオラマで実施するなど、遠方の顧客が相手でも商談時に具体的なイメージを抱いてもらいやすい環境を実現しているのです。
このように、図面だけでは伝えにくい部分をUnreal Engineによる3D技術によって補うことで、建築や不動産業界に大きく貢献しています。
医療
Unreal Engineは病気や依存症に対する治療法の開発にも貢献しています。
医薬品の研究開発を行なっているC4X Discoveryは、Unreal Engineによるゲーム制作の技術を用いて、現実世界に大きな影響を与える医薬品を仮想空間において開発しているのです。
これは新薬の構想から市場投入までのプロセスをより迅速に進めるための手段として活用されており、複雑な分子の動きも表現可能なのです。
分子の3Dモデルを仮想空間上で操り、様々な角度で調査するといった、従来では到底不可能な形での分析が実現しています。
この手法は医薬品の発見方法を大きく変化させるだけではなく、科学と医薬品設計に対する我々の考えを一変させるかもしれません。
映像
前述したように、Unreal Engineでは高いレベルの3Dアニメーションの制作が可能です。
そのため映画などの映像作品の現場でも利用されることがあります。
例えば、韓国のビデオ制作サービス会社「WYSIWYG STUDIOS」では、SF映画の制作におけるプレビズ(Pre Visualization)にUnreal Engineが使用されています。
CGのクオリティが求められるといわれるプレビズですが、Unreal Engineを使用することで品質の向上が実現したといわれています。
さらに、制作チーム全体での構成確認が容易になり、スムーズな制作環境の実現とコスト削減に繋がりました。
自動車
Unreal Engineは自動車製造の現場でも利用されています。
世界的な自動車メーカーであるBMWでは、設計から生産計画、販売に至るまでの各部門においてUnreal Engineの活用が進められているのです。
さらに、製品やブランドをリアルタイムのデジタル3Dで表現することが、これからの標準的なプレゼンテーションにあると主張しています。
実際、オンラインで利用できる自動車のイメージ画像については、ほとんどが3D画像を利用したものになっています。
開発面でも、リサーチの時間と工数が従来よりも低コストになるだけではなく、作業スピードもあがるでしょう。
他メーカーへの展開も十分に考えられるため、Unreal Engineは自動車業界においても重要なソフトとなるはずです。
|まとめ
Unreal Engineについての概要から、ゲーム制作における特徴について解説しました。
また、ゲーム制作にとどまらず、幅広い業界においてもUnreal Engineは活用されています。
従来では膨大な費用が発生していた工程でも、仮想空間上で行うことで大幅なコスト削減が期待できるでしょう。
日常生活においては、これまでにない速度でオンライン化が進んでいることから、実際のコミュニケーションの希薄さが課題として取り上げられています。
しかしメタバースを活用することで、これまでになかった人との接点が生まれ、これらの課題を解決すると期待されているのです。
Unreal Engineではゲーム制作に留まらない可能性を秘めています。
これからもますます活躍の幅を広げることが考えられますので、興味のある方はぜひ一度利用してみることをおすすめします。